メキシコ政治情勢(3月)
平成28年4月8日
〈概要〉
【内政】
・7日付け当地「エル・ウニベルサル」紙及び「エクセルシオール」紙にそれぞれペニャ・ニエト大統領へのインタビュー記事が掲載された。
・14日付け「エル・ウニベルサル」紙に掲載された同紙と「ブエンディア&ラレド」社共同による世論調査における2016年3月時点のペニャ・ニエト大統領の支持率は,32%であった。
・29日,ペニャ・ニエト大統領は,健康のためのメキシコ財団第35回総会に出席し,保健分野に係る進捗及び同分野における今後の4つの戦略について述べた。
【外交】
・8日,ルイス=マシュー外相は,訪墨したニン・ノボア・ウルグアイ外相と会談した。
・11日~12日,ルイス=マシュー外相がインドを訪問した。
・13日~16日,ルイス=マシュー外相が,本年4月のペニャ・ニエト大統領の訪問準備のためにドイツ,オランダ,デンマークを訪問した。
・17日,ルイス=マシュー外相は,訪墨したサンチェス・ペルー外相と会談した。
・17日,ルイス=マシュー外相,ペルーのサンチェス外相,コロンビアのエチェベリ外務次官,チリのリベロス外務次官,バルセナECLAC事務局長が参加し,太平洋同盟加盟国会合が開催された。
〈内政〉
1.当地主要紙によるペニャ・ニエト大統領へのインタビュー記事
7日付け当地「エル・ウニベルサル」紙及び「エクセルシオール」紙にそれぞれペニャ・ニエト大統領へのインタビュー記事が掲載されたところ,概要は以下の通り。
(1)「エル・ウニベルサル」紙
(ア)トランプ共和党大統領候補の言動
トランプ共和党大統領候補のビジョン,主張を共有することができないことは明白である。私(ペニャ・ニエト大統領)は,同候補によるメキシコに対する無知に基づく言動を遺憾に思い,非難する者の一人である。メキシコ政府が米国の大統領選の行方,結果を尊重する姿勢にあることに変わりはないが,トランプ候補のような言動に関しては,墨米の関係を害するものであると非難する。
(イ)構造改革と経済
現政権下,メキシコの成長の加速化を阻害する様々な障害を取り除く構造改革を実現してきた。構造改革の成果はすでに現れ始めているが,構造改革の着実な実践は時間を要するプロセスであり,現政権は今後も,構造改革を着実に推進していく。メキシコ政府の財政構造は,1980年代のような過度に石油収入に依存したものではもはやない。我々は経済の多様化を進め,開かれた経済,競争力を有する経済の構築に取り組んで来た。今日,メキシコ経済は貿易,工業生産,内需によって支えられる経済へと変貌を遂げている。メキシコは新興経済国であるが,各種経済指標は,世界の多くの国々の経済が停滞しているにもかかわらず,メキシコ経済が成長していることを示している。
(ウ)警察制度改革
私(ペニャ・ニエト大統領)は,統一州警察の創設を支持する立場であり,統一州警察創設に向けたイニシアティブを議会に提出しているが,重要なことは,メキシコ全土の治安強化につながるより能力のある警察組織が構築されることである。
(2)「エクセルシオール」紙
(ア)トランプ共和党大統領候補による米大統領選挙キャンペーン
トランプ候補の主張が米大統領選における単なるレトリックなのかどうかは分からないが,右派左派という政治的イデオロギーに関わらないポピュリズムの台頭の可能性を以前にも警告した。我々人類の歴史は,ある社会が直面する問題,課題の解決には時間を有することを示しているが,残念ながら,単純かつ安易な解決策を叫ぶ声高なレトリックが,人類を不吉な状況に導いてしまうことも我々の歴史が証明している。ムッソリーニやヒトラーは,経済危機という状況下に存在する問題を利用する形で,権力にたどり着いた。そして,このような状況が国際紛争につながったことを,今日,我々は十分に理解している。このような状況が世界の如何なる場所でも繰り返すことがないよう望んでいる。
(イ)独立系候補(Independiente)
独立系候補と呼ばれる者が,ある政党から生まれた者か,完全に独立している者かを問わず,結局のところ,責任を果たす政府を構成しなければならないことに違いはなく,責務を果たすためには,合意を構築する必要があることに変わりはない。
(ウ)メキシコ石油公社(PEMEX)
世界的石油価格の下落により,世界中の石油関連企業が厳しい状況に置かれているが,PEMEXは二つのアドバンテージを有している。まず,政府の支援を得られることである。しかし,政府に依存するのではなく,PEMEX自らが組織改革を行う必要があることも言及しておく。もう一つのアドバンテージは,エネルギー改革の成果により,他の石油関連企業が有していないチャンスをPEMEXが得られる立場にあることである。
(エ)2018年大統領選
2018年大統領選の話をするのは時期尚早であるが,今日,政府を指揮するに適したプロフィールを有する候補者を求める社会的要求が存在することは,幸運なことである。私(ペニャ・ニエト大統領)は,制度的革命党(PRI)の大統領候補擁立に際し,党員の一人として意見を述べることはあろうが,それ以上の役割を担う考えはない。
3.世論調査:大統領支持率
(1)14日付け「エル・ウニベルサル」紙に掲載された同紙と「ブエンディア&ラレド」社共同による世論調査における2016年3月時点のペニャ・ニエト大統領の支持率は,32%(前回11月調査時の42%から10ポイント減)であった。また,不支持率は56%(同51%から5ポイント増)であった。
(2)ペニャ・ニエト政権の取組の中で評価しない項目として,構造改革,物価上昇・ペソ安ドル高,治安対策・犯罪組織対策がそれぞれ8ポイントで最も高い数値という結果であった。
4.ペニャ・ニエト大統領の健康のためのメキシコ財団第35回総会への出席
29日,ペニャ・ニエト大統領は,健康のためのメキシコ財団(La Fundacion Mexicana para la Salud)第35回総会に出席し,保健分野に係る進捗及び同分野における今後の4つの戦略について述べた。
(1)国家開発計画の保健分野における進捗
(ア)現政権下において社会保険のユニバーサル化を推進しており,今日までに,国民保険(Seguro Popular)の加入者は,現政権発足時から約450万人増となる5,700万人に達している。また,加入者の増加のみならず,保健省,メキシコ社会保険庁(IMSS),国家公務員共済庁(ISSSTE)を通じ,医療インフラの整備のために3億4,000万ペソを投資し,580以上の病院,2,800以上の診断所の新規設立及び設備の近代化を実施した。
(イ)病気の予防は国民の健康状態改善のための最重要項目である。現政権下,IMSS及びISSSTEそれぞれの病気予防プログラム,また,国民保険の病気予防プログラムを通じ,国民に対し,生活習慣を改善し,病気の予防に気を遣うための啓蒙活動を国民に対し広く展開している。
(ウ)社会的弱者に対する医療サービスの改善も重要な課題である。移動診療所プログラムを通じ,医療サービスが行き届かない約2万5,000の地域において,420万人以上を対象に診療を実施した。
(エ)質の高い医療サービスへのアクセスの保証に努めており,IMSS及びISSSTEは,救急医療における待ち時間の縮小,外科手術の日程調整の効率化等,組織のイノベーションに取り組んでいる。
(オ)保健分野における国際協力を促進しており,メキシコは国連の持続可能な開発のための2030アジェンダ策定を推進した。また,WHOとも複数のプロジェクトにおいて協力しており,その中にはジカウイルス感染症への対応も含まれる。
(カ)2014年,1歳児を対象とする麻疹,風疹,おたふくかぜの予防接種は,対象者の97.8%に実施された。これによって,メキシコはミレニアム開発目標(MDGs)に定められた目標を達成した。
(キ)2012年~2014年の期間において,乳児死亡率は6.1%減少し,5歳未満の死亡率は7%減少した。また,同期間,妊産婦死亡率は8%減少した。
(ク)社会開発政策評価議会(CONEVAL)によると,同期間,それまで医療サービスへのアクセスを持たなかった450万人が,新たに医療サービスへのアクセスを得た。
(2)保健分野における4つの戦略
(ア)保健分野各関連機関の登録者名簿を精査し,依然,保険,医療サービスへのアクセスを有していない人々を適切に把握する。
(イ)連邦,州のそれぞれの医療機関のみならず,民間の医療機関との連携体制を強化し,医療インフラの効率的な使用体制を構築する。
(ウ)昨今の医療テクノロジーの進化を考慮し,それらを活用した疾病の早期発見,適切な処置を可能とする医療体制を構築する。
(エ)州政府が管轄する医療機関における医療サービスの向上のためのプログラムを策定し,実行する。
【内政】
・7日付け当地「エル・ウニベルサル」紙及び「エクセルシオール」紙にそれぞれペニャ・ニエト大統領へのインタビュー記事が掲載された。
・14日付け「エル・ウニベルサル」紙に掲載された同紙と「ブエンディア&ラレド」社共同による世論調査における2016年3月時点のペニャ・ニエト大統領の支持率は,32%であった。
・29日,ペニャ・ニエト大統領は,健康のためのメキシコ財団第35回総会に出席し,保健分野に係る進捗及び同分野における今後の4つの戦略について述べた。
【外交】
・8日,ルイス=マシュー外相は,訪墨したニン・ノボア・ウルグアイ外相と会談した。
・11日~12日,ルイス=マシュー外相がインドを訪問した。
・13日~16日,ルイス=マシュー外相が,本年4月のペニャ・ニエト大統領の訪問準備のためにドイツ,オランダ,デンマークを訪問した。
・17日,ルイス=マシュー外相は,訪墨したサンチェス・ペルー外相と会談した。
・17日,ルイス=マシュー外相,ペルーのサンチェス外相,コロンビアのエチェベリ外務次官,チリのリベロス外務次官,バルセナECLAC事務局長が参加し,太平洋同盟加盟国会合が開催された。
〈内政〉
1.当地主要紙によるペニャ・ニエト大統領へのインタビュー記事
7日付け当地「エル・ウニベルサル」紙及び「エクセルシオール」紙にそれぞれペニャ・ニエト大統領へのインタビュー記事が掲載されたところ,概要は以下の通り。
(1)「エル・ウニベルサル」紙
(ア)トランプ共和党大統領候補の言動
トランプ共和党大統領候補のビジョン,主張を共有することができないことは明白である。私(ペニャ・ニエト大統領)は,同候補によるメキシコに対する無知に基づく言動を遺憾に思い,非難する者の一人である。メキシコ政府が米国の大統領選の行方,結果を尊重する姿勢にあることに変わりはないが,トランプ候補のような言動に関しては,墨米の関係を害するものであると非難する。
(イ)構造改革と経済
現政権下,メキシコの成長の加速化を阻害する様々な障害を取り除く構造改革を実現してきた。構造改革の成果はすでに現れ始めているが,構造改革の着実な実践は時間を要するプロセスであり,現政権は今後も,構造改革を着実に推進していく。メキシコ政府の財政構造は,1980年代のような過度に石油収入に依存したものではもはやない。我々は経済の多様化を進め,開かれた経済,競争力を有する経済の構築に取り組んで来た。今日,メキシコ経済は貿易,工業生産,内需によって支えられる経済へと変貌を遂げている。メキシコは新興経済国であるが,各種経済指標は,世界の多くの国々の経済が停滞しているにもかかわらず,メキシコ経済が成長していることを示している。
(ウ)警察制度改革
私(ペニャ・ニエト大統領)は,統一州警察の創設を支持する立場であり,統一州警察創設に向けたイニシアティブを議会に提出しているが,重要なことは,メキシコ全土の治安強化につながるより能力のある警察組織が構築されることである。
(2)「エクセルシオール」紙
(ア)トランプ共和党大統領候補による米大統領選挙キャンペーン
トランプ候補の主張が米大統領選における単なるレトリックなのかどうかは分からないが,右派左派という政治的イデオロギーに関わらないポピュリズムの台頭の可能性を以前にも警告した。我々人類の歴史は,ある社会が直面する問題,課題の解決には時間を有することを示しているが,残念ながら,単純かつ安易な解決策を叫ぶ声高なレトリックが,人類を不吉な状況に導いてしまうことも我々の歴史が証明している。ムッソリーニやヒトラーは,経済危機という状況下に存在する問題を利用する形で,権力にたどり着いた。そして,このような状況が国際紛争につながったことを,今日,我々は十分に理解している。このような状況が世界の如何なる場所でも繰り返すことがないよう望んでいる。
(イ)独立系候補(Independiente)
独立系候補と呼ばれる者が,ある政党から生まれた者か,完全に独立している者かを問わず,結局のところ,責任を果たす政府を構成しなければならないことに違いはなく,責務を果たすためには,合意を構築する必要があることに変わりはない。
(ウ)メキシコ石油公社(PEMEX)
世界的石油価格の下落により,世界中の石油関連企業が厳しい状況に置かれているが,PEMEXは二つのアドバンテージを有している。まず,政府の支援を得られることである。しかし,政府に依存するのではなく,PEMEX自らが組織改革を行う必要があることも言及しておく。もう一つのアドバンテージは,エネルギー改革の成果により,他の石油関連企業が有していないチャンスをPEMEXが得られる立場にあることである。
(エ)2018年大統領選
2018年大統領選の話をするのは時期尚早であるが,今日,政府を指揮するに適したプロフィールを有する候補者を求める社会的要求が存在することは,幸運なことである。私(ペニャ・ニエト大統領)は,制度的革命党(PRI)の大統領候補擁立に際し,党員の一人として意見を述べることはあろうが,それ以上の役割を担う考えはない。
3.世論調査:大統領支持率
(1)14日付け「エル・ウニベルサル」紙に掲載された同紙と「ブエンディア&ラレド」社共同による世論調査における2016年3月時点のペニャ・ニエト大統領の支持率は,32%(前回11月調査時の42%から10ポイント減)であった。また,不支持率は56%(同51%から5ポイント増)であった。
(2)ペニャ・ニエト政権の取組の中で評価しない項目として,構造改革,物価上昇・ペソ安ドル高,治安対策・犯罪組織対策がそれぞれ8ポイントで最も高い数値という結果であった。
4.ペニャ・ニエト大統領の健康のためのメキシコ財団第35回総会への出席
29日,ペニャ・ニエト大統領は,健康のためのメキシコ財団(La Fundacion Mexicana para la Salud)第35回総会に出席し,保健分野に係る進捗及び同分野における今後の4つの戦略について述べた。
(1)国家開発計画の保健分野における進捗
(ア)現政権下において社会保険のユニバーサル化を推進しており,今日までに,国民保険(Seguro Popular)の加入者は,現政権発足時から約450万人増となる5,700万人に達している。また,加入者の増加のみならず,保健省,メキシコ社会保険庁(IMSS),国家公務員共済庁(ISSSTE)を通じ,医療インフラの整備のために3億4,000万ペソを投資し,580以上の病院,2,800以上の診断所の新規設立及び設備の近代化を実施した。
(イ)病気の予防は国民の健康状態改善のための最重要項目である。現政権下,IMSS及びISSSTEそれぞれの病気予防プログラム,また,国民保険の病気予防プログラムを通じ,国民に対し,生活習慣を改善し,病気の予防に気を遣うための啓蒙活動を国民に対し広く展開している。
(ウ)社会的弱者に対する医療サービスの改善も重要な課題である。移動診療所プログラムを通じ,医療サービスが行き届かない約2万5,000の地域において,420万人以上を対象に診療を実施した。
(エ)質の高い医療サービスへのアクセスの保証に努めており,IMSS及びISSSTEは,救急医療における待ち時間の縮小,外科手術の日程調整の効率化等,組織のイノベーションに取り組んでいる。
(オ)保健分野における国際協力を促進しており,メキシコは国連の持続可能な開発のための2030アジェンダ策定を推進した。また,WHOとも複数のプロジェクトにおいて協力しており,その中にはジカウイルス感染症への対応も含まれる。
(カ)2014年,1歳児を対象とする麻疹,風疹,おたふくかぜの予防接種は,対象者の97.8%に実施された。これによって,メキシコはミレニアム開発目標(MDGs)に定められた目標を達成した。
(キ)2012年~2014年の期間において,乳児死亡率は6.1%減少し,5歳未満の死亡率は7%減少した。また,同期間,妊産婦死亡率は8%減少した。
(ク)社会開発政策評価議会(CONEVAL)によると,同期間,それまで医療サービスへのアクセスを持たなかった450万人が,新たに医療サービスへのアクセスを得た。
(2)保健分野における4つの戦略
(ア)保健分野各関連機関の登録者名簿を精査し,依然,保険,医療サービスへのアクセスを有していない人々を適切に把握する。
(イ)連邦,州のそれぞれの医療機関のみならず,民間の医療機関との連携体制を強化し,医療インフラの効率的な使用体制を構築する。
(ウ)昨今の医療テクノロジーの進化を考慮し,それらを活用した疾病の早期発見,適切な処置を可能とする医療体制を構築する。
(エ)州政府が管轄する医療機関における医療サービスの向上のためのプログラムを策定し,実行する。