メキシコ政治情勢(1月)

 
 

メキシコ政治情勢(1月)

 

〈概要〉
【内政】
・2日,モレロス州テミスコ市のモタ市長が,自宅で武装集団に銃撃され,殺害される事件が発生した。
・8日,シナロア・カルテル最高幹部ホアキン「エル・チャポ」グスマン容疑者がシナロア州ロスモチス市で再逮捕された。
・11日,ペニャ・ニエト大統領が国営放送において国民向けの年始挨拶を行った。
・13日,当地メキシコ州トルーカ市でオソリオ内相と全国州知事会議による治安対策会議が開催され,統一州警察(Policia Estatal Unica)の創設に係る憲法改正案を促進することで合意した。
・17日,コリマ州知事選の再選挙が実施され,制度的革命党(PRI)-緑の党-新同盟党のホセ・イグナシオ・ペラルタ・サンチェス候補が勝利した。
・29日,連邦区(D.F.)を廃止し,メキシコ市(La Ciudad de México)と呼称する32番目の州と規定する憲法改正の公布式典が開催された。
【外交】
・4日~8日,第27回メキシコ大使会議が開催された,
・14日,ルイス=マシュー外相がペニャ・ニエト大統領の代理として,グアテマラのモラレス大統領及びカブレラ副大統領の就任式典に出席した。
・15日,ペニャ・ニエト大統領はオバマ米大統領と電話会談を行った。
・17日~21日,ペニャ・ニエト大統領がサウジアラビア(17日),アラブ首長国連邦(18日~19日),クウェート(20日),カタール(21日)の中東諸国を何れも国賓として訪問した。
・22日,ペニャ・ニエト大統領は世界経済フォーラム(WEF)年次総会に出席するためにスイス・ダボスを訪問した。
・25~26日,ユカタン州メリダ市ペオン・コントレラス劇場において,「知識経済とイノベーションにおける女性に関する第1回国際会議」が開催された。
・27日,ペニャ・ニエト大統領はエクアドルを訪問し,第4回CELAC首脳会合に出席したほか,グアテマラ,パナマ及びコスタリカ大統領と首脳会談を行った。
・29日,ルイス=マシュー墨外相は加ケベックシティーを訪問し,ケリー米国務長官,ディオン加外相との北米外相会談に出席した。

 

〈内政〉
1,ペニャ・ニエト大統領の年始挨拶
11日,ペニャ・ニエト大統領は国営放送において概要以下の通り国民向けの年始挨拶を行った。
(1)2016年を新たな熱情と最良の目的を持って始めよう。連邦政府は引き続きメキシコの変革に取り組んでいく。メキシコが有するポテンシャルを解き放つことを阻害する困難,障害を取り除いてきた連邦政府は,メキシコ人ひとりひとりが成功の物語を記せるよう,新しい地平線に向けた道を開拓していく。
(2)現政権前半の3年間,同期間における比較において歴代政権の中でも最も多いフォーマルセクターの仕事が創出された。外国投資額は記録的な額に達しており,メキシコはラテンアメリカ経済の主要な牽引国へと変貌を遂げている。2015年,失業率は低下し,インフレ率は歴史上最も低い数値となった。この低いインフレ率は,ガソリン価格の継続的引き上げの終了及び国内長距離電話料金の廃止,また,電気,電話,インターネット料金の値下げという構造改革のもたらした恩恵が反映された結果である。このような前進によって,我々は2016年を活力と前向きな姿勢で開始することが可能である。
(3)世界で最も捜索されていた犯罪者の身柄拘束(注:1月8日に再逮捕されたシナロア・カルテル最高幹部ホアキン「エル・チャポ」グスマンのこと)は,メキシコ国家関係機関の連携能力,治安及び法治国家の強化を証明するものである。この逮捕により,最も重要な犯罪容疑者122名のうち98名は,もはやメキシコ社会の脅威ではなくなった。そして,我々は残り全員の身柄拘束に向け取り組んでいく。
(4)依然取り組まなければならない課題は残されているが,我々はビジョンと決断をもってそれら課題に立ち向かっていく。世界経済における為替及び財政の高いボラティリティにもかかわらず,メキシコ経済は安定し,そして,成長している。構造改革により,我々の国家はこの経済情勢に立ち向かい,それを好機とするための最良の準備が整っている。
(5)本年1月1日より,この24年間で初めて,ガソリン及びディーゼルの価格が低下した。また同日より,一般家庭用,商業施設用,産業用の電気料金も値下がりした。2016年,LICONSA(注:高品質の乳製品の製造・販売を通して、貧困層の生活水準の向上を図るメキシコの国営企業)の牛乳価格は維持され,貧困層の多い地域では値下げされる。また,本年,メキシコ社会保険庁(IMSS)及び国家公務員共済庁(ISSSTE)が管轄する病院では,救急案件の際の待ち時間の縮小,外科プログラム,開業医による診断の実施等を通し,サービスの質の向上を進める。
(6)労働者用国営住宅供給公社(INFONAVIT)は住居購入又は改築のために50万件以上のクレジットを提供する。また,「バラ色の部屋プログラム(Programa Cuarto Rosa)」によって,INFONAVIT権利所有者の住居及び低所得者の住居の増築のために40万の部屋が建設される。
(7)多数の校舎のインフラを整えるための「100点の学校プログラム(Programa Escuelas al Cien)」が本年より新たに開始された。また,来学期より「全国英語プログラム」が開始される。更に,本年中に少なくとも3万人の若者が米国に留学できるよう奨学金及び交換留学が拡充される。また,起業を考える若者は,「繁栄する若者企業家プログラム(Jovenes Emprendedores Prosperando)」及び「若者向けクレジットプログラム(Programa Credito Joven)」から支援を得ることができる。
(8)これらの政策を通し,2016年も我々は,メキシコ国民がより遠くへ,その目標へ到達できるよう,引き続き障害を取り除いていく。我々自身が生み出している可能性に気がつき,その可能性を国民が活用することを望んでいる。

 

2.オソリオ内相と全国州知事会議による治安対策会議
(1)13日,当地メキシコ州トルーカ市でオソリオ内相と全国州知事会議による治安対策会議が開催された。オソリオ内相,同会議に出席した26州知事及びマンセラ・メキシコ市長は,地方自治体の自治権を尊重しながらも,憲法において規定した統一州警察(Policia Estatal Unica)を創設することの重要性を強調,満場一致で統一州警察の創設に係る憲法改正案を促進することで合意した。
(2)全国州知事会議の議長,アビラ・メキシコ州知事は,多くの州においては既に統一州警察の創設に向けた努力が行われてきたが,憲法上に規定された統一州警察の全州での創設を目指すことが,全国州知事会議の公式な立場である旨表明した。
(3)統一州警察の創設は,2014年11月27日,ペニャ・ニエト大統領が発表した治安対策パッケージ10項目のうちの一項目。現在,メキシコには約1,800の市警察が存在しているが,これらは犯罪組織の浸透を受けやすい脆弱な組織であるとみられているところ,これらを州警察に統合するという内容。統一州警察の創設に係る憲法改正に関しては,ペニャ・ニエト大統領が治安対策パッケージを発表してから具体的な進捗は見られていなかったが,本年1月2日にモレロス州テミスコ市のモタ市長が殺害された事件を契機に,グラコ・モレロス州知事が,同州の統一州警察創設に反対の立場にある15自治体の市警察を州政府のコントロール下に置く政令を公布したことを受け,統一州警察の創設に向けた議論が高まりを見せている。

 

3.コリマ州知事選の再選挙
17日,2015年6月7日に実施され,同10月22日,州政府による選挙戦への介入があったとして,連邦最高裁判所に結果を無効とする判決が下されていたコリマ州知事選の再選挙が実施され,得票率43.23%のホセ・イグナシオ・ペラルタ・サンチェス候補(制度的革命党(PRI)-緑の党-新同盟党)が,同39.53%のホルヘ・ルイス・プレシアード候補(国民行動党(PAN))を破って勝利した(注:昨年6月選挙でも,ペラルタ候補がプレシアード候補に勝利する結果だった。)。

 

4.メキシコ市政治改革
29日,メキシコ連邦区を廃止し,メキシコ市(La Ciudad de México)と呼称する32番目の州と規定する憲法改正の公布式典が開催された。なお,本件憲法改正については,29日付官報に掲載,30日に発効済み。
(1)ペニャ・ニエト大統領演説概要
(ア)本日,メキシコ市政治改革の公布により,我々は1824年の憲法制定以来続く議論に終止符を打ち,メキシコ市を自治権を有する存在とすることが出来た。これは数世代にわたる努力の結晶である。また,本件改革は「メキシコのための協約」の成果であり,国家の基本的な事項につき,異なる政治勢力が合意を形成する能力を有することを示したものである。これは対話の勝利であり,またメキシコ市民の勝利である。
(イ)本件改革により,メキシコ市は自治を得ることになる。また,メキシコ市議会は,憲法第124条に基づき,各州議会と同等の権限を有することになる。今後は,市憲法制定のための憲法制定議会を設置することになる。大統領として,憲法制定議会のメンバーには,党派を超えてメキシコ市,そして国家のために取り組むことが出来る,有能な人物を選ぶこととしたい。
(2)マンセラ・メキシコ市長演説概要
メキシコ市そしてメキシコ市民にとって,この歴史的な瞬間を迎えられたことをペニャ・ニエト大統領に感謝したい。今後,メキシコ市は市憲法を制定することになるが,我々は近代的且つ先進的であり,投資,発展,繁栄,教育,医療,不差別に保障を与え,自由を確保する憲法を作り上げていかなければならない。
(3)概要(再掲)
●連邦区(D.F.)を廃止して,メキシコ市(Ciudada de Mexico)と呼称する32番目の州と定め,これは首都として規定される。
●首都であるメキシコ市は,他州とは異なり,連邦政府より教育及び保健にかかる財源支援及び首都財源(Fondo de Capitalidad)を従来通り受け取る。
●メキシコ市憲法の制定
(ア)他州同様に,独自のメキシコ市憲法が制定される。
(イ)同市憲法制定のため憲法制定議会(Asamblea Constituyente)が設立される。右憲法制定議会は,選挙によって選出される60名,連邦上院,下院からそれぞれ14名,大統領任命の6名,メキシコ市長任命の6名から選出される計100名の議員によって構成される。
(ウ)同憲法制定議会議員選出のための選挙は,全国選挙管理機関(INE)の下で実施される。INEは憲法改正が発効後15日以内に憲法制定議会議員選挙の告示を行う。右選挙日は本年6月5日が予定されている。
(エ)メキシコ市憲法は2017年1月31日までに制定され,同年2月5日までに公布されなければならない。
●メキシコ市議会には,他州議会と同様に,憲法改正案に対する議決権,拒否権,連邦議会に対する法案の提出権等の権能が付与される。
●現在の16区(Delegacion)は,他州の市に相当する管轄区域(demarcacion territorial)に,また区長(Jefe de delegacion)はより権限の強い区長(Alcalde)に格上げされる。各区域は区長と10名の議員(Concejales)から構成される区議会によって運営され,区長及び区議会議員は2018年の選挙で選出される。2021年より,16の区は,20以上の区に再区分されることが可能となる。
●憲法76条によって定められている連邦上院議会の専権事項であるメキシコ市長の罷免権及び暫定市長の任命権は廃止される。
●現在,メキシコ市長の提案を受け,大統領が任命しているメキシコ市公共治安長官,同検察長官の任命権は,メキシコ市長に付与される。

 

〈治安〉


1.モレロス州テミスコ市長殺害
(1)2日,モレロス州テミスコ市のモタ(Gisela Mota Ocampo)市長が,自宅で武装集団に銃撃され,殺害される事件が発生した。モタ市長はグラコ同州知事と同じ民主革命党(PRD)選出であり,1日に市長に就任したばかりであった。犯人グループは車で逃走したが,州警察が追跡。州警察は抵抗した容疑者2名を殺害し,未成年者を含む3名を拘束した。容疑者の一人は報酬50万ペソ(約350万円)で殺害を請け負ったと供述した。
(2)モレロス州のグラコ知事はメディアのインタビューに対し,本事件は犯罪組織「ロス・ロホス(Los Rojos)」による犯行である旨説明。ペニャ・ニエト大統領が2014年11月27日に発表した治安対策パッケージに含まれる統一州警察の創設を巡り,モタ市長は犯罪組織より統一州警察創設に反対するよう脅迫されていたと見られている。同市長は1日の市長就任式典において,統一州警察創設に賛成の立場を表明,犯罪組織撲滅に力を入れる決意を強調していた。また,グラコ州知事は,モレロス州には33の自治体があり,その多くの自治体が統一州警察創設に反対するよう,犯罪組織から脅迫されており,州都クエルナバカ市を含む15の自治体が統一州警察創設に反対の立場にある旨説明した。
(3)3日,グラコ州知事は記者会見を開き,モレロス州33の自治体のうち統一州警察創設に反対の立場にある15自治体の市警察を州政府のコントロール下に置く旨,そのために必要となる政令を数時間中に公布する旨述べた。

 

2.シナロア・カルテル最高幹部の逮捕
8日,シナロア・カルテル最高幹部ホアキン「エル・チャポ」グスマン容疑者がシナロア州ロスモチス市で再逮捕された。
(1)ゴメス連邦検察庁長官記者会見及び報道による逮捕概要
8日4時半頃,メキシコ海軍がシナロア・カルテル最高幹部ホアキン「エル・チャポ」グスマン容疑者が潜伏する民家(シナロア州ロスモチス市)に到着。抵抗する犯罪組織との間に銃撃戦が発生し,メキシコ海軍歩兵隊隊員1名が負傷したが,メキシコ海軍は犯罪組織5名を殺害した。グスマン容疑者は同作戦の際は,シナロア・カルテルの幹部ガステルム容疑者と一緒に下水道を使って民家から逃走したが,マンホールから出て車を盗み,逃走しようとしていたグスマン容疑者を連邦警察が拘束した。拘束者は計6名に上った。グスマン容疑者の身柄はその日のうちにメキシコ市に送還された。同日開かれた記者会見においてゴメス連邦検査庁長官は,グスマン容疑者はメキシコ州にある最高警備レベルのアルティプラノ連邦刑務所に再び収容される旨発表した。
(2)再逮捕までの経緯
(ア)連邦検察庁の捜査によると,2015年7月11日,アルティプラノ連邦刑務所を脱獄したグスマン容疑者は,ケレタロ州サン・フアン・デル・リオ市の公道から自家用飛行機で逃亡,シナロア,チワワ,ドゥランゴの3州の州境の山岳地帯に身を隠していた。
(イ)メキシコ治安当局は,米国の俳優ショーン・ペン(Sean Penn)が2015年10月,メキシコ人女優ケイト・デル・カスティージョ(Kate Del Castillo)の仲介でグスマン容疑者にインタビューを行ったことを把握し,このことがグスマン容疑者の居場所特定につながった。グスマン容疑者は自身の脱獄劇を自伝映画にしようと考え,映画関係者に接触を取ったと見られている。なお,連邦検察庁はショーン・ペン及びケイト・デル・カスティージョ両名に対し,その法的責任の有無を明確にするために事情聴取を行う意向。
(ウ)2015年10月,メキシコ海軍はグスマン容疑者が潜伏していたドゥランゴ州プエブロ・ヌエボ市にて同容疑者の身柄捕獲オペレーションを実施。同オペレーションでグスマン容疑者の身柄は拘束できなかったが,同容疑者の協力者6名を逮捕したことが,その後の情報収集の強化につながった。
(エ)メキシコ治安当局は,2015年12月末,グスマン容疑者がロスモチス市に潜伏したことを把握。グスマン容疑者の潜伏先とみられる民家を継続的な監視下においた。メキシコ治安当局は1月6日より当該民家で不審な動きを確認,翌7日早朝,一台の車両が同民家内に停められたところ,グスマン容疑者が潜伏していることを特定。メキシコ治安当局は8日早朝,グスマン容疑者の身柄捕獲オペレーションを実施し,同容疑者を再逮捕した。
(3)グスマン容疑者の米国への身柄引き渡しの可能性
(ア)グスマン容疑者を巡っては,米国がその身柄の引き渡しを求めているが,2015年7月の脱獄前にペニャ・ニエト大統領は一度拒否している。しかし,連邦検察庁は1月9日,2015年6月16日及び同年8月31日に,米国政府より墨外務省を通して墨政府に正式に身柄の引き渡し要請があった旨,墨外務省が6月25日及び9月3日に米国政府の要望は米墨二国間の犯罪人引渡し条約の要件を満たすものであると判断したことを受け,同容疑者の身柄を米国に引き渡す法的手続きを開始する旨を発表した。
(イ)連邦検察庁のメリノ国際訴訟部長はメディアのインタビューに対し,米国が求めるグスマン受刑囚の身柄引き渡しの法的手続きには少なくとも1年かかる見通しである旨答えている。

 

3.ベラクルス州ティエラ・ブランカ市における行方不明事件
11日,ベラクルス州ティエラ・ブランカ市で若者5名が消息を絶つ事件が発生。本事件への関与疑惑により,ベラクルス州警察の7名が身柄を拘束され,取り調べを受けている。また,24日には,犯罪組織「ハリスコ・デ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)」の構成員とみられる3名がティエラ・ブランカ市で逮捕された。右3名も本事件に関与したと見られている。

 

4.犯罪組織「ベルトラン・レイバ・カルテル」幹部の逮捕
30日,シナロア州グアサベ市において,治安当局により犯罪組織「ベルトラン・レイバ・カルテル」幹部フランシスコ・ハビエル・エルナンデス・ガルシア容疑者,通称「エル2000」が逮捕された。エルナンデス容疑者は,2014年10月の犯罪組織「ベルトラン・レイバ・カルテル」首領,エクトル・ベルトラン・レイバ容疑者,通称「H」の逮捕以降,同犯罪組織の首領に収まっていたとみられている。今般のエルナンデス容疑者の逮捕により,連邦政府が最も重要な犯罪容疑者として指名手配している122名のうち99名が逮捕又は殺害されたこととなった。

 

〈外交〉


1.メキシコ大使会議の開催
4日~8日,第27回メキシコ大使会議が開催された。
(1)ペニャ・ニエト大統領演説概要
ペニャ・ニエト大統領は就任演説で打ち出した政権の5本の柱(①平和な国家の達成,②包括国家の達成,③全国民が質の高い教育を享受する国家の達成,④繁栄する国家の達成,⑤地球規模の責任のある役割を果たす国家の達成)に沿った形で,政権3年間の成果を強調,その内容は基本的に客年9月2日の大統領教書演説の内容と同様のものであった。また,⑤地球規模の責任のある役割を果たす国家の達成に関連し,今後のペニャ・ニエト政権における外交方針に関し以下の通り述べた。
【外交方針】
(ア)世界経済の中心国との戦略的同盟関係の強化。
(イ)地域間,多国間組織の枠組みの中で,民主主義と人権の尊重の促進。
(ウ)基本的な人権の尊重に基づいた,移民問題への統合的対応の実施。
(エ)新しい貿易プラットフォームがもたらす機会を活用した各地域とのハイレベルの政治対話の深化。
(オ)マルチ外交における,ジェンダーの平等,女性のエンパワーメントの促進。
(2)ルイス=マシュー外相演説概要
(ア)持続可能な開発のための2030アジェンダ,COP21におけるパリ協定,TPP交渉の大筋合意と,2015年は,意思を持って取り組めば,国際協力が野心のみに留まらないことを示した年であった。しかし,2015年は,我々の方法論,パラダイムを考え直すことを余儀なくする事象が発生した年でもあった。国際的テロリズムと過激な暴力主義,移民問題は,国際社会のアジェンダを規定し,メキシコにより強い地球規模の責任のある役割を求める課題である。
(イ)移民問題
(a)今日,メキシコはメキシコ人移民の出身国であると同時に,他国の移民にとっての通過地,目的地,帰還地である。このような状況に対し,メキシコは人権及び移民が世界の成長と発展に寄与する価値に基づく国際的,地域的ビジョンの構築に貢献するためのハイレベルな責任を負っている。
(b)他方,メキシコ人移民の帰国を指導する国家政策の実行にも取り組んでいく。「開かれた扉プログラム(Programa Puertas Abiertas)」を展開し,帰国を希望するメキシコ人移民及び受け入れコミュニティーにとって恩恵をもたらす統一窓口を設置する。このプログラムによって,外務省は領事館ネットワーク(Red Consular)と代表事務所ネットワーク(Red de Delegaciones)を結びつけ,両者の機能を有機的に連結し,移民がそれぞれ必要とする個別の条件に対し,組織としての対応を行う。
(ウ)女性政策
(a)21世紀は女性の世紀となると確信している。それ故に,私(ルイス=マシュー外相)のプリオリティーの一つは,ペニャ・ニエト政権が発足した3年前より進められているジェンダー政策をさらに推進することである。
(b)女性のキャリア外交官のエンパワーメントに寄与するためのインセンティブを推進することが重要である。大使任命人事に関し,そのうち50%を外務省の優秀な女性から任命するようペニャ・ニエト大統領に提案する。

 

2.ルイス=マシュー外相のグアテマラ大統領就任式典出席
14日,ルイス=マシュー外相はペニャ・ニエト大統領の代理として,モラレス大統領及びカブレラ副大統領の就任式典に出席した。

 

3.ペニャ・ニエト大統領とオバマ米大統領の電話会談
15日,ペニャ・ニエト大統領はオバマ米大統領と電話会談を行った。冒頭,オバマ米大統領は,シナロア・カルテル最高幹部ホアキン「エル・チャポ」グスマン容疑者の再逮捕は,ペニャ・ニエト政権の犯罪組織撲滅に向けた取り組みの成果であると評価した。これに対し,ペニャ・ニエト大統領は犯罪組織撲滅への取り組みは政権に取って揺るぐことのない使命である旨述べ,同容疑者の再逮捕につながった米各関係機関の協力に謝意を表明した。また,ペニャ・ニエト大統領は,オバマ米大統領が12日に議会で行った一般教書演説の内容を称賛した。さらに,両首脳は移民問題に関し,両国の協力を深化させていく旨確認した。

 

4.ペニャ・ニエト大統領の中東訪問
17日~21日,ペニャ・ニエト大統領はサウジアラビア(17日),アラブ首長国連邦(18日~19日),クウェート(20日),カタール(21日)の中東諸国を何れも国賓として訪問した。なお,メキシコの大統領がアラブ首長国連邦とカタールを訪問するのは,1975年の国交樹立後初となる。
(1)全体概要及び訪問の意義
(ア)今般の公式訪問の目的は,ペニャ・ニエト政権下で推進される構造改革の説明を通じた投資誘致,また,中東諸国との戦略的協力体制強化に向けた合意文章への署名であった。なお,同公式訪問にはルイス=マシュー外相,ホアキン=コルドゥエル・エネルギー相,グアハルド経済相,ヌニョ教育相,ルイス=エスパルサ通信運輸相及び経済団体代表団等が同行した。
(イ)ペニャ・ニエト大統領は,訪問4カ国の各首脳と首脳会談を実施。各国では両首脳立ち会いの下,今般の公式訪問の成果として,サウジアラビアで11,アラブ首長国連邦で13,クウェートで11,カタールで11の合意文章が署名された。また,訪問4カ国でそれぞれ,投資誘致に向けたビジネスフォーラムが開催された。
(ウ)1975年の国交樹立後,メキシコの大統領がアラブ首長国連邦とカタールを訪問するのは今回が初。また,サウジアラビアとクウェートは40年振りである。メキシコは長らく中東地域との外交に力を入れてこなかったが,ペニャ・ニエト政権では外交の多元化政策の一環として,中東諸国との関係強化が図られている。今般のペニャ・ニエト大統領の公式訪問は,メキシコと訪問4カ国の今後の関係強化に向けた布石となる。
(エ)ペニャ・ニエト大統領の今般の公式訪問は,投資対象国としてのメキシコの魅力を宣伝することに主眼が置かれたもの。とりわけ,エネルギー改革を推進するメキシコにとっては,産油国であり,エネルギーセクターにおける豊富な経験を有する今般の訪問4カ国による同セクターへの投資,また,インフラ関連への投資を期待するもの。1月20日のクウェート訪問の際には,メキシコ鉄鋼会社のTAMSAが,クウェートにて1億5千万ドルの投資契約を結んだ旨発表される等,今後,メキシコと訪問4カ国との経済関係強化が期待される。
(2)ペニャ・ニエト大統領による記者会見
21日,中東諸国公式訪問の日程を終えたペニャ・ニエト大統領は,カタールにて記者会見を開き,今般の公式訪問の意義に関し,概要以下の通り述べた。
(ア)今般の中東諸国4カ国への公式訪問は,エネルギー,貿易,投資,観光,教育,科学,テクノロジー,イノベーション,文化,芸術にまたがる多様な分野において,計46の合意文章に署名がなされた歴史的訪問であった。また,成長を続け,発展と近代化を遂げている中東地域の企業関係者に対し,メキシコのプロジェクトを紹介することを通し,強いインパクトを残すものとなった。
(イ)メキシコがアラビア半島諸国との国交を樹立して40年となるが,アラブ首長国連邦及びカタールへのメキシコの国家元首の公式訪問は今回が初である。今般の公式訪問により,メキシコとこれら4各国の友好関係が再確認され,より密接なものとなった。
(ウ)グローバル企業1,400社のCEOを対象に毎年実施されているアンケート調査によれば,今後12ヶ月における魅力的な投資先国としてメキシコは9番目に位置している。今般の公式訪問は,メキシコが中東4ヶ国にメキシコの未来のビジョンを示し,投資機会を提供するものであった。そして,この投資機会はメキシコ国民の発展,繁栄につながるものである。
(3)世界未来エネルギーサミット(WFES)2016
18日,ペニャ・ニエト大統領は国賓訪問中のアラブ首長国連邦にて開催中の世界未来エネルギーサミット(WEFS)2016に出席。クリーン・エネルギー推進に対するメキシコのコミットメントに関し,概要以下の通り述べた。なお,同サミットには,潘基文国連事務総長他,アイスランド,コソボ,ナイジェリア,パラオ,セルビア,モロッコの各首脳が出席した。
(ア)メキシコは経済成長及び社会発展にブレーキをかけることなく,気候変動に対応するクリーン・エネルギー及び再生可能エネルギーへの大胆な移行を推進する。
(イ)メキシコは再生可能なエネルギーの技術開発研究に多額の資金を投資しており,過去3年間で,メキシコ・エネルギー・イノベーション・センター創設のために1億5千万ドルを拠出した。
(ウ)メキシコは,現在21%である総電力に占めるクリーン・エネルギーの割合を2024年に35%,2050年までに50%に増加させること目的とした法整備(:エネルギー移行法のこと)を実施した。COP21においては,今後5年間,クリーン・エネルギー研究開発投資を2倍に拡大する「ミッション・イノベーション」の共同宣言を採択した。
(エ)これらのアクションは,将来のエネルギー及び気候変動に係る国際社会の課題に対し,メキシコが今日担う地球規模の責任の証左である。

 

5.ペニャ・ニエト大統領の世界経済フォーラム年次総会出席
22日,ペニャ・ニエト大統領は世界経済フォーラム(WEF)年次総会に出席するためにスイス・ダボスを訪問した。また,そのマージンにおいて,スイス大統領及びアルゼンチン大統領等との首脳会談を実施した。
(1)シュナイダー=アマン・スイス大統領との会談
22日,ペニャ・ニエト大統領はWEF年次総会出席に先立ち,シュナイダー=アマン・スイス大統領と会談。両国首脳立ち会いの下,シュナイダー=アマン大統領,グアハルド墨経済大臣,ボルゲ・ブレンデ・ノルウェー外相,アウレリア・フリック・リヒテンシュタイン外相,Martin Eyjolfssonアイスランド国連代大使によって,墨・欧州自由貿易連合(EFTA)自由貿易協定の見直し及び近代化係る交渉開始に関する共同宣言が署名された。
墨・EFTA自由貿易協定は,2000年11月27日に署名,翌年7月1日に発効。墨大統領府発出プレスリリースによると,今般の見直し及び近代化を通じ,メキシコの農産品のEFTA加盟国市場へのアクセス拡大が図られると同時に,中小企業,エネルギー分野における協力に関する項目等が追加される見込み。
(2)マクリ亜大統領との会談
ペニャ・ニエト大統領はマクリ亜大統領と会談,冒頭,ペニャ・ニエト大統領はマクリ亜大統領の就任に対し祝辞を述べた。また,アルゼンチンはメキシコにとっての戦略的パートナーであり,メキシコはアルゼンチンとの二国間関係の深化に努め,二国間,マルチ及び共通の利益に係る分野においての密接な協力を継続していく旨強調した。さらに,マクリ亜大統領がメキシコを公式訪問するよう招待した。両国首脳は,両国間の貿易,投資の更なる促進を共通の関心として共有した。なお,2015年12月10日のマクリ大統領就任後,両首脳の会談は今回が初。
(3)「ラテンアメリカの新しいアジェンダ」パネル
ペニャ・ニエト大統領は「ラテンアメリカの新しいアジェンダ」と題されたWEF年次総会のパネルに出席し,概要以下の通り述べた。
(ア)今日の世界経済情勢は石油価格の下落に直面しているが,メキシコはエネルギー改革を断固として推進していく。他国の経済が減速する中,我々が望む水準には達してはいないが,メキシコは成長しており,減速に直面する世界,とりわけラテンアメリカ地域の状況とは対照的な位置にある。
(イ)エネルギー,通信及び財政の少なくとも3つの構造改革が,今日の世界経済情勢への最良の対応策をメキシコにもたらしている。2012年大統領就任時に約束した構造改革は,今日,現実のものとなり,高いボラティリティと不安定性を有する世界の経済情勢に対し,メキシコが対応することを可能としている。構造改革は単なる理論ではなく,実際の利益であり,その利益は構造改革を推進していくことにより更に増大していくものである。
(4)この他,ペニャ・ニエト大統領は国際メディア関係者によるMedia Leader's Community,メキシコに事務所を有する,またはメキシコへの投資に関心を有する企業によるBusiness Interaction Group on Mexico及びシュワブWEF会長とそれぞれ会談した。

 

6.知識経済とイノベーションにおける女性に関する第1回国際会議
25~26日にかけて,ユカタン州メリダ市ペオン・コントレラス劇場において,「知識経済とイノベーションにおける女性に関する第1回国際会議」が,メキシコ外務省等とUN Womenの共催により開催され,ルイス=マシュー外相が開会式で概要以下の通りスピーチを行った。また同会議参加者は基本的には墨政府・議会関係者が中心であったが,他方,主な海外出席者としては,Guezmes UN Women事務局長,グリンスパン・イベロアメリカ事務総長,ディナルテ・コスタリカ経済産業通商次官,クラリカス・アルゼンチン外務次官等が挙げられる。
【ルイス=マシュー外相スピーチ概要】
1916年,メキシコ革命の最中,この劇場において第1回メキシコ・フェミニスト会議が開催された。この会議の成果は,当時世界的にも革新的な内容と知られたメキシコ憲法(1917年)の制定に影響を与え,また女性の権利を認めた民法(1928年)の実現に大きく影響した。以来,メキシコは,女性のエンパワーメントに向けた,組織強化,公共政策,法整備,各種施策を進めてきた。加えて,我々は女性の生産活動における参加や,意思決定過程に対する参加を促進する文化を育んできた。
21世紀は,女性の世紀になると確信している。我々は,世界的な技術革命と法的集積の融合を通じて,既にパラダイム転換のはじまりに直面している。アイデアの発信は,個人や集団を自省から行動へと動かし,社会的政治的変化をもたらすものである。こうした交流は,今日,情報通信技術を用いて行われており,我々は同技術を用いて,女性を変革の担い手として,そのエンパワーメントを進めることが出来るのである。
今日,女性ははじめて男性と同じ情報にアクセスできるようになった。最早,歪曲も,家族による検閲も気にする必要はない。我々は,知識や情報を自分のものとすることが出来,我々の判断を養い,想像を羽ばたかせ,創造・刷新・生産に取り組むことが出来る。更に,情報革命によって,我々は生産的活動と個人・家族の生活を両立できるようになった。
つまり,イノベーションは発展のエンジンであり,同時に,世界そしてメキシコにおいて最も無駄にされている生産資源,すなわち女性の活躍を後押しするものである。だからこそ,我々はこのプロセスをより多くの女性が享受できるように取り組もうではないか。
また,イノベーションについて議論するならば,我々は知識経済についても議論しなければならない。知識経済は,全ての人間の知識,能力を活用するものである。これは少女や若い女性の能力開発を抜きに考えられない。少女達が,暴力を心配することなく学校に通い,高等教育を終了し,科学・技術の分野にも進出し,自らの生計を立てる手段を獲得することを通じて,更なる発展がもたらされるのである。

 

7.第4回CELAC首脳会合(ペニャ・ニエト墨大統領の参加)
27日,ペニャ・ニエト大統領はエクアドルを訪問し,第4回CELAC首脳会合に出席したほか,グアテマラ,パナマ及びコスタリカ大統領と首脳会談を行った。
(1)首脳会合におけるペニャ・ニエト大統領スピーチ概要
(ア)本題に入る前に,まずコロンビア国民及び政府に対し,和平プロセスの進展に祝意を表明したい。サントス大統領の民主的姿勢と対話へのコミットメントに敬意を表したい。我々は,貴国における完全な平和の達成を信じており,和平プロセスに引き続き協力する用意がある。
(イ)今般の首脳会合を通じて,我々は貧困と不平等の問題に対するコミットメントを再確認する必要がある。幸い,我々はゼロからスタートする訳ではない。2010~14年にかけて,域内GDPは年平均3.7%の成長を達成した。この数値は,EUの1%,日本の1.5%,米国の2.1%という数値を上回るものである。そして,CEPALによれば,過去11年間に1日1ドル以下で暮らす者の比率は,域内で63.5%減少している。またCELAC諸国は,ミレニアム開発目標達成に向け大きく前進した。こうした成果は喜ばしいものであるが,いまだ不十分である。
(ウ)我々の社会は未だ深刻な不平等に直面しており,域内では,豊かな者20%が収入の54%を占めており,貧しい者20%は収入の4%を占めるのみである。我々は,明確な目標を持って,飢餓,貧困,不平等との闘いを一層強化しなければならない。この意味において,「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は有益な指針を示している。同アジェンダは,国際的な指針ではあるが,その効果的な実施には,各国の明確なコミットメントと域内諸国の更なる協力が必要になる。
(エ)メキシコは包摂国家の達成を目指して取り組んでいる。この観点から,我々は社会保障プログラムの拡充を進めている。全国飢餓対策キャンペーンを立ち上げ,今日,5.8百万人のメキシコ国民が同キャンペーンの恩恵を受けている。また,現金給付を行う「繁栄するプログラム(Prospera)」を立ち上げ,その給付対象を生産・雇用や奨学金などの分野に広げてきた。そして,こうした取り組みを中米・カリブを中心に国際協力につなげている。
(オ)メキシコ大統領として,CELACの強化に向けた,我々の関心とコミットメントを改めて強調したい。この地域の強さは,その多様性にあるが,対話と協調を通じ,一致団結して前進することが,ここに参加する各国の決意であり,CELACの使命である。
(2)モラレス・グアテマラ大統領とのバイ会談
ペニャ・ニエト大統領は,モラレス大統領の就任に改めて祝意を表明した。会談において両首脳は,安全且つ繁栄する国境を築き,領事協力を強化することで一致した。また,ペニャ・ニエト大統領は,メキシコとして,二国間貿易を拡大し,中長期的な経済・政治・社会的な展望を拡げることを通じて,中米地域の発展に貢献する意思がある旨を伝達した。更に,ペニャ・ニエト大統領は,中米地域のエネルギー網構築に関心がある旨を強調した。この他,両首脳は,両国外相に対して,速やかに会談を行い,二国間アジェンダの優先事項を特定するよう指示することで一致した。最後に,ペニャ・ニエト大統領は,モラレス大統領にメキシコを公式訪問するよう招待した。
(3)バレーラ・パナマ大統領とのバイ会談
両首脳は,2015年11月26日に第5回墨パナマ二国間協議が開催されたことに祝意を表明した。また同年7月1日に発効した両国間自由貿易協定の促進を含め,二国間,域内,そして多国間の主要案件につき,前進していくことの重要性で一致した。また,ペニャ・ニエト大統領はパナマ運河拡張計画の進捗に対して祝意を表明した。更に,両首脳は,パナマ国内に滞留するキューバ人移民に関し,域内の合意に基づき,人権を尊重しつつ,その解決を図る両国政府の意思を確認した。
(4)ソリス・コスタリカ大統領とのバイ会談
ペニャ・ニエト大統領は,1月23日の遊覧船沈没事故により,コスタリカ人13名が死亡したことに対し,ソリス大統領に改めて弔意を表明した。また両首脳は,本年予定されるソリス大統領のメキシコ公式訪問は,両国間のアジェンダを見直し,両国の戦略的パートナーシップ関係を強化する好機であるとの認識で一致した。なお,コスタリカは,当国との戦略的パートナーシップ協定を有する中米唯一の国である。

 

8.北米外相会談
29日,ルイス=マシュー墨外相は加ケベックシティーを訪問し,ケリー米国務長官,ディオン加外相との北米外相会談に出席した。また,ルイス=マシュー墨外相は北米外相会談に先立ち,ケリー米国務長官,ディオン加外相とそれぞれバイ会談を行った。
(1)北米外相会談
(ア)1月29日,加ケベックシティーにてルイス=マシュー墨外相,ケリー米国務長官,ディオン加外相による北米外相会談が開催され,三国の外相は,気候変動,環境,エネルギー協力,国際的及び地域的課題,北米地域の安全保障及び繁栄に関し,意見交換を行った。
(イ)また,ディオン加外相は同会談において,カナダへの入国に際し現在必要となっているメキシコ人のビザを廃止する旨述べた(注:廃止の施工期日については言及なし。)。
(2)三国の外相は会談終了後,共同記者会見を開き,ルイス=マシュー墨外相は概要以下の通り述べた。
(ア)我々は,北米地域をより統合された21世紀のグローバル競争の中心地とし,気候変動,クリーン・エネルギー,域内における人の移動,質の高い教育,イノベーション,安全保障に係るテーマに取り組むための新しいビジョンを制定する意図及び約束を共有している。
(イ)北米地域三カ国は,次回のG20会合において,気候変動への取り組みとして,三カ国がそれぞれ調整官を任命し,北米地域が共同で取り組むべきアクションを規定する。
(ウ)北米地域の更なる繁栄のために,NAFTAにおける人材の流動性に関し,メキシコが対象職種のリストを見直し提案することにつき三カ国は合意している。このことを通し,地域の戦略的セクターにおける競争力の強化及び学術交流が図られる。
(エ)また,三国間のアジェンダとして,競争力強化につながる女性のエンパワーメントを含めることで一致した。
(3)ケリー米国務長官とのバイ会談(29日)
(ア)ルイス=マシュー墨外相はケリー米国務長官とバイ会談を行った。両外相は,二国間アジェンダにおける主要テーマを確認,また,オバマ政権とペニャ・ニエト政権で到達した進捗に対し,前向きな評価を行った。また,両外相は,2月にメキシコシティで開催されるハイレベル経済対話(DEAN)において,北米地域の競争力強化及び繁栄に向けた重要項目及び共同アクションの制定に取り組む旨強調した。
(イ)さらに両外相は,安全保障,移民問題,人身売買対策における協力に関し意見交換を実施。中米諸国出身の未成年移民の問題に対し,両国が協力して対応することは両国にとっての責任である旨一致した。
(4)ディオン加外相とのバイ会談(29日)
(ア)ルイス=マシュー墨外相はディオン加外相とバイ会談を行った。両外相は,新しい政府おける(客年11月4日のトルドー加首相の就任によるトルドー内閣発足を指したもの)二国間関係は,投資促進,学術・研究に係る交流の促進,エネルギー産業,航空産業,自動車産業等における人材育成に関し,二国間の関係強化に寄与するものである旨一致した。
(イ)両外相は,二国間政策協議に係るハイレベル会合を創出することで一致。右会合には,墨加同盟(Alianza Mexico Canada),流動性に関する対話,政治・軍事に関する対話,安全保障に係る従来及び新しいテーマに関する協議メカニズムが含まれ,第一回会合を数ヶ月中に実施する予定。また,両国首脳が相互に両国を訪問することに関する関心で一致した。
(ウ)また,気候変動,クリーン・エネルギー,教育,イノベーション,文化の分野で協力し合う可能性に関し一致。さらに,ディオン加外相は,カナダ連邦結成150周年に当たる2017年を,メキシコにおけるカナダ年と祝うことに関する関心を共有した。
(エ)ルイス=マシュー墨外相は,二国間関係の深化にとって,両国間の人の流動性を阻害する障害を取り除く必要があるという観点から,メキシコ人がカナダ入国の際に必要となっているビザの廃止に関し,その実施時期の見通しを求めた。
(5)その他,ルイス=マシュー墨外相はフリップ・クイヤール・ケベック州首相と会談した。

 

 
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