政務班
2005年10月のメキシコの内政・外交の概要
 

<概要>
  内政では、ハリケーン・スタン及びウィルマが当国を襲い、南部の州を中心に甚大な被害を及ぼした。メキシコ政府は、速やかな初期支援活動を実施したものの、復興支援計画に関しては、各方面から批判が出た。
 また、各党の大統領候補選出のための動きが本格化し、与党PAN(国民行動党)はカルデロン元エネルギー相を大統領候補として選出した。一方、PRI(制度的革命党)の党内予備選に立候補していたモンティエル前メキシコ州知事は、自身の金融スキャンダルが影響し、出馬取り下げを発表した。
  外交では、トリホス・パナマ大統領がメキシコを公式訪問し、両国の経済関係強化に繋がる協定を締結した。また、第4回メキシコ−インド二国間委員会が開催され、各分野における協力関係推進が確認された。

<クロノロジー>
1日   メキシコ市、2006年の同市市長選の公示を2006年1月20日に修正。(内政)
1日   PRI(制度的革命党)、新事務局長としてロサリオ・グリーン元外相を任命。また、大統領候補選出のための党内予備選への立候補受付開始。(内政)
2日   ゲレロ州で州議会及び市町村首長選挙実施。いずれも、PRD(民主革命党)が過半数を獲得。(内政)
2日   PAN(国民行動党)の党内予備選第2ターム実施。カルデロン候補が勝利。23日、党内予備選第3ターム実施。カルデロン候補が58%を獲得し、総計結果でも51.6%と過半数を超えて、PANの大統領候補として選出される。26日、PAN、カルデロン候補の当選を正式に承認。(内政)
3日   レビィIMSS(社会保険庁)長官辞任。新長官にはフローレス労働省次官が就任。(内政)
4日   サパタPAN事務局長辞任。新事務局長にはエスピナ・メキシコ市議会議員が就任。(内政)
5日   メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)、全国国勢調査実施(〜29日)(内政)
5日   連邦下院、全会一致でINEGIの行政府からの独立を承認。連邦上院で審議へ。(内政)
5日   最高裁、エストラーダ・モレロス州知事に対する政治裁判は認めるが、裁判に際し、州知事職を辞する必要はないとの判決。(内政)
5日   ハリケーン・スタン、チアパス州、ベラクルス州及びオアハカ州を中心に甚大な被害。12日、フォックス大統領、「復興閣議」を設置。13日、フォックス大統領、被災地の知事は準備不足と批判。各方面から非難続出。(内政)
6日   治安省、メキシコ全国に約5000人のマラスが存在し、うち90%はチアパス州で活動していると発表。(内政)
7日   連邦下院、客年可決した増税に繋がる所得税法改正(2006年1月1日適用予定)を撤廃。(内政)
7日  大統領候補選出のためのPRI党内予備選への立候補登録締め切り。10日、モンティエル候補が出所不明の多額の現金を受け取っているとの報道。モンティエル陣営は、マドラソ候補が仕組んだものとして非難。13日、モンティエル候補、マドラソ陣営に対し、和解提案。20日、モンティエル候補、党内予備選への出馬を断念。(内政)
11日  連邦下院、本年度歳出予算の修正を可決。凍結予算の解除へ。(内政)
11日  IMSS労働組合員、昇給及び年金法案改正要求のストライキ実施時期を巡り、組合側と対立。道路を封鎖し、メキシコ市内の交通が混乱。メキシコ市治安部隊により強制排除。14日、IMSS労組、昇給提案を受け入れ。ゼネスト回避。(内政)
11日  ロペス・オブラドール前メキシコ市長、大統領選挙の選挙顧問団を発表。(内政)
11日  トリホス・パナマ大統領、メキシコを公式訪問(〜12日)。フォックス大統領と会談及び投資相互保護協定締結を実施。(外交)
12日  連邦下院、IMSS年金法の改正案を否決(内政)
12日  カスタニェダ前内相、「党に所属していないことを理由に大統領選に出馬出来ないのはOAS(米州機構)条約の人権規約違反」としてOAS人権委員会へ提訴。17日、OAS人権委員会、カスタニェダ前内相の訴えを認め、(IFE)連邦選挙機関に対し、立候補を認めるよう勧告。18日、IFE及び内務省、本件の帰属先を巡り混乱。28日、IFE、カスタニェダ前内相の立候補は、法的根拠に基づき認められないと決定。(内政)
12日  デルベス外相、スペインを訪問(〜14日)。13日、イベロアメリカ・サミット外相会談に出席。(外交)
13日  カベサ・デ・バカPGR(連邦検察庁)長官、ゴンサレス米司法長官と会談。メキシコ−米国国境地域警備の協力関係強化に合意。(内政・外交)
13日  アバスカル内相、ロペス新国家安全調査局(CISEN)長官を任命。(内政)
13日  フォックス大統領、スペインを訪問(〜15日)。イベロアメリカ・サミットに出席。14日、サミットにおいて、スタンによる中米被災地域への援助要請及び自然災害基金設立提案。(外交)
14日  サラサール労相、公共機関労組の改革可能性を示唆。17日、民間企業団体、公共機関労組の年金改革を要求。(内政)
18日  政府に関する汚職調査国際機関「トランスペアレンシー・インターナショナル」、メキシコの汚職清潔度を159カ国中65位と発表。19日、大統領府、引き続き汚職対策に努めると明言。(内政)
18日  連邦政府、鳥インフルエンザ対策として、米国からの鶏肉輸入を禁止。(内政)
18日  デルベス外相、イタリアを訪問(〜19日)。「第2回中南米会議」出席。(外交)
19日  サトウキビ生産者、通称「サトウキビ法(Ley Canera)」の施行を求め、農牧省周辺を封鎖。20日、農牧省側と合意。(内政)
20日  連邦下院、PEMEX(メキシコ石油公社)の資金枠組み修正案を可決。(内政)
20日  連邦下院大蔵委員会、タバコへの増税案を可決。PAN所属議員が、タバコ製造会社に買収されているとの疑惑噴出。26日、連邦下院、収賄に関する調査委員会設置。27日、連邦下院、タバコ増税案を否決。(内政)
20日  インドにおいて、第4回メキシコ−インド二国間委員会開催(外交)
21日  ハリケーン・ウィルマ、ユカタン半島に上陸(〜23日)。キンターナ・ロー及びユカタン州に甚大な被害。27日、フォックス大統領、モラトリアムを中心とした被災地復興支援計画発表。28日、主要各紙、キンターナ・ロー州で救援物資が、PRIの選挙活動用に使われていると報道。29日、エリソンド観光相、同州政府及び当該市町村長の対応を批判。(内政)
21日  メキシコ政府、ハイチ政府の要請に応え、選挙実施の支援を行うと発表。(外交)
24日  カルデロンPAN大統領候補、ゴルディージョ前PRI事務局長と会談。25日、カルデロン候補、ゴルディージョ会派との選挙協力を否定。(内政)
25日  連邦上院、旅行者に対する付加価値税(IVA)還付法案可決。官報への掲載を求め、行政府へ提出。(内政)
26日  デルベス外相、米国を訪問(〜28日)。(外交)
27日  連邦下院、2006年度歳入予算案を可決。連邦上院へ提出。(内政)
27日  連邦選挙裁判所、全候補者、政党ともに外国における選挙活動は出来ないと判断。(内政)
28日  連邦政府、「ローマ規程」批准書を国連へ寄託(国内での発効は2006年1月1日)。(外交)
31日  メキシコ市において、「メキシコ、中米統合機構(SICA)及びコロンビア外相会談」開催。石油価格高騰への対応について協議。(外交)

<内政>
1.ハリケーンによる被害拡大
(1)3〜6日、チアパス、ベラクルス、オアハカ州を中心に、ハリケーン・スタンが猛威をふるい、死者は一部報道で100人を超えた。被災者の数も175万人に上り、フォックス大統領は「復興閣議」の設置及び自然災害基金から約250億ペソを拠出する旨発表した。政府は、10月半ばまでに幹線道路修復を完了させると発表したが、チアパス州やベラクルス州では未だに交通網が寸断された状態にある。
(2)更に、21〜23日、大型ハリケーン・ウィルマがキンターナ・ロー及びユカタン州を襲った。連邦政府が予め両州で観光客や地元住民を非難させたため、死者数は12人と少なかったものの、深刻な物的被害を被った。カンクン地域のホテルの95%に被害が出ており、全壊したものもある。電気、水道及び電話は全て不通となり、24日から開始された復興活動で徐々に回復してきているものの、連邦電力委員会(CFE)は、被災地域における電気の完全復興には6週間かかるとの試算を発表した。
   23日、被災地を訪れたフォックス大統領は、復興資金として自然災害基金から120億ペソを拠出すると発表した。更に、観光振興基金から1000万ドルを復興資金に充てるとしている。一方、カンクン・ホテル協会は、大統領に対し、米州開発銀行及び世界銀行にホテル地区修復分として5億ドルの緊急貸付要請を行うよう申し入れた。
(3)27日、フォックス大統領は、本年10月〜12月分の所得税納入猶予などのモラトリアムを中心としたカンクン地域復興支援計画を発表した。大統領は、観光シーズンが始まる12月15日までに80%以上修復が完了することを目標に掲げ、観光業関係者への支援の条件として雇用の確保を要請し、同地域のホテル協会代表等もこれを受諾した。
   一方、スタンによる被災地域及び連邦議会からは、メキシコ経済の重要な収入源となっているカンクンの復興を優先し、貧しいチアパス州やベラクルス州が後回しになっているとの批判も出た。

 

2.大統領候補選出のための党内予備選を巡る各党の動き
(1)PRI(制度的革命党):モンティエル候補の出馬取り止め
(イ)10日、モンティエル前メキシコ州知事及びその家族に対する不正資金授受の疑惑が大々的に報じられ、大蔵公債省及び連邦検察庁(PGR)も捜査に乗り出す見込みとも伝えられた。捜査の可能性に関して、PGR側は否定したが、モンティエル候補は、同報道はPRI党内候補として支持を伸ばしている彼の追い落としを計るために、対抗馬であるマドラソ前PRI党首が仕組んだ陰謀だと非難し、マドラソ候補がそれに反論するという泥仕合の様相を呈していた。
(ロ)20日、モンティエル候補は、2006年の大統領選挙の候補を決定するPRI党内予備選への出馬取り止めを発表した。出馬を辞退するにあたり、同候補は「非常に難しい決断だったが、私にとって最も誇り高い、また党の将来にとっては最も有益な判断だと思う」と述べる一方、同スキャンダルは、彼の弱体化を図り、彼自身の尊厳及び家族を傷つけるものだったと批判した。
(ハ)モンティエル候補が出馬を取り下げたことで、党内からはモレノ前下院議員も出馬を辞退すべきとの声があがったが、モレノ候補は絶対に出馬を取り下げないとの強硬姿勢を貫いている。
   また、党内には、モンティエル候補の代わりとして「第3の候補」擁立を計画する動きも出ている。
(2)PAN(国民行動党):大統領候補決定
(イ)23日、与党PAN(国民行動党)は、次期大統領選挙の候補選出のための党内予備選第3タームを行い、カルデロン元エネルギー相が58%を獲得、第1、第2タームの結果と合計した総得票率でも51.6%となり、当選が確定した。クリール前内相は、第3タームの得票率24.1%、総計で31.9%に留まり、潔く敗北を認めた。
(ロ)26日、PAN中央執行部は、カルデロン元エネルギー相を党の大統領候補として正式に承認した。また、対抗馬であったクリール、カルデナス両候補は、2006年の上院議員選の候補として擁立する予定である旨発表した。

 

<外交>
1.トリホス・パナマ大統領のメキシコ訪問
11〜12日、トリホス・パナマ大統領は、メキシコを公式訪問し、フォックス大統領との首脳会談を行った。両国首脳は、今回訪問で、投資相互保護協定が締結されたことの重要性を強調し、更に、二重所得課税防止協定に関する交渉開始を歓迎した。また、メキシコ及び中米諸国で深刻な問題となっているマラス(Maras)対策のために、両国が社会経済的観点を含む包括的アプローチをとっていくことを約束した。

 

2.デルベス外相のイタリア訪問
18〜19日、デルベス外相はイタリアを訪問し、ミラノで開催された「第2回中南米会議」に出席した。また、同地でマッシモ・ダレマ元首相(左翼民主党)と会談した。
更に、ローマにおいて、スカヨーラ生産活動相と会談、メキシコ−EU自由貿易協定の下、メキシコ−イタリア両国の経済関係を更に活性化することに合意した。そして、フィーニ外相との会談では、国連改革に関し、両国の目的・利害が一致していることを確認した。

 

3.第4回メキシコ−インド二国間委員会開催
20〜21日、インドのニューデリーにおいて、第4回メキシコ−インド二国間委員会が開催され、メキシコ側はアランダ外務次官を団長とし、各省庁代表で構成される代表団がインドを訪問した。
委員会において、両国政府は、政府間対話を一層強化し、両国間の貿易・投資・経済協力を促進するために、各分野で協力していくことで合意した。また、国際場裡において、引き続き協力していくことを確認した。

 
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