政務班
2006年7月のメキシコの内政・外交の概要
 

<概要>
 内政では、6ヶ月に亘る選挙戦を経て2日、大統領選挙が行われ、カルデロン候補とロペス・オブラドール候補の差が僅か0.58%と、メキシコ史上最も接戦となった。ロペス・オブラドール候補は、連邦選挙裁判所に対し、選挙結果に対する不服を申し立て、全票数え直しを要求して、30日には、メキシコ市の目抜き通りであるレフォルマ通りにおける座りこみを開始した。レフォルマ通り通行止めのために、交通は混乱し、市民から非難の声が高まっているが、解決の目途は立っていない。
 外交では、フォックス大統領がG−8サンクトペテルブルク・サミットのアウトリーチ会合に出席した。ルーラ・ブラジル大統領とのバイ会談において、メキシコのメルコスール正式加盟について話し合いが持たれたとされ、期待されたものの、デルベス外相が出席した第30回メルコスール会合の共同コミュニケでは、具体的な言及はされなかった。

 

 

<クロノロジー>
1日   メキシコ外務省、故橋本元総理大臣への弔意を表すプレス・コミュニケ発表。(外交)
2日   大統領選挙及び連邦上下院議員選挙実施。同時に1市9州において地方選挙実施。連邦選挙機関(IFE)、僅差を理由にクイック・アカウントの結果を公表せず。カルデロンPAN(国民行動党)大統領候補、ロペス・オブラドール「全ての者の利益のための連合(CPBT)」大統領候補共に勝利宣言。3日、マドラソ「メキシコのための連合(APM)」大統領候補、敗北宣言。5日、IFE、全300カ所の選挙区において、票の集計結果票の照合作業開始。6日、照合作業終了。IFE、カルデロン候補の得票率1位を発表。8日、ロペス・オブラドール候補支持者、全票数え直しを求め第1回目のデモ行進及び集会(約20万人)、9日、同候補陣営、連邦選挙裁判所へ不服申し立て。11日、連邦選挙裁判所、不服申し立て受理件数を355件と発表。16日、ロペス・オブラドール候補支持者、第2回目となるデモ行進及び集会(約100万人)、3つの行動指針発表。30日、同候補支持者、第3回目のデモ行進及び集会(約100万人)。「平和的市民抵抗運動」として、ソカロ(憲法広場)及びレフォルマ通りにおける座りこみを発表。即日実行。31日、レフォルマ通り通行止めの影響で、メキシコ市の交通は大混乱に。(内政)
4日   メキシコ政府、世界遺産保護及び文化的表現の多様性に関する2つの協定を批准し、UNESCO事務局に寄託(メキシコ外務省は16日付のプレス・コミュニケで発表)。(外交)
7日   米国不法移民に対する「2006年、自発的本国送還プログラム」開始。(外交)
8日   第15連邦刑事裁判所、大量虐殺容疑で自宅軟禁状態にあったエチェベリア元大統領の釈放(自宅軟禁解除)決定。特別検察側は上告の意向。(内政)
11日  フォックス大統領、第8回トゥクストラ・サミット出席のためパナマを訪問。共同宣言を採択。(外交)
13日  PRI(制度的革命党)、他党設立及びマドラソ同党大統領候補への妨害行為があったとして、ゴルディージョ前事務局長の追放を決定。(内政)
14日  フォックス大統領、サンクトペテルブルク・サミットのアウトリーチ会合出席のため、ロシアを訪問(〜16日)。(外交)
16日  メキシコ外務省、イスラエル軍によるレバノン空爆開始に伴い、レバノン在住メキシコ国民の避難等について検討。19日、レバノンからの退避開始。26日、デルベス外相、在メキシコ・レバノン・コミュニティ代表と会談。同日、当国有識者、主要紙にイスラエル軍による攻撃即時停止を求める広告を連名で掲載。これに対し、在メキシコ・イスラエル大使、「間接的にイスラム・テロリストを支援する行為」と激しく非難。27日、メキシコ外務省、イスラエル大使の行為は行き過ぎであると批判するも、外交書簡発出は否定。30日、イスラエル軍による空爆で多数の民間人が死亡したことを非難するプレス・コミュニケ発出。(外交)
17日  フォックス大統領、スペインを訪問(〜19日)。移民と開発に関するイベロアメリカ会合開会式に出席。サパテロ西首相、フアン・カルロス西国王と会談。(外交)
17日  フォックス大統領、G−8サンクトペテルブルク・サミットの場で、ブッシュ米大統領より「本年度中の移民法改正は難しい」との発言があった旨コメント。18日、前日の発言と全く逆の発言。スノウ米大統領報道官、「ブッシュ大統領は、移民法改正を出来るだけ早く行いたい旨発言した。フォックス大統領は聞き間違えをしたのだろう」とコメント。(外交)
20日  デルベス外相、第30回メルコスール会合出席のためアルゼンチンを訪問(〜21日)。バスケス・ウルグアイ大統領、ルーラ・ブラジル大統領と会談。21日、ルーラ大統領の話として、「メキシコは11月30日までにはメルコスールに加盟出来る見込み」との談話を発表(但し、当国外務省からのコミュニケ及びメルコスールの共同コミュニケに本件に関する言及は出ていない)。(外交)
27日  メキシコ外務省、カナダ政府に対し、横領罪の容疑がかけられているゴメス前メキシコ全国鉱山業、冶金業及び系列産業労働組合長の逮捕及びメキシコ送還を要請。(内政・外交)

 

 

<内政>
1.大統領選挙及び選挙後の動き
(1)2日、大統領選挙が実施され、有権者の約58.6%にあたる4,100万人以上が投票した。選挙は平穏裡に行われ、国内外のオブザーバーも公平な選挙であったと評価した。また、今回が初となる在外投票は、投票総数3万票強に留まった。
(2)選挙自体は、カルデロンPAN(国民行動党)大統領候補と、ロペス・オブラドール「全ての者の利益のための連合(CPBT)」(以下AMLO)候補の差が1%未満の接戦となり、2日夜の時点では、クイック・アカウントが僅差のために発表出来なかった。しかし、両候補とも、「勝利宣言」を行った。
一方、開票速報の結果で、上位2候補に大きく水をあけられたマドラソ「メキシコのための同盟(APM)」候補は、3日、敗北宣言を行った。他2候補も、事実上敗北を認めた。
(3)5日から連邦選挙機関(IFE)による選挙結果集計票の照合作業が始まると、AMLO陣営は、IFEによる選挙運営の不備を指摘し、集計票の確認だけでなく、全票の数え直しを要求した。しかし、その要求が認められないまま、照合作業が終了し、カルデロン候補の得票1位が発表されると、選挙不正を訴え、連邦選挙裁判所への不服申し立てを宣言し、9日、提訴を行った。
(4)AMLO候補陣営は、8日、16日及び30日に全票数え直しを求め、大規模デモを組織し、第2、3回目のデモには約100万人の支持者が参加した。AMLO候補は、「全票数え直しを行った上で、カルデロン候補が勝利すれば、それを認める。カルデロン候補は、自分が勝ったと思うならば、全票数え直しを承認すべき」との主張を繰り返したが、カルデロン候補側は、判断はあくまで連邦選挙裁判所が下すとする態度を崩していない。この状況を受け、第1、2回目のデモにおいて「道路封鎖はしない」としていたAMLO陣営は、カルデロン候補へ圧力をかけるため、30日よりソカロ(憲法広場)及びメキシコ市の目抜き通りであるレフォルマ通りにおける座りこみ行動に入った。レフォルマ通りが通行止めになったことに伴い、メキシコ市の交通は混乱し、市民から非難の声が高まっているが、AMLO候補は「全票数え直しが認められるまで、座りこみを止めるつもりはない」旨発言し、解決の目途は立っていない。
(5)6日IFEが発表した大統領選挙結果は以下の通り(主要3候補のみ)。
・カルデロン候補:15,000,284票 (35.89%)
・AMLO候補:14,756,350票 (35.31%) (両者の差0.58%)
・マドラソ候補:9,301,401票 (22.26%)

 

2.連邦上下院議員選挙結果
(1)2日、大統領選挙と同時に、連邦上下院議員選挙が行われ、両院共にPANとPRD(民主革命党)が大幅に議席を伸ばす一方、PRI(制度的革命党)は遂に連邦下院で第3党に甘んじる結果となった。
(2)各院における主要3党の暫定議席配分は以下の通り(正式な結果は連邦選挙裁判所の判断後)。
(イ)連邦上院(全128議席)
・PAN 52議席
・PRI 33議席
・PRD 29議席
(ロ)連邦下院(全500議席)
・PAN 206議席
・PRD 127議席
・PRI 103議席

 

3.地方選挙結果
 2日、国政選挙と併行し、1市9州で地方選挙が実施された。メキシコ市、グアナファト、ハリスコ及びモレロス州においては、市長・州知事選挙が行われ、いずれも現職と同党出身候補が当選した(メキシコ市はPRD、他の3州はPAN)。PANの票田であったモレロス州の知事選は、予想に反し接戦となり、PRDの躍進が目立つ結果となった。

 

 

<外交>
1.フォックス大統領のロシア及びスペイン訪問
(1)14〜16日、フォックス大統領は、G−8サンクトペテルブルク・サミットのアウトリーチ会合(G−5)出席のため、ロシアを訪問した。サミットにおいては、中東地域情勢、貧困問題などについて話し合いが持たれた。
また、ルーラ・ブラジル大統領とは、エネルギー問題及びメキシコのメルコスール加盟について、アナン国連事務総長とは中東における早期武力衝突停止の必要性について会談した。

(2)サンクトペテルブルク・サミット後、フォックス大統領は、17〜19日スペインを訪問した。18日、移民と開発に関するイベロアメリカ会合開会式に出席し、更に、サパテロ西首相、フアン・カルロス西国王と会談を持った。
 
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