メキシコ政治情勢(11月)
〈概要〉
内政では,4日,ゲレロ州イグアラ市におけるアヨチィナパ教員養成学校襲撃事件を巡り逃亡中であったアバルカ前イグアラ市長及びその妻ピネダの両容疑者が逮捕された。6日,3日に発表されていたメキシコ市-ケレタロ市間旅客鉄道の落札結果が撤回された。本件に関し,9日,ネットニュース「Aristegui Noticias」がリベラ大統領夫人所有の豪邸を巡るペニャ・ニエト大統領と落札企業1社との癒着疑惑を報じた。13日,2015年歳出案が連邦下院議会で承認された。25日,カルデナス民主革命党元大統領候補が離党した。27日,10項目からなる治安対策パッケージが発表された。
外交では,1日,ミード外相がコロンビアを訪問し,太平洋同盟-メルコスール閣僚会議に出席。2日~5日,チャールズ英皇太子及び同夫人がメキシコを訪問した。9日~15日,ペニャ・ニエト大統領はAPEC首脳会議出席,中国国賓訪問及びG20首脳会議出席のため中国,豪州を訪問した。17日,ミード外相はニュージーランドを訪問し,マカリー外相と会談した。24日,ミード外相は中南米地域における地域統合に関するセミナー出席のためチリを訪問した。25日~26日,張徳江中国全人代常務委員会委員長がメキシコを訪問した。
〈内政〉
1.制度的革命党(PRI)による国民投票請求の却下
(1)3日,連邦最高裁判所は,PRIによる「比例代表制による議席数の削減」の是非を問う国民投票請求を却下した。この決定は,憲法35条の国民審査にかけることのできない事項の一つである,選挙関連事項に該当するという判断に基づき下された。
(2)この結果,連邦最高裁判所は,国民行動党(PAN),民主革命党(PRD),国家再生運動(Morena)並びPRIが,来年6月の中間選挙の際に実施を目指していた国民投票に対する一連の請求を却下したこととなった。
2.ゲレロ州イグアラ市における教員養成学校生徒襲撃事件を巡る前イグアラ市長の逮捕
(1)4日,ゲレロ州イグアラ市におけるアヨチィナパ教員養成学校襲撃事件を巡り逃亡中であったアバルカ前イグアラ市長及びその妻ピネダの両容疑者を,メキシコ市イスタパラパ地区で逮捕したことを連邦警察が発表した。
(2)10月22日,ムリージョ連邦検察庁長官が,本事件はアバルカ前イグアラ市長とその妻ピネダの両容疑者の指示によって,同市警察と犯罪組織「ゲレロス・ウニードス」が共謀して行ったものである旨公式発表し,連邦検察庁は,両容疑者に150万ペソの懸賞金をかけ,その行方を追っていたもの。
3.メキシコ市-ケレタロ市間旅客鉄道落札結果撤回とペニャ・ニエト大統領夫人所有豪邸を巡る落札会社との癒着疑惑問題
(1)3日,メキシコ市-ケレタロ市間の旅客鉄道の落札結果がルイス・エルパルサ通信運輸相より発表された。落札会社は,中国のChina Railway Construction Corporation, China Railway Construction International, CSR Corporation Ltd及び4つのメキシコ企業,Constructora y Edificadora GIA, Prodemex, GHP Infraestructura Mexicana,Constructora TEYAから構成されるコンソーシアム。
(2)6日,ペニャ・ニエト大統領からルイス・エルパルサ通信運輸相に今般の落札結果を撤回するよう指示がなされた。同落札結果の撤回の理由は,本プロジェクトに向けられる疑惑を排除し,より高い透明性を保証するためと説明された。
(3)9日,ネットニュース「Aristegui Noticias」は,ペニャ・ニエト大統領とメキシコ市-ケレタロ市間旅客鉄道の落札企業との癒着疑惑を報じた。同記事の中で,リベラ大統領夫人がメキシコ市の高級住宅街であるローマス・デ・チャプルテペックに所有する豪邸の法的所有者はIngenieria Inmobiliaria del Centro社であり,同社オーナーであるJuan Armando Hinojosa Cantu氏はGrupo Higaの会長である,このGrupo Higaの子会社が,今般の旅客鉄道の落札者の一つであるConstructora TEYA社であり,同社は,ペニャ・ニエト大統領がメキシコ州知事を務めている間に,同州病院の建設,主要幹線道路の建設などの大型案件を落札しており,ペニャ・ニエト大統領との蜜月関係が従前より指摘されている会社であると報じ,ペニャ・ニエト大統領と同社の癒着疑惑を指摘した。
(4)9日,ペニャ・ニエト大統領と一部企業との癒着疑惑及び批判に対し,大統領府はプレスリリースを発表し,問題となっている豪邸は,2012年,ペニャ・ニエト大統領が大統領に就任する数ヶ月前に,リベラ大統領夫人がIngenieria Inmobiliaria del Centro社と売買契約を結んだものであると説明した。
(5)9日~15日にかけ,ペニャ・ニエト大統領はAPEC首脳会議及び,G20首脳会議出席のため中国及び豪州を訪問。国を不在にしたことによって,本件に関する様々な憶測がメディアで流れる結果となった。
(6)18日夜,リベラ大統領夫人は自身のホームページに国民への説明のための映像をアップした。問題となっている豪邸に関し,自身の25年に渡る女優キャリアで得た個人の資産で購入したものであることを説明し,何の不正もない旨述べた。併せて,本件が自身の家族を攻撃,中傷する口実となり続けないために,Ingenieria Inmobiliaria Centro社との売買契約によって得た同豪邸に関する権利を売却する旨述べた。
4.2015年歳出案の承認
13日,2015年歳出案が連邦下院議会で承認された。
(1)歳出総額は,歳入総額とほぼ同額の約4兆6,946億ペソで承認された。また,2015会計年度における財政赤字額は6,415億ペソを見込んでいる。
(2)一般歳出は3兆6,698億1,600万ペソで,構成比別では,社会開発が60.3%,経済開発が32.4%,政府支出(人件費等)が6.7%であった。公共投資には8,763億ペソが割り当てられている。政府系機関のうち,国営企業債務支払いが前年比12%の増加となった。これに関する詳細内訳は公表されていないが,エネルギー改革細則法で決定されたPEMEX及びCFE各機関における年金債務の国庫負担分が計上されたことが要因であると考えられている。
(3)2015年予算からは予算執行に関する監査及び報告義務が強化された。具体的には予算が割り当てられている州・市町村の公的機関は内部監査機関を設立し,リスク管理等を行うとともに,大蔵公債省に対して交付金の使途について予算執行報告義務を負う。また,大蔵公債省は四半期毎に公共投資プロジェクトの進捗状況をホームページで公表することとなった。
5.カルデナスPRD元大統領候補の離党
(1)25日,PRDの創設者の一人であり,3度(1988年,1994年,2000年)にわたり同党大統領候補であったクアウテモック・カルデナスが,ナバレテPRD党首との会談後,党の方針と自身の考えの間に大きな相違があるという理由から,同党を離党する決断を下したことを発表した。
(2)16日,カルデナス元大統領候補は,アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件への党の責任問題も含め,党内最大派閥である新左派,通称「ロス・チュチョス」による党の運営を批判,ナバレテ党首の辞任を求めた。これに対し,ナバレテ党首はカルデナス元大統領候補との会談を申し込んでいたもの。
(3)ナバレテ党首は,今般のカルデナス元大統領候補の離党は大変残念なものであり,党の一時代の終焉を意味する旨述べた。他方,メキシコは,次の世代に扉を開き,世代交代を促進する改革されたPRDを必要としており,党に残る党員はメキシコのために引き続き闘っていく旨述べた。
6.治安対策パッケージの発表
27日,ペニャ・ニエト大統領は国立宮殿において約40分間にわたり演説を行い,アヨチィナパ教員養成学校生徒襲撃事件以降,治安・汚職等に関する社会不満が高まっている状況に対して,10項目からなる治安対策パッケージを発表した。
(1)市政府に対する犯罪組織浸透防止法
市政府に犯罪組織が浸透したとの十分な根拠がある場合,連邦政府が,市政府の行政サービスをコントロールし,また要すれば市政府を解体する権限を定める法案を12月1日に議会に送付する。
(2)犯罪対策に関わる様々な当局の管轄を明確に定めるべく,12月1日に憲法改正案を議会に送付する。
(3)統一州警察(Policia Estatales Unicas)
12月1日,統一州警察発足に向けた憲法改正案を議会に送付する。現在,約1,800の市警察が存在しているが,これらは犯罪組織の浸透を受けやすいことから,これを州警察に統合する。ただし,この統合プロセスは時間を要することから,まず,同制度はゲレロ州,ハリスコ州,ミチョアカン州,タマウリパス州において導入する。同改正においては,指揮権の譲渡に反対する市長や知事に対する制裁措置も盛り込む予定。
(4)州警察の統一にあわせて緊急時通報電話を全国一律911と定める。
(5)統一身分番号(Clave Unica de Identidad)
当国では依然として信頼すべき住民登録制度が存在しておらず,治安対策や行政サービス,もしくは銀行サービスの利便性改善等の観点から統一身分番号を導入する。その際,既に部分的に存在している選挙人登録や社会保障機関における登録情報を活用する。
(6)治安関係閣僚に対して,ティエラカリエンテ地域(ゲレロ州,ミチョアカン州)に連邦治安対策機関の特別部隊を展開するよう指示した。また,ハリスコ州及びタマウリパス州において連邦治安対策機関の支援を拡大するよう指示した。
(7)司法に対する権利の確保
日々の生活において,理由無き土地の接収,不払い,当局の権力乱用等の様々な問題があり,その解決に多くのコストと時間を要する現状を踏まえ,経済研究教育学院(CIDE)に対して,司法関係者,学術関係者,市民社会代表を集めたフォーラムを開催し,90日以内に提言をまとめるよう依頼した。この提言を受けて,次期通常国会において,幅広い改正案を提出する予定。
(8)人権擁護
憲法改正を通じて拷問・強制失踪に関する法律を定める権能を連邦議会に付与する。また,拷問,強制失踪,超法規的殺人に対する捜査を迅速且つ徹底的に行わせるべく,手続の改正を行う。国家人権委員会(CNDH)と協力して,人権状況モニタリングにかかる追加的インディケーターを導入する。行方不明者捜索全国システム及び遺伝情報全国システムを立ち上げる。犯罪被害者法を改正して,支援・援助にかかる基金を立ち上げると共に,全国犯罪被害者登録制度を立ち上げる。そして,人権分野に関する憲法改正に向けた協議会を立ち上げる。
(9)汚職対策
連邦議会に提出されている汚職対策関連の各種法案の早期可決を目指す。特に,各党で議論されている全国汚職対策システムの発足に向けて全力を傾注する。また,市民による監視を強化し,例えば,予算執行後まで待たずに監査を実施できるようにする。汚職対策に従事する裁判所及び検事を創設する。汚職企業に対する制裁措置についても提案する。この他,透明性に関わる憲法改正を踏まえた実施法,及び公共事業法改正につき,早期可決に向けて取り組む。
(10)情報公開
情報公開を強化するため,公共行政省に対して,連邦政府の全ての契約に関する情報を公開するためのポータルを整備するよう指示した。
(11)上記10項目に加えて,北部・バヒオ地区は過去20年間で40%の経済成長を実現しているのに対し,ゲレロ州,オアハカ州及びチアパス州では経済成長が依然ゼロという,2つのメキシコが存在しているという現実,そして,多くの社会不安はこれら3州に端を発しているという状況に鑑み,これら南部諸州の開発に向けて取り組む。まず,国家インフラ計画において,同3州には1,950億ペソの投資を行っている。これに併せて,同地域の発展の軸を創出する必要があり,3地域に経済特区を設置するべく,来年2月に法案を提出する予定である。これら特区は,テウアンテペック地峡の太平洋とメキシコ湾を結ぶ工業地帯,チアパス港周辺地域,ラサロカルデナス港周辺地域(ミチョアカン州とゲレロ州を含む)の3特区である。
(12)この他,地方教員養成学校に対する特別奨学金,緊急一時雇用計画(30万世帯裨益),中小企業支援(20億ペソのクレジット),緊急農村支援プログラム(40億ペソの追加クレジット),コーヒー生産者支援プログラム,道路舗装緊急プログラム(15億ペソ,実施期間6ヶ月),アカプルコ経済支援緊急プログラムを実施する。
(13)更に,物価と最低賃金を切り離す法案を提出する。この結果,メキシコ国民の所得水準を向上させるための真摯な議論が開始されることを期待している。
〈外交〉
1.ミード外相のコロンビア訪問
1日,ミード外相はコロンビアを訪問し,太平洋同盟-メルコスール閣僚会議に出席した。ミード外相は,両統合メカニズム間のあり得べき協力関係を視野に入れつつ,両メカニズムのタスクと今後の課題について討論を行った。
2.チャールズ英皇太子のメキシコ訪問
2日~5日,チャールズ英皇太子及び同夫人がメキシコ訪問。英国における「メキシコ年」,メキシコにおける「英国年」が立ち上げられた。
3.ペニャ・ニエト大統領のAPEC首脳会議出席
11日,ペニャ・ニエト大統領はAPEC首脳会議に参加し,就任後に行った11の構造改革等について演説を行った。
【ペニャ・ニエト大統領演説概要】
(1)過去20年間のメキシコ経済は同国が有する比較優位を十分に活かしきれていなかった。かかる事情が背景となり,教育,労働,通信,競争,金融,税制及びエネルギーといった戦略的分野を中心に幅広い分野に及び,かつ,生産性を向上させるという共通要素に貫かれた,11の構造改革を行った。
(2)これらの構造改革によって,生産的なプロジェクトに対する投資,自由貿易及び世界水準の人的資本形成にとって良い競争条件が生み出され,イノベーションに最適な環境が形成されることが期待される。本構造改革が,アジア太平洋地域における持続的成長及び開発に向けたAPECの取り組みに貢献することを確信している。
(3)メキシコは,世界の主要なエコノミーの一つであり,また,中南米においても第二の経済大国であり,健全な財政政策,変動為替及び独立した金融政策に支えられたマクロ経済の安定に代表される数々の利点を有する。また,45カ国と10の自由貿易協定を締結しており,11億人以上の潜在的消費者市場へのアクセスを有する。
(4)さらに,メキシコは製造業の輸出拠点であり,毎年約10万人のエンジニアや技術者を輩出する等,若く才能と技術を有する人材(gente joven, talentosa y capacitada)にも恵まれている。
4.ペニャ・ニエト大統領の中国訪問
ペニャ・ニエト大統領は,APEC首脳会議(於:北京)への出席にあわせて,12~13日にかけて国賓として上海及び北京を訪問した。
(1)習近平国家主席との二国間会談(13日)
13日,ペニャ・ニエト大統領は,北京において,過去二年間で4回目となる習近平国家主席との二国間会談を行った。
(ア)ペニャ・ニエト大統領より,今日の中国とメキシコの関係は,より広範囲にわたり,両国にとってより生産的で前向きなものとなってきている,これらの進歩はまだ始まりの段階にあることは明白である旨述べた。また,昨年の習近平国家主席のメキシコ訪問以降,中国とメキシコの二国間関係は,新しい段階(nueva etapa)に入ったと指摘。さらに,中国とは世紀に亘る外交関係こそ有していないが,21世紀において更なる関係緊密化,また,友好と尊敬の関係,そして最も重要な点として,相互信頼関係(confianza mutua)の醸成が期待される旨述べた。
(イ)これに対し,習近平国家主席からは,過去一年以上に亘ってペニャ・ニエト大統領との間での合意事項は着実に実施されてきており,両国の協力関係は急速な発展の軌道(via expres de desarrollo)に乗っている旨指摘。また,次の段階として,主に,両国間の政治分野における相互信頼関係の強化,マルチのフォーラムにおける緊密な連携,文化交流の促進等に注力していきたいと述べた。
(ウ)また,両首脳の立ち会いの下,二国間協力に関する14の合意文書が署名されたところ,主要な合意文書は以下のとおり。これらの協定によって,二国間関係の再活性化がなされると同時に,エネルギー,鉱業,インフラ,通信及び観光分野において,総額140億ドルを超える中国企業によるメキシコへの投資が期待される旨表明された。
【メキシコ産品の中国市場における扱いに関する合意】
(a)テキーラの原産地名称を保護し,中国市場への輸出の可能性を広げることに合意。
(b)メキシコ産ブラックベリー,ラズベリー及び牛肉の,中国市場へのアクセスが可能となった。
【中国企業によるメキシコへの投資増加に関する合意】
(a)24億ドルの二国間投資ファンドの設立に合意。両国の企業が,エネルギー,鉱業,インフラ,ハイテク産業及び観光分野への投資に際して利用可能。このファンドは,将来的には,90億ドルまで増資。
(b)PEMEXと中国国有企業三社の間で,中墨エネルギー・ファンド(Fondo de Energia SINO-MEX)の設立に合意。同ファンドは,最大50億ドルまでの資金をPEMEXの事業に融資することが可能。これらPEMEX事業の中には,既に進行中の天然ガスパイプライン事業(ラモネス・プロジェクト(Los Ramones))の第二フェーズも含まれている。
(エ)さらに,これらの署名文書に加え,両首脳立ち会いの下,以下の2の証書(certificado)の授与が行われた。
(a)世界最大の銀行である中国工商銀行(Banco de Industria y Comercio de China)がメキシコにおいて営業するための認可。これにより,(同行の融資等を通じて)中国企業がメキシコにおいて行う取引が促進されることが期待される。
(b)テキーラの原産地名称登録に関する認可。
(オ)この他,メキシコにとって重要性を有するプロジェクトに対する融資・保証を行うために,両国の開発銀行間で更なる協力を行っていくこと,また,2015年を「墨中観光年」とすることが合意された。また,後者の一環として,両国間の乗客数を増加させるため,メキシコ-中国間のフライト時刻が改善される予定。
(カ)二国間関係の発展の次のフェーズの指針を定める,戦略的総合連携(Asociacion Estrategica Integral)を促進するための行動計画を共同で採択することが決定された。また,2016年~2020年の期間について,様々な分野における両国の協力のためのロードマップとなる,二国間常設委員会の共同行動計画の策定準備が開始された旨発表された。
(2)李克強首相との二国間会談(11日)
(ア)11日,ペニャ・ニエト大統領は国賓としての中国訪問を翌日に控え,李克強(Li Keqiang)首相と会談を行った。その際,同首相より,メキシコ市-ケレタロ間旅客鉄道の入札に関し,既に中国企業(CRCC)の落札が発表されていたにもかかわらず,本件入札が取り消されたことは遺憾である旨発言があり,同企業は再度入札に参加する予定であるところ,これらメキシコへ投資の意向を有している中国企業が「公正及び公平(justa y equitativa)」に扱われるよう要請があった。
(イ)これに対し,ペニャ・ニエト大統領より,再入札の手続きについては,確実性(certidumbre)を確保する考えであり,また,CRCCについても再度入札に参加可能である旨返答した。加えて,大統領から,中国企業の権利が保護されることを約束する,メキシコの高速鉄道建設への中国企業の参加を歓迎する旨発言があった。
(ウ)また,李首相は,ペニャ・ニエト大統領からの招待に応じ,2015年,グアダラハラで開催予定の第9回ラテンアメリカ-中国ビジネスサミット(Cumbre Empresarial America Latina-China)にあわせて,メキシコを公式訪問する旨述べた。
(3)企業家ハイレベル・グループ(Grupo de Alto Nivel Empresarial:GANE)第二回会合(13日)
(ア)13日,両首脳は,二国間会談後に企業家ハイレベル・グループ第二回会合を主催した。同会合において,両国の参加企業より総合的・長期的観点から両国の経済関係を強化するための提言が提出された。
(イ)中国企業からは,企業家ハイレベル・グループ設立以降,メキシコ側企業との円滑な交流が維持できており,両国の企業間で緊密な関係が構築され,実の伴う成果を上げてきている旨発言があった。一方で,メキシコ企業からは,企業家ハイレベル・グループは,両国のビジネス関係の強化に関する優れた対話のフォーラムとなった,その証拠に,両首脳の立ち会いの下署名された合意文書は,本グループの枠組みで事前に議論された事項である旨発言があった。
(ウ)最後に,2015年にメキシコで,本グループの第三回会合を開催する旨発表があった。
5.ペニャ・ニエト大統領のG20首脳会議出席
15日、ペニャ・ニエト大統領がブリスベンで開催されたG20首脳会議一日目に出席し演説を行った。また、16日はミード外相が同大統領の代理として同会議に出席した。
(1)ペニャ・ニエト大統領演説概要
(ア)G20は、現下の世界経済の停滞から脱し、国民に便益をもたらすために必要な政策調整を行うことのできる唯一のフォーラムである。かかる目的の達成に必要不可欠なステップは、2018年までにG20全体のGDPを2パーセント上昇させることについて、G20各国が確固たるコミットを行うことである。その意味において、引き続き、G20各国の社会と政府は、経済活動を制限してきた古い障壁を取り除く構造改革を断行することが求められており、メキシコにおける構造改革の例はそれが可能であるということを示している。
(イ)メキシコにおける制度面、インフラ面での変革は現在進行中の構造改革の二つの重要な側面である。11の構造改革の議会における採択は重要であったが、現在は、これら構造改革の規制・運用の段階において効果的に実施されることが重要となっており、その実施によって経済成長及び国民の便益をもたらすよう鋭意取り組んでいる。
(ウ)また、メキシコにおける構造改革では、G20の計画に沿って、労働改革の主要な目的の一つとして女性の労働市場参入強化が掲げられており、在宅勤務等の契約形態の柔軟化、時間給制、採用に当たっての妊娠検査の強要の禁止、セクハラに対する罰則厳重化等の具体策が打ち出されている。これらの構造改革によって、メキシコはG20の女性の参加を実質的に向上させるというコミットメントに貢献している。
(エ)メキシコ政府は、G20諸国、特に豪州政府と、インフラ・プロジェクトが経済成長のエンジンとしての重要性を有するという点について見解を一にしている。メキシコを国際的な物流拠点とすべく、700を超える戦略的プロジェクトを含む国家インフラ計画(PNI)を推し進めている。同計画では、総距離3000キロ以上の高速道路の建設や、港湾の積載能力の2.8億トンから5.0億トンへの拡張、最大で年間1.2億人の旅客者が見込まれるメキシコ市新国際空港の建設、年平均対GDP比8パーセントを超える投資等を予定しており、その投資総額は6000億ドル以上となる。これらのプロジェクトの実施にあたっては、官民パートナーシップ、機関投資家や二国間ファンド、例えば中国との間で設立が合意され、世界銀行グループの国際金融公社(IFC)により運用される24億ドルのファンド等の参加をはじめとする、革新的な投資のメカニズムを活用する。
(2)ミード外相
(ア)ミード外相は、グローバル経済の堅実性と題するセッションに参加、各国首脳とともに、財政構造の近代化プロセス、金融システムの強化、IMF改革等のテーマについて意見交換を行った。
(イ)また、エネルギーに関するセッションにおいて、ミード外相は、ペニャ・ニエト大統領によって主導されたエネルギー改革がメキシコにもたらした便益について概説を行い、同改革によってメキシコのエネルギーセクターに資本と技術を誘致することが可能となり、また、より競争的な雇用創出にもつながる旨述べた。さらに、エネルギー改革のもう一つの便益として、再生可能エネルギー、クリーン・エネルギーの発電を促進することによる環境への配慮、労働者の保護及び国民の福祉向上が挙げられる旨指摘。この点に関連して、ミード外相は、気候変動との闘いにおいてメキシコが果たしている役割に言及、気候変動の緩和に貢献することを可能とする金融メカニズムであるグリーン・ファンド(Fondo Verde)への参加等の具体的意思決定に、メキシコの取り組みが表れている旨述べた。また、12月にリマで開催される国連気候変動枠組条約第20回締約国会議(COP20)に国際コミュニティが積極的に関わることの必要性を強調した。
6.ミード外相のニュージーランド訪問
17日,ミード外相はニュージーランドを訪問。マカリー外相と会談したほか、産業界との懇談を設け、メキシコの投資先としての魅力をアピールした。
7.ミード外相のチリ訪問
24日,ミード外相は,中南米地域における地域統合に関するセミナー(特に太平洋同盟とメルコスールの関係に焦点)に出席するために,チリを訪問。バチェレ・チリ大統領が開会式に出席したほか,チリ,アルゼンチン,ブラジル,ペルー等の外相が出席した。
8.張徳江全人代常務委員会委員長のメキシコ訪問
25~26日,張徳江全人代常務委員会委員長がメキシコを訪問し,ペニャ・ニエト大統領を表敬した他,バルボサ連邦上院議長等と会談を行った。ペニャ・ニエト大統領は,張徳江委員長との会談の中で,12日に習近平国家主席との首脳会談の際に示された,両国の戦略的統合連携(Asociacion estrategica integral)を強化していく意思を再確認した。
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