経済活動の再開に関するメキシコ連邦政府の指針(5月29日付保健省令)

令和2年6月3日

5月29日,墨連邦政府は保健省令(同日夕刻発出の官報に掲載:原文URLは末尾に記載)を発出し,経済活動の再開に関する指針を発表したところ,同省令の概要は以下のとおりです。

1 新型コロナウィルス感染症対策のため制約が課されている経済活動の再開は,以下の3段階で行う。
(1)第1段階:5月18日から,感染リスクの少ない自治体(Municipios de Esperanza)では,あらゆる活動の再開が可能である。
(2)第2段階:5月18~31日。新たに「必要不可欠」の活動とされた業種(建設業,鉱業,輸送機械製造業)は,操業再開を準備。政府は,これらの業種の再開に係る衛生指針を作成する。これら業種の企業は,6月1日からの活動再開を希望する場合,社会保険庁(IMSS)に自社衛生措置の自己評価書をオンラインで提出し,承認を得る。
(3)第3段階:6月1日以降。毎週発表される地域(州または自治体)別の感染症危険・警戒情報(信号情報:最大級の警戒(赤色),高度の警戒(橙色),中程度の警戒(黄色),軽度の警戒(緑色))の定める方針に沿って,経済社会活動の再開を図っていく。この信号情報の指針に基づき操業再開が認められる業種の企業は,下記の安全衛生・防疫等に関する指針を十分に踏まえた上で再開を行うが,事前の認定を受ける必要はない。他方,「必要不可欠」業種の企業が信号情報の例外を構成する形で操業を再開する場合には,自社衛生措置の自己評価をIMSSに提出し,その承認を得る。ただし,5月18~31日の期間にIMSSから当該自己評価書の承認を得た企業は,この期間において新たに承認を得る必要はない。

2 活動再開に際しては,下記の諸点が十分に考慮されることとする。

(1)健康・生命の優先:憲法第4条が保証する健康の権利や尊厳ある生活の権利が,従業員及びその家族との関係で十分尊重されるようにすること。

(2)連帯・不差別:従業員の所得水準,学歴,出身地,性別,性的嗜好,年齢,心身の状態に基づく差別的対応を行わないこと。学齢期の子供を持つ親,高齢者には相応の配慮を払うこと。

(3)倫理的経済・生産効率性:十分な安全・健康への配慮を伴った状態,また,右配慮に基づき持続的に生産効率が得られる形で操業を再開すること。

(4)責任の共有:公的部門,民間部門,社会部門の参加がバランス良くとられる形で操業を再開すること。包摂的発展,社会福祉を優先事項として念頭に置くこと。

3 操業の維持・再開は,業種,感染症のリスク,事業所の規模,業務の態様に基づき決定される。「必要不可欠」と判断される業種は以下のとおり。
(1)3月31日付保健省令に記載の業種(当初の必要不可欠業種)
・医療関係機関
・医薬品部門(生産・流通)
・保健・医療用品の生産,技術サポート
・生物学的・感染症学的に危険のある廃棄物(ゴミ)の収集
・医療機関の清掃・除菌
・治安,国防,法執行期間
・連邦,州レベルの立法機関
・財政部門
・徴税部門
・エネルギー,燃料の流通・販売
・飲用水の供給・販売
・食品・非アルコール飲料の製造・流通・販売
・スーパーマーケット,自動販売,調理済食料品の販売
・旅客,貨物輸送
・農業
・水産業
・林業
・アグロインダストリー
・化学工業
・清掃用品扱い業
・金物扱い業
・郵便等配達サービス
・事業所の警備員,民間警備員
・託児所・保育園
・高齢者のケアサービス
・暴力被害女性及びその子供の保護施設
・テレコム・情報サービス
・民間緊急サービス
・葬儀社
・基本物品の保管・冷凍サービス
・ロジスティクス(空港,港,鉄道)
・政府の社会プログラムの実施関係者
・生活必須インフラ(上下水道,電気,ガス,公共交通等)の維持管理
(2)4月6日付保健省令に記載の業種(第一次追加)
・鉄鋼,セメント,ガラス生産
・公的,民間,社会部門の情報システム維持運営に関係する技術者
・電子商取引(Eコマース)の企業・プラットフォーム
・炭鉱
・石炭の流通業者
(3)5月14日付保健省令に記載の業種(第二次追加)
・建設業
・鉱業
・輸送機械建設業

4 操業を再開する企業等は,以下の諸項目につき見定めた上で,各項目について定められたルールに従って活動を再開する。
(1)事業所所在地(自治体,集落)の衛生警戒システムに基づく感染症のリスク。同システムに基づくレベル分けは次のとおり。
(1)  最大級の警戒(赤色):必要不可欠の業種のみ操業可。在宅勤務を追求(感染症脆弱者は在宅必須)。通勤業務の場合,従業員相互の距離を1.5mとる。これがとれない場合は,個人防疫用品を供与する。仕事場,食堂等には分離柵等を設置する。移動手段の運行頻度を高め,使用する席数を抑える。時差通勤・フレックスタイム制を導入。出入口にフィルターを設置。
(2)  高度の警戒(橙色):必要不可欠業種は全面的,それ以外の業種は限定的に活動再開。在宅勤務を追求(感染症脆弱者へは恒常的に配慮)。必要不可欠以外の業種は,従業員全体の30%が通勤。従業員相互の距離を1.5mとる。これがとれない場合は,個人防疫用品を供与する。仕事場,食堂等には分離柵等を設置する。移動手段の運行頻度を高め,使用する席数を抑える。時差通勤・フレックスタイム制を導入。出入口にフィルターを設置。
(3)  中程度の警戒(黄色):公共空間の限定的開放,経済活動の再開。在宅勤務を追求(感染症脆弱者へは恒常的に配慮)。従業員相互の距離を1.5mとる。仕事場,食堂等には分離柵等を設置する。移動手段の運行頻度を高め,使用する席数を抑える。時差通勤・フレックスタイム制を導入。出入口にフィルターを設置。
(4)  通常状態・軽度の警戒(緑色):全面的な活動再開。全従業員が通勤可(感染症脆弱者へは恒常的に配慮)。保健上の防護措置をとる。
(2)事業所の規模。従業員数別の規模分類は次のとおり。
・零細:あらゆる部門において,従業員10名まで。
・小規模:商業は従業員11~30名,工業・サービスは11~50名。
・中規模:商業は従業員31~100名,サービスは51~100名,工業は51~250名。
・大規模:商業,サービスは従業員101名以上,工業は251名以上。
(3)業務の態様
・業務のユニット(企業の部課,事業エリア等)に感染症脆弱者を含むか。
・学齢期の子供,高齢者,その他感染症脆弱者を扶養している従業員がいるか。
・各ユニットは事務所,倉庫,接客業務窓口,公共空間のいずれか。

5 操業を維持・再開する企業等における,保健の促進・衛生上の防護に関する一般的指針は次のとおり。

(1)保健教育:感染症情報(新型コロナウィルスの特徴,対処法,感染予防のための基礎知識等)の的確な把握と従業員への周知,咳エチケット,唾を吐かないこと,手洗い励行他に関する啓発を行う。

(2)保護手段:不要不急の外出回避,健全な距離の維持,事業所入退出時のコントロール,衛生用品(マスク,ゴーグル,フェイスカバー等。業務態様に応じて使用)の供給と共有回避の徹底等を励行する。

(3)監視・監査:保健教育の実施,保護手段の確保・使用状況,水道,石鹸,使い捨てタオル,アルコールジェル他の配備,在宅勤務者の業務管理・感染の有無等につき恒常的にチェックする体制を構築する。

(4)感染症脆弱者の保護:可能な限り,在宅勤務の継続を追求する。信号情報が「橙色」,「黄色」の地域において感染症脆弱者の通勤業務を再開する事業所は,これら者の防疫措置の確保に特に配慮し,食堂・更衣室等はこれら者専用の空間を用意する。また,時差通勤,フレックスタイム制を優先的に適用する。

(5)労働環境における安全衛生:別途提示する安全衛生対策上の確認項目(注)に基づき,各事業所の規模や種類に応じた対策を図る。

(注:本保健省令の後半が確認項目リストとなっており,零細・小規模企業については55項目,中規模企業は77項目,大規模企業については87項目設けられています。また,優先的に対策すべき事項がそれぞれ15項目指定されています。JETROメキシコ当地事務所がこのリストの日本語訳を作成しているところ,下記URLからご覧いただけます。)

【確認項目リスト】https://www.jetro.go.jp/view_interface.php?blockId=30333413

【本保健省令の原文】https://www.dof.gob.mx/nota_detalle.php?codigo=5594138&fecha=29/05/2020