領事部において、2008年のメキシコ国内における邦人の方の被害発生状況をまとめました。
メキシコ渡航、在留のうえでの安全対策の参考としてください。
1 一般治安の現状
メキシコにおいては、麻薬等犯罪組織の取締りに力を入れる治安当局と、これに抗する犯罪組織との衝突、また犯罪組織間の抗争等により、新たな治安の揺らぎが生じているところですが、今後は、これに加え、08年後半からの経済不況が一般治安に好ましくない影響を及ぼすことも予想されます。
また、メキシコ市を中心に誘拐事件は依然多数発生しており、08年中には、日系人の被害も複数確認されました。
2 2008年における邦人被害の特徴~凶悪化・広域化・巧妙化
(1)在留邦人の方の防犯意識の高まりにより、近年の被害減少傾向は維持されています。
(2)一方、08年には、05年以来となる邦人が被害者となる殺人事件が発生しました。
ピストル等の凶器を用いた強盗の被害は7件(07年は10件)。前年同様、警察官等治安関係者と思われる犯人による犯罪も含まれる等、一般治安が改善しているとは言い難い状況にあります。
(3)07年後半から顕著となった邦人犯罪被害の地方拡散傾向がさらに進みました。
メキシコ全体での邦人被害のうち、メキシコ市以外での被害が全体の被害に占める割合が、07年の34%から08年は55%と上昇しました。
(4)「オレオレ詐欺」「日本大使館の名を語った詐欺」「取引業者になりすました訪問盗」等、新たな手口の詐欺・窃盗の被害も確認されました。
(5)07年9月発生の交通死亡ひき逃げ事件、近年連続発生していたメキシコ市でのタクシー強盗を装った詐欺事件等の被疑者が検挙されました。その一方、被害全体を見れば、その検挙率は依然低いままとなっています。
3.邦人犯罪被害届出件数
75件(前年比-8件)
※2007年 83件
2006年 68件
2005年 92件
2004年以前は、メキシコ市の空港・地下鉄等で邦人被害が多数発生し、例年100件を超える邦人被害が確認されていましたが、2005年以降は、概ね減少傾向にあります。
なお、本統計は、当館領事部に届出があった件数であり、被害の届出が行われない事例も多々あることから、実際の被害件数はこれよりも多いものと思われます。
4 発生場所の傾向
(1)州別発生状況
メキシコのなかで最も一般治安が悪いとされるメキシコ市では、年間被害件数34件(昨年比-9件)と、依然、被害減少傾向は続いています。しかし、この減少は、一般治安の改善によるものではなく、在留邦人の防犯意識の高揚によるところが大きいと思われます。現に、これまで比較的安全な地区と言われてきたポランコ、デル・バジェ、コヨアカン等の地区でも、邦人の強盗・窃盗被害が発生しています。
一方で、2007年後半から、メキシコ市以外の地方都市での邦人被害が急増し、08年は、年間で41件と、メキシコ市における邦人被害総数を上回ることとなりました。また、日本からの旅行者が多く被害に遭ったハリスコ州、キンタナ・ロー州の他、バハ・カリフォルニア州等アメリカ合衆国との国境を有する北部州などでの被害が目立っています。
各州ごとの発生状況は次のとおりです。
メキシコ市
バハ・カリフォルニア州
ハリスコ州
キンタナ・ロー州
アグアスカリエンテス州
ベラクルス州
タマウリパス州
グアナフアト州
ヌエボ・レオン州 |
34件
8件
7件
6件
3件
3件
3件
2件
2件 |
前年比-9件、被害全体の45%)
(同 +5件)
(同 +2件)
(同 ±0件)
(同 ±0件)
(同 +3件)
(同 +2件)
(同 +2件)
(同 -2件) |
以下、イダルゴ州、モレーロス州、ゲレロ州、プエブラ州、タバスコ州、チアパス州、各1件
州間長距離バス移動中被害 1件
(2)場所形態別発生状況
被害場所の形態別では、侵入盗(空き巣、夜間忍込み)等の増加の影響を受け自宅(駐車場含む)における被害が増加しました。
その他、路上、駐車場等の屋外での強盗・窃盗の被害、長距離バスの移動中の窃盗被害、バスターミナルでのスリ・置引き、メキシコシティ地下鉄内でのスリ被害も依然多発しています。
被害場所形態ごとの発生状況は次のとおりです。
路上、駐車場等屋外
自宅(駐車場含む)
地下鉄(構内含む)
長距離バス(ターミナル含む)
ホテル内
空港
レストラン、バー等飲食店内
その他商店等屋内 |
31件
16件
10件
5件
4件
2件
1件
6件 |
(前年比-3件)
(同 +4件)
(同 -4件)
(同 -3件)
(同 -3件)
(同 -1件)
(同 -1件)
(同 -3件) |
5.犯罪手口別の傾向
05年以来となる邦人が被害者となる殺人事件が発生しました。
在留邦人宅への空き巣、忍込み等の侵入盗の被害、地方都市での車上狙い、置き引き等の被害が増加しました。
強盗被害は10件。そのうちの7件がピストル、ナイフ等の凶器を用いて行われました。
その他、「オレオレ詐欺」「大使館の名を語った詐欺」など新たな手口の詐欺についても確認されました。
犯罪手口別の発生状況は次のとおりです。
殺人
誘拐(未遂)
強盗
うち、持凶器強盗
窃盗
うち、侵入盗(ホテル含む)
スリ
車上ねらい
置引き
ひったくり
その他
詐欺
暴行・傷害
横領 |
1件
0件
10件
7件
57件
17件
15件
11件
10件
2件
2件
4件
2件
1件 |
(前年比+1件)
(前年比±0件)
(同 -4件)
(同 -3件)
(同 -3件)
(同 +3件)
(同 +3件)
(同 +4件)
(同 +3件)
(同 -3件)
(同 +5件)
(同 -1件)
(同 +1件)
(同 +1件) |
6.被害者別の傾向
犯罪被害の地方拡散傾向の影響を受け、地方在住の在留邦人の被害が増加しました。また、旅行者の被害が大きく減少しました。
被害者別の発生状況は次のとおりです。
旅行者
在留邦人
留学生
出張者
その他(企業等)
|
28件
37件
5件
2件
3件
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(前年比-13件)
(同 +1件)
(同 ±0件)
(同 +1件)
(同 +3件) |
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