メキシコ政治情勢(7月)
平成28年8月26日
〈概要〉
【内政】
・4日付「エル・ウニベルサル」紙に掲載された世論調査におけるペニャ・ニエト大統領の6月末の支持率は29%であった。
・13日,エンリケ・オチョア前メキシコ電力公社(CFE)総裁が制度的革命党(PRI)党首に就任した。
・16日,アレハンドラ・バラレス前メキシコ市政府教育長官が民主革命党(PRD)新党首に選出された。
・18日,国立宮殿において国家汚職対策システムの関連二次法(実施法)の署名,公布式が催され,同法はペニャ・ニエト大統領の署名によって公布された。
・20日,ヌニョ教育大臣が新教育モデルを発表した。
【外交】
・1日,ペニャ・ニエト大統領は,バチェレ・チリ大統領,サントス・コロンビア大統領,ウマラ・ペルー大統領と第11回太平洋同盟首脳会合に出席した。
・1日~4日,マッタレッラ伊大統領が訪墨し,4日,ペニャ・ニエト大統領と首脳会談を行った。
・7日~8日,ルイス=マシュー外相がロサンゼルスを訪問した。
・18日~19日,ルイス=マシュー外相がサンフランシスコを訪問した。
・21日~22日,ペニャ・ニエト大統領が米国を公式訪問し,22日,オバマ米大統領と首脳会談を行った。
・27日,連邦下院議会において第63期連邦下院墨日友好議連発足式が開催された。
・28日,ペニャ・ニエト大統領はクチンスキー・ペルー大統領就任式典に出席した。
・29日,ペニャ・ニエト大統領がアルゼンチンを公式訪問し,マクリ亜大統領と首脳会談を行った。
〈内政〉
1.ペニャ・ニエト大統領の支持率
4日付「エル・ウニベルサル」紙に掲載された同紙とブエンディア&ラレド社による世論調査の結果によると,ペニャ・ニエト大統領の6月末の支持率は29%(前回3月調査時32%),不支持率は63%(前回調査時56%)であった。
2.制度的革命党(PRI)新党首の就任
(1)13日,6月20日に辞任届けを提出し辞任したベルトローネス前PRI党首の後任として,エンリケ・オチョア前メキシコ電力公社(CFE)総裁がPRI新党首に就任した。任期は2019年8月までとなっている。
(2)11日,オチョア前CFE総裁がPRI党首選に立候補者登録を行った。オチョア候補の立候補には全国農民連合(CNC),メキシコ労働者連合(CTM),全国人民団体連合(CNOP)等,PRIの傘下にある複数の団体からの支持があったものと見られている。13日,立候補者登録締め切り期限までに,オチョア候補以外に立候補者がいなかったことを受け,PRI全国内部プロセス委員会(La Comision Nacional de Procesos internos)が同党の内規に基づき,オチョア前CFE総裁をPRI新党首に選出することを承認した。
(3)オチョア新党首は党首就任記者会見において,21世紀の時代に適した21世紀の政党となるためにPRIの変革を訴えると共に,6月5日の地方選挙でPRIが多くの州知事職を失うこととなった要因として指摘される汚職問題について触れ,汚職疑惑が指摘される自党所属州知事への追求を強めることを約束,党としての汚職問題への取り組みを強調した。また,ペニャ・ニエト政権における構造改革の成果を強調し,同政権が進める国家の歩みに間違いはない旨述べた。
3.民主革命党(PRD)新党首の就任
(1)16日,同2日に党首職を辞任していたバサベ前党首の後任を選出するPRD党首選が実施され,同党全国評議員322名の投票のうち264票を獲得したアレハンドラ・バラレス前メキシコ市政府教育長官が,対抗候補のパブロ・ゴメス前連邦上院議員を破り,PRD新党首に選出された。任期は2017年10月までとなっている。
(2)バラレス新党首の選出を巡っては,党内最大派閥「新左派」,「民主的代案」等,党内の複数の派閥による事前合意が形成されていたとみられており,同新党首が派閥争いによる党内分裂が指摘される同党を一つにまとめることができるか注目される。
(3)バラレス新党首は党首就任記者会見において,PRD党員に対し,市民に寄り添った政治に回帰する旨呼びかけた。また,2018年大統領選に向け,与党PRIを除く全ての党との同盟の可能性を排除しない旨述べた。
4.国家汚職対策システム関連二次法の公布
18日,国立宮殿において国家汚職対策システムの関連二次法(実施法)の署名・公布式が催され,同法はペニャ・ニエト大統領の署名によって公布された。
(1)法の主な内容
国家汚職対策システムは,4の新規立法と3の法改正から成るものであり,その内容は以下の通りである。
(ア)国家汚職対策システム法(新規立法)
(a)国家汚職対策システムを,国家情報公開庁(INAI),連邦検察庁(PGR)汚職対策検察官,連邦行政裁判所,連邦高等司法官(ASF),連邦裁判官審議会(Consejo de la Judicatura Federal),公共行政省(SFP)及び市民参加委員会から構成される機関と規定。関係機関から選出される委員によって構成される委員会によって,国家汚職対策システムは運営される。
(b)国家監査システムの創設及びそのメカニズムを規定。国内における連邦予算の執行状況に関し,同システムが監査,規制,監視を行う。
(イ)連邦監査・アカウンタビリティ法(新規立法)
ASFの権能の強化。
(ウ)行政責任法(新規立法)
市民団体のイニシアティブによる,(1)公職者に資産公開,(2)収入及び納税の証明,(3)利益相反の可能性,に関する報告を義務づける通称「3 de 3」法の導入,また,右報告を怠った又は虚偽の報告を行った公職者への罰則を規定。但し,右報告の一般公開の義務化は見送られた。
(エ)連邦行政裁判所基本法(新規立法)
(a)連邦行政裁判所に汚職問題のみを取り扱う法廷を設置。
(b)行政における汚職行為に対する罰則を規定。同罰則規定は,公職者のみならず,汚職に関与した民間企業にも適用される。
(オ)連邦行政基本法(改正)
SFPの改編。
(カ)連邦刑法(改正)
汚職に係る違法行為の明確化。
(キ)連邦検察庁(PGR)基本法(改正)
PGR汚職対策検察官の任命方法及びその権能を規定。
(2)法案成立の経緯
(ア)6月13日~17日,連邦上院,下院共に臨時国会が召集され,国家汚職対策システムの関連二次法案(実施法案)が成立,同法案が官報掲載のため連邦政府に送付された。
(イ)同法案には通称「3 de 3」法が盛り込まれたが,右情報の一般公開の義務化は見送られたため,野党,市民団体及び経済界からは,骨抜き法案であるとの批判が上がった。また,当初は「3 de 3」法の中身を公共事業落札会社にも適用することとしていたため,経済界が反発,6月15日には,メキシコ経営者連盟(COPARMEX)が,今回の法案成立に反対する抗議活動をメキシコ市の独立記念塔で行った。
(ウ)6月21日,ペニャ・ニエト大統領はCOPARMEX関係者と会談。同23日,同大統領は「3 de 3」法の中身を公共事業落札会社にも適用するとしていた今回の法案は,汚職対策の観点からは適切ではないとして,自らの職権により,連邦議会で可決された法案を議会に差し戻した。
(エ)7月5日,連邦上院で,翌6日,連邦下院で再び臨時国会が召集され,最終的に「3 de 3」法の公共事業落札会社への適用する項目を除外した形で法案を修正の上,同法案を可決した。
(オ)7月18日,国立宮殿において国家汚職対策システムの関連二次法の署名・公布式が催され,同法はペニャ・ニエト大統領の署名によって公布された。
(3)署名・公布式典におけるペニャ・ニエト大統領の発言
(ア)ペニャ・ニエト大統領は,今般の関連二次法の公布による国家汚職対策システムの成立は,市民団体による公職者に対する誠実さ,アカウンタビリティに対する要求が生んだ成果である旨述べた。汚職対策を強く求める国民の要求に対し,国家は国家汚職対策システムを創設した旨述べ,国民の信頼を取り戻すためには,公職者がそれぞれ自己批判的に振る舞う必要性を強調した。
(イ)また,ペニャ・ニエト大統領は,リベラ大統領夫人所有の豪邸,通称「カサ・ブランカ」を巡る企業との癒着疑惑に関し,違法行為は何らなかったものの過ちであった旨,また,同疑惑は同大統領の家族,大統領職の名誉,連邦政府の信頼を傷つけるものであった旨述べ,メキシコ国民の同問題に対する怒りは理解出来るとして,改めて国民に謝罪した。その上で,ペニャ・ニエト大統領は,汚職対策に対する同大統領の責務を強調した。
(4)アンドラーデ公共行政大臣の辞任
また,同日,国家汚職対策システムの発効により,公共行政大臣は,大統領の任命した者について上院議会の承認(3分の2以上)を要するように変更されたことを受け,アンドラーデ公共行政大臣は,新しい法的枠組みで公共行政大臣が任命されることが適当として自身の辞任届を提出した。
5.新教育モデルの発表
(1)20日,ヌニョ教育大臣が新教育モデルを発表した。同教育モデルでは,6つの教育達成目標として,(1)言語,コミュニケーション,(2)批判的及び思慮深い思考,(3)価値観,共同生活,協力,(4)心身の発達,(5)メキシコと世界,(6)芸術,文化,環境が掲げられ,また,英語教育の重視が図られる。さらに,各学校がそれぞれの考えに応じ,社会的,文化的活動に従事する時間を全授業数の20%まで設けることができるよう定める等,学校,教師,保護者等地域コミュニティーの教育現場における自治権拡大が謳われている。
(2)同教育モデルは全国教員労働組合(SNTE),学術関係者,保護者等を対象とした全国的なフォーラムでその是非が検討されることとなるが,ヌニョ教育大臣は,教育改革に強固に反対し,幹線道路及び鉄道網の封鎖,商業施設へのアクセスのブロック等により経済活動にも多大な影響を与えている教育労働者全国協議会(CNTE)に対し,反対のための反対ではなく,新教育モデルをより良いものとするための民主的且つ建設的な対話に加わるよう呼びかけた。
〈治安〉
1.チアパス州サン・フアン・チャムーラ市長の殺害事件
23日,チアパス州サン・フアン・チャムーラ市のドミンゴ・ロペス・ゴンサレス市長(緑の党所属)が殺害される事件が発生した。23日午前7:00頃,公共事業費及び伝統手芸品への援助金を巡り,500名~800名が市庁舎前で市長と口論となったところ,一部の武装したグループが発砲,市長及び他の市関係者4名を殺害した。
2.ゲレロ州プンガラバト市長の殺害事件
(1)23日深夜,ゲレロ州プンガラバト市のアンブロシオ・ソト市長(PRD所属)が殺害される事件が発生した。同市長はミチョアカン州とゲレロ州の州境を車で走行中に,武装集団に襲撃を受けた。同市長が乗車していた車両には600の銃弾が打ち込まれており,治安当局は同事件を犯罪組織「ファミリア・ミチョアカーナ」又は「テンプル騎士団」によるものと見て,捜査を行っている。
(2)過去10年間で市長が殺害された事件
25日付当地「ミレニオ」紙の報道によると,過去10年間で市長が殺害された事件は45件にのぼる。ミチョアカン州は7件で最多であり,その後をオアハカ州,ゲレロ州,ドゥランゴ州が5件ずつで続いている。
3.犯罪組織関連の犯罪同行
内務省の発表によれば,7月の犯罪組織がらみの殺害件数は1,054件となり,2013年3月以降で最悪の数値を記録した。ゲレロ州169件,ミチョアカン州117件,チワワ州88件についで,グアナファト州が75件でワースト4位となっている。
〈外交〉
1.ペニャ・ニエト大統領の第11回太平洋同盟首脳会合への出席
1日,ペニャ・ニエト大統領は,バチェレ・チリ大統領,サントス・コロンビア大統領,ウマラ・ペルー大統領と第11回太平洋同盟首脳会合に出席した。会合後,4首脳は共同記者会見を開き,今般の会合で取りあげられた議題,合意点及び近年の成果に関し,概要以下の通り説明を行った。
(1)議題
(ア)太平洋同盟及びオブザーバー国との関係の拡充
太平洋同盟のメカニズムは開かれたものであり,複数の国が同同盟との関係強化に取り組んできた。今回の第11回首脳会合には,マクリ・アルゼンチン大統領,ソリス・コスタリカ大統領が出席した。
(イ)加盟国における中小企業を中心とした包括的生産性の促進
太平洋同盟起業家基金(Fondo del Emprendedor de la Alianza Pacifica)の具体化に関する議論の前進。
(ウ)民間セクターとの連携による統合の強化
太平洋同盟は,教育,公共調達,労働者の移動等に係る勧告を始めとするプエルトバラスの太平洋同盟企業家による宣言(Declaracion Empresarial de la Alianza del Pacifico de Puerto Varas)を受け取った。
(2)合意点及び近年の成果
(ア)2015年7月20日,枠組み協定が発効。2016年5月1日,枠組み協定追加議定書が発効。
(イ)オブザーバー国が32ヶ国から49ヶ国に拡大。
(ウ)ASEANとの予備的枠組み交渉の進展。APECとの非公式会合の実施。本年6月のカナダとの連携協定(acuerdo de asociacion)への署名。
(エ)加盟国4外相による,移民の移動を容易なものとすることを目的とした4外務省間の情報相談メカニズム実施に関する署名。
(オ)太平洋同盟枠組み協定の第二追加議定書(Segundo Protocolo Modificatorio al Protocolo Adicional Acuerdo Marco de la Alianza del Pacifico)への署名。
2.マッタレッラ伊大統領の訪墨
1日~4日,マッタレッラ伊大統領が訪墨し,4日,ペニャ・ニエト大統領と首脳会談を行った。両首脳は,戦略的パートナーとしての二国間関係強化に向けたエネルギー,教育,司法、スポーツ・文化に係る共同アクション計画を制定することで合意した。
3.ルイス=マシュー外相のロサンゼルス訪問
7日~8日,ルイス=マシュー外相がロサンゼルスを訪問。在ロサンゼルス総領事館を訪問した他,Programa DREAMers(メキシコ系米国人学生への奨学金プログラム)等複数の奨学金プログラムを受けている学生たちと会談した。
4.ルイス=マシュー外相のサンフランシスコ訪問
18日~19日,ルイス=マシュー外相がサンフランシスコを訪問。リー・サンフランシスコ市長と会談した他,サンフランシスコ在住メキシコ人コミュニティー(企業家,学術関係者)らと面談した。
5.ペニャ・ニエト大統領の米国公式訪問
21日~22日,ペニャ・ニエト大統領が米国を公式訪問し,22日,オバマ米大統領と首脳会談を行った。
(1)首脳会談の議題
22日,ペニャ・ニエト大統領とオバマ大統領が首脳会談を行い,経済協力,環境分野に係る協力,保健分野に係る協力,地域の安全及び司法協力,移民・難民問題,米墨キューバ間の海上国境問題等に関し意見交換を実施した。同首脳会談の中では,墨米両国の新しい対話メカニズムとしての「ハイレベル経済対話(DEAN)」,「高等教育・研究・イノベーションに関する二国間フォーラム(FOBESII)」及び「墨米起業・イノベーションのための審議会(MUSEIC)」の成果が強調された。
(2)共同記者会見におけるペニャ・ニエト大統領の発言概要
(ア)墨政府は,米国の選挙プロセスを多大な関心を持って観察するが,同選挙のプロセスに意見を述べたり,関与することはない。次期大統領が如何なる人物になろうとも,墨米両国関係を更に拡大することに関し,建設的且つ肯定的な善意を有するメキシコに出会うであろう。11月の選挙で選出されるこの偉大な国家のリーダと協働するという私(ペニャ・ニエト大統領)の揺るぎない意志をここに表明する。
(イ)また,ヒラリー民主党大統領候補及びトランプ共和党大統領候補に敬意を表すると共に,どちらの候補が大統領に選出されたとしても,墨米関係に関し,率直且つ開かれた対話を行うことを提案する。
(ウ)2013年により,墨米両国は,北米地域の競争力強化を目的とした多分野にわたるテーマをアジェンダとして設定し,また,オバマ大統領とは,両国が到達した成果を制度化することの重要性で一致した。このような両国の取り組みの成果は以下の通りである。
(a)「高等教育・研究・イノベーションに関する二国間フォーラム(FOBESII)」により,本年,64,000人以上のメキシコ人学生が米国に留学する。
(b)両国政府高官によって構成されるハイレベル経済対話(DEAN)は,疑いなく,両国の更なる統合,競争力の強化,成長のためのプラットフォームに転換している。今般の首脳会談において,我々両首脳は,DEANから生まれる両国の利益を今後更に拡大させることを目的に,恒久的な枠組みとすることで合資した。
(c)また,両国国境地帯においては両国共同による貨物への事前検査プログラムを行っており,貨物検査に係る費用の50%及び時間の60%を削減している。
(d)二国間航空協定が発効することにより,二国間のフライトが拡充され,両国間の接続が強化される。
(e)今日,メキシコのエネルギー産業をより解放された競争力のある市場とすることを目的に,エネルギー・ビジネス審議会(Consejo de Negocios de Energia)を正式に発足した。
(エ)オバマ大統領とメキシコは良い友情関係を築き,同大統領及び同政権はメキシコにとっての良い隣人である。とりわけ,3,500万人を超えるメキシコにルーツを持ち,米国に在住する移民に対し,雇用の創出という形で援助を行う決断を行ったことを評価する。オバマ大統領は墨米二国間関係に対する強い責務を有したリーダであり,両国の関係は今日,歴史上で最も良い時を迎えている。
6.第63期連邦下院墨日友好議連発足式
27日,連邦下院議会において第63期連邦下院墨日友好議連発足式が開催された。詳細は以下大使館ホームページで閲覧可。
(https://www.mx.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/00_000639.html)
7.ペニャ・ニエト大統領のクチンスキー・ペルー大統領就任式典への出席
28日,ペニャ・ニエト大統領がクチンスキー・ペルー大統領就任式典に出席した。また,墨大統領府は同日付で同式典に係るペニャ・ニエト大統領のメッセージを発出した。
(1)クチンスキー・ペルー大統領就任式に招待されたことは光栄なことである。ウマラ前大統領は,明確なビジョンを有し,現実的且つ大胆な手腕によって,ペルーを発展と繁栄の道に導いた政治家であったことを評価する。同政権下においては,国際社会の困難さにもかかわらず,ペルーは確かな経済成長を遂げ,このことは地域の安定にとっての重要な要因となった。
(2)クチンスキー政権においても,近年,メキシコとペルーが築いてきた素晴らしい二国間関係を維持するための対話を継続し,両国を結びつける友好関係を強化できるものと確信している。
(3)ペルーとメキシコはおよそ2世紀前から親しい友情関係を培ってきた。過去に目を移せば,両国に共通し,我々を結びつける先スペイン期の重要な文明の遺産という豊かな歴史が思い出される。今日,両国の関係は最も良い時期を迎えている。
(4)メキシコにとってペルーはラテンアメリカ・カリブ諸国で第5番目の貿易相手国であり,2015年、両国の貿易額は23億米ドルを上回った。2014年,両国は政治対話を深化させ,文化,経済,両国が共有するアジェンダに係る協力を強化することで合意した。
(5)一部の国々が孤立主義的動きを見せる中,チリ,コロンビア,ペルー,メキシコは,自由経済及び包括を基礎とする地域統合のプラットフォームとしての太平洋同盟を推進してきた。我々は,進むべき道は扉を閉ざすことではなく開放することであると確信している。我々は人,財,サービス,資本の自由な移動に向け,断固として前進していく。太平洋同盟のメカニズムは,ラテンアメリカの歴史上,最も広く且つ深い,また革新的な統合のプロセスである。ペルーが太平洋同盟議長国を務めた期間(2015年7月~2016年7月),我々はオブザーバー国との関係強化に努めると同時に,APECとの対話を構築してきた。また,太平洋同盟加盟国における中小企業支援を推進してきた。
(6)太平洋同盟結成以降,メキシコとペルーはあらゆる分野における二国間対話を増加させてきた。両国は発展に係る共通のビジョンを共有しており,両国の政治がそれぞれの社会の更なる繁栄に寄与すること目的に,協働していく。メキシコとペルーは,両国国民により良い機会を提供できるよう二国間の友情及び協力関係を強化していく。
8.ペニャ・ニエト大統領のアルゼンチン訪問
(1)29日,ペニャ・ニエト大統領がアルゼンチンを公式訪問し,マクリ亜大統領と首脳会談を行った。墨亜両国間で漁業・農業,ブドウ栽培・ワイン醸造,植物衛生,化学・テクノロジー他に係る17の二国間協力に関する合意に署名が行われた。また,両国国民に対し機会を拡大し,両国の更なる発展及び社会正義を実現するために,二国間関係の新たな時代の構築を促進することで両国は合意した。
(2)共同記者会見におけるペニャ・ニエト大統領の発言概要
(ア)墨亜両政府は,両国社会が更なる発展及び社会正義を実現し,両国国民に対する機会を拡大するために進むべき共通のビジョンを出発点とし,両国の共通理解,共同関係をより重要なものとしていくことを望んでいる。両国政府は,二国間関係をより緊密なものとする政治的意思を有している。
(イ)今般の公式訪問において17の合意に署名が行われたが,その中でも,29年前に両国で制定され,今日まで改訂が行われてこなかった経済補完協定(Acuerdo de Complementaridad Economica(ACE6))の見直し及び拡大に関する合意は強調されるべきである。
(ウ)また,昨年メキシコを訪れたアルゼンチン観光客は30万人を数え,40%増を記録したが,両国間の更なる観光促進のための合意も重要なものである。
(エ)マクリ亜大統領にメキシコ訪問を招待したが,来年,同大統領がメキシコを訪問する約束を得た。