海外安全対策情報(定期報告:3四半期)
1 治安・社会情勢
(1)殺人件数は24か月連続で前年同月比を下回っているものの,誘拐届出件数は過去最悪を記録する等,2012年12月に就任した新大統領の治安対策が功奏し,治安回復へ向かうかどうかは,現時点では不透明である。
(2)一部の都市では,犯罪組織と治安当局との銃撃戦が白昼路上で行われている。
犯罪組織は,治安当局の対応を遅延させるためバスやトラック等大型車両を含む盗難車両で路上にバリケードを作ることがあるため,一時的に路上で身動きできなくなった市民が銃撃戦の場に巻き込まれることがある。
(3)強盗,窃盗等の一般犯罪被害は,首都メキシコシティを含め昼夜を問わず発生している。公共輸送機関である地下鉄,バス内でも犯罪が発生しており,さらに流しのタクシー(リブレと呼ばれる)の運転手や,運転手と結託した共犯者らによる強盗事件も発生していることから,公共交通機関の利用にあたっては十分な注意が必要である。
2 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)全国一般犯罪
内務省国家公安機構事務局が発表した第3四半期(10~12月)の犯罪発生件数報告によれば,総犯罪発生件数は400,591件と前期(7~9月)と比較し4.7%減少した。犯罪種別の内訳は以下のとおり。
ア 窃盗 111,407件(前期比 7.1%減)
イ 殺人 4,499件(前期比 1.6%増)
ウ 強盗 52,909件(前期比 5.5%減)
エ 強姦 3,262件(前期比 0.9%増)
オ 誘拐 436件(前期比 1.2%増)
(2)メキシコ市一般犯罪
メキシコ市検察庁が発表した第3四半期(10~12月)の犯罪発生件数報告によれば,総犯罪発生件数は44,426件と前期(7~9月)と比較して0.4%増加した。また人口あたりの強盗発生率は全国トップレベルであり,窃盗件数も2013年に入り増加傾向にある。犯罪種別の内訳は以下のとおり。
ア 窃盗 13,858件(前期比 2.0%減)
イ 殺人 190件(前期比 15.9%増)
ウ 強盗 8,239件(前期比 7.5%増)
エ 強姦 121件(前期比 5.5%減)
オ 誘拐 20件(前期比100.0%増)
(3)邦人被害事案
邦人被害一覧(2013年間)覧をご覧ください
3 テロ・爆弾事件発生状況
(1)邦人被害事案
届出なし。
(2)邦人以外の被害事案
ア 10月26日未明、メキシコ市ベニト・フアレス区のBBVA銀行に仕掛けられた爆発物が爆発した。反政府組織によるものか窃盗目的かは不明。
イ 10月27日未明、ミチョアカン州の複数の市において、連邦電力委員会の施設に爆発物が投げ込まれ、約5時間に渡り一帯が停電となった。
ウ 12月1日23時頃、メキシコ市コヨアカン区のBANAMEX銀行ATMに仕掛けられた爆発物が爆発した。現場にはFrente de Salvación
Tenochititlánと名乗る反政府組織のメッセージが残されていた。
4 誘拐・脅迫事件発生状況
内務省国家公安機構事務局が発表した犯罪発生件数報告によると,本年に入り誘拐が増加しており,第3四半期(10~12月)は前年同月比7.9%増である。また,電話による脅迫事件が増加しており,事務所や自宅のみならず,ホテル客室への電話による脅迫事件も発生している。
(1)邦人被害事案
届出なし。
(2)邦人以外の被害事案
ア 10月21日9時頃、ヌエボ・レオン州グアダルーペ市で、みかじめ料支払いを拒否した自動車工場オーナーの父親とその姉妹が犯罪組織により射殺された。
イ 10月21日21時30分頃、モレロス州フイテペック市において、走行中のタクシーが横付けしてきたバイクから銃撃を受け、運転手が死亡した。
被害者の所属していたタクシー会社は犯罪組織による脅迫を受けていたことから、みかじめ料を支払わなかったために殺害されたものとみられる。
ウ 12月10日、メキシコ市トラルパン区郊外の幹線道路脇で、30歳前後の男性の死体が発見された。男性は小指を切断されており、何らかの誘拐の被害者と推測されている。
5 日本企業の安全に関わる諸問題
犯罪組織の攻撃は,敵対組織や治安当局に対して行われており,日本企業や邦人がターゲットとなっているわけではないが,今後,いずれかの組織が一極支配したり,治安当局の取締り強化により麻薬密売等のビジネスを行うことができなくなるなど,いわゆる負け組が発生した場合,又は組織が解体され統制がとれなくなった場合,分派的な活動が行われるようになり,外国人や外国企業をターゲットとした誘拐や恐喝,さらに強窃盗などの犯罪発生が懸念される。
以上