メキシコ政治情勢(11月)

平成28年12月8日
 
〈概要〉
【内政】
・17日,メキシコ中銀理事会は政策金利を50ベーシスポイント(0.5%)引き上げ,5.25%にすることを決定した。
・20日付け,当地「エル・ウニベルサル」紙とBuendia & Laredo社の共同世論調査によるペニャ・ニエト大統領の支持率は,25%という結果であった。
【外交】
・4日,ペニャ・ニエト大統領はメキシコを公式訪問中のシュナイダー=アマン・スイス大統領と首脳会談を行った。
・9日,ペニャ・ニエト大統領は,大統領官邸において,記者団を前に米大統領選挙結果に対する声明を発表した。
・14日,ペニャ・ニエト大統領とオバマ米大統領は電話首脳会談を行った。
・14日,ペニャ・ニエト大統領は,メキシコを公式訪問したフアン・カルロス・バレーラ・パナマ大統領と首脳会談を行った。
・16日,墨外務省は,駐米メキシコ大使館及び50の駐米領事館を通じて展開する11項目からなる行動計画「我々は君と共にいる(Estamos contigo)」を発表した。
・18日~19日,ペニャ・ニエト大統領はAPEC首脳会合他への出席のためペルーを訪問した。
・22日,ルイス=マシュー外相は,中米北部三角地帯(グアテマラ,エル・サルバドル,ホンジュラス)外相と会談した。
・29日,ペニャ・ニエト大統領は,フィデル・カストロ・キューバ前国家評議会議長の葬儀に参列した。
 
〈内政〉
  • 政策金利の引き上げ
 17日,メキシコ中銀理事会はインフレ圧力を相殺し,期待インフレ率を安定させることを目指すために,政策金利を50ベーシスポイント(0.5%)引き上げ,5.25%にすることを決定した。
 
2.ペニャ・ニエト大統領の支持率
20日付け,当地「エル・ウニベルサル」紙とBuendia & Laredo社による共同世論調査によるペニャ・ニエト大統領の支持率は,25%(前回7月調査時29%),不支持率は66%(同63%)という結果であった。本年8月31日にペニャ・ニエト大統領がトランプ米大統領選共和党候補(当時)と会談したことに対する評価は,66%が間違いであった,30%が正しかったという回答結果であった。
 
〈治安〉
1.犯罪が企業活動に与える影響に関する調査結果の発表
 28日、国立統計地理情報院(INEGI)が,犯罪が企業活動に与える影響に関する調査結果を発表した。
(1)犯罪被害に遭った企業数
 2015年,何らかの犯罪被害に遭った企業数は,1万社あたり3,548社となっており,全体の約35.5%が犯罪被害に遭ったこととなる。この数字は,2013年同調査の33.6%から約2%の悪化。
(2)経済的損失
 2015年,治安情勢の悪化,犯罪数の増加による経済的損失は1,389億ペソと推定される。この数字は2013年同調査の1,190億ペソから16.7%の悪化,また,GDP全体の0.73%を占める。
(3)州別治安状況への不安度
 INEGIは2016年2月から4月の期間に,州別に企業に対し治安情勢に不安を感じているかどうかアンケート調査を行ったところ,不安があると回答した企業の割合が多い州,及び,少なかった州は以下のとおり。
(1)企業が治安情勢への不安があると回答した割合の多い州
(1)タバスコ州:94.2%,(2)ゲレロ州:91.4%,(3)ベラクルス州:88.9%,(4)モレロス州:84.4%,(5)タマウリパス州:83.7%,(5)メキシコ州:83.7%,(7)サカテカス州:82.8%,(8)メキシコシティ:78.1%
(2)企業が不安があると回答した割合の低い州
(1)ユカタン州:35.3%,(2)ナジャリット州:39.1%,(3)バハ・カリフォルニア・スル州:43:0%,(4)ドゥランゴ州:43.8%,(5)ケレタロ州:47.0%,(6)チワワ州:50.3%,(7)アグアスカリエンテス州:51.5%
 
〈外交〉
1.シュナイダー=アマン・スイス大統領の訪墨
(1)4日,ペニャ・ニエト大統領は国立宮殿にて,メキシコ-スイスの国交樹立70周年の枠組みでメキシコを公式訪問中のシュナイダー=アマン・スイス大統領と首脳会談を行い,ペニャ・ニエト政権下で推進される構造改革によってもたらせる変化,とりわけ,エネルギー分野における変化に関し,意見交換を行った。
(2)ペニャ・ニエト大統領は,エネルギー改革によるメキシコ石油公社(PEMEX)をより競争力のある企業に改革する取り組みを紹介,また,エネルギー改革によって,外国企業にもメキシコのエネルギー分野に投資する機会が生まれている旨述べた。
(3)シュナイダー=アマン大統領の公式訪問の枠組みで,航空サービス,教育・文化,技術・専門家養成,産業,医療の分野における協力に関する5つの合意が署名された。
(4)また,両国首脳は,今般のシュナイダー=アマン大統領のメキシコ公式訪問の成果,及び,今後の2国間関係における異なる分野における目標に関する共同声明を発出した。
 
2.米大統領選挙結果に対するペニャ・ニエト大統領の声明
9日15時,ペニャ・ニエト大統領は,大統領官邸において,記者団を前に米大統領選挙結果に対する声明を発表した。
(1)墨米関係の新たな章が開かれた。我々メキシコ人はこのような新たな段階を確信及び決意を持って迎えるが,最も重要なのは団結することである。墨米国境双方のメキシコ人は責任感を持って引き続き働いていく。創造力と努力,そして墨企業家の能力とメキシコ人の能力により,協力及び繁栄への新たな道が拓かれるであろう。
(2)米国社会とメキシコ人との紐帯は切り離すことはできないものであり,米国社会の中の日々墨米両国に貢献をしているメキシコ人社会がその好例である。自分は墨大統領として,世界中のメキシコ人の権利,幸福そして利益のために全ての力を尽くすつもりである。自分の優先順位は,これまでもそしてこれからも,メキシコのために働くこと,そしてメキシコ人を保護することである。
(3)トランプ次期大統領は,昨晩(8日)の勝利宣言の中で,全ての人や国家との間で敵意ではなく一致点を求め,争いではなく協調を求めると述べていたが,メキシコはかかるトランプ次期大統領の見解を共有する。
(4)先ほど自分は,トランプ次期大統領と電話で会談し,同次期大統領及びその家族に対してその勝利を祝福した。同次期大統領との電話会談は,温かく親切であり,敬意に満ちたものであった。我々は,信頼そして共通の将来の関係のために共に働くことで一致した。メキシコと米国はパートナーであり盟友であり隣人であるところ,両国関係は相互にとって重要であり,メキシコが向上すれば米国が向上し,米国が向上すればメキシコが向上する。かかる見解の下,自分のチームとトランプ次期大統領のチームが両国社会の安全,協力,繁栄等の共通の利益を含む共通の課題について協議するために調整を開始することとし,可能であれば米の政権移行期間に自分とトランプ次期大統領との間で会談を行い,今後の方向性について一致をみたいと考える。
(5)メキシコ政府は,墨米関係のかかる新しい段階において,両国社会において利益をもたらす機会を求めていく。また,国家としての強さを持ちつつ,両国の主権を相互に尊重することによって,建設的な精神でかかる機会を求めていく。
 
3.米大統領選挙結果に対するメキシコ政府の主な反応
(1)ペニャ・ニエト大統領の発言
 10日,第58回ラジオ・TV週間のイベントに出席したペニャ・ニエト大統領は,墨米関係は新しい章を迎える旨述べ,トランプ大統領の誕生に対し,メキシコ人は団結しなければならない旨述べた。その上で,この新しい墨米関係においても,墨米二国間の協力関係は継続されると信じている旨,トランプ政権とも,両国社会の利益につながる新たな二国間関係を構築できることを楽観視している旨述べた。
(2)ルイス=マシュー外相の発言
 10日,ルイス=マシュー外相がメキシコ大学・高等教育機関連盟(ANUIES)が主催したセミナーにおいて講演を行い,墨米関係に関し,メキシコ人の尊厳及び権利は,メキシコ国内外を問わず,交渉の余地のないものであり,米国との二国間関係を構築し続けるためには,相互理解,信頼,そして,何よりも,お互いに尊敬し合う姿勢が必要である旨述べた。
(3)グアハルド経済相の発言
(ア)10日,グアハルド経済相はメディアの電話インタビューに応え,メキシコは北米におけるNAFTAの戦略的重要性について説明するために,トランプ次期大統領と対話する用意がある旨,しかし,その対話は再交渉を意味するものではない旨述べた。
(イ)また,グアハルド経済相はTPPに関し,2016年末までに日本,メキシコ,ニュージーランド,オーストラリア,シンガポール,ベトナム,マレーシアの7カ国で批准されることを期待する旨,米国議会がTPPを批准しない場合,米国の批准を待つべきとの条項などが可能か,他のTPP署名国と話し合う必要がある旨述べた。 
(4)オソリオ内務相及びグアハルド経済相と企業調整協議会(CCE)との会合
(ア)11日,オソリオ内相及びグアハルド経済相と企業調整協議会(CCE)との会合が開かれ,NAFTAの再交渉に関し,投資及びメキシコの雇用を守る目的のために必要な修正があれば,共同で取り組む旨合意した。また,トランプ次期米大統領が公約した不法移民の強制送還が仮に実施された場合,メキシコに戻ってくる不法移民のメキシコにおける雇用問題に関し,CCE加盟企業が同移民たちを雇用する努力を行う旨の合意が,墨内務省とCCEの間で取り交わされた。
(イ)オソリオ内相及びグアハルド経済相は,米大統領選挙の結果がもたらした新しい状況に対し,メキシコは立ち向かうことが可能である旨述べた。また,グアハルド経済相は,連邦政府と経済界は,この挑戦を機会に変えるために共同で意識決定をとる旨,市場統合の維持及び新たな市場の開拓のために,TPPの発効を目指す姿勢に変わりはない旨述べた。
(ウ)オソリオ内相は,メキシコは新しい状況に対応する準備は整っている,連邦政府は,墨米二国間関係が両国の利益となることを可能とするコミュニケーションと相互理解の架け橋の構築に取り組む旨述べた。
(5)ミード大蔵公債相の発言
 11日,連邦下院議会において,2017年度歳出案が可決されたことを受け記者会見を開いたミード大蔵公債相は,2016年度比で約33億ペソ削減となった約4兆8,888億ペソの歳出案について,メキシコが置かれた情勢に対応することを可能とする歳出案である旨述べた。その上で,不安定な外的要因を前に,連邦政府は更なる予算削減等,必要な処置をとる可能性がある旨述べた。
 
4.墨米首脳電話会談
(1)14日,ペニャ・ニエト大統領とオバマ米大統領は電話首脳会談を行い,両国の利益となっている二国間関係の深化による,経済,犯罪組織対策,移民対策,法の支配の強化に係る進捗を評価した。
(2)ペニャ・ニエト大統領は,オバマ大統領を,メキシコにとっての最良の友(gran amigo)であり,盟友であるとの認識を表明した。
(3)これに対し,オバマ大統領は,米国はメキシコとの関係及び協力に依存している旨,また,この関係を評価している旨述べた。
(4)両首脳は,両国の利益となる墨米二国間の制度的協力メカニズムに対する信頼を表明した。
 
5.フアン・カルロス・バレーラ・パナマ大統領の訪墨
(1)14日,ペニャ・ニエト大統領は,メキシコを公式訪問したフアン・カルロス・バレーラ・パナマ大統領と首脳会談を行った。ペニャ・ニエト大統領は,メキシコとパナマは同じ考えを共有した強固な民主主義国家であり,両国は二国間の協力関係及び貿易をさらに強化する決意を有している旨述べた。
(2)バレーラ・パナマ大統領のメキシコ公式訪問の枠組みで,農業,生物学,消費者保護の分野における協力の合意,及び,税関,民間航空,治安の分野における協力メカニズムの見直しに関する合意が行われた。
(3)ペニャ・ニエト大統領は,最近の移民の増加現象を前に,メキシコ,パナマ両国は移民の人権を保護するために対応する共有の責務を有している旨確認し,この目的を達成するための戦略的位置づけとして,両国は,本年国連で採択された「難民及び移民のためのニューヨーク宣言」の付属文章に盛り込まれた移民・難民対策を定める二つの国際的取り決めの2018年採択に向け,共に取り組んでいく旨述べた。
 
6.米国在住メキシコ人保護のための墨外務省による11項目からなる行動計画
16日,墨外務省は,米国在住メキシコ人が暴力行為及び詐欺行為の被害者となる事態を防ぐことを目的に,駐米メキシコ大使館及び50の駐米領事館を通じて展開する11項目からなる行動計画「我々は君と共にいる(Estamos contigo)」を発表した。
(1)11項目からなる行動計画内容
(1)メキシコ人コミュニティーに対し,メキシコ人対応情報センター(CIAM)の存在を広報する。同センターの米国からのフリーダイヤルは1850-54-63-63-95であり,支援,情報,領事保護が必要な者に,メキシコ政府との最初のコンタクト先を提供する。
(2)移民政策に対する疑問,及び,あらゆるトラブルの報告を受け付ける24時間対応電話番号1800を設置する。
(3)メキシコ人コミュニティーの間で,移民の現状に関する情報,領事館及び移民を対象とした支援サービスを提供する者の連絡先を提供する携帯用無料アプリ「MiConsulmex」の使用を促進する。
(4)より多くのメキシコ人コミュニティーに対し,保護,及び,諸手続きのサービスを提供することを目的とした移動領事サービスの実施回数を増加する。
(5)全ての米国在住メキシコ人が身分証明書を保有することを目的に,在留証明書,パスポート,出生証明書の発行手続きのために提供している面会機会を増やす。
(6)米国で出生したメキシコ人の子供の出生届けの提出,及び,出生証明書の発行を促進する。
(7)領事館保護局の開館時間を拡大する。
(8)金融相談のための窓口開設を急ぐとともに,全ての領事館で,銀行の利用率を上昇させるキャンペーンを展開する。
(9)米国在住メキシコ人の日々の生活に利する意思決定が行われるよう,米国の地方政府との対話を強化する。
(10)人権団体との連携を強化する。
(11)メキシコ人コミュニティー対し,行政処分又は刑事罰の対象となる行動,衝突を避けるよう呼びかける。
(2)発表までの経緯
 11月8日に実施された米大統領選挙において,米国にいる約1,100万人の不法移民の強制送還を公約に掲げたトランプ共和党候補が勝利したことを受け,同12日には,ルイス=マシュー外相がサダ駐米メキシコ大使及び在米メキシコの複数の領事との会議を開き,今後の対応策を協議した他,同14日には,ペニャ・ニエト大統領がルイス=マシュー外相に対し,米国在住メキシコ人に対する保護の強化,及び,領事サービスに関する情報提供の強化を指示する等,メキシコ政府は米国在住のメキシコ人の保護を目的とした対策の準備を進めてきた。
 
7.ペニャ・ニエト大統領のAPEC首脳会合他への出席
 18日~19日,ペニャ・ニエト大統領はAPEC首脳会合他への出席のためペルーを訪問した。
(1)APEC・CEOサミット,第10パネル「貿易を再デザインする」
(ア)APEC・CEOサミット,第10パネル「貿易を再デザインする」に出席したペニャ・ニエト大統領は,NAFTAに対するメキシコの姿勢に関し,同協定をより力強く,近代的なものとし,北米地域をより競争力のある地域とするために,同協定の近代化を模索する旨述べた。
(イ)また,同大統領は,(トランプ次期大統領の誕生による)新しい墨米関係に関し,墨米両国の戦略的同盟関係を更に強化する制度及び手段であるNAFTAをより強固なものとする新しい機会をもたらすものであり,メキシコは楽観的な姿勢を有している旨述べた。
(ウ)同大統領は,メキシコは,米国との新しい二国間の議題を設定するための道として,対話を最優先しなければならない旨,他国と同様,米国との新しい関係を構築し始める状況にある旨述べるとともに,貿易においては,今日,墨米両国の間に存在する戦略的関係が極めて重要である旨述べた。
(エ)同大統領は,NAFTAはメキシコにとって非常に重要な制度であり,メキシコは米国にとって,また,米国はメキシコにとって戦略的パートナーである旨述べた。また,メキシコにとって,地政学上の条件から,最も中心的な関係は米国との関係であることに疑いはなく,それ故に,メキシコは北米地域のより強固な統合に取り組んできており,貿易,地域統合の面で今日の水準まで達している旨述べた。同大統領は,メキシコは,孤立ではなく統合を通じた北米地域の競争力及び生産力の向上を促進する考えに基づき,今後も取り組み続ける旨述べた。
(2)APEC首脳会合
(ア)APEC首脳会合において,ペニャ・ニエト大統領は,米国の次期政権(トランプ政権)に対し,TPPの利点を分析するための時間を与えることが重要であるというオバマ米大統領他の意見に同意した。その上で,ペニャ・ニエト大統領は,今日,我々の社会の繁栄のメカニズムとして開放経済の統合を促進することが,かつてないほど大きな課題として求められている旨述べた。
(イ)ペニャ・ニエト大統領は,社会の基礎までその利益が行き渡っていないことにより,自由貿易に対する不満,不信が蔓延する複雑な状況にあるが,世界銀行によれば,1990年~2010年までに,自由貿易は世界の極貧人口を半減させてきた旨述べた。その上で,メキシコは既にAPEC加盟国の大半との自由貿易によって利益を得ており,加盟国との貿易を通じて,メキシコは生産力を有する国家へと変貌してきた旨述べた。同大統領は,具体例として,1985年,メキシコの輸出に占める割合は55%が石油関連製品,38%が製造品であったものが,2015年には,石油関連製品が僅か6%,製造品が89%となっている旨述べた。
(3)APEC首脳とAPECビジネス諮問委員(ABAC)との対話
(ア)ペニャ・ニエト大統領は,APEC首脳とAPECビジネス諮問委員(ABAC)との対話において,自由貿易は世界レベルにおける成長及び発展の最も重要な牽引車である旨述べた。その上で,グローバル化及び自由貿易を格差及び低成長の要因として批判する声に対し,APEC加盟国に対し,地域統合を強化する努力を加速させることを呼びかけた。
(イ)ペニャ・ニエト大統領は,APECはアジア太平洋地域における自由貿易の牽引車とならなければならない旨述べ,TPPの成立は,この意味においても重要な一歩となる旨述べた。さらに同大統領は,TPPはより多くの企業及び人々に対する利益を拡大することに貢献する潜在能力を有するものである旨述べた。
(4)APEC首脳との非公式会談
(ア)ペニャ・ニエト大統領は,APEC首脳と太平洋同盟首脳との非公式会談に出席し,APECと太平洋同盟の間で,中小企業支援のための相乗効果を生み出す重要性について述べた。
(イ)ペニャ・ニエト大統領は,中小企業支援を目的に,太平洋同盟は,(1)起業家基金を通じた中小企業への資金援助,(2)貿易手続き簡素化のための行動,(3)官民連携による企業発展センター・ネットワーク(Red de Centros de Desarrollo Empresarial)を通じた中小企業への技術支援,(4)情報交換,及び,協力の4項目からなる主要な共同行動計画を促進する旨述べた。
(5)トルドー・カナダ首相との首脳会談
(ア)ペニャ・ニエト大統領は,APEC首脳会合の枠組みでペルーを訪問中のトルドー・カナダ首相と二国間首脳会談を行った。両首脳は,二国間の議題の見直しを行うとともに,とりわけ,本年6月27日にペニャ・ニエト大統領がカナダを公式訪問した際に署名された合意文章の進捗を確認した。
(イ)ペニャ・ニエト大統領は,墨加両国政府の緊密な協力体制を評価した。さらに同大統領は,二ヶ国の協力関係により,本年12月1日より,カナダ入国に際し,従来メキシコ人に課されていたビザが廃止されることについて歓迎の意を示した。
(ウ)両首脳は,両国政府は自由貿易に対して責任を有しており,両国国民の利益の観点から,今後も両国が自由貿易の促進に共同で取り組んでいく旨述べた。
(エ)ペニャ・ニエト大統領は,両国の友好関係を更に強化することを目的に,トルドー・カナダ首相がメキシコを訪問するよう招待した。
 
8.ルイス=マシュー外相と中米北部三角地帯外相との会談
(1)22日,グアテマラで開催されたルイス=マシュー墨外相,モラレス・グアテマラ外相,マルティネス・エルサルバドル外相,アグエロ・ホンジュラス外相代行による臨時外相会談の結果として,メキシコ及び中米北部三角地帯の構成国(グアテマラ,エル・サルバドル,ホンジュラス)は,米国に在住する当該4カ国出身の移民に対する保護,及び,その権利の保証のために,協力できる分野を模索することで合意した。
(2)会談において,4カ国外相は,国境地域開発のための協力,4カ国間の貿易,及び,4カ国間の領事サービスの連携を強化していく旨合意した。また,4カ国外相は,4カ国出身の移民コミュニティーに対し,冷静さを保つこと,情報収集のために近くの領事館に足を運ぶことを呼びかけた。
(3)ルイス=マシュー外相は,墨及び中米北部三角地帯の統合の重要性に言及するとともに,移民問題に対応できる繁栄した同地帯を構築することに対するメキシコの責任に関し述べた。また,同外相は,国境地帯及びメキシコ国内における移民の人権保護に対するメキシコの姿勢は変わらない旨述べた。
(4)ルイス=マシュー外相は,開発及び競争力の分野において,メキシコが中米諸国と引き続き取り組んでいく具体的行動として,(1)メキシコと中米諸国間の自由貿易協定を活用する,(2)メキシコと中米諸国間の貿易における戦略的要衝として,チアパス港のような経済特区を設置する,(3)ユカタン基金(Fondo Yucatan)を通じた中米地域におけるインフラ整備への援助を継続する,(4)メキシコ政府が展開してきた「飢餓のないメソアメリカ」プログラム,又は,ドイツ国際協力公社,及び,セーブ・ザ・チルドレンと共同で行ってきたプログラムを継続し,中米北部三角地帯からの保護者のいない未成年移民の防止を行う,との4項目を挙げた。
 
9.第8回MIKTA外相会合
(1)ルイス=マシュー外相の代理として,デ・イカサ筆頭次官は,24日~25日の日程でオーストラリアのシドニーで開催された第8回MIKTA(墨,豪,インドネシア,韓国,トルコ)外相会合に出席した。
(2)今回の第8回MIKTA外相会合では,参加国の外相は様々な分野における重要な合意に関する共同宣言を採択した。MIKTA参加5カ国は,保護主義に対する反対の立場を表明するとともに,国際貿易,国際投資を更に促進していくことで意見が一致した。また,2017年にメキシコのカンクンで開催される国連世界防災会議を成功裡に終わらせるために協力する旨確認した。さらに,気候変動問題への取り組み,及び,パリ協定の実行に対する各国の責任を確認した。
(3)技術革新が経済成長のための潜在力を引き上げるという認識に基づき,MIKTA参加国は,参加国の若者を中心に,技術革新及び起業の分野における協力ネットワークを促進することを発表した。
(4)現在の国際情勢は外交における人材の強化を要求しているという認識に基づき,MIKTA参加国は,MIKTA外交官コミュニティー(Comunidad diplomatica MIKTA)を創設する旨合意した。同コミュニティーの創設により,MIKTA参加国の外交官の間の人材交流,人材養成における協力等が促進される。また、MIKTA参加国は,各国の領事サービスにおけるグッドプラクティスを共有する考えを示した。
(5)デ・イカサ筆頭次官は,MIKTA参加国の外相とそれぞれ会談し,メキシコとの二国間関係,及び,2017年の二国間の議題について意見交換を行った。
 
10.ペニャ・ニエト大統領のフィデル・カストロ・キューバ前国家評議会議長の葬儀参列
(1)29日,ペニャ・ニエト大統領は,フィデル・カストロ・キューバ前国家評議会議長の葬儀に参列し,メキシコ国民を代表し,キューバ,及び,その国民に対し,同国の社会的包摂及び繁栄への歴史的歩みに友人として今後も寄り添っていくメキシコの約束を表明する旨,また,メキシコは,キューバが経済面及び政治面においてより開かれた国にとなるよう,自らの意思により歩んできた道のりを評価する旨述べた。
(2)ペニャ・ニエト大統領は,2014年にキューバで開催されたCELAC首脳会合において,フィデル・カストロ・キューバ前国家評議会議長と会談を行い,キューバを公式訪問した旨述べた。また,ペニャ・ニエト大統領は,同大統領のキューバ公式訪問以降,メキシコとキューバは,広範囲にわたる近代的なアジェンダを構築してきた旨,また,昨年11月のラウル・カストロ・キューバ国家評議会議長のメキシコへの国賓訪問により,両国の関係は強化されており,今後も両国はその友好関係の強化を継続していく旨述べた。
 
11.ルイス=マシュー外相とスティーブ・アドラー米テキサス州オースティン市長との会談
(1)29日,ルイス=マシュー外相は,米国要人との政治対話を強化するための墨外務省の戦略の一環として,訪墨したスティーブ・アドラー米テキサス州オースティン市長と会談した。会談において,両者は,メキシコ系移民がオースティン市の社会に与えている貢献を評価した。また,ルイス=マシュー外相は,技術革新及び起業の中心地であるオ-スティン市との商業,科学技術の分野における協力を促進することに対する墨政府,企業家,学術関係者が有する関心を表明した。
(2)両者は,米国における移民受け入れに好意的な市町村の重要性について述べた。この点に関し,オースティン市は,その社会的包摂及び多様性を促進する政策において際立つ都市である。
 
12.ルイス=マシュー外相とエリック・ガルセッティ米カリフォルニア州ロサンゼルス市長との会談
(1)30日,ルイス=マシュー外相は,エリック・ガルセッティ米カリフォルニア州ロサンゼルス市長と,メキシコ市(墨外務省内)で会談を行った。両者は,メキシコとロサンゼルスの関係を特徴付ける協力アジェンダ,とりわけ,教育,観光,文化,企業の分野のおける協力アジェンダについて意見が一致した。また,両者は,ロサンゼルスの経済発展に貢献しているメキシコ系移民及びメキシコ系米国人の存在によるメキシコと同市を結びつける友情及び文化の重要性について述べた。
(2)ルイス=マシュー外相は,移民の保護及びロサンゼルス社会への統合のために実施されてきたガルセッティ市長による政策を評価した。また,同市長がロサンゼルス市のメキシコ系移民を称賛するコメントを度々行っていることに対し,謝意を述べた。
(3)両者は,2017年にロサンゼルス市において「メキシコ年」が開催されることを発表した。メキシコのロサンゼルス市における存在感及び影響力に鑑み,様々な催しが開催される。また,メキシコとロサンゼルス市の関係を更に深いものとする「メキシコ年」の開始を告げる催しとして,本年12月7日,ロサンゼルス・カウンティ美術館で「Pablo Piacasso and Diego Rivera:Conversations across time」展の開会式が行われる。