政務班

2007年4月のメキシコの内政・外交の概要

 

 

<概要>
内政では、メキシコ特別行政区(DF)議会で中絶合法化法案が可決され、賛成・反対両派が国内外で声明の発表及びデモ等の動きを見せた。
外交では、カンペチェにおいて「プエブラ・パナマ計画(PPP)」関係国首脳会合が開催され、PPP強化、PPPとSICAの連携強化等9項目からなる共同宣言が発出された。またカルデロン大統領はパナマ、コロンビア、中米3カ国(エルサルバドル、グアテマラ及びホンジュラス)首脳等と会談を行った。

 

<クロノロジー>
1日   リベラ枢機卿、「あらゆる形の中絶」を非難する声明発表。4日、カトリックその他キリスト教会、共同宣言に署名し、中絶合法化への理由追加を拒絶。5日、リベラ枢機卿、本件に関し“生命の保護”が重要であると訴える。6日、聖金曜日の行進に合わせ、DFを中心に中絶合法化法案への反対デモ実施。10日、DF議会議員、内務省に対し中絶合法化法案審議への教会の介入を抑えるよう、要請。17日、カトリック司教グループ、ラミレス内務相へ中絶合法化反対の立場を示した文書を提出。これに対し、DF議会、中絶合法化法案を住民投票にかけることを拒否。20日、ローマ法王ベネディクト16世、DFの中絶合法化を認めない旨発表。一方、コルドバ厚生大臣、DFの中絶合法化案を尊重する旨述べる。22日、マルガリータ・サバラ・カルデロン大統領夫人、中絶合法化を非難。23日、内務省、中絶合法化問題に関するローマ法王の“内政介入”を拒否する旨発表。24日 DF議会、中絶合法化案を賛成多数で採択。(内政)
1日   PANの州幹部、党の中央審議会委員選出への連邦政府の関与を否定。(内政)
1日   麻薬組織「湾岸カルテル」実行部隊であるロス・セタスのメンバーの拷問及び“処刑”映像、インターネットで流れる。2日、連邦警察、麻薬組織「ティファナ・カルテル」の幹部1名を逮捕。5日、人権NGO,メキシコ政府の“度を超した”組織犯罪とのたたかいを非難。6日、アカプルコにおいてテレビサ社(TV局)の特派員が殺害される。12日、カルデロン大統領、「安全は自由行使の基礎だ」とし、組織犯罪とのたたかいに関する三権、諸政党、市民社会及びメディアによる連合形成の必要性を訴える。16日、麻薬問題に関連し、1日の最多となる22名が殺害される(なお、本年に入り、4月末までに累計で872名が殺害されている)。17日、麻薬組織「湾岸カルテル」の幹部1名がタマウリパス州レイノサ市で他のメンバー4名とともに逮捕される。18日、ティファナの民間病院で、負傷したメンバーを病院から出そうとした麻薬組織の一団と軍・警察が衝突、銃撃戦となり、3名が死亡。19日、米国務省、渡航情報を発出し、アカプルコ、モンテレイ両市を名指しで指摘、「渡航の是非検討」とする。23日、麻薬組織「湾岸カルテル」のヌエボ・レオン州及びタマウリパス州における首謀者と見られる人物(通称エル・チェレロ)、ヌエボ・ラレド市で逮捕される。26日、国防省、一連の麻薬対策オペレーション実行により、麻薬組織に計50億米ドル以上の被害を与えていると報告。(治安)
2日   カルデロン大統領、ゴンサレス連邦会計検査官宛「2005年会計上級検討査察報告結果」受領届において、同政権の効果的かつ透明性の高い予算活用を約束。(内政)
2日   パレデス制度的革命党(PRI)党首、客年の党支出のうち10億ペソ以上に上る使途不明金についての監査実施を指示。(内政)
2日   公共行政省、連邦政府の公務員キャリアポストのうち、37.7%が希望者の学歴不足や試験不合格等のために空席となっていることを表明。(内政)
2日   民主革命党(PRDの上院議員グループ、安楽死の合法化に関する法案提出。12日、連邦上院、PRD提案の安楽死法案の審議開始。提案した議員、本法案はいわゆる安楽死とは違い、患者に“よき死”を選ぶ権利を与えるものだと主張。国民行動党(PAN)及びPRIの各議員、原則として本法案を支持する旨述べる。(内政)
3日   メキシコ政府、ソロモン諸島地震に関し、政府及び被害者家族に哀悼の意を示す。(外交)
4日   連邦最高裁、いわゆる“特急誘拐”の刑期を20〜40年とする旨決定。12日、カルデロン大統領、誹謗中傷に関する刑法条文の改正を指示。(内政)
9日   墨外務省、米国第九管区控訴裁判所が6日に下した、全米州運河被覆工事中止解除という判断に対し、メキシコ領土への社会的環境的影響を理由に拒否し、包括的な解決を促す旨表明。(外交)
9日   カンペチェにて「プエブラ・パナマ計画(PPP)」関係国首脳会議開催(〜10日)、共同宣言発出。また同期間中、カルデロン大統領はパナマ・コロンビア・中米3カ国(エルサルバドル、グアテマラ及びホンジュラス)首脳、並びにニカラグア副大統領とそれぞれ会談。(外交)
11日  墨外務省において、国連強制的失踪条約に関する国際セミナー開催。(外交)
11日  墨外務省、アルジェリアで発生した爆弾テロ事件を非難する声明を発表。(外交)
12日  パキスタンにおいて、墨・パキスタン共通の関心事項に関する第2回協議メカニズム会合実施。(外交)
15日  墨外務省、外国でのメキシコ国民逮捕へ対応するため、イスラム教のシャリーア及び日中の刑法の専門家を関係大使館に配置することを決定。(外交)
16日  カルデロン大統領、米国バージニア工科大学で発生した銃乱射殺人事件に関し、ブッシュ大統領に弔意を伝える。(外交)
17日  カルデロン大統領、訪墨中のシュタインマイヤー独外相及びソラナEU理事会事務総長兼CFSP上級代表と個別に会談。(外交)
17日  連邦上院、利害に対する法案(議員が任期中、自らに利害が直結する事案に関与できなくする)を可決。(内政)
17日  カルデロン大統領、3月15日に押収されたチェンリー・イエ・コンの資金約2億560万米ドルのうち、7億5千万ペソ(約7100万ドル)を厚生省の麻薬予防及び治療予算に充てる旨発表。専門家は司法判断なしに資金を活用することはできないと批判。(内政)
18日  メキシコ政府、伊藤長崎市長の逝去に対し哀悼の意を示す。(外交)
19日  ドミニカ共和国において第5回メキシコ・EU合同委員会開催、共同宣言発出。20日、エスピノサ外相、ドミニカ共和国で開催中の第13回リオ・グループ−EU閣僚級会合において、両地域間の対話強化が重要であると述べる。(外交)
20日  共通の関心事項に関する第5回墨エジプト協議メカニズム会合開催。(外交)
22日  ロペス・オブラドール元大統領候補、ルイス州知事の存在がオアハカ州における進歩主義包括戦線(FAP)の連合形成を妨げていると非難。23日 在オアハカ米国領事の息子が同市内で身元不明の人物3名に襲撃され、重傷を負う。30日、約40名のオアハカ人民会議(APPO)支持者、オアハカ州立自治大学内のラジオ局占拠。(内政・治安)
22日  クリスティーナ・キルチネル・アルゼンチン大統領夫人(兼上院議員)及びタイアナ同外相、訪墨(〜25日)。クリスティーナ夫人はカルデロン大統領と、タイアナ外相はエスピノサ外相とそれぞれ会談。(外交)
24日  カルデロン大統領、訪墨中のポールソン米財務長官及びブルームバーグ・ニューヨーク市長と個別に会談。(外交)
24日  ローセンタール・グアテマラ外相訪墨、エスピノサ外相と会談。(外交)
24日  墨外務省、米国リトルロック市に新しく領事館を設置。(外交)
24日  メキシコ及びチリ政府、両国間の共同協力プログラムを発表。(外交)
25日  カルデロン大統領、訪墨中のクリスティーナ・キルチネル・アルゼンチン大統領夫人及びタイアナ同外相を招待して朝食会を開催。朝食後、クリスティーナ大統領夫人はマルガリータ・サバラ・カルデロン大統領夫人と会談。(外交)
25日  政府とトルティージャ業界、トルティージャ価格を8.5ペソ/キロ(スーパーマーケットでは6ペソ/キロ)とした1月の合意を8月15日まで延長することで合意。(内政)
26日  APが行った9カ国合同アンケートで、メキシコ国民の71%が死刑制度を支持することが判明。(内政)
26日  連邦下院、公判制を採用する新しい少年法を採択。(内政)
26日  マルガリータ・サバラ・カルデロン大統領夫人、墨米機会財団(Mexican American Opportunity Foundation)の招待で米国ロサンゼルス市を訪問。(外交)
26日  墨外務省、2006年に墨米国境で425名が死亡し、そのうち130名が身元不明のままとなっている旨公表。(外交)
26日  共通の関心事項に関する第2回墨オランダ協議メカニズム会合開催。(外交)
29日  UNIDO、メキシコ政府に対し、同機関を脱退しない代わりに80の内部ポストをメキシコに提供する旨提案。(外交)

 

<内政>
DF議会における中絶合法化法案可決
1.DF議会が審議を行っていた中絶合法化案について、24日、議会で多数を占めるPRDの賛成により、同法案は可決された。これに先立ち、DFを中心に賛成・反対両勢力のデモが各地で展開された。
2.本法案採択については、メキシコ国内のカトリック教会や政府与党である国民行動党(PAN)、果てはマルガリータ・サバラ・カルデロン大統領夫人やローマ法王ベネディクト16世まで、様々な方面から反対の声が挙がっていた。他方、厚生省は飽くまでDF議会の決定を尊重する旨発表し、また内務省はローマ法王の発言に関し、内政干渉であるとして批判するなど、連邦の行政府は中絶合法化の中身に立ち入ることなく、DF議会の判断を重視する立場をとった。

 

<外交>
PPP関係国首脳会合開催
1.9−10日、カンペチェにおいて、「プエブラ・パナマ計画(以下、PPP)」関係国首脳会合が開催された。カルデロン大統領の他、ニカラグアを除く中米6カ国及びコロンビアから首脳が、ニカラグアからは副大統領が出席した。また、エクアドル及びドミニカ共和国もオブザーバー資格で出席した他、米州開発銀行、中米経済統合銀行、アンデス協力財団、SICA、UNDP、CEPAL(ECLAC)及びイベロアメリカサミット事務局からも出席があった。
2.首脳会合終了後、共同宣言が発出され、地域の力を育成し、メソアメリカ統合強化に資するための、制度的メカニズムの補強を通じたPPP強化、PPPの諸イニシアティブを定期的に評価した上での、イニシアティブの終了、新設、2カ国以上による調整実施、PPPとSICAの連結強化等、9項目において首脳間で合意した。
3.また、首脳会合後の共同記者会見では、米国におけるラテンアメリカ移民問題、PPP地域における石油精製所建設、さらには組織犯罪とのたたかいを含む安全保障問題について首脳から言及があった。
4.なお、カルデロン大統領は今次会合の機会を利用し、パナマ、コロンビア、中米3カ国(エルサルバドル、グアテマラ及びホンジュラス)と首脳会談を行い、またニカラグア副大統領とも別途会談を行った。

 
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