政務班
2006年10月のメキシコの内政・外交の概要
 

<概要>
内政では、オアハカ州におけるオアハカ人民会議による抵抗運動がメキシコ・シティまで活動の場を広げ、内務省との協議が難航する中、教職員組合の一部が授業再開を決めるなど、内部での分裂が見られた。また、アメリカ人カメラマン殺害等の事態を重く見た連邦政府が連邦予防警察を投入しオアハカ市中心部周辺を奪回するなど、活発な動きがあった。
また、タバスコ州知事選挙が行われ、同州出身のロペス・オブラドール元大統領候補(以下、AMLO)が積極的に活動したにも拘らず、民主革命党(PRD)の候補は制度的革命党(PRI)候補に敗れた。
外交では、カルデロン次期大統領が中南米9カ国及びカナダを外遊した。また、米国の墨米国境における監視壁設置法案の通過を受け、国内では批判が噴出した。

 

 

<クロノロジー>
1日  AMLO、空軍機によるオアハカ上空偵察を挑発行為と非難。APPOも挑発行為の自粛を要請。2日、フォックス大統領、オアハカ州関係者が和解しなければ違法行為として扱う旨発言。5日、アバスカル内相、APPO及び教職員組合に対し、州の検察長官、政府警察及び市警察の職と引き換えにオアハカ市を引き渡し、その間のオアハカ市の治安は連邦予防警察が取り締まるという解決案を提示。7日、オアハカ教職員組合、内務省の提案(連邦の権限で反ルイス知事派の殺害事件調査)を拒否し、あくまでルイス知事の辞任を要求。8日、APPO及び教職員組合、メキシコ市に到着し上院前にテント設営。内務省に対案提示せず態度硬化。12日、上院、オアハカ州の三権消滅に否定的見解。教職員組合、上院の決定が出るまで授業は再開しないことを確認。16日、APPO関係者、DFでハンスト開始。20日、授業への復帰を巡り教職員組合分裂。アバスカル内相、内務省によるルイス知事罷免の可能性を否定。23日、ゲレロ州の武装グループ、政府がオアハカの運動を押さえ込むようなら武力に訴えると警告。26日、教職員組合、条件付きの授業復帰を決定し、内務省に通報。27日、オアハカで武力衝突、アメリカ人カメラマン含む3人が死亡。教職員組合及び内務省、APPOに対し早急な対話を呼びかけ。28日、国連、オアハカ情勢を非難。対話を促す。29日、連邦政府、連邦予防警察(PFP)を投入し、オアハカ中心部を回復。30日、上・下院、ルイス知事の退任を呼びかけ。米国、国民のオアハカ渡航自粛を求める。31日、オアハカ渡航自粛要請、カナダや欧州など含め計7カ国が発出。(内政)
2日  カルデロン次期大統領、初の外遊(中南米9カ国訪問)に出発(〜6日)。(外交)
2日  外務省、外交ルートを通じアメリカに国境壁建設法案採択の自粛を要請。3日、カルデロン次期大統領、米国の国境壁建設非難に関し、ラ米9カ国の支持を得る。5日、フォックス大統領、どんな壁もメキシコ国民を分かつ事はできないと発言。7日、フアレス市の司教、米国の壁建設への対抗策として貿易ボイコットを提唱。24日、メキシコとカナダの国会議員、米国の国境監視壁建設を拒絶。25日、OASにおいて米国の墨米国境監視壁建設に憂慮する宣言発表。26日、米国、墨米国境監視壁建設法案通過。フォックス大統領は「恥ずべき事」と非難、カルデロン次期大統領やセディージョ前大統領、外務省も非難のコメント発表。(外交)
2日  カルデロン次期大統領、ゴンサレス元スペイン首相と会談。(外交)
4日  カルデロン次期大統領、コロンビアからの麻薬対策支援要請を受諾。(外交)
4日  第8回在外メキシコ人に関する定例諮問理事会開催。(外交)
4日  メキシコ及びトリニダード・トバゴ、投資相互促進・保護協定締結。(外交)
5日  野党議員に対し「くそったれ(a la chingada)」とセルメーニョ下院議長が発言したことを機にPAN・PRI関係緊張化。(内政)
5日  メキシコ及び欧州委員会、メキシコにおける科学技術支援につき合意。(外交)
5日  メキシコ政府、北朝鮮の核実験実施宣言を憂慮する声明を発表。9日、メキシコ政府、北朝鮮の核実験実施に対する非難声明発表。(外交)
9日  フォックス大統領、グアテマラを訪問し、プエブラ−パナマ計画(PPP)の一部である道路の起工式等に出席(〜10日)。(外交)
10日  カルデロン次期大統領、プラン2030を打ち上げ、長期的視野での政策作りを宣言。また、就任までの給料返納を明言。(内政)
11日  連邦検察庁、米国の要請に応じ国内のヒズボラ資金網を調査。(外交・治安)
13日  カリブ地域におけるCTBT促進セミナーを主催。(外交)
13日  メキシコ政府、潘基文韓国外交通商部長官の次期国連事務総長就任を歓迎。(外交)
15日  タバスコ州知事選、PRI候補がPRD候補に10ポイントの差をつけ勝利。PRD候補は選挙裁判所への提訴を検討。(内政)
16日  カルデロン次期大統領、大蔵公債大臣にカルステンスIMF副専務理事を内定。(内政)
19日  メキシコ及びアラブ連盟、開発協力基金を立ち上げ。(外交)
20日  カルデロン政権移譲チーム、フォックス政権の外交政策を批判。カルデロン次期大統領、ブッシュ大統領との会談で国境の壁につき話し合う事を明言。(外交)
23日  メキシコとカナダの国会議員、北米議会設立に向け協力していく事を決定。(外交)
23日  下院の主要三党(PAN、PRI、PRD)議員、州知事の給料削減を要求。(内政)
26日 カルデロン次期大統領、カナダを訪問(〜27日)。ハーパー首相とエネルギー問題等につき会談。(外交)
27日  メキシコ・インド間でビジネス委員会設立。(外交)
31日  外務省、ポルティージョ元グアテマラ大統領の引渡しを了承。(外交)
31日  下院、新しい連邦選挙裁判所判事5名を選出、1名については継続審議。(内政)

 

 

<内政>
1.オアハカ情勢
(1)ルイス州知事の辞任を求めオアハカ市からメキシコ市への行進を続けていたオアハカ人民会議(APPO)及び教職員組合のグループは、8日にメキシコ市に到着した。内務省との協議も引き続き行われたが、具体的な結論には至らず、一方で州知事の罷免権限を有する連邦上院も州の三権消滅を決定することはなく、交渉は難航した。
(2)かかる状況の下、教職員組合の一部がAPPOからの決別及び授業再開の検討を始め、組合内部での意見の相違はあったものの、一部は一定の条件の下での授業再開を決定し、APPOもこの判断を尊重する旨発表した。
(3)一方、27日にオアハカ市で武力衝突が起こり、フリーのアメリカ人カメラマンを含め少なくとも3人が死亡する事件が起き、事態を重く見た連邦政府は、同日連邦予防警察(PFP)の投入を決定し、PFPは29日、オアハカ市の中心部であるソカロ周辺をAPPOから奪回した。APPOとPFPの衝突が続く状況を受け、30日にはアメリカが、また31日にはその他6カ国が、オアハカへの渡航自粛を呼びかける危険情報を発出して警戒を呼びかけた。

 

2.タバスコ州知事選挙
(1)15日にタバスコ州知事選挙が行われ、制度的革命党(PRI)のアンドレス・グラニエル・メロ候補(元ビジャエルモサ市長)が投票の約53%を獲得し、民主革命党(PRD)のセサール・ラウル・オヘダ・スビエタ候補に10ポイント近くの差をつけて勝利した。
(2)同州はAMLOの地元に当たるが、PRD側は候補擁立に際し、当初一部伝統派が反発してPRI候補の応援に回るなど、AMLOがメキシコ市における大統領選挙結果への不服抗議運動を終了して同州へ戻るまでは分裂状態が続いていた。AMLOの地元入りでPRD内の分裂は収束し、巻き返しを図ったものの、PRI候補を破ることはできなかった。

 

 

<外交>
1.カルデロン次期大統領の中南米・カナダ外遊
(1)カルデロン次期大統領は、2日〜6日まで中南米7カ国(グアテマラ、ホンジュラス、コロンビア、ペルー、チリ、ブラジル及びアルゼンチン。なお、ホンジュラスにてコスタリカ及びニカラグアの首脳とも会談)を、26〜27日までカナダを訪問した。ブラジル訪問の際には両国の石油国有会社であるPEMEXとペトロブラス社間の開発協力を取り付けた。
(2)一方、カナダ訪問中はハーパー加首相と会談し、エネルギー問題等につき話し合った。また、両国首脳は、26日に米国で墨米国境地帯における監視壁建設法案が通過したことにつき、共同で非難した。

 

2.米国の墨米国境地帯における監視壁建設
(1)法案通過以前よりフォックス大統領を始めとしてメキシコ側は、米国政府が墨米国境地帯に監視壁を建設することの自粛を要請し、また米国共和党政権の中間選挙対策法案であり、移民問題を根本的に解決しないとして、米国の動きをけん制してきた。
(2)26日、米国で実際に法案が通過すると、フォックス大統領を始めとするメキシコ政府要路は、今次法案通過は恥ずべき行為であり、監視壁を建設するよりも米国の移民政策の見直しが先決である旨述べるなど、一斉に米国を非難した。

 
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