メキシコ政治情勢2014年1月

 
 

メキシコ政治情勢(1月)

 

 

<概要>


内政では,ミチョアカン州における「自警団」の活動が活発となり,武力衝突や市役所占拠が発生したことから,連邦政府が治安の安定化を図るため,対策に着手した。
外交では,2月の太平洋同盟首脳会合に先駆けて外相会合が行われたほか,24年ぶりに伊首相が当地を公式訪問した。また,ペニャ・ニエト大統領は,スイスで行われたダボス会議に出席し,月末にはCELAC及び公式訪問のためキューバを訪れた。

 

 

<クロノロジー>


<内政>


1 ミチョアカン州における治安情勢

4日,犯罪組織「テンプル騎士団」に抵抗する「自警団」が,パラクアロ市役所を占拠し,「テンプル騎士団」との関連が疑われるとの理由により市警察官から銃器を奪取。「自警団」は,犯罪組織が支配するミチョアカン州の治安を回復するため,他の地域へ活動を拡大する旨を表明した。

 

9日,「テンプル騎士団」と思われる武装集団が,クアトロ・カミーノス市とアパツィンガン市を結ぶ幹線道路において,強奪したトラックを放火し道路を封鎖するなどして,「自警団」の活動拡大に対抗した。

 

10日,約200名の「自警団」が約40台の車両に乗車し,「テンプル騎士団」の拠点とされるアパツィンガン市から22km地点のパラクアロ市アヌトゥネス地域を占拠。


12日,100台以上の車両に乗車した「自警団」が,ヌエバ・イタリア市へ進攻,テンプル騎士団との銃撃戦の末,同市役所を占拠し,市警察官から銃器を奪取した。


13日,バジェホ州知事は,同州に対する連邦政府主導の治安対策に合意した。主な対策は,治安が悪化している地域に対する連邦政府による直接的な治安コントロール,「自警団」員の警察官への登用,州警察学校学生に対する奨学金支給,検察大学院創設及び卒業者の連邦検察庁又は州検察庁への採用等が含まれる。


14日,約6000名の陸海軍及び連邦警察人員がアパツィンガン市及びウルアパン市で治安維持及び武装解除活動を開始。同州に隣接するゲレロ州,ケレタロ州,コリマ州,ハリスコ州,グアナファト州との州境付近をはじめとする州内各地において,約1万人体制で活動を実施。


15日,連邦政府は,ミチョアカン州の治安対策及び社会安定を目的とする「ミチョアカンの治安及び統合開発のための委員会(Comisionado para la Seguridad y el Desarrollo Integral de Michoacan)」を設立する旨の大統領令を公布した。オソリオ内相は,同委員会コミッショナーにカスティージョ(Alfredo Castillo)連邦消費者検察庁(Profeco)長官を任命した。


20日,オソリオ内相は,ミチョアカン州に隣接するコリマ州,ゲレロ州,ハリスコ州,メキシコ州,グアナファト州及びケレタロ州の各州知事と会合を行った。同会合において,連邦政府及び各州知事は,ミチョアカン州における治安情勢の悪化が各州に飛び火しないよう,合同で予防及び防衛行動を行うことで合意した。


27日,連邦政府,州政府及び「自警団」は,①「自警団」を,「地方警備隊(Cuerpos de Defensa Rurales)」として,公的な存在と認める,②各コミュニティ保護のため,「自警団」は法の定める要件を満たし,市議会の合意を得ることにより,市警察の構成員となることができる,③「自警団」は,現在所持あるいは携帯する銃器を国防省に登録することが義務づけられる等,「自警団」を法制度の枠内に位置付け,公的な地位を付与することを目的とする8つの合意に署名した。

 

2 金融改革法案への署名

9日,ペニャ・ニエト大統領は金融改革法案に署名した。署名式において,ペニャ・ニエト大統領は,同改革の目的の一つは,開発銀行による融資額を引き上げ,公共事業を推進し,農地,輸出を強化し,国内企業の生産プロジェクトを支援することである,と述べた。

 

3 第22回アジア太平洋議員フォーラム(APPF)総会の開催

12~15日,ハリスコ州において第22回APPF総会が開催された。開会式において,セルバンテス連邦上院議長は,貿易,教育,環境保護及び治安の分野においてアジア太平洋地域の国々とのつながり及び合意を強化していくことが重要である旨指摘した。また,総会においては,麻薬組織,犯罪組織及びテロリズムの関連性について強調し,域内での協力を強化する必要性を訴えた。また,各国におけるミレニアム開発目標の達成状況についても議論された。(なお,我が国から中曽根元外相を団長とする議員団が出席し,ミード外相との会談も行った。)

 

4 誘拐対策国家計画の発表

28日,内務省は,誘拐対策国家計画を発表した。同時に,各機関及び州政府との調整を図る国家誘拐犯罪対策調整官にサレス(Renato Sales)連邦検察庁(PGR)地域統制担当副長官を指名した。新たな誘拐犯罪対策の戦略は,①すべての誘拐対策チーム関係者は,PGR,連邦警察及び国家安全調査局(CISEN)の合同プロセスにより評価・育成・認定される,②各州の誘拐対策ユニットとPGR誘拐対策ユニット及び国家公安委員会の方針に統一する,③各州誘拐対策チームに必要なIT機材を供与する,④誘拐に関する全国犯罪データベースが含まれる情報分析システムを単一化させる,⑤各州政府の誘拐対策の予算執行が調整されるようにする,⑥遅くとも3月までに誘拐に関する市民対応の画一された方法を策定し実行する,⑦誘拐対策ユニットのすべての関係者の行動及び活動につき随時評価する,⑧誘拐犯罪のための特別な高セキュリティの刑務所モデルを創設する(携帯電話を使用して外部と接触し,犯罪に加担し続けることを避けるもの。),⑨誘拐被害者及びその家族に総合的な支援を行うための犯罪被害者対応プログラムを強化させる,⑩すべての行動は誘拐対策国家調整局を通じた評価・フォローアッププログラムの対象となる。

 

5 「国家再生運動(MORENA)」の政党登録申請

30日,「国家再生運動」のバトレス(Martí Batres)代表は,連邦選挙機関(IFE)に政党登録を申請した。申請後の会見において,「メキシコのための協約」に対する批判を述べつつ,真の野党として,異なる計画を推進する政党としての位置付けを示した。

 

6 政治・選挙制度改革のための憲法改正への署名


31日,政治・選挙制度改革のための憲法改正署名式が行われた。同署名式には,「メキシコのための協約」からの脱退を表明した民主革命党(以下PRD)党首は出席しなかった。今次憲法改正により,連邦選挙機関(IFE)に代わり国家選挙機関(INE)が新設され,連邦議会議員等の連続再選が可能となる。また,PGRは2018年から連邦検察総局となり,独立機関となる。

 

 

<外交>


1 太平洋同盟外相会合の開催
9日,メキシコ大使・総領事会議の機会に合わせ,太平洋同盟加盟4ヶ国の外相が会合を行った。同会合は,2月にコロンビアで開催予定の同首脳会合に向けての準備会合であった。関税枠撤廃,自由な人の移動,アジア地域や第三国とのつながり,インフラ開発,中小企業の促進について確認した。

 

2 レッタ伊外相の訪墨

12~14日,レッタ首相が訪墨,13日にはペニャ・ニエト大統領と首脳会談を行った。会談において,ペニャ・ニエト大統領は24年振りの伊首相訪問の重要性を指摘,今後数年間でメキシコ経済はさらなる成長を遂げる潜在力があり,イタリアとは投資・貿易の機会拡大が期待され,二国間関係は,首脳レベルだけではなく,二国間の経済評議会を通じても強化されていくだろうと述べた。他方レッタ首相は,メキシコの将来への期待を示し,メキシコ-EU間のEPAの改正・強化が重要であり,イタリアは右プロセスを支援していく,また,2015年ミラノ万博の機会のペニャ・ニエト大統領イタリア訪問を招待した。

 

3 ペニャ・ニエト大統領のダボス会議出席

23~24日にスイスで開催された世界経済フォーラムに出席したペニャ・ニエト大統領は,昨年メキシコで可決された種々の改革の成果について披露した。また,治安情勢について質問されたのに対し,ペニャ・ニエト大統領は,治安問題はメキシコだけが抱える問題ではなく,連邦政府は新たな治安戦略に着手したと述べた。また,治安対策については様々な挑戦があるが,現政権発足以来殺人数は減少傾向にあると強調した。また,同会議期間中,シスコ・システム社,ネスレ社及びペプシコ社がメキシコに対し合計73億5,000ドルの投資を行うことを発表した。

 

4 ミード外相のエルナンデス新ホンジュラス大統領就任式典出席

27日,ミード外相はエルナンデス新ホンジュラス大統領の就任式典に出席のため,同地を訪問した。就任式典の後,ミード外相はエルナンデス新大統領に対し,ペニャ・ニエト大統領からの祝辞を伝達するとともに,メキシコへの公式訪問,また4月にユカタン州メリダ市で開催される第6回カリブ諸国連合首脳会合及び12月にベラクルス州で開催される第24回イベロアメリカ・サミットへの出席を招請した。

 

5 ペニャ・ニエト大統領の第2回CELAC首脳会合出席及びキューバ訪問

28日~29日,ペニャ・ニエト大統領はCELAC首脳会合出席及び公式訪問のためキューバを訪問した。CELAC首脳会合において,ペニャ・ニエト大統領は,ラテンアメリカ・カリブ地域の生産性,競争力向上,経済統合,包摂的な経済発展を推進するために,CELACにおいてより建設的な対話を行うことを呼びかけた。また,メキシコ国内における包摂的経済成長政策の例として,飢餓撲滅キャンペーン(Cruzada Nacional Contra el Hambre)を紹介。その他,教育,財政,自由競争,電気通信,エネルギー分野での各種改革につき披露した。さらに同会合の枠組で,オルテガ・ニカラグア大統領,ペレス・モリーナ・グアテマラ大統領,フェルナンデス亜大統領,ルセーフ伯大統領,コレア・エクアドル大統領,ゴンサルベス・セントビンセント及びグレナディーン諸島首相,ウマラ・ペルー大統領,サントス・コロンビア大統領,ピニェラ・チリ大統領,バチェレ次期チリ大統領とそれぞれ会談を行った。


また,29日のキューバ公式訪問では,ラウル・カストロ国家評議会議長及びフィデル・カストロ前議長との会談を行った。ラウル・カストロ議長との会談において,ペニャ・ニエト大統領はキューバにおける経済社会モデルの近代化プロセスへの支持を表明,メキシコで対キューバ投資への関心が高まっている旨述べた。また,カリブ諸国連合首脳会合,イベロアメリカ・サミットへの招待を改めて伝達した。

 


 
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