メキシコ政治情勢(7月)
〈概要〉
内政では,11日,シナロア・カルテル最高幹部,ホアキン・「チャポ」・グスマン受刑囚が,服役中であったアルティプラノ連邦刑務所から脱獄した。19日,チアパス州で州議会議員選及び市長選が実施された。21日,クエ・オアハカ州知事は大統領官邸で記者会見を開き,オアハカ州教育機関を廃止し,教育改革のオアハカ州への適用を容易にする新たな教育行政機関を創設する旨発表した。23日,オルテガ・ゲレロ州暫定知事は,連邦上院議会の常設委員会との会合において,ゲレロ州は深刻な財政危機にあり,近く財政破綻宣言を行う可能性がある旨述べた。31日付当地「レフォルマ」紙が発表した世論調査における一般回答者のペニャ・ニエト大統領の支持率は34%であった。
外交では,1日~3日,ペニャ・ニエト大統領は第10回太平洋同盟首脳会議に出席するため,パラカス(ペルー)を訪問した。5日,「パドレ・テンブレケ(Padre Tembleque)水道橋:水利システム」が世界遺産として登録された。13日~16日,ペニャ・ニエト大統領はフランスを国賓訪問した。20日,エルリントン・ベリーズ外相が同国の外相として初の訪墨。21日,ミード外相がエクアドルを訪問した。24日,ミード外相がチリを訪問した。27日~28日,デ・イカサ墨筆頭外務次官は中国の北京を訪問し,政策対話を実施した。29日,墨米ハイレベル経済対話(DEAN)閣僚級ビデオ会議が実施された。
〈内政〉
1.全国州知事会議におけるペニャ・ニエト大統領の発言
8日,トラスカラ州で開催された第49回全国州知事会議(CONAGO)の閉会式にペニャ・ニエト大統領が出席し,スピーチを行った。
【ペニャ・ニエト大統領スピーチ概要】
(1)6月7日の中間選挙においては,メキシコのほぼ全土において,国民が自由に市民の権利を行使する選挙が平和裡に実施された。このような民主主義の行使を保証する環境を整えた各州知事に敬意を表する。選挙という競争の時期は終わり,今日,我々はメキシコ人の利益のために一丸となって取り組んでいかなければならない。メキシコの全ての州において,やるべきことは多く残されている。
(2)2015年1月~5月までの殺人件数は,2012年の同時期比において,27%減少,恐喝事件数は同22.4%,誘拐事件数は同23.2%減少している。このような成果は心強いものであるが,依然不十分であり,各州は州治安当局の能力強化,専門化を実施しなければならない。連邦治安当局は,このような州治安当局の強化をサポートしてきたが,連邦治安当局が各州治安当局に取って代わるという話ではなく,各州政府は,州治安当局の強化への取り組みを継続する必要がある。連邦議会に提出している治安対策パッケージの成立は,州治安当局の強化に寄与するものであるところ,同パッケージ成立に向けた政治的意思が求められている。
(3)政権発足から2年半が経過したが,我々はメキシコ国民のための雇用創出を成し遂げてきた。社会保険庁(IMSS)によれば,本年6月,78,435の正規の雇用が創出された。この数字は,昨年6月と比較すれば,81%の増加であり,IMSSが月毎の新規雇用数の発表を始めたこの18年の中で,6月の数字としては最も高いものである。
2.チアパス州地方選挙
19日,チアパス州で州議会議員選(41議席)及び市長選(122市)が実施された。チアパス州選挙機関によると,192件の不規則事案が確認されたものの,97.2%の投票所が設置され,同選挙は法的に有効とされた。
【選挙暫定結果】
(1)州議会議員選(小選挙区23議席+移民議員1議席のみ,比例代表制17議席は遅くとも9月15日までに確定する予定)
(ア)小選挙区(23議席)
・制度的革命党(PRI)-緑の党-新同盟党-チアパス結集党:15議席
・PRI-緑の党-チアパス結集党:1議席
・緑の党-新同盟党-チアパス結集党:6議席
・緑の党(単独):1議席
(イ)移民議員
・緑の党(単独):1議席
(注:チアパス州議会には,国外に居住する同州出身移民の民意を政治に反映する制度として,同移民を代表する移民議員(Diputado Migrante)のステータスが存在し,1議席が割り当てられている。チアパス州出身移民は,事前に同州選挙機関に選挙人登録を行うことによって,インターネットから電子投票を行うことが可能となっている。)
(2)市長選(122市のうち119市)
・緑の党-新同盟党:42市
・緑の党(単独):15市
・PRI-緑の党-新同盟党-チアパス結集党:1市
・PRI(単独):26市
・PRI-緑の党:1市
・「チアパスを動かす」:10市
・チアパス結集党(単独):9市
・民主革命党(PRD):8市
・国民行動党(PAN):2市
・労働党:2市
・「市民運動」:1市
・新同盟党:1市
・国家再生運動(Morena):1市
(注:チアパス州選挙機関によると,タピルラ市では緑の党と「チアパスを動かす」の両候補が同票を獲得,ベリサリオ・ドミンゲス市とニコラス・ルイス市では,不規則事案により選挙が実施されなかった。これら3自治体に関しては,チアパス州議会が,再選挙実施可否を決定する。)
3.オアハカ州教育機関の廃止及び新教育行政機関の創設
(1)21日,クエ・オアハカ州知事は大統領官邸で記者会見を開き,オアハカ州教育機関(Instituto Estatal de Educacion Publica de Oaxaca)(注:1992年に,当時のメキシコ教育の近代化及び地方分権化の流れの中で誕生したオアハカ州の教育行政機関)を廃止し,憲法によって定められた教育原則を遵守し,教育改革のオアハカ州への適用を容易にする新たな教育行政機関を創設する旨発表した。また,同知事は,新たな教育行政機関はオアハカ州の教職員の労働者としての権利を侵害するものではなく,同州における教育サービスの質の向上を目指し,教職員が教壇においてその能力をより発揮できるようにするためのものである旨述べた。同州知事は,オアハカ州の教職員に対し,同州の教育の質の向上に向けた動きに加わるよう呼びかけると共に,オアハカ州議会議員に対しては,IEEPO廃止及び新教育行政機関創設に必要となる法的手続きを円滑に行うよう求めた。
(2)同記者会見には,チュアイフェット教育相,サンチェス大統領府広報官が同席し,それぞれ,今回のクエ州知事の決定は,州が教育権限を取り戻すために必要な措置であり,オアハカ州で教育改革が進むよう,連邦政府も最大限の支援を行う旨述べた。
(3)ペニャ・ニエト大統領は,本件に関し,クエ州知事の決定は,州が教育の権限を取り戻し,教育改革をオアハカ州に適用するための非常に重要なものであると強調し,メキシコ全土の児童・生徒が有する質の高い教育を受ける権利を実現するための法的・倫理的課題に対し,連邦政府も尽力していく旨述べた。
4.ゲレロ州の財政危機問題
(1)23日,オルテガ・ゲレロ州暫定知事は,連邦上院議会の常設委員会との会合において,ゲレロ州は深刻な財政危機にあり,近く財政破綻宣言を行う可能性がある旨述べ,本年6月7日に実施された同州知事選で勝利したアストゥディージョ次期州知事(PRI)の就任日を,予定されている10月27日より前倒しし,即時政権移行を行うべきであると連邦上院議会に要請した。
(2)オルテガ暫定知事は,2015年より教育改革の一環として,教職員への給与の支払いが,連邦政府より直接行われることになったことを受け(注:従来は各州の教職員組合が給与支払いを代行する仕組みとなっており,教育予算の分配プロセスの不透明性を助長する要因と指摘されてきた),公共教育省に正規教職員として登録されていない同州の約1万9千人への給与が連邦政府から支払われない事態が発生,これらの給与支払いをゲレロ州政府が代行したため,州財政が悪化したと説明した。また,昨年12月,ビデガライ大蔵公債相との間で,これら教職員への給与支払いのための財源として連邦政府からの地方交付金(Prestaciones)を一端用いるが,連邦政府が後に補填する旨の合意がなされたにもかかわらず補填がなされていないことが,今日の財政危機を招いた原因であると,ビデガライ大蔵公債相を批判し,連邦上院議会に対し,同問題解決のために介入することを求めた。
(3)オルテガ暫定知事は,ゲレロ州はオアハカ州と並びペニャ・ニエト政権による教育改革に強固に反対する教職員組合が存在しており,それら反対勢力である教職員に対して抗議活動を中止させ,通常通り授業を行うよう交渉する手段として,公共教育省に登録されていない教職員への給与支払いを行う必要があったと説明,教育改革が今般のゲレロ州の財政危機を招いたと批判した。
5.世論調査:大統領支持率
31日付当地「レフォルマ」紙が,2015年7月時点のペニャ・ニエト大統領支持率に関する世論調査の結果を発表した。一般回答者によるペニャ・ニエト大統領の支持率は34%であり,前回3月の同調査から5ポイント減となった。
(1)一般回答者によるペニャ・ニエト大統領の支持率は34%(前回3月調査比:5ポイント減),有識者の支持率15%(前回比:2ポイント減)という結果であった。同紙の世論調査によるペニャ・ニエト大統領の支持率は,アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件及びリベラ大統領夫人所有の豪邸を巡る疑惑といった治安・汚職問題を背景として,昨年12月の世論調査で急落し,3月調査においても低迷が続いていたが,今回の世論調査はこれをさらに押し下げる結果となった。
(2)同紙は,大統領支持率のさらなる低下の主な要因として,7月11日のシナロア・カルテル最高幹部ホアキン・「チャポ」・グスマン受刑囚の脱獄を指摘している。なお,支持率34%という数字は,同紙の世論調査では,セディージョ大統領がテキーラ・ショック経済危機後の1995~96年に記録したものと並び過去最低の数字。
〈治安〉
1.シナロア・カルテル最高幹部の脱獄
(1)11日夜,シナロア・カルテル最高幹部,ホアキン・「チャポ」・グスマン受刑囚が,服役中であったアルティプラノ連邦刑務所(メキシコ州に位置する最高警備レベルの刑務所)から脱獄した。12日早朝に開かれた記者会見において,ルビド国家治安コミッショナーは,グスマン受刑囚が11日,20時52分にシャワー室に入ったところを監視カメラで確認されたのを最後に姿を消したことを受け,同受刑囚の捜索を開始したところ,シャワー室から外部につながる全長およそ1.5㎞のトンネルが発見され,同受刑囚がこのトンネルを通じて脱獄したことが濃厚である旨説明した。同受刑囚は,2001年1月,8年間服役中であったハリスコ州プエンテ・グランデ刑務所から,洗濯かごに隠れて脱獄しており,今回が2度目の脱獄。また,メキシコにおいて最高警備レベルの連邦刑務所から受刑囚が脱獄するのは今回が初となる。ペニャ・ニエト政権は,2014年2月にグスマン受刑囚を拘束し,同政権の麻薬組織対策の最大級の成果と高い評価を受けていた。
(2)全長およそ1.5㎞に及ぶトンネル内部には空調及び照明設備が完備される等,非常に大がかりなものであることから,刑務所職員の脱獄への関与が疑われており,バレンティン・カルデナス同刑務所所長と30名の職員が,脱獄に関与した疑惑で取り調べを受けた。17日,連邦検察庁は,脱獄に関与した疑いで7名の職員を逮捕し,さらなる事情聴取を行う旨発表した。なお,逮捕者の中にバレンティン所長は含まれていない。
(3)連邦政府は,インターポールや米国当局,EU当局に対し,グスマン受刑囚の身柄拘束のため協力を要請した。また,国内においても,アルティプラノ連邦刑務所が所在するメキシコ州及び隣接するメキシコ市,ゲレロ州,ミチョアカン州,モレロス州,プエブラ州,ケレタロ州,イダルゴ州で検問を強化。これに併せ,同刑務所から車で40分に位置するトルーカ空港を一時的に閉鎖する等の処置も実施された。
(4)フランスを国賓訪問中であったペニャ・ニエト大統領は,グスマン受刑囚の脱獄を受け,在仏メキシコ大使館で会見を開き,今般のグスマン受刑囚の脱獄はメキシコ国家にとって不名誉なことである旨述べ,関係機関に対し,公職者がこの脱獄に関与している可能性も含め捜査を行うよう指示した旨発表した。また,本件に責任者として対応するため,ペニャ・ニエト大統領に同行して訪仏中であったオソリオ内相が,日程を切り上げ,メキシコに帰国した。
〈外交〉
1.太平洋同盟(ペニャ・ニエト大統領の第10回太平洋同盟首脳会議出席)
1日~3日,ペニャ・ニエト大統領は第10回太平洋同盟首脳会議に出席するため,パラカス(ペルー)を訪問した
(1)第3回太平洋同盟企業サミット首脳パネル
(ア)ペニャ・ニエト大統領は,第3回太平洋同盟企業サミット首脳パネルに,バチェレ・チリ大統領,サントス・コロンビア大統領,ウマラ・ペルー大統領とともに出席し,太平洋同盟4カ国において中小企業(PyMES)を支援することの重要性を指摘した。同大統領は,その理由として,メキシコでは雇用の4分の3は中小企業セクターにおいて創出されており,同セクターはメキシコのGDPの52%を占めている点を挙げつつ,太平洋同盟各国においてもこれらの状況に大きな差異はないと考えられる旨述べた。
(イ)同大統領は,太平洋同盟各国の中小企業がグローバルなバリューチェーンに生産的な形で統合されることが重要である旨指摘し,そのために行っている取組として以下に言及した。
(a)OECDに対して,中小企業支援において太平洋同盟各国が有する潜在性及び強みを分析するよう依頼。
(b)太平洋同盟4カ国の市場に進出することを計画している中小企業に対して資金や保証を供与する,起業家支援ファンド(Fondo de Apoyo al Emprendedor)の創設に合意した。同ファンドは2017年以降に発効予定。
(ウ)同大統領は,太平洋同盟の枠組みで,企業開発センター(Centro de Desarrollo Empresarial)の創設が約束され,これによって,太平洋同盟内の他国市場に進出を検討している中小企業を育成し助言を与えるための各国政府の取組を結集することが可能となる旨述べた。
(エ)同大統領は,メキシコにおけるイノベーションを促進するための取組として,メキシコはより多くの資源をイノベーション・科学技術に投入しており,企業が生産過程におけるイノベーションや,新たな技術の採用にかかるイノベーションを行える経済環境の創設を目指している,メキシコは科学技術分野への公共投資をGDP比1%を目標に増大させており,民間セクターにも同分野への投資を行うよう慫慂している旨紹介した。
(2)第10回太平洋同盟首脳会議開会式
(ア)ペニャ・ニエト大統領は,第10回太平洋同盟首脳会議開会式で行ったスピーチにおいて,太平洋同盟は共同プロジェクトを実施するためのビジョン,決断及び政治的意思を有した同盟であり,過去10年で最も革新的な地域統合メカニズムである旨述べた。
(イ)同大統領は,太平洋同盟4カ国が仮に一つの国であれば,世界第9位を占める経済大国であり,4カ国の経済成長は中南米カリブ地域全体の経済成長の平均値を上回っている点を強調した。
(ウ)同大統領は,太平洋同盟4カ国は,ヒト,モノ,サービス及び資本の自由な移動のための開かれたメカニズムを導入した国々であり,4カ国が参加する統一資本市場を有している旨述べた。また,同大統領は,既にこれら4カ国の間のヒトの移動に際して査証(ビザ)要件は撤廃されている点に言及しつつ,最終的には太平洋同盟内の1カ国が域内の他国民に対して発給した査証(ビザ)が域内の第三国においても承認されることを追求している旨述べた。
(3)第10回太平洋同盟首脳会議閉会式・共同記者会見
(ア)ペニャ・ニエト大統領は,バチェレ・チリ大統領,ウマラ・ペルー大統領,オルギン・コロンビア外相(サントス大統領代理)とともに,第10回太平洋同盟首脳会議閉会式・共同記者会見に出席した。
(イ)同大統領は,教育分野における成果として,学生交流プラットフォーム(Plataforma de Movilidad Estudiantil)が創設され,太平洋同盟諸国の800名以上の学生が他国に留学することが可能となった点,また,太平洋同盟4カ国の奨学生(becarios)が他の加盟国へ留学するために申請する査証(ビザ)の発給費用が免除されることとなった点を強調した。
(ウ)同大統領は,他の太平洋同盟各国のカウンターパートに対して,太平洋同盟の奨学金を今後数年で拡大し,オブザーバー国も参加できるよう協力を要請した。また,同大統領は,太平洋同盟の最も優秀な若者に対して100件の奨学金(Becas Chevening)枠を割り当てるとの英国からの提案を太平洋同盟として受け入れることとした旨説明した。
(エ)同大統領は,太平洋同盟の主要な4本柱(当館注:モノ,サービス,ヒト,資本の移動)における成果として以下に言及した。
(a)モノ・サービスの移動に関しては,中小企業の国際化を支援するためのファンドの創設を決定。
(b)ヒトの移動に関しては,太平洋同盟諸国間の観光が促進されている旨述べ,メキシコのケースとして,2012年に342,000人であった太平洋同盟諸国からの訪墨者数が2014年に572,000人まで増加した旨紹介した。
(c)資本の移動に関しては,太平洋同盟4カ国がラテンアメリカ統合市場(MILA)に参加しており,同市場の時価総額は1兆ドル近くに及ぶ。
(オ)同大統領は,10カ国からのオブザーバー国申請が受理されたほか,オブザーバー国との間で50以上の協力プロジェクトに合意した旨説明した。
2.ペニャ・ニエト大統領のペルー訪問
(1)2日,ペニャ・ニエト大統領は,第10回太平洋同盟首脳会議に先立ち,ウマラ・ペルー大統領とワーキング・ランチを実施し,二国間の様々なアジェンダについて議論を行い,地域及び世界情勢について意見交換を行った。
(2)両首脳は,昨2014年7月のウマラ大統領の国賓訪墨の際に署名され,7月17日に発効する戦略的連携協定(Acuerdo de Asociacion Estrategica)に対する歓迎の意を表明した。同協定は,両国間の繋がりを促進・強化し,政治対話,貿易・投資,協力という重要な三要素にかかる最もハイレベルの対話を制度化するものである。
(3)ペニャ・ニエト大統領は,今般の太平洋同盟首脳会議をもって議長国の任に就くペルー政府の成功を祈念する旨伝達するとともに,太平洋同盟4カ国の関係強化への支持を表明した。
(4)ワーキング・ランチに先立ち,ウマラ大統領立ち会いの下,ヴァラキヴィ・ペルー防衛大臣よりペニャ・ニエト大統領に対して以下の2つの勲章が授与された。
(a)Orden Militar Francisco Bolognesi en Grado de Gran Cruz
(b)Orden Gran Almirante Grau en Grado de Gran Cruz
3.新規世界遺産登録
(1)5日,ドイツのボンで開催された国連教育科学文化機関(UNESCO)の第39回世界遺産委員会において,「パドレ・テンブレケ(Padre Tembleque)水道橋:水利システム」を世界遺産として登録することが合意された。
(2)この水道橋は,443年前に建造された米州における水利システム開発の優れた例である。この世界遺産としての登録によって,1554年から1571年にフランシスコ・デ・テンブレケ(Francisco de Tembleque)修道士が,フアン・コレア・デ・アグエロ(Juan Correa de Aguero)石工棟梁と約40の先住民コミュニティの人々の協力を得つつ,着想,建造したこの水利システムの「顕著な普遍的価値」が認められたことになる。
(3)この水道橋は,現在のメキシコ州センポアラ(Zempoala)の西側に位置するテカヘテ(Tecajete)火山の中腹から,現在のイダルゴ州オトゥンバ(Otumba)までの全長48.22キロメートルに及ぶ。35メートルの高さを持つ中央アーチが特徴的で,分岐点,水路,水箱,配分器,貯水槽,橋脚,噴水が当時のものである。
(4)この水道橋がユネスコの世界遺産に登録されたことにより,メキシコの登録遺産は33件となり(その内27件は文化遺産,5件は自然遺産,1件は複合遺産),メキシコはラテンアメリカで最大,世界で6番目に多くの「顕著な普遍的価値」を有する遺産を擁する国となる。
4.ペニャ・ニエト大統領のフランス国賓訪問
13日~16日,ペニャ・ニエト大統領はフランスを国賓訪問した。
(1)訪問概要
(ア)13日~16日,ペニャ・ニエト大統領はフランスを国賓訪問した。本訪問は,昨2014年4月のオランド仏大統領の訪墨を受けたものであり,同大統領の訪墨の際に両国の間で署名された42に及ぶ経済,学術,科学協力,投資分野における合意のフォローアップが行われた。また,今回の訪問の枠組みで,60以上に及ぶ合意文書が新たに署名された。
(イ)ペニャ・ニエト大統領の訪仏には,同大統領夫人及び主要閣僚を含む31の機関の長が同行。
(ウ)ペニャ・ニエト大統領の訪問日程の概要は以下のとおり。
7月13日(パリ)
学術・科学分野における墨仏戦略的連携にかかるイベント
7月14日(パリ)
フランス国祭日の行進(メキシコ軍が先頭で行進)
墨仏食文化紹介イベント
凱旋門における献花
7月15日(マルセイユ)
歓迎式典
Michel Vauzelle知事との会談
マルセイユ地域のメキシコへの移民の歴史に関する展示会視察
エアバス社のヘリコプター製造工場視察
7月16日(パリ)
仏墨経済フォーラム
墨仏首脳拡大会合
合意文書署名式
仏墨戦略的評議会第3回会合
共同記者会見
オランド大統領主催晩餐会
(2)両首脳による共同記者会見
(ア)16日,両首脳は今回のペニャ・ニエト大統領の国賓訪問の総括を行う共同記者会見を実施したところ,同記者会見におけるペニャ・ニエト大統領の発言概要以下のとおり。
(a)今回の国賓訪問の枠組みにおいて,様々な分野における協力を実現するための60以上の合意文書が署名された。これは両国政府による二国間関係を再構築しようという政治的意思の表れである。
(b)教育分野では,両国間の更なる学術交流や高等教育機関間の協力を可能とする合意が締結され,保健分野では,メキシコにおけるデング熱ワクチンの供給や,特に腎移植にかかるメキシコ医療関係者の養成等の合意がなされた。
(c)経済分野では,両国間の貿易関係が拡大しており,更なる成長,両国の企業による双方向の投資促進,中小企業の活動拡大・国際化支援を期待する。
(d)文化面に関しては,フランスにおけるメキシコ文化,芸術,食の発信拠点となるメキシコ館(Casa Mexicana)の設置にかかるプロジェクトが合意された。同プロジェクトはメキシコ企業による投資によって実行され,また最終的にはフランス企業の参加を得る予定である。仏政府がグラン・パレにおいて,メキシコ芸術にかかる大規模な展示会を実施する許可を下したことを祝福する。
(e)仏墨戦略的評議会(Consejo Estrategico Franco-Mexicano)(注:2012年10月,ペニャ・ニエト大統領が選出次期大統領として訪仏した際にオランド大統領との間で設置に合意。官民有識者からなる。) による第二次報告書の提出を評価。同評議会のメンバーは,仏墨二国間関係の強化への道筋に光と指針を与えている。
(f)墨政府は,本年末にパリで開催予定のCOP21において,温室効果ガス排出を削減するための世界中の政府による拘束的なコミットメントを実現するためのオランド大統領のイニシアティブに加わる。既に,墨政府は時宜を得たコミットメントを発表済み。
(イ)これに対し,オランド仏大統領は,約3年前にペニャ・ニエト大統領が当選次期大統領であった時代に実施された会談以降,仏墨の新たな友好の歴史が開かれた旨述べた。
5.エルリントン・ベリーズ外相の訪墨
(1)20日,エルリントン・ベリーズ外相が同国の外相として初めてメキシコを公式訪問した。エルリントン外相は,ミード外相と会談を行い,以下の分野・事項に関する8つの文書に署名した。
(ア)航空分野
(イ)両国の領海における船舶通航を円滑化するための,無害通航にかかる手続の定式化
(ウ)エネルギーの管理に関する協力
(エ)社会保障
(オ)知的財産権の保護と特許登録の促進
(カ)気候変動に関する調査
(キ)野生生物の保全
(ク)消費者保護
(2)両外相の会合では,メキシコが近年経済ミッションをベリーズに派遣し,主に化学・製薬分野における投資機会を模索している点,ベリーズとの国境沿いのメキシコ南部諸州への短期滞在が可能な地域訪問者カード(Tarjetas de Visitantes Regional)のベリーズ国民への発給が急増している点等につき言及がなされた。
6.ミード外相のエクアドル訪問
21日,ミード外相はエクアドルの首都キトを訪問し,パティーニョ同国外相とともに,文化経済基金(FCE: Fondo Cultura Economica)(注:メキシコを拠点とし,中南米を代表するスペイン語出版社)支部の開所式に出席した。同支部は,エクアドルとも関係の深いメキシコ人文学者のCarlos Fuentesの名を冠している。ミード外相は,約20年振りとなる今回のFCE支部の新設は,昨2014年のペニャ・ニエト大統領のエクアドル国賓訪問から派生したコミットメントである旨強調した。
7.ミード外相のチリ訪問
(1)24日,ミード外相はチリを訪問し,8月に国賓としてメキシコを訪問予定のバチェレ同国大統領を表敬訪問したほか,ムニョス同国外相と会談した。また,両外相は,両国の主要な政策対話メカニズムである墨チリ戦略的連携協定評議会(Consejo del Acuerdo de Asosiacion Estrategica Mexico-Chile)第7回会合を主催した。
(2)墨チリ戦略的協定評議会第7回会合において,①協力,②自由貿易,③政治の三委員会より両外相に対して報告書が提出された。報告書では,過去15年間で両国の二国間貿易が3倍に増加した点や,墨チリ協力基金(Fondo de Cooperacion Mexico-Chile)による資金手当により文化・教育分野において両国の協力案件が増加した点に言及がなされた。(3)両外相は墨チリによる三角協力が両国政府の良好な相互理解の良き例である旨述べた。両国は,環境,競争力,農業開発,教育,社会保護等の分野において,中米カリブ諸国に対する共同プロジェクトを実施している。
8.デ・イカサ筆頭外務次官の中国訪問
(1)27日~28日,墨中両国政府が推進している政策対話の一環として,デ・イカサ墨筆頭外務次官は中国の北京を訪問した。
(2) デ・イカサ次官は,王毅中国外交部長と会談を行った。同会談では,あらゆる分野において墨中の繋がりの潜在性を引き出すために,2013年6月にペニャ・ニエト大統領及び習近平国家主席によって立ち上げられた戦略的統合連携の持続的強化に関する両国政府のコミットメントが再確認された。
(3)戦略的対話第4回会合及び墨中二国間政策協議メカニズム第15回会合
(ア)デ・イカサ次官は,カウンターパートである張業遂(ZHANG Yesui)中国外交部副部長とともに,戦略的対話(Dialogo Estrategico)第4回会合及び墨中二国間政策協議メカニズム(Mecanismo de Consultas Politicas Bilaterales Mexico-China)第15回会合を主催した。
(イ)両国の代表団は,政治,経済及び協力といった二国間アジェンダの優先的課題におけるこれまでの進捗につき確認を行った。また,両国の代表団は,学術交流及び奨学金にかかるプログラムの進捗,優先分野における科学技術研究にかかる共同プロジェクトの立ち上げ,メキシコ農産品の対中輸出増加,メキシコへの中国人観光客の増加(2014年には75,000人を記録(前年比25%増)),北京,広州及び上海の主要博物館におけるメキシコ展の実施を評価した。
(ウ)両国は,2014年に墨中二国間貿易が720億ドルを超え,中国はメキシコにとって世界第2位の貿易相手国,また,第3位の輸出先となっている点を考慮し,両国の貿易・投資関係の発展を推進するための努力を強化することの重要性につき一致した。
(エ)両国は,UFCの枠組みでの国連安保理改革,12月パリで開催予定のCOP21を見据えた気候変動問題における国際協力を含む,墨中が積極的な関与を行っている地域的及びグローバルな両国の共通関心課題について協議を行った。
(オ)両国は,G20,APEC及び新たに設置された中国CELACフォーラムの枠組みにおける対話と協働を引き続き強化していく点で合意した。
9.墨米ハイレベル経済対話(DEAN)閣僚級ビデオ会議
(1)29日,ビデガライ大蔵公債相(墨側)及びプリツカー商務長官(米側)の共催で,墨米ハイレベル経済対話(DEAN)第2回ビデオ会議(閣僚級)が実施された。墨側からは,ミード外相,グアハルド経済相,ルイス・エスパルサ通信運輸相のほか,大統領府,エネルギー省,農牧省,観光省,ProMexico等が出席した。米側からは,副大統領オフィス,運輸省,エネルギー省,内務省,農務省国家安全保障会議の代表者が出席。
(2)本ビデオ会議は,本年1月のペニャ・ニエト大統領の訪米時に開催されたDEAN後の進捗状況をフォローアップするために開催され,エネルギー,近代的な国境,労働力の開発,規制協力,地域的及びグローバルなリーダーシップのための連携,民間及び市民社会の重要アクターの参加というDEANの6つの優先分野について議論が行われた。これらの分野はすべてDEANの目的である①競争力及び接続性の促進,②経済成長,生産性,企業家精神及びイノベーションの強化,③両国の地域的及びグローバルなリーダーシップの発展に資する分野である。
(3)ビデオ会議の成果として,上記分野におけるDEANの進捗をまとめた報告書が採択された。
(了)
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