〈概要〉
内政では、6日、連邦上院にてエネルギー改革関連二次法案が可決され、成立。11日、同関連二次法案はペニャ・ニエト大統領により署名、公布された。13日、ホアキン・コルドウェル・エネルギー相はラウンド・ゼロ及びラウンド・ワンの結果を発表した。22日、連邦警察憲兵部門の運用が開始された。
外交では、1日、ミード外相はティファナ-サン・ディエゴ間の米墨国境地帯を視察し、両国の移民当局及び税関当局の関係者と会談を行った。7日、ペニャ・ニエト大統領は、サントス・コロンビア大統領の二期目就任式に出席した。11日、アゼベドWTO事務局長が、ペニャ・ニエト大統領を表敬訪問した。15日、テキサス州政府が同州とメキシコの国境地帯に同州国境警備隊を展開する決定を下したことに対し、メキシコ政府は断固たる抗議の意を示した。25日~26日、ペニャ・ニエト大統領はカリフォルニア州を訪問し、ブラウン・カリフォルニア州知事、ロサンゼルス市長、サクラメント市長らと会談した。
〈内政〉
1 エネルギー改革関連二次法案の成立
6日に連邦上院にてエネルギー改革関連二次法案が可決され、成立した。11日、同関連二次法案はペニャ・ニエト大統領により署名、公布された。
(1)エネルギー改革関連二次法案の構成
本改革関連法案は、9の新規立法と、12の法改正から成るものであり、6つの細則案に分けて審議された。その内容は以下のとおりである。(なお、新法、新規立法の区分については、上下院のプレスリリースによるもの。)
(ア)細則案1
炭化水素法(Ley de Hidrocarburos:新法)
外国投資法(Ley de Inversion Extranjera:改正)
鉱物法(Ley Minera:改正)
官民パートナーシップ法(Ley de Asociaciones Publicas Privadas:改正)
(イ)細則案2
電気産業法(Ley de la Industria Electrica:新法)
地熱エネルギー法(Ley de Energia Geotermica:新法)
国家水資源法(Ley de Aguas Nacionales:改正)
(ウ)細則案3
メキシコ石油公社法(Ley de Petroleros Mexicanos(通称:PEMEX法):新法)
連邦電力公社法(Ley de la Comision Federal de Electricidad(通称:CFE法):新法)
連邦国家機関法(Ley Federal de las Entidades Paraestatales:改正)
公共セクターにおける購入・リース・サービスに関する法(Ley de Adquisiones, Arrendamientos y Servicios del Sector Publico:改正)
公共事業及び公共サービス法(Ley de Obras Publicas y Servicios Relacionados con las Mismas:改正)
(エ)細則案4
エネルギーに関する規制機関法(Ley de los Organos Reguladores Coordinados en Materia Energetica:新法)
国家産業安全機関及び炭化水素セクターにおける環境保護法(Ley de la Agencia Nacional de Seguridad Industrial y de Proteccion al Medio Ambiente del Sector Hidrocarburos:新法)
連邦行政基本法(Ley Organica de la Administracion Publica Federal:改正)
(オ)細則案5(下院先議)
炭化水素に関する収入法(Ley de Ingresos sobre Hidrocarburos:新法)
安定と開発のためのメキシコ石油基金法(Ley del Fondo Mexicano del Petroleo para la Estabilizacion y el Desarrollo:新法)
連邦関税法(Ley Federal de Derechos:改正)
財政調整法(Ley de Coordinacion Fiscal:改正)
(カ)細則案6(下院先議)
連邦予算・財政責任法(Ley Federal de Presupuesto y Responsabilidad Hacendaria:改正)
公債法(Ley General de Deuda Publica:改正)
(2)大統領による署名式
11日、上下両院議長、PRI及びPAN党首の出席の下、ペニャ・ニエト大統領による署名式が行われた。主な発言は以下の通り。
(ア)大統領発言趣旨
(a)エネルギー改革関連二次法案は、PEMEX、CFE、地下炭化水素資源の帰属が国家にあることを再度確認するものであり、同時に、天然資源を有効活用する目的を果たすために、投資への扉を開くものである。
(b)新しく制定される法律によって、メキシコ国家は外部依存を減らし、エネルギー戦略における独立性を保証することになる。また、消費者に対し、より安価なエネルギーを提供することが可能になる。
(c)最も重要なことは、この改革が、全てのメキシコの家庭に具体的な利益を与えることである。一般家庭向けの電気料金、ガス料金が値下がり、また、中小企業向け料金も値下がりすることによって、それらの企業はより高い競争力を身につけることができるであろう。
(d)この改革は、未来の世代にも利益をもたらす。なぜならば、エネルギーセクターにおける雇用を生み出すからである。
(e)また、この改革はグリーンエネルギー(注;原文のまま(Energias verdes))にも利益をもたらし、国家が気候変動に取り組み、自然環境を保護することにも寄与する。そして、再生エネルギーの使用を促進するものである。
(イ)カマチョPRI党首発言趣旨
(a)2014年8月11日は、国家の長い歴史上、記念すべき日となった。
(b)10数年前より、メキシコは経済成長のリズムを失った。この世界では、歩みを止めた者は後退する。惰性を打ち破り、成長への歩みを進めるためには、そのための条件を整える必要があった。
(c)連邦議会における反対勢力の存在が、この改革を成し遂げるための障害となった。しかし、PRIは政権を取り戻し、党内に存在した意見の多様性が、より競争力があり、より繁栄した国家を作り上げるために共同して取り組んでいく原動力となった。
(d)この改革を成し遂げる複雑なプロセスにおいて、連邦議会は決定的な役割を果たした。連邦議員達は、1917年から今日にかけて、最も重要な改革を成し遂げたと言えよう。
(ウ)マデロPAN党首発言趣旨
(a)合意によって生まれる成果、政治の成熟、我々の民主主義の能力を祝福しよう。
(b)私たちは「メキシコのための協約」によって、政治、教育、財政、労働、経済競争、通信改革の分野において、メキシコの歴史の中でも最も改革に取り組む期間を過ごしてきた。そして、今日、エネルギー改革を成し遂げた。このエネルギー改革によって、メキシコは経済的、政治的、社会的発展のためのポテンシャルを手に入れた。
(c)今日公布されたエネルギー改革によって、メキシコは長年にわたり否定してきた大いなる可能性を手に入れる。このエネルギー改革は、エネルギーセクターの新しい時代を開くだけではなく、私たちの国にとっても新しい時代を開くものである。これはメキシコの勝利である。そして、この改革のイニシアティブはPANから始まったものであることを付言したい。
(3)エネルギー改革関連二次法案の概要
(ア)PEMEXとCFE
PEMEXの76年間に渡る石油・天然ガスセクターにおける独占、CFEの54年に亘る電気セクターにおける独占に終止符が打たれる。PEMEXとCFEはこれまでの国有企業から、「生産的国有企業(empresa productiva del Estado)」に代わり、エネルギーセクターにおいて国内及び海外の民間企業と競合することになる。
(イ)炭化水素
(a)国内及び海外の民間企業は、炭化水素の探査・採掘にサービス契約、利益契約、生産物分与契約、ライセンス契約を通して参加することが可能となる。
(b)これら契約は、石油セクターの調整役を担う国家炭化水素委員会(Comision Nacional de Hidrocarburos:CNH)が実施する入札競争によって結ばれる。
(c)国家炭化水素委員会には、炭化水素の探査・採掘計画を承認する権能が与えられる。
(d)エネルギー省は、石油の加工、精製、天然ガスの加工、炭化水素及び石油精製品の輸出・輸入を規制し、それを行うための許可を与える権能が与えられる。
(e)炭化水素の探査・採掘に占めるローカルコンテントは、2015年、平均で25パーセント以上でなければならない。この数値は、2025年までに段階的に35パーセントまで引き上げられる。
(f)エネルギー省は、国境地帯にある油田が発見される可能性のある契約のうち少なくとも20%以上、PEMEX及び「生産的国有企業」が参加できるよう保証する。炭化水素の存在が確証された場合、メキシコ政府が署名している国際契約が適用される。
(g)投資家たちは、石油が採掘される土地の所有者に対し、石油採掘から得られる収入の0.5%から2%を支払わなければならない。また、天然ガスの商業化が可能な土地の所有者に対しては、0.5%から3%を支払わなければならない。
(h)自然保護地域に関しては、炭化水素採掘の許可は与えられない。
(i)連邦政府は、報告書の偽造や未提出、事業計画の不履行、法的根拠のないまま182日間の事業停止及び重大な事故を起こした企業に対し、その契約を無効にすることができる。
(j)連邦政府は、PEMEXとCFEが翌年度の契約内容を修正することを条件に、両企業の負債の一部を引き受けることができる。
(ウ)メキシコ石油基金(Fondo Mexicano del Petroleo)
メキシコ石油基金が創設され、税金を除いた石油産業による収益を受け取り、右を運営する。
(4)今後の予定
エネルギー改革関連二次法案の官報掲載、公布を受け、メキシコのエネルギー政策は歴史的転換期を迎えたが、今後の予定は以下の通りである。
(ア)2014年11月9日
(a)メキシコ石油基金の運営委員の任命(大蔵公債相、エネルギー相、メキシコ中央銀行総裁と4名の独立した候補者から構成される)。
(b)PEMEXとCFEの新しい協議会が構成される。
(イ)2015年1月1日
現在実施されている毎月のガソリン価格の値上げが凍結され、その後は、インフラに応じ、大蔵公債省がガソリン価格を決める。
(ウ)2015年2月7日
炭化水素法、エネルギー規制委員会、国家炭化水素委員会の規則が発表され、実際の操業に関する細かい規定が定められる。
(エ)2015年2月12日
大統領による国家エネルギー管理機関(Centro Nacional de Control de Energia:Cenace)設立のための政令公布期限。
(オ)2015年8月12日
国家ガス管理機関(Centro Nacional de Control de Gas:Cenagas)設立のための政令公布日。
(カ)2016年1月1日
(a)LPガスの輸入が自由化される。
(b)PEMEX以外の企業によるガソリンスタンドの運営が解禁。
(キ)2017年1月1日
(a)ガソリンの輸入が自由化される。
(b)LPガスの価格が自由化される。
(ク)2018年1月1日
大蔵公債省によるガソリンの価格統制が廃止され、市場による自由競争が開始される。
2 ラウンド・ゼロの発表
13日、ホアキン・コルドウェル・エネルギー相はラウンド・ゼロ及びラウンド・ワ
ンの結果を発表した。ラウンド・ゼロとは国内外の民間資本に対しコンセッション形式などで採掘権を開放する前に、メキシコ石油公社(PEMEX)に対し、特定の鉱区の継続的な採掘権を与えるものである。ラウンド・ワンは、民間企業の一般入札が可能な鉱区を定めるものである。ラウンド・ゼロの決定にはエネルギー省と共に、国家炭化水素委員会(Comision Nacional de Hidrocarburos)がPEMEXの技術的評価のために参加した。
(1)ラウンド・ゼロの結果概要
(ア)PEMEXに対する2P及び見込み資源(recursos prospectivos)の割当
本年3月21日、PEMEXはエネルギー省に対し、2Pと呼ばれる採掘実現の可能性が50%以上あると考えられる鉱区の83%(205億8,900万バーレル相当の原油が埋蔵されると見込まれる)を申請していた。また、見込み資源と呼ばれる専門的調査から埋蔵が想定される鉱区の31%(348億バーレル相当の原油が埋蔵されると見込まれる)も申請していた。
(イ)エネルギー省はPEMEXの申請に対し、2Pの鉱区に関しては申請鉱区の100%の探査・採掘権を割り当てた。現在のペース、250万バーレル/日で生産を続けると仮定すると、15.5年の生産量に相当する。また見込み資源に関しては申請鉱区の67%の探査・採掘権(221億1,260万バーレルに相当)を割り当てた。これは5年間の生産量に相当することになる。両方を合わせた鉱区の面積はおよそ9万平方キロメートルである。
(2)ラウンド・ワンの結果概要
(ア)ラウンド・ワンによって109の探査プロジェクト、60の採掘プロジェクトの計169ブロックが民間企業に開放される。開発される鉱区の面積は2万8,500平方キロメートルで、そのうち91%は探査のため、残り9%が採掘のためのものである。
(イ)ラウンド・ワンによって入札競争のために開放される2P鉱区と、見込み資源鉱区の原油量は、それぞれ37億8,200万バーレル相当、146億600万バーレル相当と見込まれている。これらのプロジェクトによって、2015年から2018年の間、年間85億2500万ドルの投資が見込まれる。なお、これらプロジェクトの入札は2015年から開始される。
(ウ)ラウンド・ワンに割り当てられた鉱区の探査・採掘に関する一般入札は、PEMEXも他の民間企業と同様に他社との提携を通して参加することができる。
(3)PEMEXと他社の提携
(ア)PEMEXが民間企業と提携し探査・採掘に取り組む10の短期間プロジェクトも併せて発表された。このプロジェクトで開放されるのは2P鉱区(15億5,650万バーレル相当の原油が埋蔵されると見込まれる)と、存在が証明されている埋蔵量と推定埋蔵量を合わせた量を意味する3P鉱区(26億6400万バ-レル相当の原油が埋蔵されると見込まれる)であり、これらのプロジェクトによって、年間平均41億ドルの投資が見込まれている。
(イ)これらのプロジェクトの手続き開始時期は2014年11月が見込まれている。
(ウ)PEMEXは、これらプロジェクトにPEMEXと提携を結び取り組む可能性のある企業として、Chevron社(米国)、Total社(フランス)、 British Petroleum社(英国)、 Shell社(米国)、 Andarko社(米国)、 Eni社(イタリア)、Apache社(米国)の名を挙げている。
3 連邦警察憲兵部門の運用開始
22日、メキシコ連邦警察内に、憲兵部門(DIVISION DE GENDARMERIA)が創設され運用開始をした。
【憲兵隊概要】
(1)フランス等の国家憲兵隊(軍的機能も持つ警察組織)をモデルとして創設された連邦警察7番目の部門であり,メキシコ国内の治安情勢の悪い州に必要とされる期間,必要な人員を派遣し,各州・市警察と協力し治安対策にあたることが任務。
(2)構成
(ア)組織
憲兵隊部門は騎馬隊(UNIDAD DE CABALLERIA),観光地隊(UNIDAD DE PROXIMIDAD TURISTICA),国境警備隊(UNIDAD DE SEGURIDAD FRONTERIZA),社会警備部隊(UNIDAD DE PROXIMIDAD SOCIAL),農村警備隊(UNIDAD DE SEGURIDAD RURAL),特殊部隊(UNIDAD DE OPERACIONES ESPECIALES),反撃部隊(UNIDAD DE REACCION)によって構成される。
(イ)人員
憲兵隊部門の人員は13万人の応募者から選抜された5,000名。そのうち13%が女性。平均年齢は28歳。構成員の67%が高卒又は大卒。
(ウ)教育
構成員はメキシコ国内の専門家のみならず、イタリア、米国、スペインの専門家による指導を含む35科目(1,422時間)の学科及び訓練を修了。軍施設で180時間の軍訓練を受講。
(エ)幹部
幹部は連邦警察の他の部門で職務経験を有する1,450名の応募者から選抜された250名であり,その平均年齢は38歳。そのうち17%が女性。今回選抜された幹部は、連邦警察において少なくとも6年間の管理職経験を有する者たちである。フランス国家憲兵隊及びコロンビア国家警察の専門家による指導を含む1,000時間の養成講座を受講。
(3)ガリンド連邦警察ジェネラル・コミッショナーのコメント
ガリンド連邦警察ジェネラル・コミッショナーは、国内の経済活動に犯罪組織が影響を与えることを阻止するために、25日より憲兵隊を国内の必要箇所に展開することを発表した。とりわけ、メロン、トウモロコシ、サトウキビ、バナナなどの農産物の栽培から出荷、市場での販売までの一連の経済サイクルにおいて、犯罪組織が影響を与えることがないよう保護していく考えを示した。
なおメキシコの農村部において、犯罪組織の恐喝などによって農業活動に影響が出ているという指摘が以前からなされている。
人事
1 PAN下院会派長等の免職及び後任人事
13日、マデロPAN党首は、ビジャレアル(Luis Alberto Villareal)同党下院会派長及びビジャロボス(Jorge Villalobos)同党下院副会派長を免職することを発表、また、その後任として、トレホ(Jose Isabel Trejo)下院議員を同党下院会派長に任命する人事を発表した。
本年1月、ハリスコ州プエルト・バジャルタ市において、他のPAN党員と共に女性テーブルダンサーと契約し、パーティーに興じるビジャレアル同会派長、ビジャロボス同副会派長の姿が映像に撮られ、11日、その映像がインターネット上で広まるというスキャンダルが持ち上がっていた。
マデロ党首は13日夜、ビジャレアル同党元下院会派長の後任にトレホ下院議員が就任する人事を発表した。トレホ新下院会派長は、PANが一丸となって議会活動を行っていけるよう、PAN所属の下院議員全員と面談する考えを示した。また、スキャンダルの発端となったパーティーの支払いに公的資金が使われていなかったかどうかについては、PANが調査を行う可能性を示唆した。
25日、トレホ新下院会派長はビジャロボス元下院副会派長の後任として、トーレス下院議員(Marcelo de Jesus Torres Confino)を任命する人事を発表した。
一部報道では、このスキャンダルによってPANのイメージ低下は避けられないとの指摘がなされており、来年の中間選挙にどのような影響を与えるか注目されている。
2 オアハカ州教育問題対応込コミッショナーの就任
21日、内務省は、モリーナ(Juan Molina Arevalo)・オアハカ州教育問題対応コミッショナー(Alto Comisionado para Asuntos Educativos en el Estado de Oaxaca)を任命した旨発表した。モリーナ・コミッショナーは、客年成立した教育制度改革に反対する教育労働者全国協議会(Coordinadora Nacional de Trabajadores de la Educacion:CNTE)第22セクション(含:全国教員労働組合(Sindicato Nacional de Trabajadores de la Educacion:SNTE所属の一部教員)と、クエ(Gabino Cue Monteagudo)・オアハカ州知事による交渉の調整役を担うこととなる。
【就任までの経緯】
(1)昨年8月に教育制度改革(同年2月に憲法改正発効)の実施法である教育法(Ley General de Educacion)及び全国教育評価庁法(Ley del Instituto Nacional para la Evaluacion de la Educacion)が、同9月教職員法(Ley del Servicio Profesional Docente)が成立。教職員に対する能力評価試験が導入されたことに対し、CNTE等が反発して、授業のボイコットなどを含む抗議活動を実施。多くの州において教員労組の抗議活動が沈静化に向かう中、CNTE第22セクションは、オアハカ市及びメキシコ市で抗議活動を継続している。
(2)教育制度改革の内容に沿った形で各州の教育法が改正されなければならない期限が2014年3月12日に定められていたが、オアハカ州は期限までに同州の教育法を改正せず。これに対し教育省は、憲法違反訴訟(accion de inconstitucionalidad)を連邦最高裁判所に提出。
(3)本年8月9日、CNTEとの関係の深い保護者がオアハカ州教育法改正のためのイニシアティブを州議会へ提出(当館注:オアハカ州法では、労働組合は法案提出は認められておらず、形式上、保護者が提出した)。同イニシアティブにおいては、全国教育評価庁による教員の評価を拒否し、教員自身がその仕事ぶりを評価できるようにすることが盛り込まれていた。
(4)18日、オアハカ州政府は、州政府、州議会、CNTE関係者による会議において、教育制度改革の内容に沿ったものになるよう、CNTE提出のものに18の修正を加えたイニシアティブを作成した。これに対し、CNTEは反発、再度、オリジナルのイニシアティブを州議会へ提出。
(5)一方、19日、ルベン(Ruben Nunos)CNTE第22セクションリーダーはCNTEと、オアハカ州政府、内務省のミランダ(Luis Enrique Miranda Nava)次官との交渉の結果、オアハカ州の11の教師養成学校(Escuelas Normales)の卒業生945名が、教育制度改革によって定められた全国教育評価庁による教員採用試験を受験することなく、オアハカ州教育機関(Instituto Estatal de Educacion Publica de Oaxaca:IEEPO)によって採用されることになった旨発表した。これらの教師は代理教師の身分で採用され、2014年-15年度の小学校の授業を担当することとなり、採用半年後、教員採用試験の代わりに、行政インテリジェンスメカニズム(mecanismo administrativo inteligente)の手順を経て正規採用される予定。ただし、行政インテリジェンスメカニズムがどのようなものなのかはCNTEもIEEPOも説明していない。
(6)連邦上院議会の教育委員会は、IEEPOが教員採用試験を実施することなく教師養成学校の卒業生を採用すると決定したことに対し、憲法によって定められた事項は、交渉によって覆すことのできる性質のものではなく、今回の決定は、教師達が憲法を無視し、自ら法を作る行為であると批判。また、CNTEの要求に譲歩するクエ・オアハカ州知事の弱腰な姿勢も批判した。
(7)21日、オアハカ州議会は、18の修正を加えたイニシアティブ及びCNTEのオリジナルのイニシアティブを、教育法改正プロジェクト委員会に提出。これらイニシアティブは同委員会で審議・採決されたのち、細則案として州議会での審議・採決に回される予定であり、一部報道によると、州議会への送付までには15日前後の時間を有する見込みである。
(8)CNTE第22セクションの抗議活動
CNTE第22セクションは、その要求を押し通すために、オアハカ市においてデモ活動を継続しており、行政機関の包囲や主要道路の封鎖などにより市民生活に支障を及ぼすと同時に、州の経済活動にも悪影響を与えているとの指摘がある。CNTEの抗議活動による影響を前に、21日、オアハカ州の起業家達から成るグループは連邦政府に対し、オアハカ市の秩序を回復するために連邦政府が介入することを要求していた。
また、CNTE第22セクションの特徴としてその暴力性が指摘されている。20日には、オアハカ市にある対立教員労組に対し、CNTE構成員が事務所を襲撃の上放火した事件が発生している。この他、一部報道によると、抗議活動のために占領したオアハカ市内のガソリンスタンドからガソリンを略奪するなどの行為も行われている。
治安情勢
1 殺人件数の減少
14日、ペニャ・ニエト大統領は海軍士官学校卒業式において演説を行い、2014年上半期、殺人件数が2012年同期比26.7%減少した等、治安情勢の改善を強調する発言を行った。
【演説概要】
海軍は、陸軍、連邦検察庁、連邦警察との緊密な連携を行っており、その活動は法治国家の実現において重要なものとなっている。こうした組織的な取組みは、危険な犯罪組織メンバーの逮捕、国内各地の安全向上に成果を挙げている。特に、殺人件数については、2014年上半期に、2012年同期比で26.7%の減少を記録した。これはまた、国民の82%が居住する24州において殺人件数が減少したことを意味する。当然ながら、未だ課題は残されているが、自分(「ペ」大統領)が国民に約束した、暴力の減少と平穏の回復に向けて、我々は着実に前進している。
注:内務省統計によれば、2012年上半期、殺人件数は11,048件であり、2014年上半期には8,101件であったところ、これが26.7%減少という数値の根拠と見られる。他方、ペニャ・ニエト政権発足直後の2013年上半期には、殺人件数は9,523件であったところ、2014年同期比では14.9%減にとどまる点に留意する必要がある。
2 連邦検察庁による所在不明者数の発表
21日、連邦検察庁が2014年7月末時点の所在不明者数を発表した。
【連邦検察庁発表概要】
(1)所在不明者数(2014年7月末時点)
22,322人。
(2)所在不明者の定義
親族等から当局へ届出のあった所在不明の人物。
(3)内訳
12,532人がカルデロン前政権時(2007年12月-2012年11月末日)に届出のあった数、残り9,790人がペニャ・ニエト政権発足(2012年12月)より本年7月末までに届出のあった数。男性が13,442人、女性が6,012人、性別不明者が2,868人。
(4)連邦検察局が挙げる所在不明の原因
(ア)自らの意思で失踪
(イ)家庭問題により失踪
(ウ)何者かによる監禁
(エ)届出のない国内外への移住
(オ)死亡
(カ)何からの犯罪に巻き込まれた可能性
(5)ペニャ・ニエト政権における所在不明者の捜索
ペニャ・ニエト政権はカルデロン前政権より所在不明者26,121人のデータベースを引き継いだ。ペニャ・ニエト政権下においてこのデータベースが精査されたところ、所在不明者の数は29,707人に増加。その後、ペニャ・ニエト政権下における捜索の結果、17,175人の所在が特定された(そのうち16,724人は生存を確認)。所在が特定されていない残り12,532人と、ペニャ・ニエト政権下で新たに届出のあった9,979人を足した数が、今般発表された22,322人の所在不明者数である。
〈外交〉
1 ミード外相の米墨国境地帯訪問
1日、ミード外相はティファナ(メキシコ側)-サン・ディエゴ(アメリカ側)間の米墨国境地帯を視察し、両国の移民当局及び税関当局の関係者と会談を行った。この訪問は、同伴者を伴わない未成年者の不法移民問題が顕著化する中、メキシコ政府及び米国政府、並びカリフォルニア州政府が協力して同問題に対応していくためのフォローアップとして実施された。
2 ペニャ・ニエト大統領のサントス・コロンビア大統領第二期就任式への出席
7日、ペニャ・ニエト大統領は、コロンビアの首都ボゴタを訪問、サントス・コロンビア大統領の第二期就任式へ出席し、両国の友好関係を強調、両国が太平洋同盟の加盟国である点に言及。太平洋同盟が、地域の更なる統合深化を可能とする旨述べた。
3 アゼベドWTO事務局長の訪墨
11日、アゼベドWTO事務局長は、ペニャ・ニエト大統領を表敬訪問。WTOにおけるメキシコの役割や、多角的貿易自由化交渉を加速させるために同機関を強化する必要性等につき意見交換を行った。ペニャ・ニエト大統領からは、9月にWTOにおける交渉が再開された際には、交渉を促進させるためのWTOの提案をメキシコとして支持する旨述べた。また、同事務局長は、エネルギー改革関連二次法に関し、WTOとしても、メキシコ経済の重要な改革となるため、興味を持って見ている旨述べた。
4 テキサス州政府による国境警備隊展開に対するメキシコ政府の抗議
15日、テキサス州政府が同州とメキシコの国境地帯に同州国境警備隊を展開する決定を下したことに対し、メキシコ政府は断固たる抗議の意を示した。メキシコ政府は、テキサス州のこの決断は移民の流入を押しとどめる手段とはならず、これまで構築してきた米墨両政府による対話のルートを閉ざすものであると批判した。
5 アメリカ合衆国国防省のメキシコ渡航注意喚起
15日、アメリカ国防省はメキシコ国内における犯罪組織の活動による治安悪化を理由に、メキシコ国内一部地域への渡航注意喚起を行った。対象となるのは、タマウリパス州、ミチョアカン州(モレリア市、ラサロ・カルデナス市は除く)、コアウイラ州ピエドラス・ネグラ市、ヌエボ・ラレド市、サカテカス州、ナジャリット州、シナロア州国境地帯、チワワ州フアレス市など。在メキシコ米国大使館によると、2014年上半期、メキシコ国内における米国市民の誘拐被害は70件を記録している。
これに対し、メキシコ外務省は同日、ペニャ・ニエト政権の治安政策によりメキシコ国内は治安回復の傾向にあり、2014年上半期の誘拐などの犯罪発生件数は前年比22%減である旨の声明を発表した。
6 ニューメキシコ州アルバカーキ市長の訪墨
18日~20日、リチャード・ベリー・アルバカーキ市長が訪墨した。同市長は、メキシコ市に設立されたニューメキシコ州商業・高等教育センターの開所セレモニーにミード外相らと共に出席した。
7 ペニャ・ニエト大統領のカリフォルニア州訪問
25日~26日、ペニャ・ニエト大統領はカリフォルニア州を訪問し、ブラウン・カリフォルニア州知事、ロサンゼルス市長、サクラメント市長らと会談した。メキシコとカリフォルニア州間の貿易の拡大、カリフォルニア州在住メキシコ人への支援などについて話し合われた。
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