メキシコ政治情勢(6月)
〈概要〉
内政では、19日、連邦上院、下院共に臨時国会が召集され、5月に可決された政治・選挙制度改革法の再修正案が可決された。20日、バジェホ・ミチョアカン州知事が辞職し、後任としてサルバドル・サラ暫定知事が就任した。23日、犯罪組織ティファナ・カルテルの首領、フェルナンド・サンチェス・アレジャノ容疑者がメキシコ治安当局に逮捕された。27日、メキシコ治安当局は、ミチョアカン州において2013年に組織された「自警団」の元スポークスマン、ホセ・マヌエル・ミレレスの身柄を、同「自警団」のメンバー83名の身柄と共に拘束した。30日、国防省はメキシコ州におけるメキシコ軍と犯罪組織ファミリア・ミチョアカーナの銃撃戦によって、同犯罪組織の22名が死亡したと発表した。
外交では、1日から4日、ミード外相はエルサルバドル、パラグアイを訪問した。5日から10日、ペニャ・ニエト大統領はポルトガル、バチカン、スペインを訪問した。11日から13日、ミード外相は英国を訪問。16日、ジョン・ヒッケンルーパー・コロラド州知事が訪墨、ミード外相と会談した。19日、20日、ナジャリット州プンタミタにおいて第9回太平洋同盟首脳会合が開催された。24日、ミード外相はテキサス州米墨国境リオグランデ地域を訪問した。26日から29日、ミード外相は日本を訪問。安倍総理表敬、岸田外務大臣らと会談した。
〈内政〉
1.時国会の開催
19日、メキシコ連邦議会は上院、下院共に臨時国会を開催し、5月15日に可決された政治・選挙制度改革関連法を構成する連邦司法権力基本法及び選挙違反に関する法の修正案を両院で可決した。また、連邦区(メキシコ市)政府の条例を、政治・選挙制度改革関連法の内容に沿ったものにするための修正・追加・廃止細則案も両院で可決された。公職選挙における政党間の同盟について定めた政党一般法87条の修正案に関しては、下院では可決されたが、上院での審議・採決は見送られた。
【主なポイント】
(1)連邦選挙裁判所大法廷裁判官への年金の支払いの廃止
5月可決、成立した連邦司法権力基本法(Ley Organica del Poder Jurdicial de la Federacion)の第209条によって定められた連邦選挙裁判所(Tribunal Electoral del Poder Judicial de la Federacion: TEPJE)の運営委員会の権能のうち、31項における「大法廷裁判官への特別年金(Haber de retiro)を決定する」という規定を廃止する細則案が、連邦下院にて賛成438の満場一致で可決、連邦上院では賛成97、反対4、棄権0で可決され、成立した。本件特別年金を巡っては、額が高額であること、条文上その支給期間が不明瞭であること、また、裁判官への事前買収にあたるのではないかという批判から、野党側から廃止を求める声が上がっていたところ、本規定の廃止により年金の支給自体が廃止されたことになる。
(2)選挙違反に関する法の改正
5月可決、成立した選挙違反に関する法(Ley General en Materia de Delitos Electorales)の7条、9条、10条、11条、16条の修正案が、連邦下院にて賛成420、反対9、棄権10で可決、連邦上院では賛成78、反対2、棄権0で可決され、成立した。
(ア)7条、選挙違反に該当する行為及びその罰則に関する規定に関し、7項の票の買収、暴力などによる投票の強要の禁止に、「見返り(Contraprestacion)」という文言を追加。投票のかわりに見返りを求める行為も選挙違反として規定。また、14項の投票所の設置を武器による武装などの暴力によって妨害する行為に対し、「法的に正当化される理由は除く(sin causa legalmente justificada)」という文言を追加、法的に正当化される理由による場合は例外とすることを明記。
(イ)9条、10条、政党及び候補者の選挙運動費用収支報告書提出に関する違反行為及び罰則に関する規定に関し、「その権限の領域の中で(dentro del ambito de sus facultades)」という文言を追加。選挙運動費用収支報告書の提出義務が誰に課されているのか不明瞭であった条文を修正し、政党及び候補者に対し、それらの権限の領域の中で、選挙運動費用収支報告書の提出義務が課されると明定。
(ウ)11条、政治キャンペーンへの参加、ある候補者への投票等の行為を部下に強制した公務員への罰則条項(200日から400日の罰金、または2年から9年の懲役)から、「仕向ける、導く(induzca)」という文言を削除。「強要」した場合に該当事項を明確化。
(エ)16条、「指導する、助言する(orientan)」という文言を削除。宗教礼拝等において、特定候補者に対する投票行為を強要した宗教指導者に対する罰則(100日から500日の罰金)を明記。
(3)連邦区(メキシコ市)政府の条例修正・追加・廃止
連邦区選挙が先般可決された政治・選挙制度改革関連法の内容に沿った形で実施されるよう、連邦区政府のいくつかの条例を修正・追加・廃止する細則案が、連邦下院にて賛成396、反対7、棄権6で可決、連邦上院では賛成106の満場一致で可決され、成立した。
(4)政党一般法(Ley General de Partidos Politicos)の改正
(ア)与党制度的革命党(PRI)、メキシコ緑の党(PVEM)、労働党(PT)、新同盟党(Panal)が提出した公職選挙における同盟について定めた政党一般法87条の11項、12項、13項、14項を修正する案を、連邦下院は賛成335、反対100、棄権6で可決。現行法においては、複数の政党の同盟による統一候補への投票は、候補者への投票としてのみカウントし、比例代表選挙において、同盟を組んだ他政党への投票としてはカウントされず、また、政党登録維持のための投票率としてもカウントされない。今般の修正案においては、統一候補への投票は同盟を組んだ他政党への投票としてもカウントされるようになり、比例代表選挙における各政党への投票数に、また、政党登録維持に必要な投票率としてもカウントされるものと規定。
(イ)連邦上院は、政党一般法87条の改正に関して審議・採決を行わず、臨時国会を閉会した。
(ウ)本修正案に対し野党国民行動党(PAN)は、各政党が政党登録維持に必要な投票率を稼ぐことができるようにするものであり、小規模政党に有利な制度を構築することによって、小規模政党に「人工的延命措置(Vida Artificial)」を与えるものであると批判。与党PRIが同87条修正の意思を取り下げるまで、エネルギー改革関連二次法案の審議には応じないと事前に表明していた経緯がある。
(5)政党一般法87条を巡る動き
(ア)20日、カマチョ(Cesar Camacho)PRI党首は同87条を巡り、エネルギー改革関連二次法案の審議を進めるために、PRIとPANの間で調整が行われたことを認めたが、PRIがPANの要求に譲歩したという見方は否定した。
(イ)21日、連邦下院のPRI、民主革命党(PRD)、メキシコ緑の党(PVEM)、労働党(PT)、市民運動(MC)、新同盟党(Panal)の所属議員たちは現行の政党一般法87条が、下院議員選出の方法を定めた憲法54条、下院議員の資格要件を定めた55条と矛盾する内容であることを理由に、連邦最高裁判所(Suprema Corte de Justicia de la Nacion:SCJN)に対し、同87条に関し憲法違反訴訟(accion de inconstitucionalidad)を提出し、同87条の改正を求める姿勢を示した。
(ウ)バルボサ(Miguel Barbosa Hurtado)連邦上院PRD会派長は、PANはエネルギー改革関連二次法案の審議のためにいくつの条件を連邦政府、PRIに要求するのかと、エネルギー改革関連二次法案の審議を人質(rehen)にとるPANの姿勢を批判し、PRDは常設委員会に対し、同87条改正案の審議・採決を上院で行うための臨時国会を招集するよう申請する考えを示した。
2.人事(ミチョアカン州知事の辞職及び暫定知事の就任)
18日、ファウスト・バジェホ・ミチョアカン州知事は大統領官邸を訪れ、ペニャ・ニエト大統領及びオソリオ内相と会談し、同州知事を辞職する旨を伝えた。同州知事は、5月30日に、客年6月に受けた肝臓の移植手術の術後経過のメディカルチェックを受けるために、6月末まで、州知事職を再び休職することを発表していたが、自身の治療に専念するために、今般辞職する旨を申し出た。ペニャ・ニエト大統領は、同州知事の申し出を受け、連邦政府が実施している同州の治安回復のための活動は、今後も継続していく旨を述べた。
20日、ミチョアカン州議会はバジェホ前知事の辞職を受け、ミチョアカン・デ・サンニコラス・デ・イダルゴ大学サルバドル・ハラ前学長を暫定知事に任命する後任人事を、賛成38、反対0、棄権2で承認した。同暫定知事は、2015年に予定される同州知事選挙後に新知事が就任する来年8月まで、その職を務めることになる。オリビオ・ロペス同州議会議長は、5名で構成される委員会が、サルバドル・ハラ前学長を含む3名の候補者のプロフィールを入念に検討した結果、同学長が犯罪組織とのつながりを持たず、ミチョアカン州の安全を保証する人物であるという理由から州議会に推薦し、州議会が同人事を承認したことを説明した。
3.治安情勢
(1)犯罪組織ティファナ・カルテル首領の逮捕
23日、犯罪組織ティファナ・カルテルの首領、フェルナンド・サンチェス・アレジャノ容疑者がメキシコ治安当局に逮捕された。
(2)ミチョアカン州「自警団」元スポークスマンの身柄拘束
27日、メキシコ治安当局は、ミチョアカン州において2013年に組織された「自警団」の元スポークスマン、ホセ・マヌエル・ミレレスの身柄を、同「自警団」のメンバー83名の身柄と共に拘束した。同氏には、連邦政府によって許可されていない武器の所持及び麻薬所持の容疑がかけられている。本年1月に連邦政府、ミチョアカン州政府及び7市の「自警団」の代表の間で、「自警団」を法制度の枠内に位置づける合意がなされたが、同「自警団」は合意には参加せず、独自の活動を続けていた。
(3)メキシコ軍と犯罪組織ファミリア・ミチョアカーナの銃撃戦
30日、国防省はメキシコ州におけるメキシコ軍と犯罪組織ファミリア・ミチョアカーナの銃撃戦によって、同犯罪組織の22名が死亡したと発表した。国防省の発表によると、メキシコ軍が同犯罪組織の麻薬製造所とみられていた倉庫を捜索したところ、同犯罪組織が抵抗したため銃撃戦となった。
〈外交〉
1.ミード外相のエルサルバドル、パラグアイ訪問
1日~4日、ミード外相はエルサルバドル、パラグアイを訪問した。
(1)エルサルバドル大統領就任式出席(1日)
(ア)ミード外相はペニャ・ニエト大統領の代理としてエルサルバドル大統領就任式に出席し、サンチェス大統領に祝意を表明。
(イ)新政権関係者と懇談し、二国間対話の拡大への関心を表明、特に地域の繁栄、移民、治安、社会経済発展、インフラ、協力等の共通課題を含むアジェンダを推進していきたい旨述べた。
(ウ)投資、観光、エネルギー協力、貧困対策面での対話拡大を強調。
(エ)サンチェス大統領にイベロアメリカ・サミットへの招待を再度伝達し、また第7回二国間委員会会合の開催を提案。
(2)パラグアイ訪問(OAS総会出席、2日~4日)
(ア)OAS総会におけるミード外相発言概要
(a)今回の総会のテーマに社会的包摂が選ばれたことに賛意を表明。これはポスト2015年開発目標の観点からも重要。OASは、地域の特有の必要性に応じた優先順位、具体的行動を構築していく場となるべき。
(b)OASは経験の共有、協力の具体化、対話の場として最適。
(c)リソースの有効活用に向けた戦略的ビジョンを検討し、OASを再活性化することを呼びかけ。
(イ)ロイサガ・パラグアイ外相との会談
(a)二国間関係を活性化させる必要性につき一致。二国間対話と協調メカニズムを通じ対話を活性化させることを発表。
(b)次回太平洋同盟首脳会合につき、パラグアイは太平洋同盟との協力プロジェクトを模索することへの関心を確認。
(c)貿易・投資拡大に向け、近く何らかの二国間メカニズムを創設することを発表。
(ウ)カレラ・グアテマラ外相との会談
昨年5月、本年5月の首脳会合をフォローアップし、インフラ近代化、環境、国境地帯の社会開発等二国間アジェンダについて協議。
(エ)アーリントン・ベリーズ外相との会談
国境インフラ、協力、貿易について協議。
(オ)リバス・ペルー外相との会談
(a)7月に予定されているウマラ・ペルー大統領の訪墨準備について協議。
(b)次回太平洋同盟首脳会合の準備状況につき協議。
(c)メキシコは、12月にリマで開催されるCOP20への支援を表明。
(カ)パティーニョ・エクアドル外相との会談
ミード外相は、本年3月のペニャ・ニエト大統領エクアドル訪問以降の成果に祝意を表明。
(キ)セントルシアとの科学技術協力に関する基本協定署名
ミード外相は、セントルシアのアルバ・バプティスト外相と会談。同国との科学技術分野での二国間協力プロジェクト・プログラムを実施する上で基礎となる協定に署名した。
2.ペニャ・ニエト大統領のポルトガル、バチカン、スペイン訪問
5日~10日、ペニャ・ニエト大統領はポルトガル、バチカン、スペインを訪問した。
(1)ポルトガル訪問(5日、6日)
(ア)カバコ大統領との会談(会談後の記者会見における大統領発言概要)
二国間関係強化のための重要テーマの一つとして、再生可能エネルギー分野でのポルトガルの対メキシコ投資の可能性について一致。また、初等教育で活用されるタブレット端末のメキシコ国内製造の可能性についても言及。空港拡張に関するポルトガルの経験の共有、ナジャリットにおける観光分野でのポルトガル投資についても触れた。カバコ大統領は、イベロアメリカ・サミットへの参加を確認。
(イ)企業家との会合
二国間関係記念切手の発行セレモニー、GALP社とPEMEX間のMOU、コアウイラ州における風力発電施設建設に関するEDP社とペニョーレス社間の協定、MEPSAとFONATUR間の観光分野に関する覚書などの署名に両大統領が立ち会った。
(ウ)コエーリョ首相との会談
学術、科学、情報技術、港、インフラ、航空、観光に関する7つの合意文書に署名。
(2)バチカン訪問(7日)
フランシスコ法王はペニャ・ニエト大統領からの訪墨招待を受け入れ。会談では、メキシコ政府の実施する貧困対策、移民関連施策、治安問題などについて意見交換。
(3)スペイン訪問(8日~10日)
(ア)ラホイ首相との会談(会談後の記者会見における大統領発言概要)
両国の歴史的友好関係を確認。両国がともに推進してきたイベロアメリカ・サミット、両国が実施する国内改革について意見交換を行った。
(イ)なお、今時訪西に併せ下記の文書が署名された。
科学・技術協力の更新に係る覚書、外交官人材交流に関する覚書、学術・専門職人材交流にむけた意向確認書、著作権に関する協力協定、情報技術分野の協力に関する覚書、運輸・インフラ分野の協力に関する覚書、社会保険・保健分野の研究に係る協力覚書
(ウ)ペニャ・ニエト大統領はその他、国王主催晩餐会、メキシコ観光プロモーションパビリオンの開会式、「エル・パイス」紙主催セミナー、マドリッド市の鍵贈呈式、両国企業家会合等に参加。
3.ミード外相の英国訪問
11日~13日、ミード外相は英国を訪問。ヘーグ外相と会談。メキシコにおける英国年、英国におけるメキシコ年を記念し、共同宣言に署名。
4.コロラド州知事の訪墨
16日、ジョン・ヒッケンルーパー・コロラド州知事が訪墨。ミード外相と会談。
(1)ミード外相は、コロラド州におけるメキシコ系移民の存在について触れ、これら移民の福祉のために同州政府が取り組む努力について謝意を示した。
(2)ジョン・ヒッケンルーパー・コロラド州知事は、同州とメキシコ間において、学術交流、文化交流、経済交流を強化していきたい旨述べた。
5.第9回太平洋同盟首脳会合
19日、20日、当地ナジャリット州プンタミタにおいて第9回太平洋同盟首脳会合が開催された。
(1)共同声明(プンタミタ宣言)概要
(ア)人・物・投資・サービスの自由な移動、協力といった基本方針に沿って、太平洋同盟のビジョン、目的に向けて取り組む意思を確認。
(イ)カルタヘナでの首脳会合以降の前進を歓迎。
(ウ)枠組み合意の範囲で、ラテンアメリカ地域の様々な地域統合の取り組みを強化する意思を確認。
(エ)域外国との関係強化の取り組み開始を歓迎。特に、オブザーバー国との協力分野、モダリティの特定を強調し、太平洋同盟の基本方針に沿った具体的協力のプログラム策定に取り組み続ける意思を強調。
(オ)ベルギーとトリニダード・トバゴをオブザーバー国として歓迎。
(カ)IDBからの支援、技術面・資金面での支援に謝意表明。OECDとの協力開始を歓迎。
(キ)ビジネス評議会(Consejo Empresarial)から提案された事項に謝意表明。
(ク)合同商談会(6月10日、11日プエルトバジャルタ)、合同観光パンフレットの作成、観光合同商談会(7月23日24日、カリ)の開催を歓迎。
(ケ)メキシコ証券市場のラテンアメリカ統合市場(MILA)参加を強調。
(コ)入国審査にかかる即時情報共有システムの強化を強調。
(サ)太平洋同盟ワーキングホリデープログラム(Programa de Vacaciones y Trabajo)に向けた関係機関間の覚書署名を強調。
(シ)奨学金制度の第5回募集を強調。
(ス)中小企業、起業家関連の施策を強調。
(セ)太平洋同盟インフラ発展基金に関する議論の進捗を強調。
(ソ)イノベーション作業部会のワーキングプログラムを強調。
(タ)太平洋同盟として輸出商品となりうる農業産品の特定を強調。
(チ)農産品生産量に関するメンバー国間の情報共有システム創設を強調。
(ツ)保健担当機関間の協力に関する議論の開始を強調。
(テ)広報イメージ、グローバル広報戦略の策定を強調。
(ト)スポーツ、文化分野での協力に関する行事実施を強調。
(ナ)MERCOSURと大臣級の情報交換を目的とした会合を開催することに合意。太平洋同盟、MERCOSUR、その他ラ米・カリブ地域を含む周辺地域の学術、民間企業関係者、公務員を集めたセミナー開催に合意。
(ニ)バチェレ大統領の太平洋同盟首脳会合初参加を歓迎。同大統領はチリ政府として太平洋同盟の価値観、原則、目的を共有することを確認。
(ヌ)以下の事項につき取り組むことを関係機関に指示。
(a)メンバー国間の農産品貿易、域外への輸出の強化
(b)化粧品に関する規制協力分野での合意
(c)通信、Eコマース分野での前進
(d)域内、域外投資に関する研究
(e)投資環境整備プロジェクトの推進
(f)入国審査情報共有システムの強化
(g)空港、国境での入国審査時間短縮のための取り組み
(h)入出国審査、領事に関する書類の偽造防止、グッドプラクティス共有
(i)180日以上の滞在を認めるビジネスビザの可能性探求
(j)経済分野での具体的成果を評価する枠組みの検討、域内バリューチェーンの具体化のためのモデル策定
(k)太平洋同盟の国際化の促進
(l)域内、及び域外、特にアジア太平洋地域に向けた共同観光促進
(m)各メンバー国の優先セクターの補完に関する戦略の策定
(n)東南アジア諸国における経済関係促進事務所の共有の可能性の検討
(o)中小企業の輸出支援プログラムの検討
(p)IDB、FOMINとの共同で中小企業向け支援メカニズムを創設することの検討
(q)中小企業関連グッドプラクティスの共有
(r)保健担当機関による、医薬品生産、医療サービスに関する協力協議のための会合開催
(s)鉱業に関する共通施策の検討、持続可能性に関するグッドプラクティスの共有
(t)高度技術教育に関する協力
(ネ)その他、OECDとの間で太平洋同盟間の中小企業支援に関するメカニズム創設合意の文書が署名された。
6.ミード外相のテキサス州訪問
24日、ミード外相はテキサス州米墨国境リオグランデ地域の国境警備隊の施設を訪問し、米国入国管理局及び国境警備隊の関係者と会談した。同会談において、ミード外相は、不法移民、とりわけ未成年者の不法移民問題に関し、メキシコ政府は人権の保護という観点から取り組んでいく旨述べた。
7.ミード外相の日本訪問
26日~29日、ミード外相は日本を訪問。安倍総理表敬し、岸田外相らと会談した。
(1)安倍総理との会談
(ア)冒頭、安倍総理から、ミード外相の訪日を歓迎すると共に、ペニャ・ニエト大統領とは昨年4月の訪日時を含め計4回会っていることが示す通り、両国関係は発展してきている旨述べた。
(イ)安倍総理から、メキシコは、我が国の対中南米政策の拠点であり、引き続き緊密な対話の継続が重要である旨述べた。これに対しミード外相は、メキシコと日本は、本年、支倉慶長使節団のメキシコ上陸400周年、日墨経済連携協定(EPA)締結10周年、岸元総理のメキシコ訪問55周年、安倍元外相訪問30周年にあたり、近年、貿易・投資関係も益々進展する特別な関係にある友好国であり、幅広い分野での対話と連携を行っていきたい旨述べた。
(ウ)ミード外相より、日本の対メキシコ投資は120億ドルに上り、その半分は過去3年間に実施されている、また日墨貿易額も近年倍増した結果220億ドルに達し、さらにメキシコを訪問する日本人旅行者は10万人を突破するなど、経済関係は緊密化している旨述べた。また、アベノミクスは、メキシコを始め中南米から高い注目を集めていること、そしてその3本の矢は的を射ている旨述べた。安倍総理より、アベノミクスによる日本経済の内需拡大により、メキシコからの投資も増え、経済関係が更に強化されることを期待する旨述べた。
(2)岸田外相との会談
(ア)冒頭、岸田外相から、昨年4月のメキシコ訪問時における温かい歓待に謝意を述べつつ、本年1月に開催された「シリアに関する国際会議(ジュネーブ2)」以来の再開を嬉しく思う、今次訪日において、日本への好印象を持って帰られることを期待する旨述べた。また、特に今年は「日墨交流年」を通じて、400年以上に亘る両国交流に思いを馳せる年であり、二国間関係強化の一層の進展に向けて協力したい旨述べた。
(イ)ミード外相は、日本の訪日招待に感謝を表し、2012年に岸田外相と同じ頃に就任したが、初めてメキシコに迎え入れた外務大臣は岸田外相であったこと、また日本はアジアで最も古い友人であり、これまでの交流の歴史はその証左である旨述べた。また、メキシコ政府として、安倍総理のメキシコへの招請を改めて確認したい旨述べ、ミード外相と岸田外相は、安倍総理のメキシコ訪問に向けた準備を双方が加速していくことに合意した。
(ウ)岸田外相より、日墨の友好関係が強化されていることを歓迎している旨述べた。また、アジア太平洋地域を取り巻く厳しい戦略環境に言及しつつ、日本は国際協調主義に基づき積極的平和主義を推進し、国際社会の安定と繁栄に貢献していく、我が国の平和国家としての歩みは不変である旨述べた。また、国際社会における力による現状変更は許されないものであり、国際法に基づく平和と安定を重視している旨述べた。これに対し、ミード外相より、中南米地域では、紛争の平和的解決は地域を支配する理念であり、メキシコはそのような価値観を尊重してきた国であり、平和裡の紛争解決と国際法の遵守を重視している旨述べた。
(エ)ミード外相より、日本とメキシコは現在TPP交渉に参加しており、日墨EPA再協議を行う時期であるが、両方で努力していきたい旨述べた。これに対し岸田外相より、TPPについては早期妥結、日墨EPA再協議については、TPPの進捗を勘案しつつ、進めていきたい旨述べた。
(オ)このほか、中国、北朝鮮、ウクライナや中南米の情勢につき意見交換を行った。岸田外相より、メキシコが現在議長国を務める太平洋同盟との具体的協力を進めていきたいと述べたところ、ミード外相より日本から具体的提言をいただきつつ協力を進めて行きたいと述べた。最後に、岸田外相より、過去10年間の日本・メキシコの三角協力に触れ、中南米地域の発展に向けて協力してきたいと述べた。
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