メキシコ政治情勢(1月)

平成29年2月13日
 
〈概要〉
【内政】
・4日,ペニャ・ニエト大統領は内閣改造を発表した。
・9日,ペニャ・ニエト大統領は経済の強化及び一般家庭の家計を守るための連邦政府と地方政府間合意を発表した。
・18日付け当地「レフォルマ」紙の世論調査におけるペニャ・ニエト大統領の1月現在の支持率は12%であった。
【外交】
・9日~11日,第28回メキシコ大使会議が開催された。
・18日,墨外務省は,メキシコが米国との交渉において優先すべき目標についてプレスリリースを発出した。
・19日,メキシコ政府は,シナロア・カルテル最高幹部ホアキン「エル・チャポ」グスマン受刑囚の米国への身柄引き渡しを行った旨発表した。
・21日午前,ペニャ・ニエト大統領は,トランプ米大統領と電話会談を行った。
・22日午後,ペニャ・ニエト大統領は,トルドー加首相と電話会談を行った。
・23日,ペニャ・ニエト大統領は,墨外交政策に関する演説を行い,墨外交政策の2つの優先事項として(1)メキシコ外交の多角化,(2)米新政権との新しい対話,交渉を挙げた。
・26日,ペニャ・ニエト大統領は自身のツイッターで,1月31日に予定されていた墨米首脳会談に出席しない旨表明した。
・27日,ペニャ・ニエト大統領は,トランプ米大統領と電話会談を行った。
・27日,大統領官邸において,ペニャ・ニエト大統領と連邦上下両院関係者による対米政策にかかる協議が行われた。
・30日,ペニャ・ニエト大統領は,トルドー加首相と電話会談を行った。
 
〈内政〉
1.ペニャ・ニエト政権の内閣改造
4日,ペニャ・ニエト大統領は大統領官邸において,ビデガライ前大蔵公債大臣を外務大臣に,ガルシア=セペダ国立美術院(INBA)長官を文化大臣に各々任命する内閣改造を発表した。
 
2.経済の強化及び一般家庭の家計を守るための連邦政府と地方政府間合意
9日,ペニャ・ニエト大統領は,(1)メキシコ一般家庭の家計を守る,(2)2017年-18年に計画されている投資計画を推進する,(3)新たな投資を促進する,(4)雇用創出,経済成長,競争力強化を維持するの4項目を軸とする,経済の強化及びメキシコ一般家庭の家計を守るための連邦政府と地方政府間合意を発表した。
【合意内容概要】
(1)メキシコ一般家庭の家計を守る
 生活必需品の正当化できない値段上昇を阻止するために,以下の行動を実施する。
(1)企業セクターは,生活必需品における正当化できない値上げ,及び,投機の動きが起こらないように努める。
(2)労働セクターは,競争力強化のため,生産プロセスの強化を行う。
(3)農業セクターは,中小規模生産者,及び,国内供給に利するために生産性の向上に努める。
(4)連邦及び地方政府は,生活必需品の価格安定のための対策を推進するとともに,あらゆる不正行為を監視し,法に基づき処罰する。
(5)連邦及び地方政府は公共交通を改善し,都市部における移動の容易化を努める。
(6)連邦及び地方政府は,開発基金の融資条件を改善する。
(7)連邦及び地方政府は,社会的弱者に労働機会を提供する起業を促進する。
(8)連邦政府は,65歳以上定年者向け預金制度の広報,及び,受給資格者への支給を行う。
(2)投資及び雇用の促進
 2017年-18年に計画されている投資計画を推進するとともに,新しい投資を促進する。雇用創出,経済成長,競争力の強化を維持する。そのために以下の行動を実施する。
(1)企業セクター,労組,農業セクターは,経済成長,発展,競争力の推進,及び,労働者の賃金の上昇のための手段として生産性の向上を優先する。
(2)連邦政府は,開発基金,国家インフラ・官民パートナーシップ基金を通じて,新規投資,雇用創出を促進する。
(3)経済的安定の維持
(1)連邦政府が近年努めてきた経済的安定のためのバランスのとれた財政・金融政策,及び透明性の向上,汚職対策への取り組みを補完する構造改革を継続する。
(2)在外メキシコ資産のメキシコへの再移転を促進する政令を公布する。
(3)連邦政府は,政府債務を削減し,基礎的財政収支の黒字を保証する。
(4)連邦政府は,社会支出に注意しながら,適切かつ透明性のある形で予算を執行する。
(5)連邦政府は,社会プログラムに影響を与えない形で,連邦機関高官の給与10%減を含む,予算削減策を策定する。
(4)法の支配の強化
 他の連邦各機関,自治機関,地方政府に対し,同様の政策をとるよう呼びかける。また,本合意の署名者は,抗議活動のために行われる第三者の権利を侵害する暴力行為,略奪行為,破壊行為等のあらゆる違法行為を拒絶する。
(5)フォローアップと評価
 本合意の内容の実現度,その影響を評価するために,政府,企業,労働者,農業従事者,学術関係者の代表から構成される国家生産性委員会を通じて,フォローアップを実施する。
 
3.大統領支持率に関する世論調査
 18日付け当地「レフォルマ」紙の世論調査におけるペニャ・ニエト大統領の1月現在の支持率は12%(前回12月調査時24%),同紙による2016年8月の世論調査で記録した23%を大幅に下回る過去最低の記録を更新した。1月1日より,補助金がカットされたことによるガソリン料金の値上がりに対する国民の不満が,ペニャ・ニエト大統領の支持率を押し下げたと分析されている。
 
〈外交〉
1.メキシコ大使会議の開催
9日~11日,第28回メキシコ大使会議が開催された。ペニャ・ニエト大統領は閉会式(11日)にて演説を行ったが,同日(11日)午前,トランプ次期米大統領(当時)が記者会見において,墨米国境に壁を建設し,その費用はメキシコが支払うと改めて述べたことに対し,「国境の壁の建設等,次期米政権といくつかの点で意見に相違が存在することは明確である。無論,メキシコが壁の支払いに応じることはない。」と反論を行った。
 
2.メキシコの米国との交渉における目標
18日,墨外務省は,同11日のメキシコ大使会議の開会式におけるペニャ・ニエト大統領の発言をまとめた形で,メキシコが米国との交渉において優先すべき目標についてプレスリリースを発出した。
【プレスリリース概要】
 ペニャ・ニエト大統領は,メキシコの外交団を前に,メキシコが米国との交渉において優先すべき目的を設定した。新しい章に移行した米国との二国間関係には,次の目標が含まれなければならない。
(1)移民保護
 メキシコ移民の権利の尊重を保障し,身分証明書を有さないメキシコ人の本国への送還においては,人道的且つ秩序立った形で実施する。
(2)自由貿易
(ア)安心感(Certidumbre)を与え,生産的統合を促進し,北米地域の競争力を強化する自由貿易に関する合意を模索する。
(イ)メキシコ及び外国企業による貿易及び投資を保護し,安心感を与える。
(ウ)メキシコが投資先として信頼できる国であることを保証する。
(エ)資本の流入に資する明確な規則。
(オ)雇用を保護し,新しい雇用を創出し,賃金を上昇させる。
(カ)自由貿易及び生産分野の統合のスキームを継続する。
(キ)通信,エネルギー等の新しい分野を含める。
(3)資本の流動
 米国在住メキシコ人からの自由な送金を維持する。
(4)密輸の阻止
 不法武器の密輸を抑止する。
(5)効率的な国境
 墨米国境がより安全,近代的且つ効率的なものとなるよう,インフラ及び技術整備のための投資を増加させる。右により,墨米二国間貿易が更に容易なものとなり,国境を通過する際の待ち時間が軽減される。
 
3.シナロア・カルテル最高幹部ホアキン「エル・チャポ」グスマン受刑囚の米国への身柄引き渡し
19日,メキシコ政府は,シナロア・カルテル最高幹部ホアキン「エル・チャポ」グスマン受刑囚の米国への身柄引き渡しを行った旨発表した。
 
4.ペニャ・ニエト大統領とトランプ米大統領の電話会談
(1)21日午前,ペニャ・ニエト大統領はトランプ大統領と電話で会談した。ペニャ・ニエト大統領は,トランプ大統領の大統領就任(1月20日)に対し祝意を述べるとともに,メキシコは,墨米両国の主権の尊重,及び,両国が共有する責任に焦点を当てながら,二国間関係の利益となる項目について,米国と取り組んでいく意思を有している旨述べた。
(2)ペニャ・ニエト大統領は,墨米両国にとって,両国二国間関係は優先すべき戦略的つながりである旨改めて述べるとともに,米新政権と開かれた対話を行っていく意思を示した。かかる対話は,1月25日,26日にビデガライ外相及びグアハルド経済相がワシントンを訪問し,米新政権幹部と会談することから開始される。右訪問の目的は,貿易,移民,治安を含む様々な分野に関し,墨米両国間に合意の枠組みをつくり,安心感(certidumbre)を生むことである。
(3)最後に,両首脳は,開始されたこの新しい対話が,両国の利益につながることを信頼している旨述べ,近い将来(futuro cercano)に両首脳が対談することで合意した。
 
5.ペニャ・ニエト大統領とトルドー加首相の電話会談
(1)22日午後,ペニャ・ニエト大統領は,トルドー加首相と電話会談し,メキシコにとっての墨加関係の重要性,並びに,自由貿易地域及び自由な投資地域として北米地域を強化していく重要性について述べた。
(2)上記1の観点からも,ペニャ・ニエト大統領はトルドー首相との間で,米国との関係が,墨加両国にとり重要であること,及び,北米地域の経済的統合の推進を継続するために,墨加両国が力を合わせることにつき一致した。
 
6.ペニャ・ニエト大統領による墨外交政策に関する演説
 23日,ペニャ・ニエト大統領は,墨外交政策に関する演説を行い,墨外交政策の2つの優先事項として(1)メキシコ外交の多角化,(2)米新政権との新しい対話,交渉を挙げ,それぞれに関し,以下のとおり述べた。
(1)メキシコ外交の多角化
(ア)メキシコは,メキシコ外交の多角化のため,ラ米カリブ諸国,中米北部三角地帯(グアテマラ、エル・サルバドル・ホンジュラス),太平洋同盟(ペルー,チリ,コロンビア),アルゼンチン,ブラジル,EU等との関係強化に努める。メキシコは,英国がEUから離脱した際に開始する,同国との二国間協定交渉の準備を行っている。
(イ)TPP
 発効が難しくなったTPPの現状を踏まえ,メキシコはアジア太平洋地域にある各国との二国間協定を模索していく。
(2)米新政権との新しい対話,交渉
 米新政権は新しい外交ビジョンを有しており,メキシコは国益の保護のために,然るべき対応をとる必要がある。米新政権との関係構築において,対決姿勢や服従は解決を意味するものではなく,対話と交渉が解決策となる。メキシコは,米国との対話,交渉に際し,以下の(1)5つの原則と(2)10の目標を設定する。
(1)5つの原則
(ア)国家主権
 メキシコは主権国家であり,主権国家として行動する。米国との交渉における主権の行使は,国家及び国民に利することのみがメキシコ国家にとっての国益であることを意味する。
(イ)法の支配
 墨米両国の法を遵守する。両国の法に対する相互尊重が,二国間の対話の基礎となる。
(ウ)建設的かつ提案する姿勢
 墨米両国の交渉は,「Win-Win」の関係をもたらすものでなければならない。米国及び国際社会が直面する新しい状況に即した革新的かつ実用的な解決策に対し,メキシコは創造的且つ開かれた姿勢を有している。
(エ)北米地域の統合
 北米地域は墨,米,加によって構成されており,同地域の活力,競争力は,三カ国共同の取り組みにかかっている。
(オ)総合的な交渉
 メキシコは,貿易のみならず,移民,治安,国境地帯の治安,麻薬及び不法武器の密輸等,総合的なテーマを交渉のテーブルにのせる。 
 (2)10の目標
(ア)メキシコ人移民への人道的扱い及び人権を米国が保証する。
(イ)メキシコ人移民の本国への送還は,秩序立った形で行われることを保証する。
(ウ)北米大陸の発展に関し,墨米両国が責任を共有する。中米諸国の発展の促進のために,両国が共同で取り組む具体的責任を共有しなければならない。
(エ)米国在住メキシコ人による本国への送金の自由を保証する。
(オ)不法武器の密輸対策,及び,不正な資金の流入に対し,米国がメキシコと責任を共有する。
(カ)墨,加,米による自由貿易の枠組みの継続。
(キ)北米の貿易枠組みの刷新に当たっては,通信,エネルギー,電子取引といった新しい分野を加える。
(ク)米国とのいかなる新しい通商合意も,メキシコ人労働者の賃金の上昇につながらなければならない。
(ケ)メキシコへの投資を保護する。メキシコが投資先として信頼でき,魅力がある国であり続けることを保証する。
(コ)墨米両国を分かつのではなく,両国をつなぐ国境の構築。メキシコは,各国の治安を保障する主権を認めるが,メキシコは壁ではなく,墨米両国の良好な隣国関係を促進する橋,道路,鉄道,及び,科学技術の使用を信じる。
 
7.ペニャ・ニエト大統領の墨国民向けメッセージ
25日,ペニャ・ニエト大統領は,トランプ米大統領が同日,国境警備及び移民執行改善並びに米国内の治安対策に関する大統領令に署名したことを受け,墨国民向けにビデオメッセージを概要以下の通り発表した。
(1)25日,トランプ米大統領は,移民対策の実施及び国境の壁の拡張というメキシコに関連する二つの大統領令に署名した。右を受け,自分(「ペ」大統領)は,墨外務省に対し,在米メキシコ人の保護のための対策を強化するよう指示した
(2)何年も前から,我々を一つにするのではなく,我々を分断してきた壁の建設を継続するという米国の決定は遺憾であり,かかる決定を非難する。メキシコは壁を信頼しない。何度も述べてきたように,メキシコは如何なる壁の支払いも行わない。
(3)大統領令への署名は,メキシコが,北米地域における協力,貿易,投資,治安,移民にかかる新しい規則に関する交渉のための対話を始めたのと同時に行われた(注:1月25日よりビデガライ外相とグアハルド経済相が訪米し,トランプ政権幹部と会談)。
(4)現在,ワシントンにいる墨政府関係者の報告並びに墨上院議員及び全国州知事会議との事前の相談を判断材料に,今後メキシコがとるべき方針について判断を行う。
(5)メキシコは完全な主権国家としての尊重を,(米国に対し)示すとともに,(米国からメキシコに対する)尊重を求める。メキシコは,米国国民との友情を表明するとともに,米国政府との間でメキシコ及びメキシコ人にとって利益となる合意に達する意思を表明する。
 
8.ペニャ・ニエト大統領の訪米中止
 26日朝,トランプ大統領が自身のツイッターで,「メキシコが国境の壁の建設費を支払いたくないのであれば,1月31日に予定されている墨米首脳会談は中止にした方が良い」旨のメッセージを発出したのに対し,同日10時40分過ぎ(墨時間),ペニャ・ニエト大統領は自身のツイッターで,「今朝,ホワイトハウスに対し,来週火曜日(1月31日)に予定されていた首脳会談に出席しない旨連絡した。メキシコは,墨米両国民の利益となる合意を達成するために,米国と共に取り組んでいく用意があることを改めて表明する。」とのメッセージを発出し,墨米首脳会談に出席しない旨表明した。
 
 
9.墨米首脳電話会談
(1)27日午前,ペニャ・ニエト大統領とトランプ米大統領は1時間にわたり電話会談を行った。両大統領は,米国の対墨貿易赤字,墨米両国の友好関係の重要性,麻薬の密輸及び不法武器の流入を阻止するために両国が共に取り組む必要性を含む二国間関係に関し,建設的かつ生産的な会話を行った。
(2)国境の壁の建築費用の支払い問題に関し,両大統領は,かかる微妙な問題についての両国の立場の違いは明らかで広く一般的に知られていることを認識し,この立場の違いを,二国間関係のあらゆる分野を統合した議論の一部として解決することで一致した。また,両大統領は,当面の間(por ahora),当該問題については公には発言しないことで一致した。
(3)両大統領は,二国間の重要な戦略的,経済的関係を強化するために建設的な形で対話を継続するよう,各政府関係者に指示した。
 
10.対米政策にかかるペニャ・ニエト大統領と連邦議会関係者の協議
(1)27日,大統領官邸において,ペニャ・ニエト大統領と連邦上下両院関係者(両院執行部及び政策調整委員会所属議員)が集まり,対米政策にかかる協議を行った。同協議においては,1月25日~26日にビデガライ外相とグアハルド経済相がワシントンを訪問しトランプ政権幹部と行った会談の結果報告が行われた。
(2)協議出席者は,メキシコは米新政権に対し,相互尊重及びメキシコの主権の尊重に基づいた建設的な関係を構築していかなければならない課題を有しているという認識で一致した。また,連邦上下両院関係者は,メキシコは,メキシコ全体の団結を呼びかける外交政策を必要としている旨述べた。本協議における合意点の一つとして,墨政府が米政権に対して実施する政策のフォローアップを行うための連邦上下両院合同チームを立ち上げることが決定された。
(3)ペニャ・ニエト大統領は,在米メキシコ人の権利保護を強化することを目的に,在米メキシコ大使館及び総領事館への予算を増加する旨,連邦上下両院関係者に報告した。ペニャ・ニエト大統領は,メキシコの主権の行使,メキシコ人の尊厳,メキシコ人の利益の確保のために祖国愛(patriotismo)をもって行動しなければならない旨述べた。さらに,同大統領は,誰一人除外されることのない,全てのメキシコ人による団結を呼びかけた。
 
11.ネタニヤフ・イスラエル首相への抗議声明:墨外務省プレスリリース
28日,墨外務省は,同日,ネタニヤフ・イスラエル首相がツイッターに,トランプ米大統領が主張する墨米国境の壁の建設を支持する旨のメッセージを投稿したことに対する抗議声明を発出した。
 
12.ペニャ・ニエト大統領とトルドー加首相の電話会談
(1)30日,ペニャ・ニエト大統領は,トルドー加首相と電話会談を行い,ペニャ・ニエト大統領は,墨加両国民を近づけるカナダとの友好,協力,経済関係の強化に引き続き取り組む墨政府の意思を述べた。
(2)両首脳は,北米地域をより強固かつ繁栄した地域とするために,(両首脳が)緊密な対話を継続する旨及び両国政府関係者の取り組みを強化する旨合意した。
(3)最後に,ペニャ・ニエト大統領は,トルドー加首相に対し,1月29日,カナダのケベックシティで発生したモスク襲撃事件に関し,メキシコ国民及び政府としての弔意と連帯の意を示し,宗教的寛容に対するあらゆる暴力行為を非難した。
 
13.墨米関係に関するペニャ・ニエト大統領の国民向けメッセージ
30日夜,ペニャ・ニエト大統領は,国営放送において概要以下のとおり国民向けメッセージを発出し,同月27日のトランプ米大統領の電話会談について説明した上で,国民に対し強く団結を呼びかけた。
(1)2017年新年の挨拶において,メキシコにとっての2017年の大きな挑戦の一つが米新政権との建設的な関係構築であると述べた。この関係は,メキシコ国家の主権,尊厳及び独立に対する尊重,墨米両国の友好的感情,隣人かつ友人であり,貿易パートナーである墨米国民間の協力を基本とするものでなければならない。
(2)1月27日,1時間にわたりトランプ米大統領と電話で会談し,これら譲歩できない基本がメキシコ人にとって重要である旨説明した。如何なる項目においても,トランプ大統領と合意に達することはできなかったが,この電話会談が,墨米両政府の対話を継続していく機会となった。自分(「ペ」大統領)とトランプ大統領は,両政府関係者が両者の接近のために取り組みを継続することで一致した。自分(「ペ」大統領)は,メキシコ国民に対し,今後の交渉の経緯及び結果について報告を行っていく。
(3)複雑な時期及び困難な仕事が待ち受けていることを認識している。自分(「ペ」大統領)の責任は,メキシコ国民の財産を守り,我々の子供達,若者達が有するに値する機会を保証し,国家の経済成長を促進し,在米メキシコ人を保護することである。在米メキシコ人の自由,権利,尊厳を守るために,在米メキシコ大使館及び総領事館に対する10億ペソの追加予算を指示した。
(4)メキシコは,国際社会において重要な位置を占めている。40カ国以上との貿易協定を結んでおり,このことは,ラ米,ヨーロッパ,アジアの諸国に対し,メキシコが経済を開放しており,これら諸国と貿易を行う潜在力を有していることを意味している。メキシコ人労働者の生産力,及び,メキシコに生産拠点を有する企業の競争力により,メキシコは世界主要経済国15ヶ国の一角を占めている。
(5)メキシコ,米国及び世界各国で,メキシコに対する尊重,連帯の意を示すために多くの声が上がっている。その声を評価し,感謝する。大統領として,そして,一人のメキシコ人として,メキシコに対する支援を受けることに感動している。これらの声は,メキシコが長年にわたり,平和を守り,全ての国々を尊重し,共存及び協力を促進してきた国であることに対する結果であり,全てのメキシコ国民に対する承認である。
(6)今日,メキシコが必要としているものは,メキシコ国家全体の団結である。国家全体の団結は,メキシコの歴史において大きな力となってきた。国家全体の団結は,メキシコの戦略,国内外に向けて行う行動の礎石とならなければならない。 
(7)今日,自分(「ペ」大統領)は,かつてないほど,メキシコ人であること,そして,それ以上に,偉大な国民,メキシコ国民の大統領であることを誇りに感じている。
 
14.ペニャ・ニエト大統領とリヴリン・イスラエル大統領の電話会談
(1)31日午前,ペニャ・ニエト大統領は,リヴリン・イスラエル大統領の電話連絡を受け,墨イスラエル二国間関係を傷つけることとなった1月28日のネタニヤフ首相のツイッター・メッセージについて会話した。
(2)リヴリン大統領は,イスラエルの置かれている安全保障の状況とメキシコのそれを比較する如何なる意図も存在しなかった旨述べ,両国が有する歴史的つながり及び協力関係はイスラエルにとって重要なものであり,ネタニヤフ首相のツイッター・メッセージによって生じた誤解は遺憾である旨述べた。
(3)これに対し,ペニャ・ニエト大統領は,メキシコは常にイスラエルと密接な関係の構築に取り組んできており,日々メキシコの発展に重要かつ有益な貢献を果たしているユダヤ人コミュニティーを暖かく迎えてきた旨述べた。両大統領は,両国の友情及び相互理解の架け橋となるユダヤ人コミュニティーの重要性について述べた。
(4)ペニャ・ニエト大統領は,ネタニヤフ首相のツイッター・メッセージは,メキシコ及びメキシコのユダヤ人コミュニティーを困惑させ,墨イスラエルの二国間関係を傷つけた(lastimar)旨述べた。これに対し,リヴリン大統領は,謝罪(disculpa)の言葉を述べ,二国間関係が友好と協力の関係に戻るよう取り組む旨誓った。
(5)ペニャ・ニエト大統領は,メキシコは常にイスラエルと密接な関係の構築に取り組んできた旨,メキシコはイスラエルと,友好と相互協力の関係を継続する意思を有している旨述べた。