メキシコ政治情勢(1月)

 
 

メキシコ政治情勢(1月)

 

〈概要〉

 内政では,4日,ペニャ・ニエト大統領は国民向けの年始挨拶において,国民生活の改善に向けた7つのアクションプランを発表した。9日,ペニャ・ニエト大統領は,第26回メキシコ大使・総領事会議において演説を行い,2015年の優先目標5つを発表した。20日,ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙WEB版は,ペニャ・ニエト大統領と企業の癒着疑惑に関する記事を掲載した。20日,マデロ前国民行動党(PAN)党首が,党首職に復職する旨発表した。22日,オソリオ内相は,カスティージョ「ミチョアカンの治安及び統合開発のための委員会」コミッショナーの離任を発表した。27日,ムリージョ連邦検察庁長官とセロン犯罪捜査庁長官が会見を開き,アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件に関し被害者学生が全て殺害されたと結論づける発表を行った。30日,2015年の歳出削減策が公表された。

外交では,6日,訪米中のペニャ・ニエト大統領がオバマ大統領と会談を行った。19日,ミード外相は,効果的な開発協力に関するグローバル・パートナーシップ会合を,オランダ及びマラウイと共催するため,ハーグを訪問した。20日,ミード外相はドイツを訪問し,シュタインマイヤー外相と会談した。21日,グアハルド経済相,ルイス=マシュー観光相が,ダボス会議に出席した。22日,ミード外相はモラレス大統領就任式に出席するため,ボリビアを訪問した。28~29日,ミード外相はコスタリカを訪問,第3回CELAC首脳会合に出席した。

 

〈内政〉

 

1.ペニャ・ニエト大統領の年始挨拶

1月4日,ペニャ・ニエト大統領は国営放送において国民向けの年始挨拶を行い,国民生活の改善に向けた7つのアクションプランを発表した。なお,基本的には,同発表は新施策を表明するものではなく,構造改革及び昨年11月に発表された治安対策パッケージの内容を,一般家庭の便益の観点から再構成したもの。

 

【ペニャ・ニエト大統領年始挨拶概要】

(1)2014年は対照的な1年であった。国家の発展を促進するために設計された11の構造改革を成し遂げ,メキシコが変革に取り組んだ年であった。大型インフラの整備が開始され,社会プログラムの改善、拡大も図られた。これらは一般家庭にとって非常に重要なことであり,数十万の正規雇用が創出された。しかし,2014年はメキシコにとって非常に困難な年でもあった。犯罪組織による暴力が改めて国家に打撃を与えた。我々は苦しみ,憤慨,怒りを感じている。正義が要求され,より高い透明性が要求された。

(2)これら良い側面と負の側面は,メキシコ国家が現状に留まってはならず,より良い国家へと引き続き変革していく必要があるという教訓を与えるものであった。

(3)2015年,我々には一体性,高潔さ,チームワークと根気が求められる。気力を取り戻し,信頼,希望を回復する時である。

(4)2015年,政権にとって最も重要なことは,本年がメキシコの一般家庭にとって良い年になることである。そのために,本年をメキシコ一般家庭の家計に利する7つのアクションと共に開始する。

(5)メキシコ大統領として断固たる決意で,揺るぎない,明確な針路を持って,改革を引き続き実行していく。我々が着手した変革は,長年メキシコが行ってきた変革の中でも最も深いものである。このような重要な変革には当然,障害また抵抗が伴うが,我々の前に立ちはだかる困難にもかかわらず,我々メキシコ人は,より偉大なメキシコの利益のためにそれぞれにとっての最善を尽くしていく。自分(ペニャ・ニエト大統領)には,汚職,無処罰の問題に立ち向かい,透明性を強化していく確固たるコミットメントがある。より民衆の近くに立ち,人々の必要性に耳を傾け,共に解決策を導き出していく所存である。

 

【7つのアクションプラン】

(1)エネルギー改革により,2015年初より,メキシコ全土で一般家庭用及び商業用の電気料金が低下する。

(2)税制改革により,この5年間で初めて,ガソリン,ディーゼル及びLPガス料金の月毎の継続的な値上がりに終止符が打たれる。

(3)通信改革により,長距離電話料金が廃止され,全ての国内通話がローカル通話の料金となる。この結果,電話会社からのメキシコ人への請求額が,年間200億ペソ以上減少。

(4)低所得の1,000万世帯以上を対象に,デジタルテレビ(セットトップ・ボックス)が無料配布される。

(5)メキシコの若者が新たな成功の道を歩み,それを実現できるよう,今月,メキシコの若手起業家促進プログラムを開始する。財政改革により,18歳~30歳までの若者で,新たにビジネスを始めたい者,または既存のビジネスをさらに拡大したい者向けの支援が実施される。

(6)より多くの家庭が良質な住宅を保有できるよう,住宅開発を促進していく。今月,住宅開発を促進するための財政・金融パッケージを発表する予定で,経済の活性化にもつながることが期待される。

(7)本年1月1日より,チアパス,ゲレロ,オアハカの各州における農業・牧畜セクターには,特別税制が適用される。雇用(創出),発展,繁栄はメキシコ全土に浸透しなければならないが,今日,南部地方には遅れが見られ,追加的支援を必要としている。以上の理由から,近々,テウアンテペック地峡,ラサロカルデナス港に隣接するミチョアカン州及びゲレロ州の各自治体,チアパス港周辺の3地域を,経済活動を活性化し雇用を創出するための経済特区とする。

 

2.サン・ルイス・ポトシ州ソレダ・デ・グラシアノ・サンチェス市前市長の逮捕

 1月6日,連邦検察庁のセロン犯罪捜査庁(AIC)長官は会見を開き,サン・ルイス・ポトシ州ソレダ・デ・グラシアノ・サンチェス市(注:州都サン・ルイス・ポトシ市に隣接)のホセ・リカルド・ガジャルド・カルドナ前市長を,犯罪組織との関与,公金横領及びマネーロンダリングの容疑で逮捕した旨公表した。

(1)1月6日,連邦検察庁のセロンAIC長官は会見を開き,サン・ルイス・ポトシ州ソレダ・デ・グラシアノ・サンチェス市のホセ・リカルド・ガジャルド・カルドナ前市長を,犯罪組織との関与,公金2億ペソの横領及びマネーロンダリングの容疑で逮捕したことを公表した。同前市長はソノラ州エルモシージョ刑務所に収監された。

(2)セロンAIC長官の説明によると,2012年10月の市長就任から2014年8月までに,ガジャルド前市長は横領した公金2億ペソの大部分を医療会社Wong SA de CV社に送金し,同社にガジャルド前市長が所有する複数の会社,及びガジャルド前市長の親族,友人名義の口座に送金させるという方法で資金洗浄を行っていた。また,ガジャルド前市長は複数の米国企業の株主でもあるところ,連邦検察庁は該当米国企業への送金が行われていないか捜査を続けている。

(3)会見においてセロンAIC長官は,ガジャルド前市長の犯罪組織との関与については詳細を述べなかったが,横領された公金が犯罪組織の資金として流れていないかどうかを含め,連邦検察長は引き続き捜査中である旨説明した。

(4)ガジャルド前市長は2012年の同市長選に民主革命党(PRD)から立候補し当選。本年1月2日,本年6月に実施される同州知事選にPRDからの立候補の公認を得るために,市長職休職を申し出ていた。

(5)PRDは,アヨチィナパ教員養成学校襲撃事件において,同党が擁立したアバルカ前イグアラ市長と犯罪組織との関与が明るみに出たことを契機に,候補者の擁立に際し,犯罪組織との関与の有無等、法的,倫理的に候補者として擁立するに適した人物か,事前の身辺調査の実施を決定しており,ガジャルド前市長の身辺調査のために,連邦検察庁に対しガジャルド前市長の犯罪組織「ロス・セタス」との関与の可能性に関し捜査を依頼していた。

(6)今般の逮捕を受け,PRDの中央執行部は,ガジャルド前市長を擁立した党の責任として,連邦検察庁の今後の捜査に全面的に協力すると述べると同時に,ガジャルド前市長に対し厳格に法を適用すること,また捜査の進捗等,本事件に関する情報を国民に公表することを求めた。

 

3.第26回メキシコ大使・総領事会議におけるペニャ・ニエト大統領発言

 1月9日,ペニャ・ニエト大統領は,第26回メキシコ大使・総領事会議において演説を行い,2015年の優先目標5つを表明した。

(1)メキシコは明確な指針を有しており,政府はいかなる障害によってもその進むべき道及び目標から遠ざかることがないよう,決意をもって取り組む姿勢を有している。

(2)メキシコ社会保険庁(IMSS)によれば,2014年には,経済アナリストの想定を超える,71.4万もの雇用がフォーマルセクターにおいて生み出された。この増加は2013年に記録された増加を54パーセント上回り,1年に及ぶ経済危機後の回復ないし反動ではない。さらに,2014年12月の消費者信頼感指数(CCI)は,前年同月比で4.3パーセント増を記録した。これらの変数の動向は構造改革の指針が正しいことを示唆している。

(3)メキシコは,これまで多くの国々が長年成し遂げられなかった構造改革を数か月で実現した。他方,2014年は国民生活の発展に寄与した年としても記憶されることになるだろう。

(4)メキシコ政府の2015年の優先的な目標を以下5つ設定する。

(ア)州統一警察の設置や地方自治体による組織的犯罪への関与を防ぐための改革等を含む,昨年11月27日に発表した治安対策パッケージを通じて,法及び人権の尊重を強化。

(イ)構造改革の便益がメキシコ人の一般生活,とりわけ家計において感じられるよう,引き続き諸改革の施行を推し進める。これは,長距離通話料金制度の廃止,電気料金の削減,2015年のガソリン代引き上げの凍結によって,既に実行に移されている。

(ウ)透明性を拡大,汚職に対処するためのツールを改善。

(エ)インフラ及び住宅建設を加速。より多くの家族が持家を取得できるよう,良質な住宅の建設を加速化していく。その一環として,数日中に住宅建設への支援プログラムを発表する予定。

(オ)貧困,地域格差に対する措置を強化。メキシコは一体として全ての地域が成長し,均等な機会を享受しなくてはならない。また,社会的な発展に遅れが見られる全ての地域が,繁栄と開発の国としてのメキシコに組み込まれることを確保するため,諸政策が既に発表され,これからも発表される予定。この観点から,チアパス州,ゲレロ州及びオアハカ州が他の地域と平等な開発機会を享受できるよう,3つの経済特区が設置される。その他の重要な政策として,若手起業家等への広範な支援プログラムの推進がある。

(5)これら全ての政策は,懸念や提案等,社会の声に耳を傾けながら,全てのメキシコ人家庭の便益を向上させるという目的に沿って,実施していく所存である。

(6)また,どのような場合にあっても,マクロ経済の安定及び財政政策の健全性には注意を払う。

(7)2015年は連邦レベルの選挙の年でもあり,政府は選挙制度にかかる法的枠組みを遵守し,選挙が民主主義の原則に照らして何の問題もなく実施されるよう,その権限において国家選挙機関(INE)や各地方選挙機関を支援する。この選挙は,初めて立候補者の半数が女性となり,男女平等の観点から歴史的なものとなる。

(8)在外公館長には,メキシコと世界の対話,歩み寄り,相互理解の橋渡しを担う存在となっていただきたい。2015年には,メキシコへの疑念や歪んだイメージを払しょくするため,真実であり客観的な「メキシコ」のイメージを広めていくことを依頼する。メキシコは,世界の全ての国々と同様,固有の課題を抱えているが,メキシコ人はこれらの課題を放棄することなく,力強く克服していくだろう。

 

4.ペニャ・ニエト大統領と企業との癒着疑惑

1月20日,ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙WEB版は,ペニャ・ニエト大統領と企業の癒着疑惑に関する記事を掲載したところ,同概要は以下のとおり。

(1)ペニャ・ニエト大統領は,2005年にメキシコ州知事に就任した数週間後,メキシコ州イスタパン・デ・ラ・サル市のゴルフ・リゾートに別荘を購入した。同別荘を販売したサン・ロマン氏(Roberto San Roman Widerkehr)は,その後,建設会社を立ち上げて,ペニャ・ニエト知事(当時)の在任期間である2005~11年の間に,1億ドル以上の公共事業を受注した人物である。また,サン・ロマン氏の会社は,これまで他州での事業経験がなかったが,ペニャ・ニエトが大統領に就任した2012年以降,連邦レベルの事業を既に11件受注している。これに対して,大統領府広報官は,個人取引と同社の契約受注には関係がないと主張しており,サン・ロマン一族は当紙の質問に応えていない。なお,ロベルト・サン・ロマン氏は既に他界している。

(2)本件は,ペニャ・ニエト政権を揺るがせている利益誘導疑惑を引き起こした,メキシコ州における政治家と企業家の根深い個人的関係を示す新たなケースである。ペニャ・ニエト大統領は,昨年11月,大統領夫人がメキシコ州の著名な企業家であるイノホサ氏(Juan Armando Hinojosa)より豪邸を購入したことが報じられて以来,追求に晒されている。その後,ビデガライ大蔵公債相(注:2005~09年にメキシコ州財政立案運営庁長官)も,イノホサ氏から融資を受けて自宅を購入していたことが明らかになった。イノホサ氏は,ペニャ・ニエト州知事時代に,数億ドル相当の公共事業を受注した人物である。なお,ペニャ・ニエト大統領は自身の資産を公開しており,そこにはイスタパン・デ・ラ・サルの別荘が含まれていたが,これまで誰が販売したのか明らかになっていなかった。

(3)サンチェス大統領広報官は,大統領は同別荘を市場価格の37万2千ドルで購入しており,利益相反の問題は存在せず,また,大統領とサン・ロマン家の関係は過去数十年まで遡ると述べている。1940年代,ロベルト・サン・ロマン氏の父親が連邦政府の契約を受注して以来,サン・ロマン一族は,スパリゾートであるイスタパン・デ・ラ・サルの開発で中心的な役割を担ってきた。また,サン・ロマン家は長年にわたり制度的革命党(PRI)幹部と密接な関係を築いてきた。例えば,デル・マソ元メキシコ州知事(注:通称アトラコムルコ・グループの創設者と見られる人物の息子)は,ペニャ・ニエト大統領と親戚関係にある人物であるが,同元知事はサン・ロマン家が所有する不動産会社において,一時期株主となっていたことが確認されている。なお,2010年のペニャ・ニエト大統領の結婚式にも,サン・ロマン家の者が参加している。

 

5.アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件に係る連邦検察庁の会見 

 1月27日,ムリージョ連邦検察庁長官とセロンAIC長官が会見を開き,アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件に係る連邦検察庁による捜査の進捗を,26分にわたる映像資料を用いながら公表した。なお,被害者学生が全て殺害された旨連邦検察庁が断定したのは今回がはじめてである。

(映像資料はhttp://www.pgr.gob.mx/prensa/2007/bol15/Ene/b01715.shtmより観覧可)。

(1)1月27日,ムリージョ連邦検察庁長官とセロンAIC長官が会見を開き,身元が判明している1名と同様に,アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件で行方不明となっている他42名に関しても,イグアラ市に隣接するコクラ市のゴミ捨て場で殺害され,その遺体は焼却されたと結論付ける連邦検察庁による捜査の進捗を,26分にわたる映像資料を用いながら公表した。

(2)セロンAIC長官は,1月15日に逮捕されたフェリペ・ロドリゲス・サルガド,通称「セピージョ」容疑者の証言が捜査の進捗のための重要な手がかりになったと述べた。「セピージョ」容疑者は,犯罪組織「ゲレロス・ウニードス」のイグアラ市地区におけるリーダーであり,コクラ市警察,同市治安当局と共謀し,麻薬密売等を取り仕切っていた。「セピージョ」容疑者の証言は,すでに逮捕されている他容疑者の証言と同様のものであり,その証言によると,犯罪組織「ゲレロス・ウニードス」の構成員たちは,イグアラ市及びコクラ市警察が捕獲したアヨチィナパ教員養成学校生徒を,イグアラ市に隣接するコクラ市のゴミ置き場にて引き受け,同地にて殺害,その遺体を焼却した。焼却された遺体の灰は,翌日,証拠隠滅のためにサン・フアン川に廃棄された。「セピージョ」容疑者は犯行の動機として,教員養成学校の生徒を敵対する犯罪組織「ロス・ロホス」の構成員と見なしていたためと証言している。

(3)セロンAIC長官は,本事件に関連し27日までに99名を逮捕しており,それら逮捕者による386件の証言,及び2度の犯行現場の実況見分,さらに487件の専門家による科学調査により,行方不明となっている他42名に関しても,コクラ市のゴミ置き場で殺害し,遺体を焼却したという「セピージョ」容疑者の証言は,科学的に裏付けできるものであると結論づけた。なお,コクラ市のゴミ置き場及びサン・フアン川の岸辺で採取した17体の遺骨のうち,身元が判明した1体を除く他16体については,オーストリアのインスブルック大学法医学研究所で引き続きDNA鑑定が行われている旨説明した。

(4)本会見を受け,被害者生徒家族グループのフェリペ・デ・ラ・クルス・スポークスマンは,連邦検察庁の発表は科学的証拠に乏しい内容であり,連邦検察庁は本事件の捜査を終わらせようとしていると批判,被害者生徒家族グループは連邦検察庁による本結論を拒絶する旨述べた。

 

6.2015年歳出削減策の発表

1月30日,メキシコ政府は昨年後半から続く原油価格の下落に伴い,2015年の歳出削減策を公表した。なお,メキシコ政府は本年の政府歳入予算の策定にあたり,原油取引価格に対して保険を掛けているため歳入額全体に問題は生じないと説明しているが,当該保険金の入金は年末になることから,その間の歳入不足に対応するための予防的措置としている。

(1)2015年における連邦政府の歳出削減総額は1,243億ペソ(約9,800億円)にのぼることが示された。これは,GDPの0.7%に相当するもので,削減額の中にはPEMEX(メキシコ石油公社)やCFE(連邦電力庁)などの公共機関や国営企業に関する歳出額が含まれている。

(2)この歳出削減により,政府が今後予定しているインフラ投資計画のうち,ユカタン半島の鉄道建設プロジェクトの中止及びメキシコ市とケレタロ市を結ぶ高速旅客鉄道建設の無期延期が示された。なお,メキシコ市の新国際空港建設プロジェクトと道路建設プロジェクトは予定通り実施するとしている。

(3)組織別の予算削減額としては、PEMEXが620億ペソで最大となり,以下,通信運輸省(118億ペソ),CFE(100億ペソ)と続いた。なお,現時点においてはPEMEX及びCFEの投資計画について,中止又は延期に関する公式発表はなされていない。

 

〈人事〉

 

1.国民行動党党首の交替

1月20日,マデロ前国民行動党(PAN)党首は,党首職に復職する旨発表した。

(1)20日,昨年9月30日にPAN党首を休職したマデロ前党首(Gustavo Enrique Madero Muños)は,同党党首に復職する旨を発表した。これに伴い,アナヤ党首は連邦下院議会PAN会派長に,トレホ連邦下院議会PAN会派長は同党幹事長に就任する旨発表された。マデロ前党首は,本年実施される連邦下院議会選挙に立候補するべく休職する旨明らかにしていたところ,12日,同党執行委員会において同党比例候補者の選出が行われ,同名簿1位をマデロ前党首が確保して連邦下院議員当選を固めたところ,近く復職する可能性があると見られていた。20日,マデロ前党首は,政治的コミットメントを継続するべく復職することとした,なお,アナヤ党首を連邦下院議会会派長に任命するが,これは同党所属下院議員との協議の結果決定したものである等述べた。また,アナヤ党首は,連邦下院議会会派長として,全国汚職対策システム実現を最重点課題として取り組みたい等述べた。

(2)上記に対して,20日,ロサノ上院議員(PAN)は,19日に同党所属議員の連名により,マデロ前党首の復職に反対する書簡を党執行部に送付した旨を明らかにした。同議員は,同前党首が党を個人的な目的のために利用していると非難しており,その復職に反対しているのは,カルデロン前大統領派だけではなく,ルッフォ上院議員等30名以上の議員に上ると述べた。

 

2.カスティージョ「ミチョアカンの治安及び統合開発のための委員会」コミッショナーの離任

1月22日,オソリオ内相は,カスティージョ「ミチョアカンの治安及び統合開発のための委員会」コミッショナーの離任を発表。後任として,グローラ将軍(Felipe Gurrola Ramírez)が「ミチョアカンの治安のための特別指揮官(mando especial de seguridad para Michoacán)」に任命された。

(1)オソリオ内相は,ミチョアカン州における連邦軍による治安オペレーションの評価を行う,ハラ・ミチョアカン州暫定知事との会合において,カスティージョ・コミッショナーの離任を発表した。

(2)カスティージョ・コミッショナーの離任に関し,本年実施されるミチョアカン州知事選挙を巡り,野党候補者から同コミッショナーの離任を求める声が上がっており,オソリオ内相は今回の同コミッショナーの離任の理由を,選挙プロセスを尊重すると同時に,同コミッショナーの離任が選挙戦の焦点として利用されないためである旨説明した。

(3)カスティージョ・コミッショナーの後任として,グローラ将軍が「ミチョアカンの治安のための特別指揮者」として任命された。グローラ将軍はセディージョ政権下(1994-2000年)において,セルバンテス国防次官の補佐官を務めた経歴を持つ犯罪組織対策のエキスパートであり,今後,ミチョアカン州政府及びミチョアカン州の各自治体と連携しながら,同州に展開されている6,000人以上の連邦軍の指示を執ることとなる。

 

〈治安〉

 

1.ミチョアカン州アパツィンガン市庁舎における軍及び連邦警察と武装集団との衝突

1月6日,昨年12月22日以来麻薬密輸組織関係者と見られる武装集団に占拠されていたミチョアカン州アパツィンガン市庁舎に,軍及び連邦警察が突入。11名が死亡,44名が逮捕された。

 

2.ミチョアカン州における軍人襲撃・殺害事件

 1月23日,ミチョアカン州エクアンドゥレロ市を警戒中であった軍人が武装集団に襲撃され,2名が死亡,2名が怪我を負う事件が発生した。なお,軍人を襲撃した武装集団は逃走している。

 

〈外交〉

 

1.米墨首脳会談

 1月6日,訪米中のペニャ・ニエト大統領がオバマ大統領と会談を行ったところ,墨大統領府プレスリリース概要は以下のとおり。

(1)両首脳は,治安問題,司法問題,移民問題に関する優先順位の高い課題について議論を行ったほか,経済,競争力,教育等のテーマについても対話を行った。また,地域の将来的な課題に対処するための戦略的視点をもって,具体的な進展を通じて,より一層強固な関係を構築するという両政府のコミットメントを再確認した。

(2)オバマ大統領が発表した移民問題に関する行政的措置については,可能な限り多くのメキシコ人移民が便益を受けるよう,一連の協力・調整を行うことに合意。ペニャ・ニエト大統領は,移民問題に関する米国の内部手続を遵守する姿勢を強調するとともに,メキシコは,(総)領事館ネットワークを通じて,本件につき米国と協力し課題に対処していく用意がある旨述べた。

(3)また,競争力強化,学術交流及び21世紀に適した人材育成を推進すべく,「高等教育・研究・イノベーションに関する二国間フォーラム」(FOBESII),「ハイレベル経済対話」(DEAN)における2014年の進捗及び2015年の目標を発表した。

(4)両国にとって重要なプレゼンスを有する企業において職業実習を行う学生の数を増大させることを目的とした,「墨米職業実習プログラム」創設にかかるLOIに署名した。なお,同プログラムは,FOBESIIが始動して以降(注:2013年5月のオバマ大統領訪墨の際に両首脳間で設立に合意)初の教育に関する施策となる。

(5)2013年11月に開始された二国間領事協議の成果として,両首脳は,領事担当職員の交流にかかる覚書に署名。これにより,領事担当職員の墨外務省-米国務省間の相互出向が可能となる。緊急対応・危機管理,暴力犯罪被害者への対応,未成年の人身売買の事前予防策といった分野に,優先的に配置される。本プログラムの主目的は,両国国籍保有者への対応に関するグッド・プラクティスを共有すること。

(6)両国が有する共同責任の原則に従い,中米における更なる開発を促進するためのコミットメントを強化。エルサルバドル,グアテマラ,ホンジュラスからなる,中米北部三角地帯の繁栄のための連携計画(Plan de la Alianza para la Prosperidad del Triangulo Norte)を推進していくことへの関心が再確認された。また,これら三カ国へのインフラ投資を通じて,開発の機会を創出するためのコミットメントが示された。

(7)ペニャ・ニエト大統領は,キューバ及び米国というメキシコの兄弟国の間の外交関係正常化に向けたラウル・カストロ議長及びオバマ大統領のリーダーシップに賛辞を述べるとともに,これらの措置が地域における繁栄,民主主義の強化,人権の促進に貢献する点を強調した。これに対し,オバマ大統領から,外交関係正常化を促進し,そのための追加的(外交)チェンネルを提供しようというメキシコ政府のコミットメントに謝辞が表明された。

 

2.ミード外相のハーグ訪問

1月19日,ミード外相は,効果的な開発協力に関するグローバル・パートナーシップ会合を,オランダ及びマラウイと共催するため,ハーグを訪問。昨2014年4月にメキシコ市で開催された第1回ハイレベル会合のフォローアップを行った。

そのほか,クーンデルス・オランダ外相と会談を行い,経済貿易関係の強化の必要性で一致するとともに,農業,港湾インフラ,教育,水資源等の分野において協力案件を増加させることで合意。

 

3.ミード外相のドイツ訪問

1月20日,ミード外相はドイツを訪問し,シュタインマイヤー外相と会談。2016年に実施予定の「メキシコにおけるドイツ年」,「ドイツにおけるメキシコ年」に向けた準備状況の確認等を行った。また,二国間の課題を適切にフォローアップするために,墨独二国間委員会を本年中に始動する旨発表。

 

4.グアハルド経済相,ルイス=マシュー観光相のダボス会議出席

1月21日,グアハルド経済相,ルイス=マシュー観光相が,ダボス会議に出席。グアハルド経済相は,今後数年のラテンアメリカの経済成長見通しが低い中,地域のバリューチェーンが重要な役割を果たす旨指摘,貿易障壁を削減し,インフラ及び(地域の)接続性を改善する必要性を強調した。また,石毛JETRO理事長と会談し,2月に予定されているインフラ,エネルギー,自動車関連の日本企業ミッションの訪墨について意見交換を行った。

 

5.ミード外相のエボ・モラレス・ボリビア大統領就任式出席

1月22日,ミード外相は,モラレス・ボリビア大統領就任式(3期目:2015-2020)に出席するため,ボリビアを訪問した。

 

6.ミード外相の第3回CELAC首脳会合出席

 1月28~29日,ミード外相はコスタリカを訪問,第3回CELAC首脳会合に出席したところ,同外相の演説概要は以下のとおり。なお,ペニャ・ニエト大統領は,23日にミチョアカン州において警戒中の軍人2名が襲撃・殺害された事件を理由に本件出席をキャンセルする旨発表していた。

(1)中南米カリブ地域諸国が公共政策に取り組んだ結果,貧困が削減され,強固な中所得者層がダイナミックに広がっている。過去12年間,域内の貧困人口は45%から28%にまで低下,特に極貧人口は22%から11%まで低下している。他方,中所得者層は12%拡大し,域内人口の1/3を占めるまでに至っている。

(2)このように大きな成果は見られたが,残された課題は依然大きい。メキシコ政府は,持続的で競争力に基づく経済成長をもたらす条件を創出することにより,飢餓及び貧困削減に全力で取り組んでいる。この観点から,教育,エネルギー,通信,金融等のセクターにおいて,様々な政治勢力の合意の下に,11の構造改革が実現された意味は大きい。2014年,70万以上の正規雇用が創出されたが,これは対前年比54%の増加である。こうした取り組みにより,メキシコ国民は,より多くのより良い雇用機会にアクセスすることが可能となり,また,住宅,医療,教育等の社会保障ネットの恩恵を得ることが出来るようになっている。

(3)メキシコは,国際場裡において,包摂的開発の推進を強調している。中南米カリブ地域は,多様性という強みを持つ地域であり,対話を促進して,我々の開発目標達成のために相互理解を深めていくべきである。

(4)米キューバ関係は,過去からの転機を意味する画期的な出来事であり,その道程は両国間で決めていくことになるが,メキシコ,そしてCELACは,同プロセスに寄り添っていくことになろう。カストロ・キューバ国家評議会議長が述べたとおり,我々は差異の尊重に基づく,文明的共存という芸術を示していかなければならない。

 

7.北米外相会合

 1月30~31日にかけてミード外相は米国ボストンを訪問し,同地にて北米三カ国外相会合に参加したところ,報道概要取りまとめ以下のとおり。

(1)30~31日にかけて,ミード外相は米国ボストンを訪問し,北米三カ国外相会合に参加した。今次訪問においては,ケリー米国務長官及びベアード加外相(当時)と三カ国にまたがる課題のほか,北米地域の競争力向上のための取り組みを調整するべく議論を行った。この会合を通じて,北米地域の建設的な対話が促進されると共に,域内協力の優先分野と定められている,イノベーション,教育,安全保障,医療,エネルギーの分野での協力が進むことが期待される。

(2)この他,今次会合においては,中米支援,米キューバ関係,米州人権システムの強化の可能性,経済統合,テロとの闘い,パンデミック対策,気候変動等につき議論が行われた。特に対キューバ関係につき,ケリー国務長官は「メキシコは,(対キューバ政策)を支援してくれており,我々は密接に協力しているところ,その役割は重要である。メキシコは,本件につきキューバ当局との対話を開始していると承知しており,大きな貢献が期待できる。」等述べた。これに対して,ミード外相は,米キューバ関係の正常化をメキシコは支持する,これは偉大な決断であり,メキシコのみならず米州地域にとって恩恵をもたらすものである等述べた。

(3)なお,昨年の北米首脳会合はメキシコのトルーカ市で開催されており,本年はカナダで2月に開催予定であったが,ハーパー首相の決定により開催時期は延期されている。

 

 
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