メキシコ政治情勢(6月)

平成28年7月6日
 
〈概要〉
【内政】
・5日,地方選挙(主に12州知事選)が実施された。
・13日~17日,臨時国会が召集され,国家汚職対策システムの関連二次法案(実施法案)が可決されたが,23日,ペニャ・ニエト大統領によって同法案は連邦議会に差し戻された,
・19日,オアハカ州アスンシオン・ノチストラン市にて,治安当局と教育労働者全国協議会(CNTE)第22セクションを中心とした教育改革に反対する勢力との衝突が発生した。
・20日,ベルトローネス制度的革命党(PRI)党首は記者会見を行い,その中で,同党首が党首の辞任届を提出したことを発表した。
・24日,ビデガライ大蔵公債相は,英国のEU離脱の是非を問う国民投票において,離脱派が勝利したことを受け,2016年度予算における317億1,500万ペソの削減案を発表した。
【外交】
・7日~11日,ペニャ・ニエト大統領の招待に応じる形で,トニー・タン・シンガポール大統領がメキシコを公式訪問した。
・8日,メキシコを実務訪問中のモディ印首相とペニャ・ニエト大統領と大統領官邸にて首脳会談を行った。
・23日,ペニャ・ニエト大統領はコロンビア政府とFARCとの和平交渉における「紛争の終結」等合意に関する式典に,証人として出席するためにハバナを訪問した。
・23日~25日,ルイス=マシュー外相がアリゾナ州を訪問した。
・26日~28日,ペニャ・ニエト大統領がカナダを公式訪問した。
・29日,ペニャ・ニエト大統領はカナダ,オタワ市で開催された第8回北米首脳会合に出席し,オバマ米大統領,トルドー加首相と3者首脳会合を行った。
 
〈内政〉
  • 地方選挙
 5日,13州で地方選挙(州議会,市長等)が行われ,そのうち,12州で州知事選挙が行われた。また,メキシコ市では,2015年に成立したメキシコ市政治改革に伴うメキシコ市憲法制定のための憲法制定議会議員選が実施された。
(1)12州知事選
 選挙前に9州で州知事職を有していた与党制度的革命党(PRI)は,イダルゴ州,オアハカ州,シナロア州,トラスカラ州,サカテカス州の5州で勝利したが,全体では2増6減となる5州を確保するに留まった。野党国民行動党(PAN)は単独で候補者を擁立したアグアスカリエンテス州,チワワ州,プエブラ州,タマウリパス州の4州及び,民主革命党(PRD)との統一候補を擁立したドゥランゴ州,キンタナ・ロー州,ベラクルス州の3州,合計7州で勝利を収めた。
(2)メキシコ市憲法制定議会議員選
 国家再生運動(Morena)が652,286票を得て,今般の選挙で選出された60議席のうち22議席を獲得した他,PRDが572,043票を得て,19議席を獲得する等,左派勢力の強さが目立つ結果となった。
 
2.臨時国会の召集と国家汚職対策システムの関連二次法案(実施法案)の差し戻し
(1)13日~17日,連邦上院,下院共に臨時国会が召集され,国家汚職対策システムの関連二次法案(実施法案)が成立,同法案は官報掲載のため連邦政府に送付された。
(2)関連二次法案には,焦点となっていた公職者に資産公開,収入及び納税の証明,利益相反の可能性に関する報告を義務づける通称「3 de 3」法案が盛り込まれたが,右情報の一般公開の義務化は見送られ,野党,市民団体及び経済界からは,骨抜き法案であるとの批判が上がっている。また,「3 de 3」法案の中身を公共事業落札会社にも適用することとしたため,経済界が反発,15日には,メキシコ経営者連盟(COPARMEX)が,今回の法案成立に反対する抗議活動をメキシコ市の独立記念塔で行った。
(3)上下両院において数で劣勢にある野党は,今回の法案成立に不満を示しており,サンブラーノ下院議長(PRD)はペニャ・ニエト大統領に対し,大統領の権限で今回の法案を廃案にするよう求めた。また,上院は,今回の法案がペニャ・ニエト大統領によって署名され,公布されたとしても,今後,その内容の改正を求めていく考えを示した。このような状況の中,23日,ペニャ・ニエト大統領は「3 de 3」法案の中身を公共事業落札会社にも適用するとした今回の法案は,汚職対策の観点からは適切ではないとして,その権能を用いて,連邦議会で可決された法案を議会に差し戻した。
 
3.オアハカ州における治安当局と教育改革反対勢力との衝突事件
(1)19日,オアハカ州アスンシオン・ノチストラン市の国道190号線(オアハカ市からプエブラ州及びメキシコ市に向かうための主要道路)にて,治安当局と教育労働者全国協議会(CNTE)第22セクションを中心とした教育改革に反対する勢力との衝突が発生し,オアハカ州政府の発表によると,6名が死亡,108名(53名の市民及び55名の治安当局関係者)が負傷する事件が発生した。また,21名が逮捕された。なお,死亡した6名の身元が20日確認されたが,教師は一人も含まれておらず,商人3名,学生1名,農民1名,町議会議員1名となっている。
(2)11日~12日にかけ,CNTE第22セクションのリーダー,ルベン・ヌニェス容疑者及び同ナンバー2のフランシスコ・ビジャロボス容疑者がマネーロンダリングの容疑で逮捕されたことを受け,CNTE第22セクションはその抗議活動を先鋭化しており,オアハカ州各地で道路封鎖,公共施設の破壊,商業施設における略奪行為等が多発し州における治安情勢は不安定なものとなっている。
(3)このような情勢下,19日午前6時半より,連邦警察,オアハカ州警察,アスンシオン・ノチストラン市警察から構成される治安部隊が,国道190号線の道路封鎖を解除するためのオペレーションを開始したところ,それを阻止しようとするCNTE第22セクションを中心とする反対勢力と衝突した。ガリンド連邦警察コミッショナーはクエ・オアハカ州知事と共同記者会見を開き,今般の衝突に関し,当初,オペレーションにあたった治安部隊は武装していなかったが,反対勢力から銃撃を受けたため,治安部隊の身の安全を守るために作戦を変更,武装した部隊を投入した旨,また,CNTE第22セクションには,人民闘争広域戦線(Frente Amplio de Lucha Popular:FALP),人民の権利擁護審議会(Consejo de la Defensa de los Derechos del Pueblo: CDDP),オアハカ・コミューン(Comuna Oaxaca)等の過激派が浸透しており,これら過激派の存在が今般の衝突の要因となった旨述べた。他方,クエ州知事は,オアハカ州の治安正常化及び,市民生活及び経済活動に悪影響を与えている教育改革に対する反対勢力による幹線道路封鎖の解除を目的に,連邦治安当局に支援を要請していた旨説明,また,オアハカ州政府は,覆面を被った者たち(注:道路封鎖,破壊活動等を行う者たちは通常身元が割れないように覆面を被っている)によって,市民の根本的な権利が侵害される事態を放置することはない旨述べた。
 
4.ベルトローネスPRI党首による辞任届の提出
(1)ベルトローネスPRI党首は20日に記者会見を行い,その中で,同党首が党首の辞任届を提出したことを発表するとともに,今回の辞任に関し,概要以下の通り説明した。
(ア)6月5日の選挙において,透明性,責任ある行動に欠く誤った政治家たちに対し,有権者たちが明確なメッセージを送ったことは明白な事実である。メキシコの市民が投票を通じて示した懲罰を受け止め,その過ちを修正し,ふるまいを罰することが必要である。
(イ)しかし,今回の地方選挙において,PRIが敗北を喫したという認識は誤ったものである。PRIが今回の選挙で最も票を得た政党であることに疑いはなく(注:12州知事選におけるPRI候補者の平均得票率は36.78%であり,国民行動党(PAN)の候補者(PRDと統一候補を擁立した5州では,PAN-PRDの統一候補者の得票率)の平均得票率35.87%を上回っている),このことは,PRIのみが21世紀の国家プロジェクトを,責任を持って推進することができる政党であることを示している。
(ウ)党首就任時に約束した党首としての責務及び規律に則り,本日(20日),党の常設政治委員会(Comision Politica Permanente)に対し,辞任届を提出した。今回の辞任の決断は,新党首の下,PRIが求められる自己変革を行うことを可能とするためである。
(2)ペニャ・ニエト大統領は,今回のベルトローネス党首の辞任届の提出に関し,自身のツイッターで,PRI党員として,同党首が有していたビジョン及び発揮していたリーダーシップに対し,敬意を表する旨のメッセージを発出した。
(3)なお,次期党首が選出されるまで,モンロイ同党幹事長が暫定党首を務める。
 
5.英国のEU離脱の余波による予算削減案の発表
 24日,ビデガライ大蔵公債相は,英国のEU離脱の是非を問う国民投票において,離脱派が勝利したことを受け生じている高いボラティリティ及び金融市場における損失を考慮し,2016年度予算における317億1,500万ペソの削減案を発表した。全体の91.7%は経常経費であり,最も影響を受けるのは保健省と教育省で,それぞれ65億ペソが削減される。今回の削減案にPEMEXは含まれない。
 
〈外交〉
1.トニー・タン・シンガポール大統領の訪墨
7日~11日,ペニャ・ニエト大統領の招待に応じる形で,トニー・タン・シンガポール大統領がメキシコを公式訪問した。
(1)ペニャ・ニエト大統領との首脳会談(10日)
(ア)ペニャ・ニエト大統領とトニー・タン・シンガポール大統領は二国間の政治対話の促進,経済関係の強化,TPPの批准を推進することで一致した。また,(1)ラテンアメリカの発展に寄与することを目的とした三角協力(とりわけ水資源の使用,都市開発分野の開発に係る国際協力に関する両国外務省間の協力)に係るMOU,(2)二国間の学術関係者,学生の交流促進を目的とした教育分野に係る協力に関する両国教育省間のMOU、及び(3)農業,漁業セクターにおける科学,技術協力及び農業開発の促進を目的とした食料・農業分野に係る協力に関する墨農牧省とシンガポール食糧・農業及び獣医当局間のMOUが署名された。
(イ)ペニャ・ニエト大統領は,メキシコとシンガポールの国交樹立から40年という枠組みの中で,両国が有する競争力における優位性に鑑み,両国関係をさらに拡大していくことで一致した旨述べた。
(2)メキシコ-シンガポール経済フォーラム(9日)
(ア)9日に開催されたメキシコ-シンガポール経済フォーラムにおいては,観光,航空宇宙産業,都市・港湾開発,クリエイティブ産業等の分野におけるメキシコへの投資について,シンガポール企業の高い関心が示された。
(イ)また,医療機器,水産品,エネルギー,製造工業,インフラ,観光サービス,港湾サービスの分野におけるメキシコ企業の投資の機会に関し検討が行われた。
 
2.モディ印首相の訪墨
 8日,メキシコを実務訪問中のモディ印首相とペニャ・ニエト大統領と大統領官邸にて首脳会談を行った。
(1)冒頭,ペニャ・ニエト大統領はモディ印首相に対し,メキシコとインドの様々な分野における二国間関係強化の推進のために,同首相を大統領官邸に迎えられたことを歓迎する旨述べた。
(2)ペニャ・ニエト大統領は,新興経済国である両国の間に存在する開かれた市場,多様性を有した社会,安定した民主主義,構造改革による変革のプロセスという共通点を強調するとともに,現在世界第7位の経済規模を誇るインドは,今後20年間以内に世界第3位の経済大国になる見通しである旨述べた。さらに,メキシコとインドの貿易総額は約60億米ドルであり,この額はメキシコとフランスの二国間貿易額とほぼ同額である旨述べた。
(3)ペニャ・ニエト大統領は,メキシコとインドの共通点を出発点とし,両国は友好関係を強化している旨述べた。今日,メキシコとインドは戦略的パートナーシップ設立のために取り組んでおり,その目的の一つは,近代国家に適した近代的なアジェンダを設定することにある。
(4)両国首脳は,相互投資(メキシコにおいては,鉄鋼,製薬,印においては,映画,食品,自動車部品),クリーンエネルギー,航空宇宙産業,技術交流等の分野における二国間協力を推進することで一致した。また,今般の首脳会談で一致した事項へのフォローアップとして,本年中に,貿易,投資,協力に関する両国政府間のハイレベル・グループ会合を三度にわたり開催すること,また,墨印二国間委員会を開催することで一致した。
 
3.ペニャ・ニエト大統領のコロンビア政府とFRACとの和平交渉における「紛争の終結」等合意に関する式典への出席
(1)23日,ペニャ・ニエト大統領はコロンビア政府とFARCとの和平交渉における「紛争の終結」等合意に関する式典に,証人として出席するためにハバナ(キューバ)を訪問した。同大統領は,2016年6月23日がラテンアメリカにとって歴史的な日として記憶されるであろうと述べた。
(2)同大統領は,メキシコ政府として,コロンビア政府とFRACの間で達し,本日,潘基文国連事務総長及びラウル・カストロ・キューバ国家評議会議長を前に署名された両者間の和平合意を歓迎する旨,また,和平交渉におけるキューバ政府の役割を評価する旨述べた。
(3)メキシコ政府は,紛争終結後,コロンビア国民を支援する旨表明する考えを改めて表明すると共に,国連特別政治ミッション(コロンビア停戦監視団)に,初の女性隊員を含む13名からなる部隊を派遣する旨発表した。
 
4.ルイス=マシュー外相のアリゾナ訪問
23日~25日,ルイス=マシュー外相がアリゾナ州を訪問。デューシ・アリゾナ州知事と会談した他,墨-アリゾナ州委員会及びソノラ州-アリゾナ州委員会の総会に出席,また,アリゾナ在住のメキシコ人移民が,メキシコ国内に住宅を持つための支援プロジェクト「Construye en tu Tierra」の授与式に出席した。
 
5.ペニャ・ニエト大統領のカナダ公式訪問
26日~28日,ペニャ・ニエト大統領は,29日にカナダ,オタワ市で開催される第8回北米首脳会談への出席に先立ち,カナダを公式訪問した。
(1)クイヤール・ケベック州首相との共同記者会見におけるペニャ・ニエト大統領発言概要
(ア)今回のカナダ公式訪問の目的は,墨加二国間関係を強化し,北米地域の繁栄,発展,競争力向上を促進する新しいメカニズムを模索することにある。このカナダへの(ペニャ・ニエト大統領にとっての)最初の公式訪問は,このケベックの土地から開始する。メキシコ政府とケベック州政府は,気候変動,クリーンエネルギーの推進,ケベック州とメキシコ相互の学術交流の促進等の分野における協力関係強化に取り組んできた。
(イ)メキシコ政府とケベック州政府は,相互協力の優先的分野を選定するために,両政府関係者から構成される共同委員会(Comite Mixto)を2015年10月に設立したが,同委員会におけるアジェンダとして,気候変動,再生可能エネルギー,デジタル経済,教育,文化が取り決められた。今回の訪問においては,これら優先分野に係る5つの協力に合意がなされたが,その中でも,大学生及び学者の交流促進に係る協力は傑出すべきものである。また,2016年中に,メキシコにおいて炭素エネルギーに係る会合を開催することで合意した。
(ウ)メキシコとケベック州の関係は,メキシコ-カナダの関係の中でも特別な意義を有する重要なものである。メキシコはケベック州にとって,米国,ドイツ,中国に次ぐ4番目の貿易相手国である。また,メキシコにとって,ケベック州はカナダの中でメキシコへの旅行客が最も多い州のひとつであり,毎年,約35万人がメキシコを訪問している。
(エ)メキシコとケベック州の両政府高官による政治対話が,両者の貿易及び投資の機会増加に寄与するものとなることを確信している。最後に,メキシコとケベック州の関係は,貿易及び経済の関係における結びつきのみならず,ラテン文化に起源を持ち,未来への展望及びアイデンティティを共有し,そして,何よりも重要なこととして,友情を共有するものであることを指摘したい。
(2)トルドー・カナダ首相との共同記者会見におけるペニャ・ニエト大統領の発言概要
(ア)この15年間で初となるメキシコの国家主席によるカナダ公式訪問である今回の訪問では,墨加二国間関係の強化が図られた。今日,両国のつながりはより強固かつ力強いものとなっている。その意味においても,従来,カナダ入国に際しメキシコ人に対し取得が求められていたビザを,本年12月1日より廃止するというカナダ政府の決定を歓迎する。2009年より課されてきたビザという障害が,今日,政治的意志によって取り除かれる。
(イ)カナダとメキシコは,両国が共有する包括的な発展のビジョンの実現に向け,共同で取り組んでいる。両国は,共有される誰もが享受できる繁栄,地域及び国際場裡におけるリーダーシップ,治安,二国間の人の移動の促進という4つのテーマを軸とするハイレベル戦略的会合(DEAN)の設置を決めた。
(ウ)今回の公式訪問の枠組みで,両国は14の合意に達した。その中でも,学生の交流拡大,治安に係る情報及び経験の共有,両国における先住民の発展・促進,相互の観光促進に係る合意は傑出されるものである。
(エ)また,今日,世界保健機構によって認定される科学的基準に基づき,カナダ製の食肉製品のメキシコへの輸入を解禁することで合意した。輸入解禁は本年10月になる予定である。
(オ)憎悪,人種差別,差別を助長する言葉が蔓延する世界において,トルドー政権の社会における包括的な参加(Inclusion)実現に向けた約束は際だったものである。トルドー・カナダ首相との首脳会談において,様々な権利が保証される社会を構築することの重要性について話し合った。とりわけ,若者及び先住民の発展を重視した包括的参加に質する公共政策を行うことの必要性について話し合った。
(カ)カナダとメキシコは,国際貿易及び地域統合が経済成長及び福祉向上の牽引車となることを確信しており,両国は重要な経済関係を有している。二国間の貿易総額は260億カナダドルを記録しており,両国はそれぞれにとって3番目の貿易相手国である。また,3,500以上のカナダ企業がメキシコに展開している。今回の訪問において,カナダ企業による23億カナダドル強のメキシコへの投資が新たに発表されたが,このことは,カナダがメキシコに示す信頼感の表れである。
(3)この他,ペニャ・ニエト大統領のカナダ訪問に合わせ,「墨加の経済展望と貿易・投資の機会」と題されたパネルディスカッションが墨経済省及びProMexico主催で開催され,両国から50社以上のCEOが出席した。
 
6.ペニャ・ニエト大統領の第8回北米首脳会合出席
29日,ペニャ・ニエト大統領はカナダ,オタワ市で開催された第8回北米首脳会合に出席し,オバマ米大統領,トルドー加首相と3者首脳会合を行った。
(1)3首脳共同記者会見におけるペニャ・ニエト大統領の発言概要
(ア)世界の他地域で発生している現象とは異なり,北米地域の3ヶ国は,その関係をより緊密なものとし,一つのチームとして,同地域を世界で最も競争力の高い地域とするよう共に取り組んできている。我々は,相互補完の関係を利用し,共同で取り組んでいくことにより,同地域が最も競争力の高い地域になることに確信を抱いている。それぞれの社会の発展を望むのであれば,地域として共同で取り組んでいくことの方が好ましい。
(イ)以上の観点からも,メキシコはTPPによって,NAFTA発効後深化している墨・米・加三カ国の統合が更に進むだけではなく,北米地域が世界の他地域,とりわけ,アジア地域との統合が進むことを高く評価している。NAFTA発効による北米地域の統合によりメキシコが得ている恩恵は,TPPにより更に拡大されるところ,メキシコはTPPを熱烈に支持している。
(ウ)今回の北米首脳会合においては,(1)気候変動,クリーンエネルギー,環境,(2)貿易競争力及び国境地帯における競争力の強化,(3)治安及び国防,(4)地域及び国際場裡における協力という4つのテーマを核に話を行った。この中で,メキシコは(2)貿易競争力及び国境地帯における競争力の強化の議論を担当したが,3首脳は以下,3つの点で合意した。
(a)北米地域内の貿易における統一窓口(Ventanilla Unica)の創設。
(b)北米産業のクラスターマップ(Mapeo de Clusteres)の作成。
(c)米加間で既に運用しているGlobal Entryのプラットフォームを用いた,北米地域3ヶ国間の観光プログラム「信頼できる旅行者」(Viajero Confiable)の展開。
(2)気候変動,クリーンエネルギー,環境の分野に係る協力に3首脳共同宣言
ペニャ・ニエト大統領,オバマ大統領,トルドー首相は,(1)クリーンかつ安全なエネルギーの促進,(2)短寿命気候汚染物質(SLCPs)の削減,(3)クリーンかつ効果的な公共交通の促進,(4)自然保護及び同分野に係る科学の促進,(5)気候変動対策に係る国際的リーダーシップの発揮の4項目から成るアクションプランの制定に関し,共同宣言を発表した。
(3)ペニャ・ニエト大統領とオバマ大統領の首脳会談
ペニャ・ニエト大統領とオバマ大統領は,北米首脳会合に先立ち,首脳会談を行った。
(ア)ペニャ・ニエト大統領は,墨米二国間関係の更なる強化を通じて,それぞれの社会の繁栄につなげていくことの重要性を強調した。
(イ)また,ペニャ・ニエト大統領は,経済,貿易の分野のみならず,治安及び協力の分野においても墨米二国間関係の強化に努めたオバマ政権の政治的意志を評価し,オバマ大統領に感謝の意を示した。
(ウ)両首脳は,治安分野に係る協力に関し,見直しを行っていくことで合意した。
(エ)オバマ大統領は,米墨二国間の多分野にわたる協力は非常に重要なものである旨述べた。また,オバマ大統領は,ペニャ・ニエト大統領が示すメキシコの気候変動問題に係るリーダーシップを評価した。
(オ)さらに,オバマ大統領は,同大統領任期中にペニャ・ニエト大統領がワシントンを訪問するよう招待した。