メキシコ政治情勢(9月)
〈概要〉
内政では、1日、連邦議会に大統領教書が提出され、翌日、ペニャ・ニエト大統領が一般教書演説を行った。5日、2015年予算案が議会に提出された。14日から15日にかけハリケーン「オディーレ」による被害がバハ・カリフォルニア・スル州を中心に発生した。26日、ゲレーロ州イグアラ市にてアヨチィナパ教員養成学校生徒に対する襲撃事件が発生し、6名が死亡、同養成学校の生徒40名以上が行方不明となった。
外交では、8日から10日にかけ、ミード外相がキューバ、パナマ、ニカラグアを訪問。19日、ミード外相は米州機構総会へ出席した。24日、第69回国連総会に出席したペニャ・ニエト大統領は一般討論演説を行い、メキシコの国連PKO活動への参加意志を表明した。
〈内政〉
1.大統領教書の提出及び大統領による演説
1日、連邦議会秋期通常会期が招集された。直後、オソリオ内相は連邦下院に赴き、シルバーノ連邦議会議長(連邦下院議長)に対し、第2回年次教書を提出した。2日、国立宮殿において、ペニャ・ニエト大統領による一般教書演説が行われた。
【教書演説概要】
教書演説は、昨年同様、ペニャ・ニエト大統領が就任演説で打ち出した政権の5本の柱(①平和な国家の達成、②包摂国家の達成、③全国民が質の高い教育を享受する国家の達成、④繁栄する国家の達成、⑤地球規模の責任ある役割を果たす国家の達成)に沿った形で、政権発足より現在に至るまでに実施した政策、その成果を強調する内容であった。とりわけペニャ・ニエト政権下で実現した諸改革に触れ、諸改革を実践に移していくことの重要性を国民に訴えかけるものとなった。
(1)諸改革法案の達成
ペニャ・ニエト大統領は教書演説の冒頭部において、諸改革法案成立のための推進力となった「メキシコのための協約」の重要性を強調。メキシコ政治が新しい民主主義の時代に到達したと述べた。「メキシコのための協約」により、メキシコが長年に亘り必要としていた11の諸改革を成し遂げ、法整備を実施することが可能となった。このことは、これから新しいメキシコを作り上げていくためのベースとなるものである。そして今、これらの諸改革を実践に移していくことが重要であると強調した。
(2)平和な国家の達成
(ア)犯罪だけではなく、その要因を断ち、予防に焦点を当てた新たな治安・司法分野の政策「暴力及び犯罪予防のための国家プログラム」が、犯罪発生率の59%が集中する73の優先地域で展開された。
(イ)中央・地方政府の連携及び連邦政府の治安関係当局間の連携を強化、特に5ブロックに分けられた全国各州の間で情報共有するとともに、更なるインテリジェンスの活用に取り組んでいる。その結果、最も重要な容疑者122名のうち、84名が逮捕されている。
(ウ)連邦検察庁の権限を強化する政治改革により、犯罪件数が減少していることを強調。また治安対策として、先般、連邦警察憲兵隊の運用を開始した。
(エ)連邦検察局が発表した最新のデータによると、2014年上半期の殺人発生率は、2012年の同期比で27.8%減少した(当館注:8月14日、海軍士官学校卒業式において演説を行った際、ペニャ・ニエト大統領は同数値を26.8%と発表している)。
(3)包摂国家の達成
(ア)極度の貧困と食糧難という二重苦に直面する国民を支援するために「全国飢餓対策キャンペーン」を開始し,生活必需品を安価で購入できる「シン・アンブレ(空腹なし)」カードの配布を進めている。連邦政府と優先自治体との間での連携を図っており、2014年、「全国飢餓対策キャンペーン」の対象は1,012市町村に拡大、「シン・アンブレ」カードの恩恵を595,000世帯が受けている。
(イ)「機会プログラム(Programa Oportunidad)」を「繁栄するプログラム(Programa Prospera)」に更新する。この「繁栄するプログラム」により、大学生及び専門学校生向けの奨学金制度がより充実したものとされる。
(ウ)男女平等社会の実現を促進するため215億ペソの予算を投資し、115のプログラムを実施。このプロジェクトの中には、シングルマザーの子供向け奨学金制度も含まれ、今日、470万人のシングルマザーが恩恵を受けている。
(エ)保健分野においては、社会保護システム(Sistema de Proteccion Social en Salud)に新たに650万のメキシコ人が加入。より広範囲な保健サービスを享受できるようになった。年金制度には新たに270万人が加入。
(4)全国民が質の高い教育を享受する国家の達成
(ア)教育制度改革により、教師の質の向上が容易となる。教育制度改革により制定された全国教育評価庁による2014ー2015年度の教員採用試験(14,830ポスト)が実施され、質の良い教師の採用が可能となった。
(イ)教育制度改革の内容に反対する勢力の存在を認めながらも、連邦政府は教育制度改革を各州政府と連携し推進していくことを約束。
(ウ)貧困や過疎化によって生活や教育の質が限定されている地域のために、教育環境向上を目的に校舎などインフラ整備にも投資を行う。「ふさわしい学校プログラム(Programa Escuelas Dignas)」に25億5,000万ペソを投資し、全国で2,600以上の校舎が改善された。
(エ)2013-2014年度に新たに238,500人の生徒が中等・高等学校に進学。この増加数は過去20年で最大。
(オ)2014年度の科学・技術革新分野への予算は818億ペソであり、この額は対2012年比28.6%増。
(5)繁栄する国家の達成
(ア)労働改革により、若者、女性、身体障害者が職を得るための選択肢が増加。「国家雇用サービス(Servicio Nacional de Empleo)」により220万人が新たな職を得たと強調。
(イ)国家起業家庁が創設され、中小企業の起業家に対し、情報提供、講座の実施、資金提供などの支援を実施。
(ウ)連邦経済競争法の成立により、連邦経済競争委員会が独占を規制し経済競争を促進。より質の良いサービス、安価な価格の実現を目指す。
(エ)通信改革により、通信分野への新たな投資が見込まれる。また、2015年1月1日より、メキシコ国民は「遠距離通話料金(larga distancia)」を支払う必要がなくなる。
(オ)農業改革はメキシコ国家にとっての優先事項である。連邦政府は米、トウモロコシ、インゲン豆、大豆、小麦の国内生産量の増加を促進していく。これらの農産物の国内自給率は2013年68%であったが、今後75%までの引き上げを目指す。
(カ)財政改革により、メキシコの財政収支は改善。2014年上半期の税収額は、2013年の同時期比10.7%増。連邦政府は国民に対し、メキシコ国民が国家に納める税金を、透明性を保証しながら、責任をもって国家の発展に投資していくことを約束。
(キ)国家インフラ計画に関し、水、通信、交通、エネルギー、観光、保健、都市開発、住宅開発の各分野に7兆7,000億ペソを投資する。
(ク)主要都市間を結ぶ高速道路建設プロジェクトの促進。加えて、メキシコ市-トルーカ市間及びメキシコ市-ケレタロ市間の高速鉄道、並びにメキシコ市地下鉄の拡張など、28の鉄道プロジェクトを推進。
(ケ)メキシコ市に新たな国際空港を建設する。6つの滑走路を有する新空港が誕生することによって、現在の4倍にあたる、年間1億2,000万人の利用客が見込まれる。
(コ)メキシコへの観光客招致の促進を目標に、観光分野も国家インフラ計画に組み込む。
(サ)エネルギー改革によって、メキシコは現状を改善するための手段を手に入れた。また、メキシコ石油公社(PEMEX)及び連邦電力公社(CFE)、地下資源の帰属は従来通り国家にあることを強調。
(6)地球規模の責任ある役割を果たす国家の達成
(ア)国際場裏におけるメキシコ国家の存在感及びリーダーシップの強化。自動車産業、航空宇宙産業などの戦略的分野の更なる成長を促進し、メキシコへの外国投資の増加を目指すと共に、メキシコの製造品及び投資が世界市場を新たに席巻できるよう取り組んでいく。
(イ)未来を見据え、学術、技術、文化の分野における国際交流の拡大。
(ウ)輸出の拡大を目的にパナマと自由貿易協定を締結。ヨルダン、トルコとも同様の協定を結ぶべく交渉中。
(エ)米国との関係においては、貿易、科学・技術の発展、学術交流、環境保護などのテーマに関し、北米地域の未来ビジョンを推進。多角的なテーマに基づいた新たな二国間関係を強化。
(オ)太平洋同盟を構成する国々との間で人、富、サービス、資本の交流を容易にするメカニズムの強化を図る。この結果により、2012-2013年、これらの国々からのメキシコへの旅行者が41%増加。
(カ)中米地域とは対話のメカニズムを強化し、墨南部国境地帯の強化に関し合意。
(キ)欧州とは、政治・経済・社会・文化的つながりを強化。スペイン、フランス、ポルトガル、英国の各国と対話を繰り返し、親密な二国間関係を再確認。
(ク)アジアに関しては、中国、日本の両国との関係強化を図り、両国からの更なる投資を呼び込むと同時、メキシコ製品の輸出増加を図る。
2.2015年予算案の提出
5日、2015年予算案(歳入法案、歳出案及びマクロ経済指標)が連邦下院に提出された。2015年の歳入額は、約4兆ペソ(約32兆円)、借入金を含めた合計額は約4兆7千億ペソ(約37兆6,000億円)と示され、うち税収額は歳入全体の約40%、メキシコ石油公社(PEMEX)の収益金等による石油関連収入が約25%を占めている。一方歳出額は、借入金を含めた歳入額とほぼ同額の約4兆7千億ペソが見込まれている。社会開発関係予算や教育関係予算が前年比2%程度の増額が見込まれている。
政府は本年2月に締結した税制安定協定の遵守により、2015年予算では、新規課税、既存税制の増税、税制優遇措置の廃止等を行わなかった。なお、来年の経済成長率は3.7%(2014年は2.7%)、インフレ率3.0%(同3.9%)、為替レートは13.0ペソ/ドル(同13.1ペソ/ドル)としている。
3.ハリケーン「オディール」による被害
14~15日にかけ、バハ・カリフォルニア・スル州を中心にハリケーン「オディール(Odile)」による被害が発生した。
【被害状況】
(1)バハ・カリフォルニア・スル州検察局の発表によると、21日までに、オアハカ州、バハ・カリフォルニア・スル州、ミチョアカン州にて5名の死亡が確認された。また、ヌエボ・レオン州で4名が死亡したとの一部報道もあり。
(2)外国人の死傷者に関しては、20日、在メキシコ英国大使館が、英国国籍45歳の男性及びその妻が行方不明の状態にあると発表。
(3)今回のハリケーン被害によって、ロス・カボス市及びラパス市において約7,000世帯が避難を余儀なくされた。
(4)17日、メキシコ保険協会(Asociacion Mexicana de Instituciones de Seguros)のアルバレス会長は、現時点で被害総額を算出するのは早計であるが、今回のハリケーン「オディール」による経済的被害総額は、総額120億ペソ(現在のレートで約1,000億円)が支出された客年のハリケーン「イングリッド」及び熱帯暴風雨「マヌエル」による被害総額を上回る規模になるであろうとコメントした。また、2,3週間後には、被害総額算定のための調査を開始する旨述べた。
【連邦政府の対応】
(1)ペニャ・ニエト大統領の現地視察
16日、ペニャ・ニエト大統領が、オソリオ内相、ビデガライ大蔵公債相とバハ・カリフォルニア・スル州を訪問。ペニャ・ニエト大統領は、18日にも復旧活動視察の目的で同州を訪問。
(2)連邦政府による経済対策
22日、ビデガライ大蔵公債相が今回のハリケーンで被害を受けた企業に対する以下の経済対策を発表した。
(ア)大企業、とりわけ観光セクターに属する企業に対し、国立貿易銀行(Banco Nacional de Comercio Exterior:BANCOMEXT)を通し、5億ペソまでの融資を実施。
(イ)中小企業に対し、国家起業家庁(Instituto Nacional del Emprendedor)を通じた低額融資(年利9.5%、最大200万ペソまで)を実施。この低額融資は、国家投資会社(Nacional Financiera)によって担保される。
(ウ)個人商店等の経営者に対しては、ハリケーン被害による損失を現金にて補填するための基金を設立(一事業者に対し、最大1万5,000ペソまで)。この基金は総額5千万ペソ相当になる見込み。
(エ)建築物再建のためにかかる税の100%控除。
(オ)所得税及び保険料の支払いを3ヶ月間延期。
(3)倒壊住宅への補助
また、22日、カルロス・ラミレス・マリン農地土地都市開発相が、ハリケーンによる被害を受けた住宅への支援を発表。被害の規模によって以下の支援が実施される。
(ア)ごく小規模な被害の場合、5,000ペソまで支援。
(イ)部分的被害の場合、8,000ペソまで支援。
(ウ)全壊による再建が必要な場合、12万ペソまで支援。
(4)観光客の避難
国防省、海軍省及び連邦警察が16日より所属航空機を使用した観光客(約3万人)の空輸を実施した。
(5)救援物資の配給
5万2,500個の生活必需品セット、2万7,000枚の毛布、15万リットルの飲料水を配給。
(6)治安対策
17日より、国家軍警察を含む連邦警察及び陸海軍がオペレーションを開始。とりわけ、略奪行為が発生しているロス・カボス市における治安維持に従事。
(7)他政府関係機関も避難所の運営、医療サービスの提供、瓦礫などの撤去作業、インフラの復旧活動などに従事している。
4. 独立記念日
メキシコ204回目の独立記念日に際し、15日深夜、ペニャ・ニエト大統領は慣例に従い、独立記念日の演説を大統領府バルコニーにて実施。翌16日、恒例の軍事パレードが実施された。
5.ゲレーロ州イグアラ市におけるアヨチィナパ教員養成学校生徒に対する襲撃事件
26日夜から翌日明朝にかけ、ゲレーロ州イグアラ市において、同州アヨチィナパ教員養成学校の生徒が乗ったバスが襲撃され、6名が死亡、20名が負傷、また43名の生徒が行方不明となる事件が発生した。同養成学校の生徒たちは、10月2日の「トラテロルコの大虐殺」記念日に毎年実施されているデモ活動に参加するため、メキシコシティに向かうところであった。
本事件は、イグアラ市警察並びに犯罪組織の関与が疑われており、ゲレーロ州政府及び連邦検察局による捜査が進められている。30日、ペニャ・ニエト大統領は会見を開き、本事件の犯人を強く批判すると同時に、ゲレーロ州政府に対し、本事件の真相解明に州政府が責任を取るよう求めた。また、連邦政府も本事件の真相解明のために関与する旨述べた。現在、同市の治安維持のために、メキシコ軍、連邦警察が同市に派遣されている。
30日、本事件を受け、アバルカ・イグアラ市長は30日間の休職を発表した。自身の休職の理由について同市長は、同事件の捜査の障害とならないためと説明した。その後、同市長は行方をくらましており、本事件との関与が疑われている。
6.人事
(1)第62期連邦議会2014-2015年上下両院新執行部他人事
1日の第62期連邦議会招集に際し、連邦上下両院議会の幹部人事が行われ、上院議長に民主的革命党(PRD)のルイス・ミゲル・ヘロニモ・バルボサ・ウエルタ議員、下院議長に同じくPRDのシルバーノ・アウレオーレス・コネホ議員が就任した。
(2)国民行動党(PAN)党首の交代
30日、国民行動党(PAN)のマデロ党首が党首職を90日間休職し、アナヤ同党幹事長が暫定党首に就任する人事が公表された。今回の休職は、来年の連邦下院議員選挙にマデロ党首が立候補するための処置。
7.治安情勢
(1)麻薬カルテルに関する連邦検察庁の情報公開
15日、連邦検察庁はメキシコ麻薬カルテルに関する報告書を公表し、現在メキシコにおいて9つの麻薬カルテルが活動し、そのうち7つの麻薬カルテルに関しては、計43の分派に分かれていることを認めた。また、これら麻薬カルテルの活動範囲は22州にまたがっている。
(2)犯罪組織「テンプル騎士団」首領「ラ・トゥタ」の肉親の死亡
19日、カスティージョ「ミチョアカンの治安及び統合開発のための委員会」コミッショナーが、犯罪組織「テンプル騎士団」首領セルバンド・ゴメス容疑者、通称「ラ・トゥタ」の兄弟、アキレス・ゴメス容疑者の遺体を発見したと発表した。アキレス容疑者は「ラ・トゥタ」の4人兄弟の一人であり、生存している「ラ・トゥタ」の兄弟、フラビオ容疑者、ルイス・フェリペ容疑者と共に、ミチョアカン州湾岸地帯並びティエラ・カリエンテ地方を縄張りとして活動する「テンプル騎士団」のリーダーの一人と見なされていた。なお、連邦警察は「ラ・トゥタ」と共に、フラビオ容疑者、ルイス・フェリペ容疑者の捜索も継続して行っている。
(3)連邦下院議員の殺害事件
22日、ゴメス・ミッチェル(Gabriel Gomez Michel)連邦下院議員(制度的革命党(PRI)所属、ハリスコ州選出)が地元ハリスコ州で何者かに連れ去られ、その深夜、隣接するサカテカス州において遺体として発見される事件が発生した。一部報道では本事件の犯人として、ハリスコ州を中心に活動する犯罪組織「カルテル・ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(Cartel Jalisco Nueva Generacion)」の名が挙がっている。本年8月3日、ハリスコ州アユタラ市において、ゴメス・トーレス同市長が殺害された事件にも同犯罪組織の関与が疑われており、同犯罪組織の存在がハリスコ州の治安の懸念事項となっている。
〈外交〉
1.ニュージャージ州知事の訪墨
3日から4日、クリス・クリスティン・ニュージャージ州知事が同州の企業関係者、同州政府関係者と共に訪墨した。投資の促進、経済・学術の分野での交流促進を目的とした今回の訪墨では、同州と墨外務省、教育省、国家科学技術審議会(CONACULTA)の間で、人材・学術・研究分野における協力に関する覚書が取り交わされた。
2.ミード外相のキューバ、パナマ、ニカラグア訪問
8日から10日、ミード外相はキューバ、パナマ、ニカラグアを訪問し、各国との2国間関係及び、本年12月にメキシコのベラクルス州で開催が予定されている第24回イベロアメリカ・サミットのアジェンダに関し、キューバ政府高官、サイン・マロ・パナマ外相、オルテガ・ニカラグア大統領らと会談した。
3.ミード外相のアリゾナ州フェニックス訪問
12日、ミード外相はアリゾナ州ファニックスを訪問。メキシコと同州の経済関係、学術交流の強化のため、同州の学者、市民団体らと会談した。
4.カザフスタン外相の訪墨
18日から20日、エルラン・イドソリフ・カザフスタン外相が訪墨。墨外務省幹部らと会談、両国間の政治的対話を強化し、経済面における協力を促進していくことで合意、これらのテーマに関する複数の覚書が取り交わされた。
5.ミード外相の米州機構総会への出席
19日、ミード外相は麻薬問題を議題とした米州機構第46期総会に出席するため、グアテマラを訪問。ミード外相は同総会において、米州機構加盟諸国は、国際的問題である麻薬問題に対し、米州大陸における現状を認識し、その有効な対策を打ち出すために、共に取り組む機会を有していると強調した。
6.ペニャ・ニエト大統領及びミード外相の第69回国連総会出席
(1)ペニャ・ニエト大統領
(ア)24日、ペニャ・ニエト大統領は国連総会一般討論演説を行い、メキシコの国連PKO活動への参加意志を表明した。なお、昨年は熱帯暴風雨被害対策のため欠席したため、国連総会への出席は本年が初めて。
【演説概要】
(a)国連は今日の世界にとって不可欠の存在となっている。飢餓、パンデミック、気候変動、児童の権利保護、文化遺産、女性のエンパワーメントや、国際の平和、グローバル経済の問題など、多様な国境をまたぐ課題が存在しており、その解決に向けた国際協力を結集できる場は国連しかない。
(b)他方、国連は、世界の全てのセクターの参加を得た、より効率的且つ透明性の高い組織に変わっていくことを求められている。国連はより良いものへと変革しなければならない。
機構改革という観点では、まず安保理が世界の新しいバランスを反映したより代表性の高い組織に進化しなければならない。我々としては、非常任理事国の数を増やし、連続再選可能なより長い任期の議席を創り、均等な地理的代表が確保されるべきと考える。また、今日の世界は、深刻な人権侵害に対して、常任理事国が拒否権を行使しない国連を求めている。
国際平和及び安全保障の観点からは、武器貿易条約により、我々は拡大する同問題に対処する道具を手に入れた。しかし、この条約に全ての国が署名し、そして批准することが不可欠である。メキシコは、同条約の第1回締約国会合を来年ホストする予定であり、武器貿易の問題に各国と協力していきたい。この他、テロとの闘いや軍縮を進める観点からも国連を強化していく必要がある。
開発の観点からは、持続的開発目標を定めるべき時が迫っている。ポスト2015開発目標は、貧困とは不十分な所得のみで判断すべきものではなく、個人もしくは集団の開発を阻害するその他の不足によっても判断すべきことを盛り込むべきである。また、我々は同目標の柱の1つとして、経済的社会的包摂を盛り込むべきと考えている。
(c)国連を改革すべきとの声は多数聞かれる。しかし、多くの人々は、誰も自らの立場を譲歩しないから、改革の実現は不可能であると信じている。メキシコも、近年まで同様の状況にあった。多くの者が構造改革の緊急性を指摘するものの、その実現は無理だと考えていた。しかし、我々はかかる変革が多様性の下でも可能であることを示した。我々は「メキシコのための協約」というコンセンサスを形成し、その下で教育、労働、寡占、通信、財政、エネルギー、政治・選挙制度、透明性という分野において、わずか20ヶ月の間に変革を実現してきた。
(d)このメキシコにおける改革の経験を踏まえて言えば、国連の改革は可能である。今こそ国連組織を改革する時なのである。メキシコは、この変革に積極的に参加し、国連と共に進化していく所存である。メキシコは、国連PKO活動を高く評価しており、同活動は紛争を克服し、再建支援、人道支援、治安維持支援を通じて、恒久的な平和を築くものである。この評価を踏まえ、今般、メキシコは、その人道活動に参加することを決定した。我々のPKO参加は、安保理の明確なマンデートに基づき、また、我々の憲法の諸原則に沿ったものになるだろう。メキシコは、この決定により、国際社会の責任あるアクターとして、国連に対するコミットメントで歴史的一歩を踏み出すことになる。
(イ)総会に加え、気候変動に関する首脳会議、先住民の権利と自由の保護に関する首脳会議、開かれた政府の同盟に関する首脳会議(10月に議長国就任)他に出席。
(2)ミード外相
総会に加え、安保理における拒否権の制限に関する閣僚級会合(共同議長)、太平洋同盟閣僚会議、太平洋同盟とASEAN閣僚会議、MIKTA外相会議他に出席。
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