メキシコ政治情勢(3月)

 
 

メキシコ政治情勢(3月)

 

〈概要〉
内政では,3日,連邦上院議会がゴメス前上院議員を連邦検察庁(PGR)長官に任命する人事を承認した。4日,内務省は,ヌエボ・レオン州サン・ペドロ・ガルサ・ガルシア市にて,犯罪組織「ロス・セタス」のリーダー,オマール・トレビーニョ・モラレス容疑者,通称「Z42」を逮捕した旨発表した。10日,連邦上院議会は,エドゥアルド・メディナ・モラ前駐米メキシコ大使を連邦最高裁判所判事に任命する人事を承認した。18日,モレノ議員(民主革命党(PRD)所属)が下院議長に選出された。26日,アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件の被害者遺族が,全国選挙機関の評議員と面談,ゲレロ州における選挙中止を求める文書を提出した。26日,当地「レフォルマ」紙が発表した世論調査におけるペニャ・ニエト大統領の支持率は39%であった。
外交では,1日,ミード外相が,ペニャ・ニエト大統領の代理で,タバレ・バスケス・ウルグアイ大統領の就任式に出席した。3日~5日,ペニャ・ニエト大統領が,英国を国賓として訪問した。5日,カルロス・アルマダ次期駐日大使の連邦上院議会における承認手続が完了した(25日,着任)。7日,ミード外相がカルタヘナ・ダイアローグに出席した。8日~11日,ジェンティローニ・イタリア外務・国際協力大臣が訪墨した。13日,モリーナ・グアテマラ大統領が訪墨した。25日~28日,山田大使がアグアスカリエンテス州,グアナファト州を公式訪問した。26日,シーヤールトー・ハンガリー外相が訪墨した。27日,ブレンデ・ノルウェー外相が訪墨した。

 

〈内政〉
1.アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件に関する抗議活動
26日,アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件発生から半年に合わせ実施された抗議活動において,被害者遺族は全国選挙機関の評議員と面談,本年実施される中間選挙に関し,ゲレロ州では選挙実施の条件が整っていないとして,同州における選挙中止を求める旨の文書を提出,また,同州における為政者の選出は,選挙によってではなく,慣習(usos y costumbres)によって行われるべきであると主張した。ゲレロ州では,ゲレロ州教員労働者協議会(CETEG),ゲレロ民衆運動(MPG)のメンバーらが,同州での選挙実施に反対しており,選挙中止に向け,その抗議活動をより先鋭化させる姿勢を見せている。
 
2.大統領支持率
26日付当地「レフォルマ」紙が,2015年3月時点のペニャ・ニエト大統領支持率に関する世論調査の結果を発表した。一般回答者の大統領支持率は,前回11月調査時と同様の39%であり,アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件及びリベラ大統領夫人所有の豪邸を巡る癒着疑惑問題による,主に治安・汚職問題を背景として支持率が下落して以降,特段の変化がないことを示す結果となった。

  1. 連邦下院議員選挙立候補者届出の締め切り

 31日,6月7日に実施される連邦下院議員選挙の立候補者届出が締め切られた。4月5日より選挙キャンペーン期間が始まり,2ヶ月にわたる選挙戦が実施されることとなる。

 

〈人事〉
1.ゴメス連邦検察庁長官の就任
3日,連邦上院議会はゴメス(Arely Gomez Gonzalez)前上院議員を連邦検察庁(PGR)長官に任命する人事を承認した。
(1)3月3日,連邦上院議会はゴメス前上院議員をPGR長官に任命する人事を賛成106票,反対5票,棄権3票で承認した。同日,ゴメス前上院議員は就任のための宣誓を行った。
(2)3月2日,ゴメス前上院議員は連邦上院本会議における承認を前に,上院司法委員会の会議において,PGR長官としての職務の軸となる項目として,①透明性の向上,②法執行機関としての能力向上,③新しい刑事司法制度の実行,④人権の尊重と保護を掲げ,法及び人権を遵守しながら,メキシコ社会に貢献していく所存である旨述べた。
(3)なお,PGRにかわり連邦検察総局(Fiscalia General de la Republica)を創設する法案が上院司法委員会で審議されており,現在,PGRは連邦検察総局への移行期間にあると言えるが,ヒル同委員会委員長(国民行動党(PAN)所属)は,ゴメス新PGR長官はPGR長官として承認されたのであり,連邦検察総局創設後,自動的に連邦検察総局長に就任するわけではない旨を明確にした。

 

2.エドゥアルド・メディナ・モラ連邦最高裁判所判事の任命
(1)10日,連邦上院議会は,メディナ・モラ(Eduardo Medina Mora)前駐米メキシコ大使を連邦最高裁判所判事に任命する人事を承認した。昨年12月にセルヒオ・バジェス・エルナンデス連邦最高裁判所判事が死去し,判事のポストが空席になっていたことを受け,2月17日,ペニャ・ニエト大統領が連邦上院議会に提出した後任人事案で提案された3名の候補者の中から,メディナ・モラ前駐米メキシコ大使が連邦最高裁判所判事に選出された。
(2)メディナ・モラ連邦最高裁判所判事の選出を受け,駐米メキシコ大使が不在となっているが,これまでのところ後任人事は発表されていない。

 

3.下院議長の交代
18日,2月26日に休職したアウレオーレス前下院議長(PRD所属)の後任人事として,モレノ(Julio Cesar Moreno)議員(PRD所属)が下院議長に選出された。
(1)18日,連邦下院議会は賛成380票,棄権1票でモレノ下院議員を下院議長に任命する人事を承認,モレノ議員が下院議長に選出された。2月26日,アウレオーレス前下院議長が,本年実施されるミチョアカン州知事選に出馬するため下院議長を休職,後任としてモレノ下院議長が選出されるまで,緑の党のトーレス第1副議長が下院議長代理を務めてきた。
(2)アウレオーレス下院議長の後任候補の選出を巡っては,PRD党内の交渉に時間を要したが,同党最大派閥である新左派,通称「ロス・チュチョス」に属し,アウレオーレス前下院議長の休職が正式に認められる前より,後任候補として名前が取りざたされてきたモレノ議員が選出される結果となった。
(3)モレノ下院議長の選出に加え,エレディア(Martin Alonso Heredia Lizarraga)第3副議長(PAN所属),ロサス(Lizbeth Eugenia Rosas Montero)第4副議長(PRD所属),ゴンサレス(Luis Antonio Gonzalez Roldan)書記(新同盟党所属)を選出する下院執行部の人事も承認された。

 

〈治安情勢〉
1.犯罪組織「ロス・セタス」リーダーの逮捕
4日,内務省は,ヌエボ・レオン州サン・ペドロ・ガルサ・ガルシア市にて,犯罪組織「ロス・セタス」のリーダー,オマール・トレビーニョ・モラレス容疑者(Omar Trevino Morales),通称「Z42」を逮捕した旨発表した。
(1)4日午前4時過ぎ,連邦治安当局がヌエボ・レオン州サン・ペドロ・ガルサ・ガルシア市にて,犯罪組織「ロス・セタス」のリーダー,トレビーニョ容疑者,通称「Z42」を逮捕した。治安当局関係者によると,逮捕に際し,同容疑者からの抵抗はなかった。
(2)トレビーニョ容疑者は,同容疑者の実兄であり,犯罪組織「ロス・セタス」の創設者であったミゲル・アンヘル・トレビーニョ・モラレス容疑者,通称「Z40」が2013年に逮捕された後,同犯罪組織のリーダーに収まり,メキシコ北部におけるオペレーションの責任者であったとみられている。連邦治安当局は同容疑者に懸賞金500万米ドルをかけ,その行方を追っていた。

 

2.犯罪組織「ロス・セタス」幹部の逮捕
16日,内務省は,ヌエボ・レオン州において,犯罪組織「ロス・セタス」の同州地域リーダー,ダニエル・マネラ容疑者及びエルネスト・バルデラス容疑者を,連邦治安当局が逮捕した旨発表した。

 

〈外交〉

  1. ミード外相のウルグアイ訪問

1日,ミード外相は,ペニャ・ニエト大統領の代理で,タバレ・バスケス・ウルグアイ大統領の就任式に出席するため,モンテビデオを訪問した。同外相は,同大統領に祝辞を述べたほか,カストロ議長(キューバ),ウマラ大統領(ペルー),バチェレ大統領(チリ),カルテス大統領(パラグアイ)等と懇談。また,ムヒカ前ウルグアイ大統領,ノボア同外相とも会談を行った。外相会談においてミード外相は,墨ウルグアイ戦略的連携第二回協議会の開催にかかるメキシコの関心を表明した。

 

2.ペニャ・ニエト大統領の英国国賓訪問
3日~5日,ペニャ・ニエト大統領は,英国を国賓として訪問した。なお,同大統領は,国賓訪問の前日の3月2日に英国入りした。 
(1)3月3日~5日,ペニャ・ニエト大統領は,英国を国賓として訪問(英国が国賓の訪問を受け入れるのは年に2回のみ)した。同訪問は,昨2014年11月,チャールズ皇太子及び同夫人がメキシコを訪問し立ち上げ(キャメロン首相,クレッグ副首相も同行),英国における「メキシコ年」,メキシコにおける「英国年」の枠組みで実施された。なお、本年を通じて,同枠組みの下,100以上の文化,芸術,通商関係の行事の開催が予定されている。
(2)今回の国賓訪問には,ミード外相(昨2月に大統領の国賓訪問の準備状況確認等のため英国を訪問),ビデガライ大蔵公債相,グアハルド経済相,ホアキン・コルドウェル・エネルギー相,ルイス=マシュー観光相,チュアイフェット公共教育相等,主要閣僚のほか,バルボサ上院議長,ゴンサレス・ディアスProMexico総裁,ディエスCOMCE会長,ロソーヤPEMEX総裁等が同行した。
(3)キャメロン首相との首脳会談
4日,ペニャ・ニエト大統領は,キャメロン首相と首脳会談を行った。
(ア)両首脳は,英墨の二国間貿易関係をさらに緊密化する必要性を強調した。(注:墨大統領府によれば,英国はメキシコにとってEUの中で第6位,全世界で第14位の貿易相手国にとどまっている。)
(イ)キャメロン首相からは,ウクライナ危機を巡りロシアと緊張関係にある中,メキシコとの関係はヨーロッパのエネルギー供給源を多様化するヨーロッパの戦略にとって重要である旨述べた。また,同首相は,2016年に任期を終えることとなる,グリアOECD事務総長の三選目の出馬を支持する意向を示した。
(ウ)その他,議題として挙がったテーマは,国連ミレニアム開発目標のアップデート,防衛分野における両国間の協力拡大等であった。特に,後者については,防衛分野における新たな協力の可能性を探るため,シエンフエゴス国防大臣及びソベロン海軍大臣の本年中の訪英の可能性を検討することに合意した。
(4)英墨共同宣言
4日,両首脳立ち会いの下,ミード外相とハモンド外相の間で,英墨共同宣言が署名された。なお,同共同宣言において,今回の国賓訪問において署名に至った14の合意文書がリストアップされた。


【14の合意文書】


(ア)教育,観光分野
2日,教育,観光分野において,ペニャ・ニエト大統領立ち会いの下,以下の7つの合意文書の署名式が行われた。なお,括弧内には署名者を記載。
(a)学位の相互承認に関する合意協定(墨:チュアイフェット公共教育相,英:グレッグ・クラーク(Greg Clark)大学・科学・都市担当閣外大臣):両国の当局間で,学部,修士,博士等の学位について相互承認を行う。約17万人が裨益。
(b)墨英巡回講座に関するLOI(墨:ミード外相,英:クラーク大学・科学・都市担当閣外大臣):両国から12ずつの高等教育機関が出席し,科学技術,エンジニアリング,数学,社会科学,人類学の分野で,研究,学術交流,学生交流を促進。
(c)オックスフォード大学における西語圏中南米文学関連講座の開設に関する協定(墨:チュアイフェット公共教育相,英:Nick Rawlinsオックスフォード大学副学長)
(d)国家科学技術審議会(CONACYT)-オックスフォード大学間のLOI(墨:カブレロCONACYT長官,英:Nick Rawlinsオックスフォード大学副学長):オックスフォード大学歴史研究学部におけるメキシコ研究共同プログラムの創設。
(e)学術協力に関するUNAM-キングス・カレッジ間の一般協定(墨:ナーロUNAM学長,英:Edward Byrneキングス・カレッジ学長)
(f)学術協力に関する墨大学高等教育機関連盟(ANUIES)-UK Universities間のMOU(墨:バルスANUIES理事長,英:ニコラ・ダンドリッジ(Nicola Dandridge)UK Universities会長)
(g)2015-2016年の観光分野における具体的協力プログラム(墨:ルイス=マシュー観光相,英:Helen Grantスポーツ・観光担当大臣):クリエイティブ産業,サステイナビリティ,教育,競争,女性のエンパワーメント等の分野における経験の共有に関する工程表を策定。
(イ)エネルギー分野
5日,ペニャ・ニエト大統領は,スコットランド,アバディーン(北海油田発見以後のヨーロッパにおける石油採掘拠点)を訪問し,エネルギー分野における以下の4つの合意文書の署名式に立ち会った。なお,括弧内には署名者を記載。
(a)エネルギー分野における英国の協力に関する墨エネルギー省と英エネルギー・気候変動省の間のMOU(墨:ホアキン・コルドウェル・エネルギー相,英:Carmichaelスコットランド担当国務大臣)
(b)墨環境天然資源省-スコットランド間の拡大・強化に関するMOU(墨:ゲラ環境天然資源相,英:Carmichael大臣)
(c)PEMEXによる英国物品及びサービスの調達にかかるクレジットラインの創設(墨:ロソーヤPEMEX総裁,英:David Gofrey輸出信用保険局(ECGD)局長)
(d)PEMEX,メキシコ石油研究所(IMP)とアバディーン大学との間の共同プロジェクト推進に関する合意(墨:ロソーヤPEMEX総裁,英:Ian Diamondアバディーン大学学長)
(5)その他の具体的成果
(ア)墨経済省-BP,Shell間の協定
(a)2日,ゴンサレス・ディアスProMexico総裁は,El Financieroとのインタビューにおいて,ペニャ・ニエト大統領の国賓訪問の枠組みで,墨経済省がProMexicoを通じて,BP及びShellの石油大手2社と協力協定を締結した旨明かした。
(b)これにより,両社の世界中の子会社を通じた,バリューチェーンのあらゆる段階におけるメキシコからの調達額を,本2015年には3億ドル以上に増加することとなる。なお,両社によるメキシコからの調達額は,2012年に2000万ドル,2013年に1億5000万ドルであった。
(イ)英墨企業家ハイレベルグループ会合(GANE)
(a)4日,ペニャ・ニエト大統領及びクレッグ副首相は,英墨企業家ハイレベルグループ(GANE)第1回会合に出席。同会合は,同大統領の国賓訪問にあわせて,両国間のビジネス関係を改善し,戦略的関係を深めるための具体的提案を行うための協議の場として立ち上げられた。
(b)墨側からはアルコセール・ミッタル・メキシコ(座長),HSBCメキシコ、CEMEX,PEMEX等が出席,英側からはHSBC UK(座長),Shell,BP,ディアジオ(Diageo),ユニリーバ等の企業が出席。
(c)ペニャ・ニエト大統領は,メキシコは世界で第15位,中南米で第2位の経済大国であり,10の自由貿易協定を45の国々と締結していることにより,10億人以上の潜在的な市場へのアクセスを有する旨強調。
(d)他方,クレッグ副首相は,2011年に,英国のメキシコへの輸出を5年間で2倍にするとの目標を立てたが,現時点で目標の5割を達成済みである旨述べた。
(e)出席企業の間では,メキシコが,特に航空宇宙,バイオテクノロジー,自動車部品,農産加工,建設,インフラ,技術発展,エネルギーといった分野で大きなビジネス・投資のポテンシャルを有している点,また,バリューチェーンが中小企業に恩恵を与える形で形成される必要がある点につき一致した。また,出席企業からは,EU墨FTAの枠組みを活用した投資だけでなく,太平洋同盟の自由貿易網を活用した進出にも関心が示された。
(f)また,本会合の枠組みで,英酒造大手ディアジオが,今後5年で4億ドルをメキシコに投資する旨発表。なお,同社は先週,Tequila Don Julioを買収したばかりであり,今後メキシコへの販路を拡大する模様。
(ウ)ビジネスフォーラム「Mexico's Day」
(a)ペニャ・ニエト大統領から,GANEと同様に,メキシコの投資先としての魅力を演説した一方,本セミナーの主催者であるYarrowロンドン市長からは,英国企業にとって,メキシコは,航空宇宙,インフラ,エネルギーをはじめとする産業において多くの可能性が存在する、両国における「英国年」,「メキシコ年」である今年は,これらの可能性を現実のものにする絶好の時である旨発言した。
(b)ペニャ・ニエト大統領立会いの下,インテルジェット(Interjet)-ブリティッシュ・エアウェイズの間でコードシェア便の運航を可能とする協力協定の署名が行われた。

 

3.アルマダ次期駐日大使の議会承認手続完了
5日,カルロス・アルマダ(Carlos Almada Lopez)次期駐日大使の連邦上院議会における承認手続が完了した(同大使は25日に着任した)。
(1)3日,連邦上院外交委員会及びアジア太平洋外交委員会の合同会合において,8人の次期メキシコ大使(アルマダ次期駐日大使のほか,駐インド,駐インドネシア,駐ベトナム,駐イスラエル,駐ヨルダン,駐カタール,駐アゼルバイジャン大使)に対するヒアリングが行われ,全会一致にて同人事は承認された。
(2)同ヒアリングにおいて,アルマダ次期駐日大使は,資料を用いたプレゼンテーションを行い,両国関係を戦略的,歴史的,多元的,共益,成熟,補完的,互恵的且つ潜在力が高いものと説明した。また,日本はメキシコのグローバル戦略においてキーとなる国であり,アジア太平洋地域の玄関,メキシコのアジアにおける最大の輸出相手国である等述べた。
(3)5日,連邦上院本会議において,賛成78票,反対18票,棄権5票で承認され,その後,アルマダ次期駐日大使による宣誓が行われた。

 

4.太平洋同盟(ミード外相のカルタヘナ・ダイアローグ出席)
(1)7日,ミード外相がカルタヘナ・ダイアローグに出席し,①物品,サービス,資本及びヒトの自由な移動を可能とする高いレベルの地域統合の実現,②構成国と構成地域が,世界,特にアジア太平洋地域へと進出する(proyectar)ことを可能とするプラットフォームの提供という,太平洋同盟の究極的な二大目標のうち,第一の目標については既に様々な成果が具体化している旨述べた。その具体的成果として,同外相は以下(ア)から(ウ)に言及。
(ア)物品・サービスの自由な移動:
(昨2014年2月の第8回太平洋同盟首脳会議で署名された第一追加議定書による)深く,近代的で,幅広く,野心的な自由貿易の合意。
(イ)ヒトの自由な移動:
昨2014年,メキシコとして初めて,(コロンビア国民、ペルー国民の)メキシコ入国に際して査証(ビザ)を不要とする措置をとった。メキシコは,現在,上位10カ国から年間3000万人の訪問者を受け入れているが,そのうち4カ国が中南米,3カ国が太平洋同盟構成国である。
(ウ)資本の自由な移動:
太平洋同盟4カ国の資本市場が統合(昨2014年6月の第9回太平洋同盟首脳会議において,ラテンアメリカ統合市場(MILA)へメキシコが加入)。約800社が上場し,取引時価総額は9440億ドル以上に及ぶ。
(2)その上で,ミード外相は,第一の目標を成功裏に達成した今,太平洋同盟は,もう一つの目標である,世界,特にアジア太平洋地域への進出に注力する必要がある旨述べた。
また,同外相は,そのための最初の会合が,昨2014年にニューヨークで開催され(注:第69回国連総会のマージンで開催された太平洋同盟-ASEAN外相会合),今回のカルタヘナ・ダイアローグはいわば2回目の対話となるところ,今後,FEALACが開催される機会を捉えて,3回目の対話の実施を模索しなければならない,また,この対話に継続性を与えるため,9月にニューヨークで開催される第70回国連総会の際に進捗状況を確認する必要がある旨述べた。
さらに,同外相は,本年5月にメキシコで開催される世界経済フォーラム中南米会合(WEF-LA)の機会に,アジア諸国との第1回企業家会合の開催を検討している旨述べた。
(3)このほか,ミード外相は,サントス・コロンビア大統領と会談を行い,他の地域統合との関係で太平洋同盟が直面している課題等について議論を行った。

 

5.ジェンティローニ伊外務・国際協力大臣のメキシコ訪問
8日~11日,ジェンティローニ・イタリア外務・国際協力大臣(以下,外相)が,昨2014年10月の就任後,初となる中南米訪問先としてメキシコを訪問した。
(1)ミード外相との会談・墨伊二国間委員会
(ア)9日,ジェンティローニ外相は,ミード外相と会談した。両外相は,墨伊両国の二国間関係を充実したものとし,戦略的連携(Asociacion Estrategica)を深化させるコミットメントを確認した。また,二国間,両地域間,多国間課題において協力の可能性があるテーマについて協議を行った。
(イ)その後,両外相は,2012年に両国間で戦略的連携が立ち上げられてから初の開催となる,第4回墨伊二国間委員会(Comision Binacional)を主催した。同委員会は,政務,経済金融,司法・治安,教育文化・科学技術分野における協力の4の下部委員会から構成されており,両国あわせて約80名が出席し,今後の具体的協力分野の特定を行った。全体セッションでは,両外相に対して各下部委員会から報告書が提出された。また,両外相は,二国間委員会を締め括るにあたり,議事録(Acta Final)及び共同プレスリリースを採択した。
(ウ)ミード外相は,二国間委員会後に行われた両外相による共同記者会見において,概要以下のとおり述べた。
(a)墨EU間の法的枠組みの現代化に関するイタリア側の支援,また,本2015年を中南米におけるイタリア年とするイタリアのイニシアティブに対するメキシコ側の支援について協議された。
(b)二国間委員会の枠組みで,中小企業分野(に関する協力)について協議するため,伊・ラ米間の歩み寄りを促進するイニシアティブについて議論され,大変満足している。イタリアの対墨投資,また,70億ドルに迫っている二国間貿易は,メキシコの雇用,成長に寄与している。
(c)両外相の間で,自動車,航空宇宙,エネルギー,農牧分野をはじめとする幅広い分野において両国の経済関係が有する大きなポテンシャルを再確認した。現在,墨伊ビジネス評議会(consejo de negocios Mexico-Italia)が協議を行っており,その成果が近く報告されることとなる。
(d)多国間テーマに関しては,墨伊両国が,安保理改革,人権,気候変動,組織的犯罪に対する対応等のテーマで,多くの共通の立場を有していることが確認された。この点に関し,イタリア側からは,組織犯罪だけでなく汚職対策についてもメキシコと協力する用意がある旨発言があった。
(エ)これに対し,ジェンティローニ外相は,概要以下のとおり述べた。
(a)近年,両国間では政策協力が緊密に進んでおり,本年に予定されているペニャ・ニエト大統領のイタリア訪問(報道によれば,本年前半の終わり頃を予定)において結実する予定。
(b)イタリアは,昨年,制度面,労働市場に関する改革を行ったところである。これらの改革は,メキシコが行っている改革とは異なるものの,同じように重要な改革である。だからこそ,現在両国は,より緊密な協力のための機会に直面している。
(c)汚職対策,犯罪対策については,イタリアは過去数十年にわたって取り組んできた経緯があり,メキシコで現在顕著であるこの問題への対処につき,協力できると考えている。
(d)今回の訪問には,大学学長,特に航空宇宙産業関係をはじめとする企業幹部,その他多くの関係者が同行した。
(e)イタリアの太平洋同盟におけるオブザーバー国としてのステータスは,メキシコ及び同地域における真の協力アジェンダを推し進めるものである。
(2)ペニャ・ニエト大統領表敬
10日,ジェンティローニ外相はペニャ・ニエト大統領を表敬訪問し,前日(9日)の二国間委員会の成果を報告した。同大統領からは,墨EU間の法的枠組みの現代化に関するイタリアの支援につき謝意が述べられた。
(3)グアダラハラ訪問
10日,ジェンティローニ外相は,イタリアが特別招待国となっている,第30回グアダラハラ国際映画祭の開催地であるグアダラハラ(ハリスコ州)を訪問し,同映画祭の枠組みで開催された映画産業に関する墨伊二国間フォーラムに出席した。

 

6.国連人権理事会における国連特別報告
9日,国連人権理事会において,フアン・メンデス国連特別報告者が,メキシコでは処罰及び捜査の手段としての拷問及び虐待が一般化している旨の報告書を提出した。これに対し,ミード外相は,同報告書の中では14件のケースのみに言及している点,かつその14件のうち既に13件で実質的な改善を行っている点を指摘しつつ,同報告書の内容は受け入れられない旨述べた。

 

7.ミード外相のグアテマラ訪問
10日,ミード外相は,第20回カリブ諸国連合閣僚会議に出席するため,グアテマラを訪問。同外相は,昨2014年4月にメリダで開催された首脳会議(注:昨年はメキシコが議長国)においてメキシコのイニシアティブの下合意された,防災,貿易促進に関する協力プロジェクトのフォローアップを行った。また,同外相は,グアテマラ,コロンビアの外相と三カ国会談,キューバ外相との二国間会談を行った。

 

8.モリーナ・グアテマラ大統領の訪墨
13日,モリーナ・グアテマラ大統領は,メキシコを訪問し,ペニャ・ニエト大統領と会談した(両首脳の会談はこれで13回目)。国境地帯のインフラ,エネルギー分野における協力,持続可能な開発,貿易円滑化等のテーマについて様々な合意文書、MOUに署名した。

 

9.PKO派遣:外務省プレスリリース
13日,メキシコ外務省は,近日中に(en proximas fechas)メキシコ軍人4名がPKOに派遣される予定である旨のプレスリリースを発出した。なお,本件プレスリリースは,ペニャ・ニエト大統領が昨2014年9月の国連総会演説において,メキシコのPKO派遣の再開を発表して以降,具体的派遣先を公表したものとしては初めて。
(墨外務省発出プレスリリースはhttp://saladeprensa.sre.gob.mx/index.php/es/comunicados/5767-138より観覧可)。
(1)近日中に,メキシコ国防省から2名,同海軍省から2名の計4名のメキシコ人軍人が,ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)の参謀本部の構成員,また,国連西サハラ住民投票監視団(MINURSO)のオブザーバーとして派遣される予定。
(2)ハイチ安定化ミッションでは,2名が助言・作戦立案を担当,また,国連西サハラ住民投票監視団では,監視団としての任務や人道支援を遂行するため国連の専門的訓練を受けた他の2名が派遣される。
(3)メキシコのPKOへの段階的派遣は,メキシコ憲法に規定された外交政策の規範原則に則り実施される。国連安保理によって認められたこれらのPKOは,イベロアメリカ諸国をはじめとする様々な国の支援及び共同参加を得ており,平和と国際社会の平和を維持するための協力という目的に資するものである。
(4)この決定により,メキシコは国際社会において,国連の原則及び価値に従い,グローバルな責任を有する主体としてのコミットメントを再度示すこととなる。

 

10.山田大使のアグアスカリエンテス州・グアナファト州公式訪問
25日~28日,山田大使はアグアスカリエンテス州,グアナファト州を公式訪問した。また,27日,グアナファト州レオン市において,フランジュッティ在レオン名誉領事の就任レセプションが開催された。山田大使は,両州において日系進出企業と在留邦人が急増していることに鑑み,ロサノ・アグアスカリエンテス州知事及びマルケス・グアナファト州知事に対して,在留邦人の治安対策につき申し入れを行った。詳細については,下記,在メキシコ日本国大使館ホームページ参照。


(山田大使のアグアスカリエンテス州及びグアナファト州公式訪問)

http://www.mx.emb-japan.go.jp/visitagtoagsjp.html


(山田大使のグアナファト大学訪問)
http://www.mx.emb-japan.go.jp/ugtojp.html


(フランジュッティ在レオン名誉領事就任レセプッション)

http://www.mx.emb-japan.go.jp/franyutijp.html

 

11.シーヤールトー・ハンガリー外相の訪墨
26日,シーヤールトー・ハンガリー外相が訪墨,ミード外相と会談し,学術協力にかかるMOU及び2015年-2017年の教育・文化協力プログラムに署名した。また,シーヤールトー外相は,ルイス=マシュー観光大臣との間で、観光分野にかかるMOUを署名した。なお,両国は,2014年に外交関係再開40周年を迎えた。

 

12.ブレンデ・ノルウェー外相の訪墨
27日,ブレンデ・ノルウェー外相が訪墨し,ミード外相と会談した。両外相は,エネルギー・セクターにおける調査,技術研修,オペレーションの改善,設備の安全性,電力分野の近代化,クリーンエネルギー開発等の分野における協力の可能性を強調した。ブレンデ外相の訪墨には,エネルギー改革による様々なプロジェクトに関心を有しているノルウェー企業が同行した。また,両外相は昨2014年の在ノルウェー墨大使館の開設により,今後益々両国の関係緊密化,様々な分野における協力促進,貿易投資の促進に資する旨強調したほか,定期的な政策協議メカニズムの実施について意見交換を行った。ミード外相は,軍縮・不拡散,ポスト2015年開発アジェンダ,気候変動等の分野におけるノルウェーとの協力イニシアティブの重要性を再度強調した。

 

 

 
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