政務班

2007年2月のメキシコの内政・外交の概要

 

<概要>
内政では、春期定例会期が開会し、様々な議案が話し合われたが、目立った進展はなかった。カルデロン大統領就任後初となる世論調査結果が発表され、支持率58%と客年の大統領選挙時と比較すれば上昇したものの、フォックス前大統領の同時期の支持率約70%と比べれば低い数値を示した。
党の存亡がかかる刷新に向け行われたPRI(制度的革命党)の党首選挙では、パレデス・コロシオ基金総裁が選出されたが、従来通りの体制が残り、改革は難しいとの見解が示された。
治安面では、相変わらず麻薬組織絡みの殺人が相次ぎ、アカプルコ市では白昼に警察署が襲撃されるなど、治安の更なる悪化が危惧される状況となった。
外交では、カナダで北米安全・繁栄パートナーシップ(ASPAN)閣僚会議が開催され、ASPANの枠組みの中で緊急時における地域レベル協力に関するハイレベルメカニズム構築が発表された。米国との関係では、相変わらず移民問題が大きな関心であった。

<クロノロジー>
1日   春期定例会期開会。(内政)
1日   グティエレス米商務長官、メキシコを訪問。カルデロン政権との協力を示唆。(外交)
2日   米州開発銀行(IDB)、外国送金がメキシコ国内総生産に占める割合を2.7%と発表(2006年は250億ドル)。(内政・経済)
3日   オアハカ市で再び教職員組合(SNTE)の活動活発化。ルイス・オアハカ州知事辞任を求めるデモ。「活動は第2ステージに入った」とのコメント。22日、大規模デモ。(内政)
4日   内務省移民局、中米からの不法移民に対する扱いの厳格化を発表。しかし、アムネスティ・インターナショナルなどの人権団体からの抗議により、対応見直し。(内政)
6日   「エル・ウニベルサル」紙、カルデロン大統領就任後初となる世論調査結果を発表。支持率58%、10段階評価6.5.(内政)
6日   アカプルコ市で、武装集団が警察署2カ所を襲撃し、計7名を殺害。その後、何者かが治安部隊宿舎へ手榴弾を投げ込もうとする事件も発生し、更に警備強化へ。(内政・治安)
6日   カルデロン大統領、SNTEとの会談。ゴルディージョSNTE理事長、8改革案を提案。IDB、「SNTEはメキシコの教育分野改善の障害となっている」との見解発表。8日、カルデロン大統領、公立小中学校の成果評価制度拡大を明言。(内政)
7日   フォックス前政権が推進していた「Enciclomedia」の入札に関し、不正の疑い浮上。機材の紛失なども明らかに。(内政)
8日   米アリゾナ州の国境で、メキシコ人とみられる移民3名、武装集団に射殺される。メキシコ外務省、厳格な捜査を要請する書簡発出。(外交)
10日  民主革命党(PRD)党大会開催。パヤン前メリダ市長(元PAN(国民行動党)党員)を同党のユカタン州知事候補として擁立しないと決定。12日、PRDと「進歩主義包括戦線(FAP)」を組む結集党及び労働党、同氏擁立を決定。(内政)
11日  ミチョアカン州議会、地方選挙(州知事、州議会、及び市町村首長選挙)の在外投票を認める決定。(内政)
12日  連邦選挙機関(IFE)、最高裁に対し、連邦下院による予算決定に関する不服申し立て(違憲審査)。連邦下院も反証提出。14日、最高裁における審議へ。(内政)
12日  フォックス前大統領、米国での講演において、「ロペス・オブラドール元大統領候補の刑事免責特権剥奪には失敗したが、大統領には当選させなかった」旨発言。13日、PRD、「フォックス前大統領が選挙介入した証左」として反発。捜査要請を示唆。PAN内部や有識者からも批判相次ぐ。(内政)
13日  連邦上院、法案審議に関し、期日を設けるなどの提案を盛り込んだ「国家改革法案(Ley para la Reforma del Estado)」を全会一致で可決、下院へ。連邦下院、いくつかの修正を示唆。(内政)
14日  米国政府、「アル・カーイダ」がメキシコの石油関連施設を標的とする可能性を示唆する情報。15日、メキシコ政府、「心配ない」とのコメントを出す一方、警戒強化。(内政・治安)
14日  メキシコ市政府、テピート地区における強制退去作戦開始。22日、強制退去地域拡大。27日、同地区の建物取り壊し開始。麻薬小売り、及び海賊版製造・販売撲滅作戦。同地区住民と治安部隊との小競り合いはあったものの、大きな混乱なし。(内政・治安)
15日  チャートフ米国土安全保障長官、メキシコを訪問(〜16日)。ラミレス内相と、特に治安に関する話し合い。(外交)
18日  連邦政府、治安関係者の殺害が頻発するヌエボ・レオン、タマウリパス両州に、連邦治安部隊計3,300人を派遣。ヌエボ・レオン州知事は、不快感を表明。(内政・治安)
18日  制度的革命党(PRI)、党首選挙。パレデス・コロシオ基金総裁が当選。事務局長は、ムリージョ元イダルゴ州知事。(内政)
18日  メキシコとの国境における監視壁建設に関し、米国側作業員及び政府職員がメキシコ国境を侵犯。21日、米国政府、18、19日に国境侵犯があったと認める外交書簡発出。(外交)
19日  最高裁、アテンコに関する作戦において、重大な人権侵害があったとの裁定。(内政)
20日  ガルシア・ペルー外相、メキシコを訪問。エスピノサ外相と会談。
21日  「エル・ウニベルサル」紙、FARC(コロンビア革命軍)とメキシコ麻薬組織との繋がりを米国政府、コロンビア政府共に確認した、との記事を掲載。FARC製造のコカインの55%がメキシコ麻薬組織によって取得されている、との報道。(治安)
22日  カルデロン大統領、本年末で終了する中小規模農民に対する補助金制度「Procampo」を、同大統領の任期終了(2012年11月末)まで延長すると発表。(内政)
22日  エスピノサ外相、ラミレス内相、及びソホ経済相、カナダを訪問(〜23日)。エスピノサ外相、マッケイ・カナダ外相と会談。23日、「北米安全・繁栄パートナーシップ(ASPAN)」閣僚会議に出席。(外交)
23日  サカ・エルサルバドル大統領、セラヤ・ホンジュラス大統領及びベルシェ・グアテマラ大統領、メキシコを訪問。カルデロン大統領と会談し、米国に対し、人権を尊重した包括的移民法を求めていくことで合意。(外交)
24日  エスピノPAN党首、訪問先のベネズエラにおいて、「ベネズエラには民主主義が存在しない」との発言。国内から慎重な発言を求める苦言多数。(外交)
26日  エスピノサ外相、訪米(〜28日)。ライス米国務長官、ゴンザレス米司法長官らと会談。27日、米上下両院議員との会談、及び国際戦略研究所における講演。(外交)
27日  公共行政省、州政府における透明性(情報公開)の不十分さを指摘。連邦議会に対し、情報公開の基準を統一する法整備を要請。28日、下院、情報公開基準統一法案、委員会通過。(内政)
27日  第4回メキシコ−欧州議会混合委員会開催(〜28日)。(外交)

<内政>
1.大統領支持率
(1)6日付当地「エル・ウニベルサル」紙は、カルデロン大統領就任後初となる世論調査による支持率を58%、10段階評価6.5と発表し、客年7月2日の大統領選挙時よりも支持率が増加したとの見解を示した(調査実施日:1月25−31日、対象者1,030人、誤差+/−3.5%)。
但し、支持をしている者58%の内訳は、「大いに支持する」との回答は16%に留まり、「いくらか支持する」36%、「好意的」6%となっており、必ずしも全面的な支持は得ていない状況も浮かび上がった。
(2)項目別調査においても、「大統領は期待通りの働きをしてるか」との問いに対し、「期待通り」及び「期待以上」を合わせ58%と、支持率と同様の数値を示した。

2.アカプルコ市における治安悪化
(1)6日白昼、アカプルコ市において、治安当局の事務所2カ所が軍隊風の制服を着た武装集団に襲撃され、計7名が死亡した。犯人はそのまま逃走し、事態を憂慮した連邦政府は、9日、ゲレロ州都チルパンシンゴ市に駐留していた連邦予防警察(PFP)捜査官200名をアカプルコ市に派遣し、更に500名の増派を発表した。ラミレス内相は、アカプルコ市の治安状況に関し、麻薬カルテルなどの犯罪組織の方が連邦治安当局を凌駕しているとは思わないが、同市の治安は赤信号が点灯している警戒が必要な状態である旨述べた。
(2)また、アカプルコ市の目抜き通りであるミゲル・アレマン通りに建ち並ぶホテルのうち、連邦治安部隊の宿舎として使用されているホテルに、13日白昼、何者かが手榴弾を投げ込もうとした事件も発生した。

3.PRI党首選挙
18日、党立て直しの行方を占うPRI評議員による党首選挙が行われ、前評判通りベアトリス・パレデス・コロシオ基金総裁と、エンリケ・ジャクソン前上院議長との一騎打ちとなったが、パレデス候補が68.53%とジャクソン候補の30.39%の2倍以上の票を得て、当選した。また、新事務局長には、ムリージョ元イダルゴ州知事が選出された。

<外交>
1.北米3カ国閣僚会談
(1)23日、カナダのオタワで北米安全・繁栄パートナーシップ(ASPAN)閣僚会議が開催され、メキシコからエスピノサ外相、ソホ経済相及びラミレス内相が出席した。エスピノサ外相は、就任後初めてマッケイ・カナダ外相及びライス米国務長官とのバイ会談を行った。
(2)3カ国はASPANの枠組みの中で、地域レベルでの伝染病対策計画、並びに基幹インフラの保護、緊急時の国境通過、及び国境における混乱収拾といった、緊急事態における諸活動を監視するハイレベルメカニズムの構築を発表した。

2.エスピノサ外相の訪米
26−28日、エスピノサ外相は、3月12−14日に予定されているブッシュ米大統領のメキシコ訪問に関する準備のため訪米した。また、ライス国務長官、ゴンザレス司法長官、グティエレス商務長官、リチャードソン・ニューメキシコ州知事らとの会談を持ち、二国間における対話の拡大などについて話し合った。

3.米墨国境における武装集団による不法移民襲撃事件
(1)8日、米国アリゾナ州ツーソン市から北西30キロ(米墨国境から北へ約100キロ)の地点で、3−4名からなる武装集団が不法移民の乗ったトラックを襲撃し、3名が死亡し、2名が負傷した他、数名が連れ去られたと見られている。同日夜、死者のうち2名はグアテマラ国民であると地方警察当局は発表したが、メキシコ外務省の非公式発表では死者はメキシコ国籍である可能性が高いとされた。負傷者2名については、グアテマラ国籍の女性、及びメキシコ国籍の男性であることが判明した。
(2)メキシコ外務省は、在ツーソン領事館を通じ、アリゾナ州当局に対し、本件の徹底的な調査を要請した。しかし、その後も数回に亘り、同じ武装集団と見られる集団による襲撃事件が発生した。

 
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