メキシコ政治情勢(12月)
平成29年1月12日
〈概要〉
【内政】
・1日,ペニャ・ニエト大統領で国営チャンネルで,国民に団結を求める国民向けメッセージを発出した。
・1日付け当地「レフォルマ」紙におけるペニャ・ニエト大統領の12月現在の支持率は24%,不支持率は73%という結果であった。
・10日早朝,ラファエル・トバル・イ・デ・テレサ文化大臣が,入院中の陸軍中央病院で逝去した。
・15日,連邦上下両院の通常会期が終了した。連邦上院議会はTPP審議を行わず,同審議を2月に開幕する次期会期まで延期した。
【外交】
・ルイス=マシュー外相は6日に連邦下院議会と,翌7日に連邦上院議会と,移民問題及び墨米関係に関し,メキシコが取るべき対応策についてそれぞれ協議した。
・14日,ルイス=マシュー外相は米国ワシントンを実務訪問した。
・20日,ルイス=マシュー外相は,訪墨したジョン・マケイン米上院議員(アリゾナ州選出。共和党)と会談した。
〈内政〉
1.ペニャ・ニエト大統領の国民向けメッセージ
1日20時より,ペニャ・ニエト大統領が国営チャンネルにおいて5分間にわたる国民向けメッセージを発出し,国民に団結を強く求めた。米国に関しては,トランプ次期大統領を名指しすることなく,次期米政権との建設的関係を構築することが,残り任期2年の挑戦の一つであると言及した。
2.大統領支持率に関する世論調査
1日付け当地「レフォルマ」紙におけるペニャ・ニエト大統領の12月現在の支持率は24%(前回8月調査時23%),不支持率は73%(同74%)という結果であった。項目毎のペニャ・ニエト大統領への評価では,不満のある項目として(1)汚職対策80%,(2)犯罪組織対策76%,(3)経済政策74%が挙げられている。
3.トバル文化大臣の逝去
10日早朝,ラファエル・トバル・イ・デ・テレサ文化大臣が,入院中の陸軍中央病院で逝去した(死因は,多発性骨髄腫)。トバル文化大臣は以前より体調不良が指摘されており,最後に公の場に姿を現したのは本年10月19日であった。12月10日11時よりメキシコ市内で身内による葬儀が行われ,12日,ペニャ・ニエト大統領らの参列のもと,追悼式典が催された。
4.通常国会の閉幕
15日,連邦上下両院の通常会期が終了した。連邦上院議会はTPP審議を行わず,同審議を2月に開幕する次期会期まで延期した。連邦上院アジア太平洋外交委員会のテオフィロ・トーレス委員長はメディアに対し,TPPは死んではいないが,今会期が終了する12月15日までにTPP協定の審議を行う環境にはないと判断した旨,また,同議員は審議の見通しについて,1月には上院は閉会しているが,2月にTPPの審議を行って前に進む環境が整っていると思う旨述べた。
5.メキシコ市近郊花火市場での爆発事故
20日午後3時頃,メキシコ市近郊のメキシコ州トゥルテペック市の花火市場で爆発事故が発生し,同市市民保護局によれば,同日18時時点で少なくとも27名が死亡,40名が負傷した。同花火市場には約300の花火店舗が店を並べているが,何らかの原因による花火の暴発が,連鎖的な花火の爆発を巻き起こしたと見られている。ペニャ・ニエト大統領は自身のツイッターで,被害者に哀悼の意を表するとともに,負傷者の一刻も早い回復を祈念する旨のメッセージを発出した。
〈外交〉
1.移民問題及び墨米関係に関するルイス=マシュー外相と連邦上下両院との協議
(1)連邦下院議会との協議(6日)
(ア)ルイス=マシュー外相は連邦下院議会を訪問し,連邦下院議会政策調整委員会委員,及び,与党制度的革命党(PRI)所属下院議員と,移民問題及び墨米関係に関し,メキシコが取るべき対応策について,それぞれ協議した。
(イ)ルイス=マシュー外相は,次期米政権との関係構築に関し,米国に居住するメキシコ人同胞の保護,メキシコ国家の利益の保護に関し,一歩も後退することはないことが前提条件である旨述べた。また,ルイス=マシュー外相は,新しい章へと移行する米国との関係構築について,墨米両国の一致点を模索し,それを深化させるとともに,新しい議題を定めるためには,立法府の協力が必要不可欠である旨述べた。
(ウ)ルイス=マシュー外相は,連邦下院議員に対し,それぞれの地元州において,メキシコ人同胞及びメキシコ国家の利益の保護のために,各州が有する米国との関係を強化することを目的に,民間企業との取り組みも引き続き行っていくよう求めた。
(エ)また,ルイス=マシュー外相は,今日,米国に居住するメキシコ人同胞は,かつてないほどメキシコ政府,及び,立法府を近くに感じる必要があると述べ,これら同胞の保護のために連邦下院議会の協力を求めた。
(2)連邦上院議会との協議(7日)
(ア)ルイス=マシュー外相は,墨外務省を訪問したエスクデロ上院議長をはじめとする連邦上院議会執行部と,移民問題及び墨米関係に関しメキシコが取るべき対応策について協議した。両者は,墨米両院委員会(連邦上下両院をまたがって設置されている委員会)を,米国との効果的な対話窓口として,同委員会所属議員が米国のぞれぞれのカウンターパートナーとなる議員との関係を強化し,これら米国の議員が米国に居住するメキシコ人同胞の利益となる判断を行うよう働きかけていくという点で意見が一致した。
(イ)ルイス=マシュー外相は連邦上院議員たちに対し,移民への好意的,又は,敵対的な政策は,地方レベルで実行されるとの前提で,米国の地方議員との関係を強化するよう求めた。
(ウ)連邦上院議員たちは,その不安,及び,必要性について知るために,米国のメキシコ人コミュニティーに接近するとともに,これら移民への対応プログラムの促進を目的に,州政府との関係強化に努める旨述べた。
(エ)エスクデロ上院議長は,ルイス=マシュー外相との会談終了後,メディアのインタビューに応え,NAFTA,移民への法的保護,企業との連携強化等のテーマについて協議するルイス=マシュー外相,グアハルド経済相,オソリオ内相,連邦上下両院,企業調整協議会(CCE),経済研究教育学院(CIDE)から構成されるハイレベル会合を設置することで合意した旨述べた。
2.ルイス=マシュー外相のワシントン訪問
(1)14日,ルイス=マシュー外相は,墨米関係の強化,及び,米国在住のメキシコ人の福祉を促進することを目的に,米国ワシントンを実務訪問した。
(2)ルイス=マシュー外相は,ポール・ライアン米下院議長(共和党所属)と会談した。両者は,歴史的にメキシコは米国の主要政党,主要政党のリーダー,及び,これら政党の議会代表と良好な関係を保ってきたという認識を示した。その上で,ルイス=マシュー外相は,メキシコは今後もこの良好な関係を継続していく旨述べた。また,ルイス=マシュー外相は,ベン・カルダン上院議員(民主党所属)とも会談し,墨米二国間関係及び地域外交について意見交換を行った。ルイス=マシュー外相は,両会談において,NAFTAの重要性に言及するとともに同協定が墨米両国の利益となっている旨述べた。
(3)ルイス=マシュー外相は,ライス大統領補佐官(国家安全保障担当)と会談し,競争力,安全保障,移民といった二国間関係にとって重要なテーマについて意見交換を行った。両者は,両国共通の課題に対し,責任の共有という観点からも,墨米二国間の協力メカニズムを強化し続けることが重要であるという点で意見が一致した。
(4)さらに,ルイス=マシュー外相は,在米メキシコ人の公民権に関するコンサルタントグループ(MCRAG)との会合の議長を務め,参加した複数の公民権保護団体の代表とともに米国におけるメキシコ人コミュニティー保護のための協力メカニズムを設定した。また,同外相は,その在留資格をかかわらず,在米メキシコ人の権利が侵害されることを避けるために,とり得る手段は全てとる旨述べた。
(5)最後に,ルイス=マシュー外相は,公共政策に関する影響力を有する研究機関であるヘリテージ財団の関係者と会談し,競争力,経済開発,貿易の分野における墨米二国間関係の重要性について述べた。また,ルイス=マシュー外相は,昨今の移民の傾向について,メキシコから米国への移民はネット・ベースでゼロになっている旨述べた。
3.ジョン・マケイン米上院議員の訪墨
(1)20日,ルイス=マシュー外相は,訪墨したジョン・マケイン米上院議員(アリゾナ州選出。共和党)と会談した。ルイス=マシュー外相は会談において,墨米関係の重要性について述べるとともに,メキシコ政府は米次期政権及び米連邦議会と建設的な関係を構築していく意思を有している旨述べた。
(2)ルイス=マシュー外相とマケイン議員は,米上院が墨米二国間関係に果たす役割に関し意見交換を行った。また,両者は,米国における移民に関する議論の先行き,及び,そのことがメキシコ及び米国在住メキシコ人に如何なる影響を与えうるかに関し意見交換を行うとともに,墨米国境の現状,移民の動態に関し,それぞれの印象について述べた。その上で,両者は,墨米国境は墨米両国を更に力強いものとする機会と競争力をもたらす地域であり,墨米両国は引き続き地域間の問題に対し責任を共有し,共同していかなければならないという点で意見が一致した。さらに両者は,墨米二国間貿易の価値,及び,二国間の経済的統合が両国社会の経済成長及び繁栄に貢献している旨述べた。
【内政】
・1日,ペニャ・ニエト大統領で国営チャンネルで,国民に団結を求める国民向けメッセージを発出した。
・1日付け当地「レフォルマ」紙におけるペニャ・ニエト大統領の12月現在の支持率は24%,不支持率は73%という結果であった。
・10日早朝,ラファエル・トバル・イ・デ・テレサ文化大臣が,入院中の陸軍中央病院で逝去した。
・15日,連邦上下両院の通常会期が終了した。連邦上院議会はTPP審議を行わず,同審議を2月に開幕する次期会期まで延期した。
【外交】
・ルイス=マシュー外相は6日に連邦下院議会と,翌7日に連邦上院議会と,移民問題及び墨米関係に関し,メキシコが取るべき対応策についてそれぞれ協議した。
・14日,ルイス=マシュー外相は米国ワシントンを実務訪問した。
・20日,ルイス=マシュー外相は,訪墨したジョン・マケイン米上院議員(アリゾナ州選出。共和党)と会談した。
〈内政〉
1.ペニャ・ニエト大統領の国民向けメッセージ
1日20時より,ペニャ・ニエト大統領が国営チャンネルにおいて5分間にわたる国民向けメッセージを発出し,国民に団結を強く求めた。米国に関しては,トランプ次期大統領を名指しすることなく,次期米政権との建設的関係を構築することが,残り任期2年の挑戦の一つであると言及した。
2.大統領支持率に関する世論調査
1日付け当地「レフォルマ」紙におけるペニャ・ニエト大統領の12月現在の支持率は24%(前回8月調査時23%),不支持率は73%(同74%)という結果であった。項目毎のペニャ・ニエト大統領への評価では,不満のある項目として(1)汚職対策80%,(2)犯罪組織対策76%,(3)経済政策74%が挙げられている。
3.トバル文化大臣の逝去
10日早朝,ラファエル・トバル・イ・デ・テレサ文化大臣が,入院中の陸軍中央病院で逝去した(死因は,多発性骨髄腫)。トバル文化大臣は以前より体調不良が指摘されており,最後に公の場に姿を現したのは本年10月19日であった。12月10日11時よりメキシコ市内で身内による葬儀が行われ,12日,ペニャ・ニエト大統領らの参列のもと,追悼式典が催された。
4.通常国会の閉幕
15日,連邦上下両院の通常会期が終了した。連邦上院議会はTPP審議を行わず,同審議を2月に開幕する次期会期まで延期した。連邦上院アジア太平洋外交委員会のテオフィロ・トーレス委員長はメディアに対し,TPPは死んではいないが,今会期が終了する12月15日までにTPP協定の審議を行う環境にはないと判断した旨,また,同議員は審議の見通しについて,1月には上院は閉会しているが,2月にTPPの審議を行って前に進む環境が整っていると思う旨述べた。
5.メキシコ市近郊花火市場での爆発事故
20日午後3時頃,メキシコ市近郊のメキシコ州トゥルテペック市の花火市場で爆発事故が発生し,同市市民保護局によれば,同日18時時点で少なくとも27名が死亡,40名が負傷した。同花火市場には約300の花火店舗が店を並べているが,何らかの原因による花火の暴発が,連鎖的な花火の爆発を巻き起こしたと見られている。ペニャ・ニエト大統領は自身のツイッターで,被害者に哀悼の意を表するとともに,負傷者の一刻も早い回復を祈念する旨のメッセージを発出した。
〈外交〉
1.移民問題及び墨米関係に関するルイス=マシュー外相と連邦上下両院との協議
(1)連邦下院議会との協議(6日)
(ア)ルイス=マシュー外相は連邦下院議会を訪問し,連邦下院議会政策調整委員会委員,及び,与党制度的革命党(PRI)所属下院議員と,移民問題及び墨米関係に関し,メキシコが取るべき対応策について,それぞれ協議した。
(イ)ルイス=マシュー外相は,次期米政権との関係構築に関し,米国に居住するメキシコ人同胞の保護,メキシコ国家の利益の保護に関し,一歩も後退することはないことが前提条件である旨述べた。また,ルイス=マシュー外相は,新しい章へと移行する米国との関係構築について,墨米両国の一致点を模索し,それを深化させるとともに,新しい議題を定めるためには,立法府の協力が必要不可欠である旨述べた。
(ウ)ルイス=マシュー外相は,連邦下院議員に対し,それぞれの地元州において,メキシコ人同胞及びメキシコ国家の利益の保護のために,各州が有する米国との関係を強化することを目的に,民間企業との取り組みも引き続き行っていくよう求めた。
(エ)また,ルイス=マシュー外相は,今日,米国に居住するメキシコ人同胞は,かつてないほどメキシコ政府,及び,立法府を近くに感じる必要があると述べ,これら同胞の保護のために連邦下院議会の協力を求めた。
(2)連邦上院議会との協議(7日)
(ア)ルイス=マシュー外相は,墨外務省を訪問したエスクデロ上院議長をはじめとする連邦上院議会執行部と,移民問題及び墨米関係に関しメキシコが取るべき対応策について協議した。両者は,墨米両院委員会(連邦上下両院をまたがって設置されている委員会)を,米国との効果的な対話窓口として,同委員会所属議員が米国のぞれぞれのカウンターパートナーとなる議員との関係を強化し,これら米国の議員が米国に居住するメキシコ人同胞の利益となる判断を行うよう働きかけていくという点で意見が一致した。
(イ)ルイス=マシュー外相は連邦上院議員たちに対し,移民への好意的,又は,敵対的な政策は,地方レベルで実行されるとの前提で,米国の地方議員との関係を強化するよう求めた。
(ウ)連邦上院議員たちは,その不安,及び,必要性について知るために,米国のメキシコ人コミュニティーに接近するとともに,これら移民への対応プログラムの促進を目的に,州政府との関係強化に努める旨述べた。
(エ)エスクデロ上院議長は,ルイス=マシュー外相との会談終了後,メディアのインタビューに応え,NAFTA,移民への法的保護,企業との連携強化等のテーマについて協議するルイス=マシュー外相,グアハルド経済相,オソリオ内相,連邦上下両院,企業調整協議会(CCE),経済研究教育学院(CIDE)から構成されるハイレベル会合を設置することで合意した旨述べた。
2.ルイス=マシュー外相のワシントン訪問
(1)14日,ルイス=マシュー外相は,墨米関係の強化,及び,米国在住のメキシコ人の福祉を促進することを目的に,米国ワシントンを実務訪問した。
(2)ルイス=マシュー外相は,ポール・ライアン米下院議長(共和党所属)と会談した。両者は,歴史的にメキシコは米国の主要政党,主要政党のリーダー,及び,これら政党の議会代表と良好な関係を保ってきたという認識を示した。その上で,ルイス=マシュー外相は,メキシコは今後もこの良好な関係を継続していく旨述べた。また,ルイス=マシュー外相は,ベン・カルダン上院議員(民主党所属)とも会談し,墨米二国間関係及び地域外交について意見交換を行った。ルイス=マシュー外相は,両会談において,NAFTAの重要性に言及するとともに同協定が墨米両国の利益となっている旨述べた。
(3)ルイス=マシュー外相は,ライス大統領補佐官(国家安全保障担当)と会談し,競争力,安全保障,移民といった二国間関係にとって重要なテーマについて意見交換を行った。両者は,両国共通の課題に対し,責任の共有という観点からも,墨米二国間の協力メカニズムを強化し続けることが重要であるという点で意見が一致した。
(4)さらに,ルイス=マシュー外相は,在米メキシコ人の公民権に関するコンサルタントグループ(MCRAG)との会合の議長を務め,参加した複数の公民権保護団体の代表とともに米国におけるメキシコ人コミュニティー保護のための協力メカニズムを設定した。また,同外相は,その在留資格をかかわらず,在米メキシコ人の権利が侵害されることを避けるために,とり得る手段は全てとる旨述べた。
(5)最後に,ルイス=マシュー外相は,公共政策に関する影響力を有する研究機関であるヘリテージ財団の関係者と会談し,競争力,経済開発,貿易の分野における墨米二国間関係の重要性について述べた。また,ルイス=マシュー外相は,昨今の移民の傾向について,メキシコから米国への移民はネット・ベースでゼロになっている旨述べた。
3.ジョン・マケイン米上院議員の訪墨
(1)20日,ルイス=マシュー外相は,訪墨したジョン・マケイン米上院議員(アリゾナ州選出。共和党)と会談した。ルイス=マシュー外相は会談において,墨米関係の重要性について述べるとともに,メキシコ政府は米次期政権及び米連邦議会と建設的な関係を構築していく意思を有している旨述べた。
(2)ルイス=マシュー外相とマケイン議員は,米上院が墨米二国間関係に果たす役割に関し意見交換を行った。また,両者は,米国における移民に関する議論の先行き,及び,そのことがメキシコ及び米国在住メキシコ人に如何なる影響を与えうるかに関し意見交換を行うとともに,墨米国境の現状,移民の動態に関し,それぞれの印象について述べた。その上で,両者は,墨米国境は墨米両国を更に力強いものとする機会と競争力をもたらす地域であり,墨米両国は引き続き地域間の問題に対し責任を共有し,共同していかなければならないという点で意見が一致した。さらに両者は,墨米二国間貿易の価値,及び,二国間の経済的統合が両国社会の経済成長及び繁栄に貢献している旨述べた。