メキシコ政治情勢2014年4月

 
 

メキシコ政治情勢(4月)

 

 

〈概要〉


内政では、4日、全国選挙機関評議員の人事が連邦下院議会で承認された。29日、連邦経済競争改正法案が可決され、官報掲載のため連邦政府に送られた。30日、大統領府よりエネルギー改革関連2次法案が提出された。同日、春期通常国会が閉幕した。
外交では、2日から3日にかけ、ペニャ・ニエト大統領がホンジュラス、パナマを訪問した。10日、ペニャ・ニエト大統領は国賓として来墨中のオランド仏大統領と会談した。13日、MIKTA外相会合が開催された。29日及び30日、第3回メキシコ・カリコムサミット、第6回カリブ諸国連合サミットがそれぞれ開催された。

 

〈内政〉

 

1. クアウテモック・グティエレス・デラトーレPRI連邦区代表の解任

2日、制度的革命党(PRI)は、同党の連邦区(DF)代表、グティエレス・デラトーレを売春組織運営に関与した疑惑により解任した。

 

2. 全国選挙機関(INE)評議員の任命

4日、連邦下院議会は連邦選挙機関(IFE)に替わる全国選挙機関の評議員11名の人事を、賛成417票、反対41票、棄権4票で承認した。評議員の議席を巡るPRI、国民行動党(PAN)、民主革命党(PRD)の交渉後、コルドバ前IFE評議員を議長とする11名の評議員が選ばれた。コルドバ議長は、PRI、PRD、緑の党からの支持を受けていた。また、PRDが推薦したメキシコ自治大学(UNAM)で教鞭を執る日系人シロ・ムラヤマ氏も評議員に選出された。11名の政党別割当ては、PRI5名、PAN3名、PRD3名となっている。

 

3. 連邦経済競争法案

29日、連邦下院は連邦経済競争法の改革法を賛成408票、反対58票、棄権7票で可決した。同法は、2月19日に連邦政府から送付されたものであり、3月25日に連邦下院でいったん可決されたものが、4月25日に連邦上院にて44の修正案とともに可決、再送付されていたものである。今般の可決を受け、同法は官報掲載のため連邦政府に送られた。


【主なポイント】

(1)経済成長、競争、消費者の豊かさの拡大という目的を達成するために、連邦経済競争委員会(Comision Federal de Competencia Economica:Cofece)に以下の役割、また権能が付与される。
(2)同委員会は、自由経済競争への障害を取り除くための対策を命じることができ、また、競争への障害をなくす観点から「主要な財」へのアクセス規制、経済主体の資産、権利及び株式の必要な割合での解体などを決定する権能を持つ。
(3)同委員会は、裁判所の判断、または大統領もしくは検察庁による要請を踏まえ、独占を巡る刑法上の捜査を開始する権能を有する。経済主体へ監査訪問を実施し、調査対象者を召還し、供述を求めることができる。また監査に関連する書類、資料、電子データなどの提示を要求することができる。同委員会は、その権限を効果的に遂行するために、必要となる警察力並びに他のあらゆる公権力に支援を要請することができる。
(4)同委員会は、6ヶ月以内に、その権限を遂行するための規則を交付しなければなら
ず、その規則において、次の項目を説明しなければならない。また、規則の交付のためには、同委員会がその効果を保証できる場合、もしくは緊急を要する場合を除き、公聴会を実施しなければならない。
(ア)罰金の規定、(イ)寡占的行為、(ウ)経済主体による市場の実質的支配力の定義(poder sustancial)、(エ)主なマーケットの権利規定、(オ)自由競争への障害、(カ)「主要な財」、(キ)経済主体の資産、権利及び株式の解体
(5)罰則の強化
(ア)連邦刑法254条2項を改正し、罰則を強化。
(イ)254条2項1を追加、同委員会による監査訪問を妨害した際の罰則を規定。

 

4. エネルギー改革関連2次法案

30日、連邦政府はエネルギー改革関連2次法案を連邦下院議会に提出した。同法案には、8つの新法(炭化水素法、電気産業法、地熱エネルギー法、炭化水素セクターにおける環境保護と国家産業安全庁法、メキシコ石油公社(Pemex)法、電力庁(CFE)法、エネルギー分野規制調整組織法、炭素水素歳入法、開発と安全のためのメキシコ石油基金法)、および13の法改正(外国投資法、マイニング法、官民提携法、国家水法、公的機関法、公共セクターによるサービス・リース・調達法、公共事業関係サービス法、連邦公共行政機関法、連邦権利法、連邦調整法、連邦予算財政責任法、公的債務一般法)が含まれている。


【主なポイント(報道ベース)】
(1)炭化水素関係
(ア)国内・外国の民間企業は炭化水素エネルギーの探査・生産・加工・輸送・貯蔵に参加することができる。
(イ)すべての炭化水素関係の契約は公共入札を通じて行われる。
(ウ)民間業者との契約は、利益や産物の共有形式および生産のためのライセンス形式を含んでいる。
(エ)ガソリンの販売は2018年に向けて段階的に解放される。
(オ)石炭採掘について既にコンセッションを受けている業者は、石炭と共に生産される天然ガス開発を別途のライセンスを受けることなく行うことができる。


(2)電力関係
(ア)民間の発電業者を認める。
(イ)全国の電気資源の分配を良好にするために国家エネルギー・コントロールセンターを設立する。
(ウ)大消費者は,電気の供給について民間発電業社と市場で契約することができる。


(3)地熱発電
地熱発電のための地熱開発規制枠をつくる。


(4)環境保護
炭化水素セクターの活動や施設成立の際、環境保護と操業の安全について監督する。


(5)Pemex、CFE関係
(ア)これらの機関は、予算関係の国家の直接介入から離れ、操業、管理についての自治を得る。
(イ)Pemexの現在の2つの会社(探査・生産会社と加工会社)を1つにまとめる。
(ウ)Pemex、CFEともに民間企業と同様の経営部を持ち、Pemexに関しては、労働組合は理事会から外される。


(6)規制
(ア)国家炭化水素委員会は、炭化水素の探査生産のための契約の促進、入札、契約署名を担当する。
(イ)エネルギー規制委員会は、石油、天然ガス、LPガスの輸送、貯蔵、分配、液化、圧縮、一般への販売の有効な開発を規制、促進する。
(ウ)規制機関の透明性を確保するため、規制機関の理事は規制対象の企業代表の参加を伴っている場合のみ会合を開き、会議の記録は公表される。


(7)税制
(ア)Pemexの納税システムは変更され、課税は即現在の79%、10年後の65%にまで削減される。
(イ)利益や産物を共有するタイプの契約では、操業利益の中での割合を規定して民間業者も探査契約料金、ロイヤリティなどを支払う。
(ウ)ライセンスのタイプの契約では、探査の段階では契約料、契約署名にあたってはロイヤリティとボーナス、さらには操業利益または契約額に基づく一定の割合を公課に支払う。


(8)開発と安定のためのメキシコ石油基金
(ア)炭化水素生産の契約や企業の指定にあたり、支払いや受け取りのための手段として基金をつくる。
(イ)利回りをあげるために、基金は資金を運用する。
(ウ)基金は、政府の裁量資金として、技術開発や社会支出、ユニバーサル年金などに投資する。


(9)その他特記事項
(ア)2025年までに、すべての契約においてナショナル・コンテンツの平均25%以上を目指す。
(イ)PemexとCFEは100%国家が所有する国営企業となる。
(ウ)Pemexの供給パイプラインとCFEの送電ネットワークの管理は、新たに創設される国家天然ガス管理センター(Centro Nacional de control del Gas Natural)と国家エネルギー管理センター(Centro Nacional de Control de Energia)が行う。
(エ)国境付近の油井を開発する企業はPemexと提携しなければならず、Pemexは最低20%の参加を確保する。
(オ)民間事業者は大規模事業者及びCFEに対して売電を認められる。他方、個人住宅、商業、中小企業に対しては、CFEが連邦政府の定める安価な価格で電力を供給する。

 

5. 通常国会閉幕

30日、連邦上院議会、下院議会ともに春期通常国会を閉幕した。これによって、政治・選挙改革、通信改革、エネルギー改革の関連二次法案の審議は臨時国会に持ち越された。

 

6. 人事(国家安全機構秘書官の任命)

29日、上院議会は賛成91票、棄権2票でホルヘ・カルロス・ウルタド・バルデス氏を国家公安機構秘書官に任命する人事を承認した。ルビド現国家治安コミッショナーの後任人事となる。同氏は、カンペチェ州知事等の要職を歴任、前職では内務省の内部統制局長を務めていた。

 

7. 治安情勢(ヘスス・レイナ前ミチョアカン州知事の身柄拘束)

4日、連邦検察庁は、犯罪組織「テンプル騎士団」との関与疑惑から、ヘスス・レイナ前ミチョアカン州知事の身柄を拘束した。

 

〈外交〉


1.ペニャ・ニエト大統領のホンジュラス、パナマ訪問
2日~3日、ペニャ・ニエト大統領はホンジュラス、パナマを訪問した。


(1)ホンジュラス
(ア)エルナンデス大統領との会談後の記者会見で、ペニャ・ニエト大統領は、二国間の経済関係強化の必要性につき一致した旨述べた。
(イ)移民問題に関しては、米国に入国するためにメキシコを通過するホンジュラス国民が適切にホンジュラス政府による領事サービスやメキシコ政府の支援を受けられるようなメカニズムを創設する旨述べた。また、治安問題に関するハイレベル対話を創設する事で一致した旨述べた。
(ウ)観光、技術革新、エネルギー分野等も今後の協力のテーマとなる旨述べた。
(エ)二国間会談においてエルナンデス大統領は、二国間関係再構築の意向を表明した。
(オ)会談に先立ちペニャ・ニエト大統領はコマヤグア市の鍵、名誉市民証授与式に出席した。会談後は両国外相による共同宣言署名に続き昼食会が行われた。


(2)パナマ
(ア)ペニャ・ニエト大統領はマルティネリ大統領とともに二国間FTAに署名した。ペニャ・ニエト大統領は、本FTAはパナマの太平洋同盟メンバー国入りに向けた大きな前進であり、両国国民に裨益するものでもある旨述べ、マルティネリ大統領は、パナマの太平洋同盟メンバー国入りへのメキシコの支援に謝意を表明した。
(イ)両国保健担当省間の薬品に関する協力協定、両国観光担当省間の覚書が署名された。
(ウ)またペニャ・ニエト大統領は、第9回世界経済フォーラム・ラテンアメリカ地域会合に出席した。第10回会合は2015年にメキシコで開催される。

 

2.墨仏首脳会談
10日、ペニャ・ニエト大統領は、国賓として訪墨中のオランド仏大統領と会談を行った。
(1)ペニャ・ニエト大統領発言
(ア)墨仏の「再会(reencuentro)」を果たし協力関係を拡大させるという両国の意思が合致し、二国間関係を推進する新たな好機が訪れている。
(イ)首脳会談では、率直かつ建設的な議論が行われた。
(ウ)オランド大統領からの、レジオンドヌール大十字勲章授与に謝意を表する。また、メキシコからは同大統領にアギラアステカ勲章を授与した。


(2)オランド大統領発言
(ア)首脳会談では、二国間パートナーシップの今後の方向性について一致した。今後は経済関係の更なる強化が課題。二国間委員会が様々な具体的プロジェクトを提案したところ。
(イ)文化面では、2016年にパリでメキシコに関する大型展覧会を行う予定。
(ウ)アギラアステカ勲章授与に謝意を表明。ペニャ・ニエト大統領に、2015年革命記念日の訪仏を招待する。
(エ)来年フランスで開催される気候関連の国際会議への、メキシコの支持に謝意を表明。


(3)記者会見後、両首脳は共同声明に署名し、また以下の文書の署名に立ち会った。(なお、報道によれば42の合意文書に署名した由)
(ア)墨内務省・仏外務省、内務省間の墨国家軍警察創設にむけた協力にかかる覚書
(イ)両国外務省間の両国地方自治体の国際活動支援に関する協定
(ウ)原子力平和利用に関する協力協定
(エ)墨経済省と仏外務省間の航空分野での協力に関する覚書
(オ)高等教育機関での単位、学位、在学期間の相互認定協定
(カ)墨農地・都市開発省と仏担当省間の持続可能な都市開発に関する協力協定
(キ)PEMEXとGDF Suez間のMOU
(ク)PEMEXとTotal間のMOU
(ケ)墨社会保険庁とパリ公共医療サービス間の技術協力に関する枠組み合意
(コ)墨国家科学技術審議会と仏国立科学研究センター間の協力協定
(サ)墨国立自治大学とパリアカデミー間の協力協定
(シ)SafranとInterjet間の協定

 

3.MIKTA外相会合
13日、メキシコ市において、メキシコ、インドネシア、韓国、トルコ、豪州(MIKTA)外相会合が開催された。墨外務省プレスリリースの概要は次のとおり。
(1)ミード外相、ナタレガワ・インドネシア外相、尹・韓国外交部長官、ダウトオール・トルコ外相、ビショップ豪外相は、13日から二日間の日程で外相会合を行い、国際政治情勢、ポスト2015開発目標、サイバーセキュリティ、気候変動、人権、移民、国連安保理改革などについて意見交換を行った。
(2)5カ国は世界経済の上位20位に入り、強固な民主主義国として、世界情勢に建設的で責任ある仲介者として貢献できる国々である。第一回会合は2013年9月にNYで行われ、その際、G20と国連総会の機会を利用し年2回会合を行うことが合意され、また、メキシコが初年の調整役となり、今回の外相会合を開催することが合意された。
(3)この5カ国のグループは、メキシコを国際社会における責任あるアクターとする、というペニャ・ニエト政権の目標に沿うものである。

 

4.メキシコ・カリコムサミット カリブ諸国連合サミット
29日及び30日、ユカタン州メリダにおいて第3回メキシコ・カリコムサミット、第6回カリブ諸国連合サミットがそれぞれ開催された。
(1)第3回メキシコ・カリコムサミット
(ア)開会式におけるペニャ・ニエト大統領発言
(a)本会合に合わせて、科学技術協力プログラム2014-2015を発表する。右はスペイン語教師の養成、統計、起業支援、疾病対策を含む。
(b)メソアメリカ・カリブインフラ基金を通じメキシコはカリブ諸国の自然災害対策として1400万ドルの支援を行う。
(c)メキシコは米大陸農業協力機構(IICA)との間で、カリブ諸国の農業研修を強化する合意を締結した。
(d)メキシコもカリブ諸国の一つであり、地域の発展の牽引役としての役割を果たしていく。


(イ)開会式におけるスチュアート・バルバドス首相発言
(a)メキシコの自然災害対策支援発表を歓迎。メキシコ・カリコム間の協力は、南南協力の例として重要。
(b)今次会合は、カリブ諸国連合、OAS、国連、CELAC等の国際場裏でメキシコとカリブ諸国の連携を模索する上で重要。また、G20におけるメキシコの参加は、カリブ諸国の声を広めていくために重要。


(ウ)開会式におけるラロック・カリコム事務局長発言
メキシコとカリブ諸国の協力の歴史は長く、教育、自然災害分野で成果を上げてきた。農業分野での協力は、食料安全保障の観点からも重要。


(エ)閉会式におけるペニャ・ニエト大統領発言
(a)マルチ外交分野では、気候変動、食料安全保障、ポスト2015開発アジェンダにおける共通ポジションの調整を拡大することや、人権分野での協力強化を合意した。

 

(2)第6回カリブ諸国連合サミット
(ア)開会式におけるペニャ・ニエト大統領発言
(a)カリブ地域における協力として、カリブ諸国のグローバル位置情報イニシアティブへの参加促進が考えられる。このプロジェクトでは参加国への必要設備の寄付と450万ドルの投資が見込まれる。
(b)またカリブ地域情報システムの創設が考えられる。これにより災害対策が向上する。
(c)また通関手続き簡素化による物流の促進が考えられる。
(d)さらに、カリブ諸国間の短距離海運のコネクティビティ向上が考えられる。

 

(3)第6回カリブ諸国連合サミットの機会を活用して、「トゥクストラ対話と調整メカニズム」第14回サミットが開催され、ペニャ・ニエト大統領が議長を務めた他ベリーズ、コロンビア、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、パナマ、ドミニカ共和国から代表が参加した。
会合では、ハイレベル対話、民主主義促進、共通課題に向けた協力の面で次回会合に向けたアジェンダの整理が行われた。
また、メキシコとグアテマラ間で天然ガス輸送に関する共同研究設立に向けた覚書が署名された。

 

(4)第6回カリブ諸国連合サミット共同宣言(メリダ宣言)概要
(a)ラテンアメリカ地域における大カリブ地域の重要性を強調
(b)カリブ諸国の直面する、開発、気候変動などの問題の重要性を認識
(c)包摂的で均衡のとれた地域開発を志向
(d)カリブ諸国連合の20年の成果を歓迎
(e)第5回サミット共同宣言(ペシオンビル宣言)の尊重
(f)国連憲章の尊重
(g)米国の対キューバ経済措置解除を呼びかけ
(h)あらゆる種類のテロ行為を非難
(i)災害対策、コネクティビティ、貿易、持続可能な観光産業の重要性を強調
(j)文化遺産、教育、科学技術分野での協力の重要性を強調
(k)カリブ海の環境保全の重要性を強調
(l)ペシオンビル・アクションプランの成果を歓迎
(m)同アクションプランの継続的促進
(n)メキシコによる4つのイニシアティブを歓迎(上記2参照)
(o)カリブ持続可能な観光圏設立条約の発効を歓迎
(p)メンバー国間で持続可能な開発に関する戦略・手法を話し合う会議の開催を呼びかけ
(q)カリブ諸国連合、航空運輸国際協会(IATA)、ラテンアメリカ航空運輸協会(ALTA)、カリブ観光機構(CTO)の勧告する行動の実践を支援
(r)コネクティビティ向上に向けた研究の重要性を認識
(s)パナマ運河100周年に祝意表明
(t)カリブ諸国連合内での協力の推進のためのフォーラムの開催を呼びかけ
(u)マルティニーク、グアドループ、セント・マーチンの加盟を歓迎
(v)メンバー国に負担金の支払い遵守を呼びかけ
(w)CELACの活動を歓迎
(x)他の地域統合機関との協力する意思を確認
(y)ベネズエラとの連帯を表明、民主主義、法治国家、人権、自由の重要性を強調、国内対話を支援

 

 

 


 
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