政務班

2006年12月のメキシコの内政・外交の概要

 

<概要>
内政では、メキシコ史上初となる大混乱の中、カルデロン新大統領が就任した。来年度予算審議については、大統領就任式の混乱を受け、難航するとの悲観的見方が強かったものの、主要3党間での合意が形成され、スムーズに予算が成立した。カルデロン新大統領は、就任直後に「連邦政府の歳出における引き締め条令」公布やミチョアカン州への治安部隊投入など、積極的に活動し、新しい政府を印象づけようとしている。
11月まで混乱を続けたオアハカ情勢に関しては、オアハカ人民会議(APPO)幹部の逮捕もあり、混乱が予想されたが、APPO側は断続的に内務省との対話を継続しており、沈静化した状況を保っている。
外交については、政権交代及び月半ばからクリスマス休暇に入ったこともあり、目立った動きはなかった。

 

 

<クロノロジー>
1日   大統領就任式。PAN(国民行動党)及びPRD(民主革命党)による連邦下院本会議場占拠が解消されないまま式典決行。大統領就任演説もなく4分間で終了。その後、カルデロン新大統領は国立公会堂におけるPAN主催記念式典で演説。大統領就任式には、我が国から中川特派大使が出席。(内政・外交)
1日   ロペス・オブラドール元大統領候補、カルデロン新大統領の正統性を認めないとして、ソカロ(憲法広場)からレフォルマ通りをデモ行進。大きな混乱なし。(内政)
1日   フォックス大統領の最終支持率、67%(「エル・ウニベルサル」紙)、61%(「レフォルマ」紙)。(内政)
3日   カルデロン大統領、「連邦政府の歳出における引き締め条令」公布を発表。4日、同条令官報掲載、発効。(内政)
4日   連邦予防警察(PFP)及び連邦調査機関(AFI)、オアハカ人民会議(APPO)の幹部4人を逮捕。うちAPPOの指導者的立場にあるフラビオ・ソサを「アルティプラノ」刑務所へ移送、収監。APPO側は即時釈放を要求するも、政府との対話は継続。(内政)
5日   メキシコ政府、2007年度予算案を立法府に提出。21日、歳入予算案両院通過。23日未明、連邦下院、歳出予算案を可決。連邦政府、27日に歳入予算、28日に歳出予算を官報へ掲載。(内政)
5日   エブラール新メキシコ市長就任。(内政)
8日   PFP、オアハカ市の治安を掌握。州警察を支配下におき、州検察も捜査。(内政)
8日   「国境なき記者団」、メキシコはイラクに次いでジャーナリストに危険な国との報告を発表。(内政・治安)
8日   第2統一裁判所、「トラテロルコの虐殺」に関するエチェベリア元大統領への尋問を、健康上の理由から延期。(内政)
11日  カルデロン大統領、麻薬組織絡みの犯罪が最も深刻になっているミチョアカン州に、軍を含む7,000人強の治安部隊派遣を決定。(内政・治安)
21日  メキシコ・チリ戦略的連携協定発効。(外交)
27日  連邦選挙裁判所、タバスコ州知事選挙の結果を承認。(内政)
28日  PANのアグアスカリエンテス州支部、「党利に反する行動が多い」として、レイノソ同州知事及びその側近の党除名を要請。(内政)
31日  2006年の麻薬組織絡みの「処刑」被害者数、2,100人を突破。(内政・治安)

 

 

<内政>
1.大統領就任式を巡る混乱
(1)11月30日午後11時50分過ぎより、フォックス大統領及び同政権閣僚とカルデロン新大統領及び新政権閣僚は、大統領官邸において大統領綬の受け渡し式を行った。連邦下院における大統領就任式前に、大統領綬の授受を実施するのは前例がなく、当地メディアは、就任式会場となる連邦下院本会議場が11月28日からPAN(国民行動党)及びPRD(民主革命党)議員に占拠されている状況が続く中、既成事実を作ろうとの意図があるとの見方を示した。カルデロン新大統領は、全国放送を通じ、就任後初めての演説を行った。
(2)12月1日、PAN及びPRD議員による占拠状況が解消されないまま、大統領就任式当日を迎えた。6,000人以上の治安部隊が連邦下院を警備する厳戒態勢の中、カルデロン新大統領はフォックス大統領と共に本会議場に入場し、直ちに宣誓を行った。PRD議員の怒号が乱れ飛ぶ中、通常行われる大統領就任演説もなく、宣誓、大統領綬の授受、及び国歌斉唱を合わせ、僅か4分間の式典であった。
(3)その後、カルデロン新大統領は、国立公会堂における与党PAN主催の大統領就任記念式典、カンポ・マルテ軍野外演習場における軍事パレード、支援者との昼食会、及び外国政府代表との晩餐会の一連行事をこなした。
大統領就任式及び大統領主催晩餐会には、我が国から中川秀直特派大使が出席した。
(4)一方、カルデロン新大統領の正統性を認めないロペス・オブラドール元大統領候補は、1日、ソカロ(憲法広場)に集まった支持者を前に、選挙で不正が行われたとの従来からの主張を繰り返した。その後、カルデロン新大統領就任記念式典を妨害するため、約1万人の支持者と共にレフォルマ通りをデモ行進し、国立公会堂へ向かった。しかし、国立公会堂があるチャプルテペック公園一帯は厳戒態勢が敷かれており、会場までは辿り着けず、公園入り口で集会を行うに留まった。特に大きな混乱はなかった。

 

2.「連邦政府の歳出における引き締め条令」公布
3日、カルデロン新大統領は、「連邦政府の歳出における引き締め条令(Decreto de Austeridad en los gastos del Ejectivo Nacional)」公布を発表した。同条令は、4日に官報に掲載され、発効した。本条令は、大統領及び閣僚を含む連邦政府高官の給与10%削減などが盛り込まれており、カルデロン大統領の試算によれば、本条令執行により、2007年度は255億ペソ程度の節約になる。但し、大臣を除く軍高官は、本条令の対象外となる。

 

3.オアハカ人民会議(APPO)幹部の逮捕
4日、連邦予防警察(PFP)及び連邦調査機関(AFI)は、オアハカ人民会議(APPO)の幹部4人を逮捕し、うち同組織の指導者的立場にあるフラビオ・ソサを、最厳戒態勢を敷く「アルティプラノ」刑務所へ移送、収監した。APPOを形成するオアハカ州教職員組合側は、フラビオ・ソサらの即時釈放を要求したが、逮捕される直前にソサ自ら発表した内務省との会談再開中止は発表しなかった。
なお、5日以降、内務省とAPPOとの対話は断続的に続いているが、カルデロン新政権側は、あくまで「対話(dialogo)」であり「交渉(negociacion)」ではない、との立場を貫いている。

 

4.2007年度予算成立
(1)23日未明、連邦下院は2007年度歳出予算案を可決し、21日までに連邦両院を通過していた来年度歳入予算案と合わせ、2007年度予算が成立し、行政府に送られた。歳入予算総額は約2兆2604億ペソ、PEMEX(メキシコ石油公社)の原油販売基準価格は、1バレルあたり42.8米ドルとされた。一度下院で可決された清涼飲料水への5%の課税については、上院で否決され叶わなかった。歳出予算については、PRI(制度的革命党)は主に主要高速・幹線道路整備などのインフラ整備、PRDは70歳以上の高齢者に対する年金支給に関し予算を主張し、最終的に与党PANを含む主要3党間での合意が形成され、ほぼ全会一致で予算が成立した。
(2)26日、カルデロン大統領は予算成立を歓迎する旨表明し、27日に歳入予算、28日に歳出予算が官報に掲載された。

 
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