メキシコ政治情勢(4月)
平成28年5月6日
〈概要〉
【内政】
・7日までに,「パナマ文書」には33名のメキシコ国籍所有者の名前が含まれていることが明らかとなった。
・13日付当地「レフォルマ」紙に掲載された世論調査における一般回答者のペニャ・ニエト大統領の支持率は30%であった。
・20日,ベラクルス州コアッツアコアルコス市のPEMEXの石油工場にて爆発事故が発生した。
・21日,ペニャ・ニエト大統領はマリファナの医療目的及び個人使用合法化に向けた法案を提出した旨発表した。
・30日,通常国会が閉幕した。
・30日,米州機構人権委員会に派遣され,アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件の独自調査を行っていた専門家グループが,その活動を終了した。
【外交】
・3月31日~4月1日,ペニャ・ニエト大統領が第4回核セキュリティ・サミットに出席した。
・2日~5日,朴韓国大統領がメキシコを公式訪問した。
・5日,駐米メキシコ大使の交代人事が発表された。
・11日~14日,武藤外務副大臣が訪墨した。
・11日~12日,ペニャ・ニエト大統領がドイツを公式訪問した。
・13日~14日,ペニャ・ニエト大統領がデンマークを公式訪問した。
・19日,国連麻薬特別総会(UNGASS)にペニャ・ニエト大統領が出席し,10項目からなる提案事項を発表した。
・20日,レンツィ伊首相がメキシコを公式訪問した。
〈内政〉
1.「パナマ文書」とメキシコ
(1)7日までの当地報道によると,33名のメキシコ国籍所有者の名前が「パナマ文書」中に現れているとされている。その中には,イノホサGrupo Higa会長,ロソーヤ前メキシコ石油公社(PEMEX)総裁,ユネス国民行動党(PAN)ベラクルス州知事候補の息子,カニェド元テレビサ執行取締役などの名前が含まれている。
(2)6日,アリストレス国税庁(SAT)長官はメディアのインタビューに対し,当該文書中に名前が挙がっている33名のうち数名はすでに調査の対象となっている旨述べたが,調査対象の固有名詞に関しては言及を避けた。
2.世論調査:大統領支持率
13日付当地「レフォルマ」紙に掲載された世論調査における2016年4月時点のペニャ・ニエト大統領の一般回答者による支持率は30%(前回2015年12月調査時の39%から9ポイント減),不支持率は66%(同58%から8ポイント増)であった。また,有識者による支持率は,22%(同21%から1ポイント増),不支持率は78%(前回と同数値)であった。ペニャ・ニエト政権の取組の中で評価が低い項目は,汚職対策(14%),経済政策(18%),雇用対策(19%),貧困対策(22%),治安対策(23%)という結果であった。
3.メキシコ石油公社(PEMEX)の石油化学工場での爆発事故
(1)20日午後3時過ぎ,ベラクルス州コアッツアコアルコス市のPEMEXの石油工場にて爆発事故が発生した。同日夕方までに,爆発に伴う火は鎮火された。21日時点で同事故による死者は24名,負傷者136名,依然8名が行方不明のままとなっている。
(2)PEMEXによると,爆発したのは合弁会社メキシケム(Mexichem)が運営していた工場で,管や梱包材に使われる塩化ビニールを製造していた。
(3)21日午後,ペニャ・ニエト大統領,オソリオ内相等が事故現場を視察した。ペニャ・ニエト大統領は,本事故の責任はPEMEXとメキシケムが負うべき旨述べ,事故の原因究明及び被害者への適切な補償を行うようPEMEX側に求めた。
(4)事故の原因は判明していないが,当地報道では,今般の事故の要因として資金不足による施設の老朽化を指摘するものが目立つ。また,ベラクルス州の地方メディアでは,2013年,メキシケムが同工場の運営権を獲得した際に経営合理化のために人員を削減したことより,経験のある技術者がいなくなったことが,今般の事故の遠因として指摘されている。2013年1月には,メキシコシティーのPEMEX本部でガス爆発があり,37人が死亡,2015年にはメキシコ湾で同社の石油プラットフォームで火災が相次ぎ,今年2月には今回と同じ工場で火災があり従業員が1人死亡する事故が発生する等,近年,PEMEX関連の事故が相次いでいる。
4.マリファナの医療目的及び個人使用合法化に向けた法案の提出
21日,ペニャ・ニエト大統領は,マリファナの医療目的及び個人使用合法化に向けた法案を提出した旨発表した。同法案は,以下3項目を主眼とした内容。
(1)マリファナ及びその成分によって精製された薬の使用を許可。メキシコ国内において,マリファナ及びTHCを含む薬を認可し,また,その輸入を許可する。
(2)マリファナ及びその成分を含む薬の認可を目的とした臨床実験を許可。
(3)個人使用を目的とした28グラムまでのマリファナの所有を許可。28グラムまでの使用は罰則対象とならない(注:現在,メキシコでは個人使用を目的とした5グラムまでのマリファナの所有が認められている。)。
5.通常国会の閉幕
30日,通常国会が閉幕。国家汚職対策システム関連二次法案,統一州警察の創設に係る憲法改正案,マリファナの医療目的及び個人使用合法化に向けた法案等の審議・採決は行われず,これら法案の審議・採決のために臨時国会が召集される見通しとなっている。
6.アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件を巡る最近の動向
(1)30日,2015年3月より,アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件の独自調査を行う目的で,米州機構人権委員会から派遣されていた専門家グループ(GIEI)が,メキシコ政府から必要な支援を得られないことを理由に,その活動を終了した。
(2)24日,GIEIは最終報告書を提出したが,従来から指摘している(1)被害者生徒はゲレロ州コクラ紙のゴミ焼却所では焼却されていない可能性及び,(2)連邦検察超(PGR)の捜査報告書では触れられていないが,事件の真相解明の鍵を握る可能性のある5台目の長距離バスの存在に加え,(3)PGRの犯罪捜査庁(AIC)による証拠ねつ造の可能性,(4)PGRの捜査における拷問及び人権侵害の可能性等を,同報告書の中で指摘している。
〈外交〉
1.ペニャ・ニエト大統領の第4回核セキュリティ・サミット出席
3月31日~4月1日,ペニャ・ニエト大統領はワシントンで開催された第4回核セキュリティ・サミットに出席し,国際社会が取り組むべき核の安全保障に対するメキシコのコミットメントを強調した。
2.朴韓国大統領の訪墨
2日~5日,朴韓国大統領がペニャ・ニエト大統領の招待に応じる形で,メキシコを公式訪問した。朴大統領はペニャ・ニエト大統領との首脳会談の他,韓墨ビジネス委員会第23回会合,韓墨ビジネスフォーラム等に出席した。
(1)両国首脳共同記者会見(4日)
4日,首脳会談後に行われたペニャ・ニエト大統領及び朴大統領の共同記者会見では,朴大統領訪墨中に17の合意文章に署名がなされる旨,両国間の自由貿易協定締結の可能性及び韓国のTPP参加に向けたメキシコの支援策に関し取り組む作業部会を,2016年第4四半期より開催することで合意した旨公表された。
(ア)ペニャ・ニエト大統領発言概要
(a)今般の朴大統領の訪墨は,1962年に樹立されたメキシコと韓国の友好関係を再確認するものである。二国間の貿易,投資,産業,エネルギー分野における協力を促進する共同委員会(Comite Conjunto)を設立するための重要な合意が署名された。両国は,鉄道交通,港湾インフラ,航空産業の分野における最新技術を活用した協力,科学・技術支援及び水資源に関する情報交換を促進していく。また,エネルギーインフラの開発を目的とした10億米ドルの信用供与及び,韓国企業に対するメキシコのサプライヤー企業への融資を目的とする2億米ドルの信用供与を開始する。
(b)両国は,朴大統領滞在中に科学技術・イノベーション,電気,クリーンエネルギー,警察の能力向上,国際犯罪組織対策,高等教育,保健・社会保障,観光,クリエイティブ産業,著作権等の分野に係る17の協力合意に署名することとなる。
(c)メキシコと韓国の二国間経済関係は重要な成長を見せている。2000年,二国間の貿易総額は40億米ドルであったが,2015年は175億米ドルに達した。また,韓国によるメキシコへの年間投資額は,同時期に24倍に増加している。
(d)このような両国の経済関係を鑑みた結果,2016年第4四半期より,二国間の貿易及び投資を更に増加させることを目的とした作業部会を開催することで合意した。同作業部会においては,メキシコ-韓国間の自由貿易協定(Tratado de Libre Comercio)締結の可能性に向けた二国間協議を開始すると同時に,韓国のTPP参加に向けたメキシコの支援策に関しても提示する。このような諸種の合意は,韓国とメキシコの友情と協力の関係を強化するものである。
(e)先日の核セキュリティ・サミットでも述べたとおり,国際社会の安全保障は我々の責務である。メキシコは,如何なる国家による核兵器の開発及び使用を非難し,如何なる国の核実験を拒絶する。メキシコにとって,核実験は国連安保理決議に反する明確な違反であり,国際社会の信頼を裏切り,緊張を高める行為である。核軍縮は世界平和及び人類の未来にとっての根本的条件である。
(イ)朴大統領の発言概要
(a)韓国とメキシコの両国は,APEC及びMIKTAのメンバーであり,それぞれの地域における平和と繁栄に対する責務を有する中規模の大国である(potencias medianas)。また,両国は雇用を創出し,更なる成長を促進する網羅的な構造改革を推進している。このような共通項を有する韓国とメキシコの二国間協力関係をより強固なものとすることが,今般のペニャ・ニエト大統領との首脳会談の最優先事項であった。
(b)メキシコは韓国にとってラテンアメリカにおける最大の貿易相手国であるが,両国の間には,更なる貿易及び投資の増加を可能とする巨大な潜在力が存在する。メキシコ-韓国間の自由貿易協定署名に向けた協議を行い,韓国のTPP参加に向けたメキシコの支援策に関し取り組む作業部会を,2016年第4四半期より開催することで合意したことは,今般の訪墨の中でも特別な意味を持つ成果である。
(c)両国政府は,韓国企業のメキシコ進出及びメキシコ企業の韓国進出の促進に向け,オンライン取引を通じた販売経路の創出,基準・認証の分野での協力拡大等の政策を実施することで合意した。また,首脳会談において,クレジットライン及び貿易保険を大幅に拡張することで合意した。また,韓国民間銀行のメキシコ支店開設も実現する。
(d)両国は,再生可能エネルギー,保健,医療,水資源,交通インフラ等,二国間の協力分野を拡大することで合意した。さらに,両国国民の相互理解を深化させ,交流を促進する。この文脈において,人的交流のみならず,文化・スポーツ分野における協力を拡大するため共に努力する。
(e)メキシコは,国連安保理決議第2270号の徹底した履行の一環としての措置を採択するなど,北朝鮮による核開発の意志を砕くために韓国と積極的な協力を行っており,メキシコのかかる姿勢に謝意を表明する。
(f)両国は,安全保障,開発,気候変動,国連改革の分野において共通の関心を有しており,国際社会の利益となる合理的解決策を模索するのために協力することで合意した。
(2)起亜自動車とヌエボ・レオン州政府間の問題
(ア)朴大統領は,ペニャ・ニエト大統領との首脳会談において,起亜自動車とヌエボ・レオン州政府間の問題に関し,問題解決に連邦政府が公式に乗り出すことを要請した。これに対しペニャ・ニエト大統領は,同席していたグアハルド経済相に対し,当該の問題を図るよう指示した。
(イ)グアハルド経済相は,首脳会談の後に開催された韓墨ビジネス委員会第23回会合にて,ペニャ・ニエト大統領の指示により,連邦政府は起亜自動車とヌエボ・レオン州政府間の交渉におけるファシリテーター(Facilitador)になる方針である旨述べた。
(ウ)大統領主催午餐会に出席したロドリゲス・ヌエボ・レオン州知事はメディアの質問に答え,ヌエボ・レオン州政府は起亜自動車が同州で操業する条件を排除する意図はないことを強調するとともに,双方の合意に向け,同社に対し,同州政府の置かれた厳しい財政状況への理解を求めた。
(3)17の合意文章
朴大統領の訪墨中,科学技術・技術革新,電気,クリーンエネルギー,警察の能力向上,国際犯罪組織対策,高等教育,保健・社会保障,観光,クリエイティブ産業,著作権等の分野における17の協力についての合意(以下の2つの合意を含む)が署名された。
(ア)墨エネルギー省と韓国産業・貿易・エネルギー省間の工業・エネルギー分野における投資促進のための共同委員会設立のための合意
(イ)メキシコ電力公社(CFE)と韓国輸出入銀行間のエネルギーインフラの開発を目的とした10億米ドルの信用供与及び韓国企業に対するメキシコのサプライヤー企業への融資を目的とする2億米ドルの信用供与を開始するための合意
3.駐米メキシコ大使の交代
5日,駐米メキシコ大使の交代人事が発表された。バサーニェス駐米メキシコ大使の後任にはカルロス・サダ在ロサンゼルス総領事が就任する。21日,連邦上院議会は,カロロス・サダ新駐米メキシコ大使の就任人事を承認した。
4.武藤外務副大臣の訪墨
11日~14日,武藤外務副大臣が訪墨。11日のレオン総領事館開設記念式典に出席した他,グアナファト州(11日及び12日)ではマルケス・グアナファト州知事,ロペス・レオン市長との会談,日本企業関係者との意見交換等を実施した。また,メキシコシティ(12日,13日及び14日)では,デ・マリア・イ・カンポス墨外務省アジア大洋州局長,ディアス連邦上院議会副議長と会談した他,現地在留法人代表との意見交換,日本メキシコ学院及び日墨会館への訪問を行った。
5.ペニャ・ニエト大統領のドイツ訪問
11日~12日,ペニャ・ニエト大統領がドイツを公式訪問し,メルケル独首相との首脳会談の他,ガウク大統領,ミューラー・ベルリン市長,ショルツ・ハンブルグ市長,ドイツ企業関係者等と会談した。
(1)全体概要
(ア)ペニャ・ニエト大統領とメルケル首相との首脳会談は,今般の公式訪問のもので5回目。また,ペニャ・ニエト大統領とガウク大統領との会談は今回が初。
(イ)今般のペニャ・ニエト大統領のドイツ公式訪問を機に,文化・科学・食文化等のイベントを通じて相互理解の促進を図るメキシコにおけるドイツ年,ドイツにおけるメキシコ年が開始された。
(ウ)今般のペニャ・ニエト大統領のドイツ公式訪問では,エネルギー分野等の経済協力,人権,メキシコのPKO参加に係るメキシコ軍の能力強化,メキシコの警察組織改革等における協力に関する16の合意文書が署名された。
(2)メルケル首相との共同記者会見概要(12日)
12日,首脳会談を行ったペニャ・ニエト大統領とメルケル首相は,概要以下の通り共同記者会見を行った。
(ア)ペニャ・ニエト大統領は,墨独両国は民主主義,自由貿易という共通の価値観を共有する国であり,両国共に,高いボラティリティと不安定さに直面する今日の世界の経済情勢においても,成長を続けている旨述べ,今般の公式訪問は,両国の更なる成長及び両国国民の便益につながる二国間関係の更なる緊密化の機会となる旨述べた。
(イ)ペニャ・ニエト大統領は,メルケル首相との首脳会談に先立って行われたドイツ企業関係者との会合について触れ,ドイツ企業関係者から示されたメキシコへの興味に対し,墨独両政府はこれら企業の活動を容易なものとし,両国の経済・貿易関係を強化することを通じて雇用を創出し,両国の成長の促進及び両国国民の便益につながる環境を整備する役割を担っている旨述べた。
(ウ)さらにペニャ・ニエト大統領は,今般の首脳会談において治安対策に関し議論を重ねた旨述べ,墨独両国は共に連邦制の国家であるところ,メキシコの抱える地方警察の問題に関し,メルケル首相より申し出のあったドイツによる経験の共有は,メキシコの警察組織改革に有益なものとなる旨述べた。
(エ)メルケル首相は,エネルギー分野等に係る合意文書に署名した旨述べ,また,経済に関する議論を重ねた旨述べた。また,人権に係る分野に関しては今後も対話を継続する旨述べた。さらに,メキシコのPKO活動参加意志の表明を受け,ドイツがメキシコのPKO参加に係るメキシコ軍の能力向上を支援する旨,また,メキシコの警察組織改革への協力を行う旨述べた。
(オ)メルケル首相は,原油価格の低下という厳しい状況下にも関わらず,着実に推進しているメキシコのエネルギー改革を評価,メキシコの公共入札にドイツ企業が参加する機会を,メキシコが透明性を持って保障することの重要性を強調した。
(カ)さらに,メルケル首相は,ドイツ企業によるメキシコ政府に対する諸種の要望に対し,メキシコ政府より明確な回答があった旨述べ,ペニャ・ニエト政権下で推進される構造改革を理解し,それによって創出される機会を活用したい旨述べた。これらの意味において,今般の首脳会談は非常に建設的であり,内容の充実したものであった旨述べた。
5.ペニャ・ニエト大統領のデンマーク訪問
13日~14日,ペニャ・ニエト大統領がデンマークを公式訪問し,ラスンセン・デンマーク首相との首脳会談の他,マルグレーテ2世女王陛下主催午餐会に出席した。
(1)全体概要
(ア)1827年のメキシコとデンマークの国交樹立後,メキシコの大統領がデンマークを公式訪問するのは,今般のペニャ・ニエト大統領が初。
(イ)今般の公式訪問は,ペニャ・ニエト政権下で推進される構造改革の説明を通じた投資誘致,また,クリーンエネルギー分野及び保健分野における同国との協力関係強化に主眼が置かれたもの。
(ウ)今般のペニャ・ニエト大統領の訪問中に,エネルギー,保健,人権に係る分野等における7つの合意文書が署名された。
(2)共同記者会見におけるペニャ・ニエト発言概要(14日)
(ア)マルグレーテ2世女王陛下のご招待により,今般,メキシコの大統領として初の公式訪問を実現できた。本公式訪問中に我々が受けたホスピタリティーに感謝する。
(イ)本公式訪問では,デンマークの企業関係者と意見交換を行ったが,既に多くの企業がメキシコに投資しており,雇用を生んでいる。また,更なる多くの企業がメキシコへの投資に興味を示している通り,今日,メキシコは信頼の置ける投資先としての魅力を提供している。
(ウ)メキシコが推進するエネルギー改革は同セクターを民間企業に開放するものであるが,同時にクリーンエネルギーの推進を目指すものでもある。この点に関しては,デンマーク企業によって,ラテンアメリカ最大の風力発電所がメキシコに建設されている旨強調したい。
(エ)デンマークはメキシコにとって,EU加盟国の中で最も多くメキシコに投資している国の一つである。すでに述べたように多くのデンマーク企業がメキシコへの更なる投資意欲を有しており,それら企業の豊富な経験及びメキシコが提供する機会により,両国の経済関係は更に強化される。
(オ)また,経済関係のみならず,両国は人権,保健等の分野における協力関係も強化する。保健分野においては,残念なことにメキシコは世界で最も肥満率の高い国の一つであり,現在,同問題への対策に取り組んでいるが,デンマークのその経験に基づく,プリマリー・ヘルス・ケア(PHC)及び糖尿病予防に係る協力に感謝する。
6.熊本地震に関するメキシコ外務省からのお見舞いのプレスリリース
18日,メキシコ外務省は,熊本地震に関し,概要以下の通りお見舞いのプレスリリースを発出した。
(1)メキシコ政府は、メキシコ外務省を通じ、4月15日から熊本県において群発する地震が大きな人的・物的被害をもたらしていることに対し、心からの同情の気持ちを表明する
(2)メキシコ外務省は、メキシコ政府を代表して、熊本地震による人的・物的被害及び被災者に対し、心からの連帯と同情の気持ちを表明する。
(3)在京メキシコ大使館は、地域当局と調整しつつ(日本に滞在する)メキシコ人に対し、必要な領事支援を行うため連絡を維持する。
(4)メキシコ外務省は、日本政府に対し衷心からの連帯を表明し、今回の地震によって被害を受けた住民及び地域の一日も早い復興を祈念する。
7.ペニャ・ニエト大統領の国連麻薬特別総会(UNGASS)出席
19日,19日~21日にニューヨークで開催された国連麻薬特別総会(UNGASS)にペニャ・ニエト大統領が出席し,以下10項目からなる提案事項を発表した。
(1)麻薬問題に対し,国際社会はより強固かつ効率的な国際協力を通じて,共通の責任を果たすという原則に署名する。
(2)国際的犯罪組織撲滅に向け,情報共有,共同オペレーションの実施等,各政府間の協力を強化する。
(3)国際的な麻薬問題に対応するために,国連の関係機関間の協力体制を強化する。
(4)麻薬問題に対応する国際的政策は,国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」における目標と相互補完するものとしなければならない。
(5)麻薬の違法市場によって生じている社会的損害に対処しなければならない。犯罪組織による影響を受けるコミュニティーにおいては,暴力,除外,社会のつながりの希薄化という問題に対し,統合的な予防対策を講じる必要がある。これらのコミュニティーに対しては,社会参加及び社会的結束を促進する教育,雇用,レクレーションの分野における支援を行わなければならない。
(6)麻薬は禁止すべきであるという考えによる制限されたパラダイムを脱却し,麻薬問題を人権の観点から対処すべきである。このようなパラダイムシフトによって,従来の懲罰的アプローチから人権と尊厳に基づくアプローチへの修正が可能となる。
(7)麻薬の消費は公衆衛生の問題,とりわけ,児童・青少年の健全な発達への脅威として取り扱われるべきである。麻薬中毒の問題に対しては,消費者を犯罪者とし,その人格の発達に悪影響を与える刑罰を手段とするのではなく,その予防及び統合的治療を通した解決によるメカニズムによって対応しなければならない。
(8)麻薬に関連する犯罪に関しては収監に代わる,またジェンダーの視点を考慮した,適切な刑罰を適用する必要がある。
(9)児童・青少年に向けた麻薬消費予防キャンペーン実施のために国際社会の力を結集しなければならない。
(10)医療及び科学的な利用を目的として,これらの物質への管理された利用を保証すると同時に,これら物質の不正利用,密売は引き続き厳格に取り締まっていかなければならない。かかる提案は,メキシコ政府が招集した専門家,学者,市民団体代表によるマリファナの使用に関する国家的議論から生じたものである。
8.レンツィ伊首相の訪墨
20日,レンツィ伊首相がメキシコを公式訪問し,国立宮殿にてペニャ・ニエト大統領と首脳会談を行った。ペニャ・ニエト大統領とレンツィ伊首相による首脳会談は,約2年振りで今回が4回目。両首脳は観光,スポーツ,社会保障,再生可能エネルギーの分野に係る二国間アジェンダの見直しを行った。また,二国間の戦略提携を深化させ続けるための建設的な対話を行った。
【内政】
・7日までに,「パナマ文書」には33名のメキシコ国籍所有者の名前が含まれていることが明らかとなった。
・13日付当地「レフォルマ」紙に掲載された世論調査における一般回答者のペニャ・ニエト大統領の支持率は30%であった。
・20日,ベラクルス州コアッツアコアルコス市のPEMEXの石油工場にて爆発事故が発生した。
・21日,ペニャ・ニエト大統領はマリファナの医療目的及び個人使用合法化に向けた法案を提出した旨発表した。
・30日,通常国会が閉幕した。
・30日,米州機構人権委員会に派遣され,アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件の独自調査を行っていた専門家グループが,その活動を終了した。
【外交】
・3月31日~4月1日,ペニャ・ニエト大統領が第4回核セキュリティ・サミットに出席した。
・2日~5日,朴韓国大統領がメキシコを公式訪問した。
・5日,駐米メキシコ大使の交代人事が発表された。
・11日~14日,武藤外務副大臣が訪墨した。
・11日~12日,ペニャ・ニエト大統領がドイツを公式訪問した。
・13日~14日,ペニャ・ニエト大統領がデンマークを公式訪問した。
・19日,国連麻薬特別総会(UNGASS)にペニャ・ニエト大統領が出席し,10項目からなる提案事項を発表した。
・20日,レンツィ伊首相がメキシコを公式訪問した。
〈内政〉
1.「パナマ文書」とメキシコ
(1)7日までの当地報道によると,33名のメキシコ国籍所有者の名前が「パナマ文書」中に現れているとされている。その中には,イノホサGrupo Higa会長,ロソーヤ前メキシコ石油公社(PEMEX)総裁,ユネス国民行動党(PAN)ベラクルス州知事候補の息子,カニェド元テレビサ執行取締役などの名前が含まれている。
(2)6日,アリストレス国税庁(SAT)長官はメディアのインタビューに対し,当該文書中に名前が挙がっている33名のうち数名はすでに調査の対象となっている旨述べたが,調査対象の固有名詞に関しては言及を避けた。
2.世論調査:大統領支持率
13日付当地「レフォルマ」紙に掲載された世論調査における2016年4月時点のペニャ・ニエト大統領の一般回答者による支持率は30%(前回2015年12月調査時の39%から9ポイント減),不支持率は66%(同58%から8ポイント増)であった。また,有識者による支持率は,22%(同21%から1ポイント増),不支持率は78%(前回と同数値)であった。ペニャ・ニエト政権の取組の中で評価が低い項目は,汚職対策(14%),経済政策(18%),雇用対策(19%),貧困対策(22%),治安対策(23%)という結果であった。
3.メキシコ石油公社(PEMEX)の石油化学工場での爆発事故
(1)20日午後3時過ぎ,ベラクルス州コアッツアコアルコス市のPEMEXの石油工場にて爆発事故が発生した。同日夕方までに,爆発に伴う火は鎮火された。21日時点で同事故による死者は24名,負傷者136名,依然8名が行方不明のままとなっている。
(2)PEMEXによると,爆発したのは合弁会社メキシケム(Mexichem)が運営していた工場で,管や梱包材に使われる塩化ビニールを製造していた。
(3)21日午後,ペニャ・ニエト大統領,オソリオ内相等が事故現場を視察した。ペニャ・ニエト大統領は,本事故の責任はPEMEXとメキシケムが負うべき旨述べ,事故の原因究明及び被害者への適切な補償を行うようPEMEX側に求めた。
(4)事故の原因は判明していないが,当地報道では,今般の事故の要因として資金不足による施設の老朽化を指摘するものが目立つ。また,ベラクルス州の地方メディアでは,2013年,メキシケムが同工場の運営権を獲得した際に経営合理化のために人員を削減したことより,経験のある技術者がいなくなったことが,今般の事故の遠因として指摘されている。2013年1月には,メキシコシティーのPEMEX本部でガス爆発があり,37人が死亡,2015年にはメキシコ湾で同社の石油プラットフォームで火災が相次ぎ,今年2月には今回と同じ工場で火災があり従業員が1人死亡する事故が発生する等,近年,PEMEX関連の事故が相次いでいる。
4.マリファナの医療目的及び個人使用合法化に向けた法案の提出
21日,ペニャ・ニエト大統領は,マリファナの医療目的及び個人使用合法化に向けた法案を提出した旨発表した。同法案は,以下3項目を主眼とした内容。
(1)マリファナ及びその成分によって精製された薬の使用を許可。メキシコ国内において,マリファナ及びTHCを含む薬を認可し,また,その輸入を許可する。
(2)マリファナ及びその成分を含む薬の認可を目的とした臨床実験を許可。
(3)個人使用を目的とした28グラムまでのマリファナの所有を許可。28グラムまでの使用は罰則対象とならない(注:現在,メキシコでは個人使用を目的とした5グラムまでのマリファナの所有が認められている。)。
5.通常国会の閉幕
30日,通常国会が閉幕。国家汚職対策システム関連二次法案,統一州警察の創設に係る憲法改正案,マリファナの医療目的及び個人使用合法化に向けた法案等の審議・採決は行われず,これら法案の審議・採決のために臨時国会が召集される見通しとなっている。
6.アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件を巡る最近の動向
(1)30日,2015年3月より,アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件の独自調査を行う目的で,米州機構人権委員会から派遣されていた専門家グループ(GIEI)が,メキシコ政府から必要な支援を得られないことを理由に,その活動を終了した。
(2)24日,GIEIは最終報告書を提出したが,従来から指摘している(1)被害者生徒はゲレロ州コクラ紙のゴミ焼却所では焼却されていない可能性及び,(2)連邦検察超(PGR)の捜査報告書では触れられていないが,事件の真相解明の鍵を握る可能性のある5台目の長距離バスの存在に加え,(3)PGRの犯罪捜査庁(AIC)による証拠ねつ造の可能性,(4)PGRの捜査における拷問及び人権侵害の可能性等を,同報告書の中で指摘している。
〈外交〉
1.ペニャ・ニエト大統領の第4回核セキュリティ・サミット出席
3月31日~4月1日,ペニャ・ニエト大統領はワシントンで開催された第4回核セキュリティ・サミットに出席し,国際社会が取り組むべき核の安全保障に対するメキシコのコミットメントを強調した。
2.朴韓国大統領の訪墨
2日~5日,朴韓国大統領がペニャ・ニエト大統領の招待に応じる形で,メキシコを公式訪問した。朴大統領はペニャ・ニエト大統領との首脳会談の他,韓墨ビジネス委員会第23回会合,韓墨ビジネスフォーラム等に出席した。
(1)両国首脳共同記者会見(4日)
4日,首脳会談後に行われたペニャ・ニエト大統領及び朴大統領の共同記者会見では,朴大統領訪墨中に17の合意文章に署名がなされる旨,両国間の自由貿易協定締結の可能性及び韓国のTPP参加に向けたメキシコの支援策に関し取り組む作業部会を,2016年第4四半期より開催することで合意した旨公表された。
(ア)ペニャ・ニエト大統領発言概要
(a)今般の朴大統領の訪墨は,1962年に樹立されたメキシコと韓国の友好関係を再確認するものである。二国間の貿易,投資,産業,エネルギー分野における協力を促進する共同委員会(Comite Conjunto)を設立するための重要な合意が署名された。両国は,鉄道交通,港湾インフラ,航空産業の分野における最新技術を活用した協力,科学・技術支援及び水資源に関する情報交換を促進していく。また,エネルギーインフラの開発を目的とした10億米ドルの信用供与及び,韓国企業に対するメキシコのサプライヤー企業への融資を目的とする2億米ドルの信用供与を開始する。
(b)両国は,朴大統領滞在中に科学技術・イノベーション,電気,クリーンエネルギー,警察の能力向上,国際犯罪組織対策,高等教育,保健・社会保障,観光,クリエイティブ産業,著作権等の分野に係る17の協力合意に署名することとなる。
(c)メキシコと韓国の二国間経済関係は重要な成長を見せている。2000年,二国間の貿易総額は40億米ドルであったが,2015年は175億米ドルに達した。また,韓国によるメキシコへの年間投資額は,同時期に24倍に増加している。
(d)このような両国の経済関係を鑑みた結果,2016年第4四半期より,二国間の貿易及び投資を更に増加させることを目的とした作業部会を開催することで合意した。同作業部会においては,メキシコ-韓国間の自由貿易協定(Tratado de Libre Comercio)締結の可能性に向けた二国間協議を開始すると同時に,韓国のTPP参加に向けたメキシコの支援策に関しても提示する。このような諸種の合意は,韓国とメキシコの友情と協力の関係を強化するものである。
(e)先日の核セキュリティ・サミットでも述べたとおり,国際社会の安全保障は我々の責務である。メキシコは,如何なる国家による核兵器の開発及び使用を非難し,如何なる国の核実験を拒絶する。メキシコにとって,核実験は国連安保理決議に反する明確な違反であり,国際社会の信頼を裏切り,緊張を高める行為である。核軍縮は世界平和及び人類の未来にとっての根本的条件である。
(イ)朴大統領の発言概要
(a)韓国とメキシコの両国は,APEC及びMIKTAのメンバーであり,それぞれの地域における平和と繁栄に対する責務を有する中規模の大国である(potencias medianas)。また,両国は雇用を創出し,更なる成長を促進する網羅的な構造改革を推進している。このような共通項を有する韓国とメキシコの二国間協力関係をより強固なものとすることが,今般のペニャ・ニエト大統領との首脳会談の最優先事項であった。
(b)メキシコは韓国にとってラテンアメリカにおける最大の貿易相手国であるが,両国の間には,更なる貿易及び投資の増加を可能とする巨大な潜在力が存在する。メキシコ-韓国間の自由貿易協定署名に向けた協議を行い,韓国のTPP参加に向けたメキシコの支援策に関し取り組む作業部会を,2016年第4四半期より開催することで合意したことは,今般の訪墨の中でも特別な意味を持つ成果である。
(c)両国政府は,韓国企業のメキシコ進出及びメキシコ企業の韓国進出の促進に向け,オンライン取引を通じた販売経路の創出,基準・認証の分野での協力拡大等の政策を実施することで合意した。また,首脳会談において,クレジットライン及び貿易保険を大幅に拡張することで合意した。また,韓国民間銀行のメキシコ支店開設も実現する。
(d)両国は,再生可能エネルギー,保健,医療,水資源,交通インフラ等,二国間の協力分野を拡大することで合意した。さらに,両国国民の相互理解を深化させ,交流を促進する。この文脈において,人的交流のみならず,文化・スポーツ分野における協力を拡大するため共に努力する。
(e)メキシコは,国連安保理決議第2270号の徹底した履行の一環としての措置を採択するなど,北朝鮮による核開発の意志を砕くために韓国と積極的な協力を行っており,メキシコのかかる姿勢に謝意を表明する。
(f)両国は,安全保障,開発,気候変動,国連改革の分野において共通の関心を有しており,国際社会の利益となる合理的解決策を模索するのために協力することで合意した。
(2)起亜自動車とヌエボ・レオン州政府間の問題
(ア)朴大統領は,ペニャ・ニエト大統領との首脳会談において,起亜自動車とヌエボ・レオン州政府間の問題に関し,問題解決に連邦政府が公式に乗り出すことを要請した。これに対しペニャ・ニエト大統領は,同席していたグアハルド経済相に対し,当該の問題を図るよう指示した。
(イ)グアハルド経済相は,首脳会談の後に開催された韓墨ビジネス委員会第23回会合にて,ペニャ・ニエト大統領の指示により,連邦政府は起亜自動車とヌエボ・レオン州政府間の交渉におけるファシリテーター(Facilitador)になる方針である旨述べた。
(ウ)大統領主催午餐会に出席したロドリゲス・ヌエボ・レオン州知事はメディアの質問に答え,ヌエボ・レオン州政府は起亜自動車が同州で操業する条件を排除する意図はないことを強調するとともに,双方の合意に向け,同社に対し,同州政府の置かれた厳しい財政状況への理解を求めた。
(3)17の合意文章
朴大統領の訪墨中,科学技術・技術革新,電気,クリーンエネルギー,警察の能力向上,国際犯罪組織対策,高等教育,保健・社会保障,観光,クリエイティブ産業,著作権等の分野における17の協力についての合意(以下の2つの合意を含む)が署名された。
(ア)墨エネルギー省と韓国産業・貿易・エネルギー省間の工業・エネルギー分野における投資促進のための共同委員会設立のための合意
(イ)メキシコ電力公社(CFE)と韓国輸出入銀行間のエネルギーインフラの開発を目的とした10億米ドルの信用供与及び韓国企業に対するメキシコのサプライヤー企業への融資を目的とする2億米ドルの信用供与を開始するための合意
3.駐米メキシコ大使の交代
5日,駐米メキシコ大使の交代人事が発表された。バサーニェス駐米メキシコ大使の後任にはカルロス・サダ在ロサンゼルス総領事が就任する。21日,連邦上院議会は,カロロス・サダ新駐米メキシコ大使の就任人事を承認した。
4.武藤外務副大臣の訪墨
11日~14日,武藤外務副大臣が訪墨。11日のレオン総領事館開設記念式典に出席した他,グアナファト州(11日及び12日)ではマルケス・グアナファト州知事,ロペス・レオン市長との会談,日本企業関係者との意見交換等を実施した。また,メキシコシティ(12日,13日及び14日)では,デ・マリア・イ・カンポス墨外務省アジア大洋州局長,ディアス連邦上院議会副議長と会談した他,現地在留法人代表との意見交換,日本メキシコ学院及び日墨会館への訪問を行った。
5.ペニャ・ニエト大統領のドイツ訪問
11日~12日,ペニャ・ニエト大統領がドイツを公式訪問し,メルケル独首相との首脳会談の他,ガウク大統領,ミューラー・ベルリン市長,ショルツ・ハンブルグ市長,ドイツ企業関係者等と会談した。
(1)全体概要
(ア)ペニャ・ニエト大統領とメルケル首相との首脳会談は,今般の公式訪問のもので5回目。また,ペニャ・ニエト大統領とガウク大統領との会談は今回が初。
(イ)今般のペニャ・ニエト大統領のドイツ公式訪問を機に,文化・科学・食文化等のイベントを通じて相互理解の促進を図るメキシコにおけるドイツ年,ドイツにおけるメキシコ年が開始された。
(ウ)今般のペニャ・ニエト大統領のドイツ公式訪問では,エネルギー分野等の経済協力,人権,メキシコのPKO参加に係るメキシコ軍の能力強化,メキシコの警察組織改革等における協力に関する16の合意文書が署名された。
(2)メルケル首相との共同記者会見概要(12日)
12日,首脳会談を行ったペニャ・ニエト大統領とメルケル首相は,概要以下の通り共同記者会見を行った。
(ア)ペニャ・ニエト大統領は,墨独両国は民主主義,自由貿易という共通の価値観を共有する国であり,両国共に,高いボラティリティと不安定さに直面する今日の世界の経済情勢においても,成長を続けている旨述べ,今般の公式訪問は,両国の更なる成長及び両国国民の便益につながる二国間関係の更なる緊密化の機会となる旨述べた。
(イ)ペニャ・ニエト大統領は,メルケル首相との首脳会談に先立って行われたドイツ企業関係者との会合について触れ,ドイツ企業関係者から示されたメキシコへの興味に対し,墨独両政府はこれら企業の活動を容易なものとし,両国の経済・貿易関係を強化することを通じて雇用を創出し,両国の成長の促進及び両国国民の便益につながる環境を整備する役割を担っている旨述べた。
(ウ)さらにペニャ・ニエト大統領は,今般の首脳会談において治安対策に関し議論を重ねた旨述べ,墨独両国は共に連邦制の国家であるところ,メキシコの抱える地方警察の問題に関し,メルケル首相より申し出のあったドイツによる経験の共有は,メキシコの警察組織改革に有益なものとなる旨述べた。
(エ)メルケル首相は,エネルギー分野等に係る合意文書に署名した旨述べ,また,経済に関する議論を重ねた旨述べた。また,人権に係る分野に関しては今後も対話を継続する旨述べた。さらに,メキシコのPKO活動参加意志の表明を受け,ドイツがメキシコのPKO参加に係るメキシコ軍の能力向上を支援する旨,また,メキシコの警察組織改革への協力を行う旨述べた。
(オ)メルケル首相は,原油価格の低下という厳しい状況下にも関わらず,着実に推進しているメキシコのエネルギー改革を評価,メキシコの公共入札にドイツ企業が参加する機会を,メキシコが透明性を持って保障することの重要性を強調した。
(カ)さらに,メルケル首相は,ドイツ企業によるメキシコ政府に対する諸種の要望に対し,メキシコ政府より明確な回答があった旨述べ,ペニャ・ニエト政権下で推進される構造改革を理解し,それによって創出される機会を活用したい旨述べた。これらの意味において,今般の首脳会談は非常に建設的であり,内容の充実したものであった旨述べた。
5.ペニャ・ニエト大統領のデンマーク訪問
13日~14日,ペニャ・ニエト大統領がデンマークを公式訪問し,ラスンセン・デンマーク首相との首脳会談の他,マルグレーテ2世女王陛下主催午餐会に出席した。
(1)全体概要
(ア)1827年のメキシコとデンマークの国交樹立後,メキシコの大統領がデンマークを公式訪問するのは,今般のペニャ・ニエト大統領が初。
(イ)今般の公式訪問は,ペニャ・ニエト政権下で推進される構造改革の説明を通じた投資誘致,また,クリーンエネルギー分野及び保健分野における同国との協力関係強化に主眼が置かれたもの。
(ウ)今般のペニャ・ニエト大統領の訪問中に,エネルギー,保健,人権に係る分野等における7つの合意文書が署名された。
(2)共同記者会見におけるペニャ・ニエト発言概要(14日)
(ア)マルグレーテ2世女王陛下のご招待により,今般,メキシコの大統領として初の公式訪問を実現できた。本公式訪問中に我々が受けたホスピタリティーに感謝する。
(イ)本公式訪問では,デンマークの企業関係者と意見交換を行ったが,既に多くの企業がメキシコに投資しており,雇用を生んでいる。また,更なる多くの企業がメキシコへの投資に興味を示している通り,今日,メキシコは信頼の置ける投資先としての魅力を提供している。
(ウ)メキシコが推進するエネルギー改革は同セクターを民間企業に開放するものであるが,同時にクリーンエネルギーの推進を目指すものでもある。この点に関しては,デンマーク企業によって,ラテンアメリカ最大の風力発電所がメキシコに建設されている旨強調したい。
(エ)デンマークはメキシコにとって,EU加盟国の中で最も多くメキシコに投資している国の一つである。すでに述べたように多くのデンマーク企業がメキシコへの更なる投資意欲を有しており,それら企業の豊富な経験及びメキシコが提供する機会により,両国の経済関係は更に強化される。
(オ)また,経済関係のみならず,両国は人権,保健等の分野における協力関係も強化する。保健分野においては,残念なことにメキシコは世界で最も肥満率の高い国の一つであり,現在,同問題への対策に取り組んでいるが,デンマークのその経験に基づく,プリマリー・ヘルス・ケア(PHC)及び糖尿病予防に係る協力に感謝する。
6.熊本地震に関するメキシコ外務省からのお見舞いのプレスリリース
18日,メキシコ外務省は,熊本地震に関し,概要以下の通りお見舞いのプレスリリースを発出した。
(1)メキシコ政府は、メキシコ外務省を通じ、4月15日から熊本県において群発する地震が大きな人的・物的被害をもたらしていることに対し、心からの同情の気持ちを表明する
(2)メキシコ外務省は、メキシコ政府を代表して、熊本地震による人的・物的被害及び被災者に対し、心からの連帯と同情の気持ちを表明する。
(3)在京メキシコ大使館は、地域当局と調整しつつ(日本に滞在する)メキシコ人に対し、必要な領事支援を行うため連絡を維持する。
(4)メキシコ外務省は、日本政府に対し衷心からの連帯を表明し、今回の地震によって被害を受けた住民及び地域の一日も早い復興を祈念する。
7.ペニャ・ニエト大統領の国連麻薬特別総会(UNGASS)出席
19日,19日~21日にニューヨークで開催された国連麻薬特別総会(UNGASS)にペニャ・ニエト大統領が出席し,以下10項目からなる提案事項を発表した。
(1)麻薬問題に対し,国際社会はより強固かつ効率的な国際協力を通じて,共通の責任を果たすという原則に署名する。
(2)国際的犯罪組織撲滅に向け,情報共有,共同オペレーションの実施等,各政府間の協力を強化する。
(3)国際的な麻薬問題に対応するために,国連の関係機関間の協力体制を強化する。
(4)麻薬問題に対応する国際的政策は,国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」における目標と相互補完するものとしなければならない。
(5)麻薬の違法市場によって生じている社会的損害に対処しなければならない。犯罪組織による影響を受けるコミュニティーにおいては,暴力,除外,社会のつながりの希薄化という問題に対し,統合的な予防対策を講じる必要がある。これらのコミュニティーに対しては,社会参加及び社会的結束を促進する教育,雇用,レクレーションの分野における支援を行わなければならない。
(6)麻薬は禁止すべきであるという考えによる制限されたパラダイムを脱却し,麻薬問題を人権の観点から対処すべきである。このようなパラダイムシフトによって,従来の懲罰的アプローチから人権と尊厳に基づくアプローチへの修正が可能となる。
(7)麻薬の消費は公衆衛生の問題,とりわけ,児童・青少年の健全な発達への脅威として取り扱われるべきである。麻薬中毒の問題に対しては,消費者を犯罪者とし,その人格の発達に悪影響を与える刑罰を手段とするのではなく,その予防及び統合的治療を通した解決によるメカニズムによって対応しなければならない。
(8)麻薬に関連する犯罪に関しては収監に代わる,またジェンダーの視点を考慮した,適切な刑罰を適用する必要がある。
(9)児童・青少年に向けた麻薬消費予防キャンペーン実施のために国際社会の力を結集しなければならない。
(10)医療及び科学的な利用を目的として,これらの物質への管理された利用を保証すると同時に,これら物質の不正利用,密売は引き続き厳格に取り締まっていかなければならない。かかる提案は,メキシコ政府が招集した専門家,学者,市民団体代表によるマリファナの使用に関する国家的議論から生じたものである。
8.レンツィ伊首相の訪墨
20日,レンツィ伊首相がメキシコを公式訪問し,国立宮殿にてペニャ・ニエト大統領と首脳会談を行った。ペニャ・ニエト大統領とレンツィ伊首相による首脳会談は,約2年振りで今回が4回目。両首脳は観光,スポーツ,社会保障,再生可能エネルギーの分野に係る二国間アジェンダの見直しを行った。また,二国間の戦略提携を深化させ続けるための建設的な対話を行った。