在メキシコ日本国大使館

政務班

２００７年５月のメキシコの内政・外交の概要

＜概要＞
内政では、ユカタン州知事選挙が行われ、制度的革命党（ＰＲＩ）候補が勝利した。また、カルデロン政権６年間の政策目標を記した２００７－２０１２年国家開発計画が発表された。
外交では、日本の松島外務大臣政務官がメキシコを訪問した。また、エスピノサ外相が米国及びカナダを訪問し、ライス国務長官及びマッケイ外相とそれぞれ会談した。

＜クロノロジー＞
１日　　　ゴルディージョ教職員組合委員長（元制度的革命党（ＰＲＩ）事務局長）、客年７月の大統領選挙において教職員組合がカルデロンの勝利に貢献したとテレビ番組で発言。（内政）
１日　　　メキシコ市を始め、各地でメーデーに伴うデモ実施、主に国の国家公務員共済庁（ＩＳＳＳＴＥ）年金改革、財政改革及び労働改革への反対を主張。（内政）
１日　　　カルデロン大統領、第１２回墨西議会会合出席のためにメキシコ訪問中のスペイン国会議員団と会談。（外交）
２日　　　政府、１日にミチョアカン州カラクロア市で発生した軍関係者５名の“処刑”事件を踏まえ、同州における麻薬対策の治安部隊強化を発表。２日、カルステンス大蔵公債相、治安問題がメキシコの競争力低下を招いていると発言。４日、ミチョアカン州カラクアロ市において、軍の治安部隊が同市役所及び警察署を占拠。同市幹部及び国家人権委員会（ＣＮＤＨ）は「軍の権限乱用」と批判。５日、治安部隊、同市より撤退。１０日、米国、麻薬組織「ティファナ・カルテル」の弁護士であるベンハミン・アレジャノ氏の引き渡しをメキシコ政府に要求。１１日、連邦政府、組織犯罪との戦いのため、ベラクルス州に１２００名の治安部隊を派遣。１３日、ロペス・オブラドール元大統領候補、麻薬組織との戦いのための治安部隊増派は解決策として不適切である旨発言。１３日、麻薬組織関連での死者、今年に入って１０００人を超える（なお、２００６年は７月１日、２００５年は９月１２日に１０００人目に到達）。１４日、メキシコ・シティ国際空港の麻薬取締りを担当する連邦検察庁幹部が射殺される。１５日、ニカラグア政府、麻薬組織との戦いに関し、同国で逮捕された「シナロアカルテル」の幹部についてメキシコが身柄引き渡し要求しないと批判。２４日、カルデロン大統領、麻薬組織との戦いへの軍投入への批判に対し、国民と地域を危険から救うのは当然とし反発、今後も治安部隊投入を継続することを明言。２５日、米国及びコロンビア、メキシコ国内にコロンビア人マフィア（旧軍隊出身）が潜伏し、麻薬組織と連携していることを公表。（内政・外交・治安）
３日　　　国家人口委員会（Conapo）、２０００～２００５年の間に約２８０万のメキシコ人が国外へ移民し、２００６年は出生数を移民数が上回ったと発表。（内政・外交）
３日　　　カルデロン大統領、ビジャライゴサ・ロサンゼルス市長と会談。（外交）
４日　　　メキシコ訪問中の松島外務大臣政務官、連邦上院競争力委員会及びアジア太平洋外交委員会所属の国会議員と朝食会開催。４日、日墨ＥＰＡ・ビジネス環境の整備に関する委員会第３回会合開催。我が国より松島外務大臣政務官（共同議長）他が出席。４日、メキシコ訪問中の松島外務大臣政務官、エスピノサ外相及びレイセギ経済省次官と会談。（外交・経済）
６日　　　カルデロン大統領、フランスでサルコジ候補の大統領当選を祝うメッセージ発出。（外交）
７日　　　大統領府、ムニョス・レド元ＰＲＩ党首、カサール元内相等４名をいわゆる「国家改革法」委員会理事に選出。（内政）
７日　　　相互利益に関するメキシコ・ポーランド協議メカニズム第６回会合開催。（外交）
８日　　　「エル・ウニベルサル紙」、カルデロン大統領支持率等に関する２回目の世論調査結果発表。（内政）
８日　　　国民行動党（ＰＡＮ）、女性が中絶実施をためらうような法整備を検討。９日、ローマ法王ベネディクト１６世、中絶合法化法案を採択した政治家はミサからは追放するものの、破門扱いとはしない旨発言。（内政・外交）
１０日　　エスピノサ外相、ラテンアメリカ移民社会会議において、ラテンアメリカ全体で移民の権利を保護するための戦線構築が必要であると発言。１５日、外務省とメキシコ各州政府、移民問題解決のため共同で取り組んでいくことで合意。２８日、エスピノサ外相、国家州知事会議の場で、移民問題について州知事と意見交換を行う。（内政・外交）
１０日　　教育・文化協力に関するメキシコ・コロンビア合同委員会第６回会合開催（～１１日）。（外交）
１１日　　二国間政策に関するメキシコ・インドネシア協議メカニズム第２回会合開催。（外交）
１５日　　「教師の日」に伴い、全国各地で教職員組合を中心とするデモ実施。（内政）
１５日　　エスピノサ外相、ソホ経済相他、ＯＥＣＤ閣僚理事会に出席（～１６日）。（外交）
１６日　　保健分野におけるメキシコ・タンザニア間協力推進憲章署名。（外交）
１８日　　メキシコ、世界気象機関執行理事会選挙に当選、２００７～２０１１年まで理事を務めることに。（外交）
２０日　　ユカタン州知事選挙実施。ＰＲＩのオルテガ候補が与党ＰＡＮの有力候補等を破って当選。（内政）
２０日　　外務省、第２回アフリカ週間実施（～２５日）。その中で、アンゴラ及びナイジェリアへの大使館の新設、及びカルデロン大統領の公式訪問などからなる、新しい対アフリカ戦略を発表。（外交）
２１日　　カルデロン大統領、２００７～２０３０年までの長期的国家目標等を定めた「メキシコ２０３０」の具体案を発表。２５日、カルデロン大統領、「気候変動に関する国家戦略」と題したイベントにおいて、気候変動に関する戦略を国家開発計画に盛り込むことを発表。３１日、カルデロン大統領、「２００７－２０１２年国家開発計画」を発表。（内政・外交）
２２日　　エスピノサ外相、米国及びカナダを訪問、ライス米国務長官及びマッケイ加外相と会談（～２３日）。（外交）
２３日　　メキシコ、国連国際商取引法委員会（ＵＮＩＣＩＴＲＡＬ）構成国選挙で再選される。（外交）
２４日　　エスピナＰＡＮ事務局長、ＰＡＮと大統領府間の衝突を否定。（内政）
２５日　　連邦検察庁及び国家人権委員会、先にメキシコ市（ＤＦ）議会が採択した中絶合法化法案に対し、違憲であるとして最高裁判所に提訴。２９日、連邦裁判所、ＤＦ議会に対し、連邦検察庁及び国家人権委員会による中絶合法化法案に対する違憲訴訟を受理する旨通告。３０日、国家人権委員会代表、中絶合法化法案の違憲審査に関連し、連邦最高裁に対し、生命が開始する時期の特定を求める。（内政）
２７日　　連邦最高裁判事、オアハカ州における政府高官による人権侵害を調査するための委員会設置を提案。（内政）
２９日　　エスピノサ外相及びソホ経済相、メキシコ訪問中の薄熙来中国商務部長と会談。（外交）
３０日　　人権に関する北米３カ国非公式協議メカニズム第２回会合実施。（外交）
３１日　　民主革命党（ＰＲＤ）、カルデロン大統領の欧州歴訪への同行拒否。（内政・外交）

＜内政＞
１．カルデロン大統領の支持率

９日付「エル・ウニベルサル」紙は、カルデロン大統領就任後２回目の世論調査結果を、支持率６８％（前回５８％）、１０段階評価７．０（前回６．５）と発表し、双方とも上昇が見られた。一方、カルデロン大統領が期待通りの働きをしているか、については１６％（前回１２％）が期待以上、４４％（前回４６％）が期待通りと、前回と比べ数値の変更はあまりない。

２．ユカタン州知事選挙

２０日、ユカタン州知事選挙が実施され、ＰＲＩのイボンヌ・オルテガ・パチェコ候補（元国会議員、セルベラ元ユカタン州知事の姪）が、ＰＡＮのハビエル・アブレウ・シエラ候補、元メリダ市長、ＰＡＮ党員で、労働党系の支持を得たアナ・ロサ・パジャン候補等を破って当選した。

３．２００７－２０１２年国家開発計画発表

３１日、カルデロン大統領は、今後６年間の政権運営において指針となる２００７－２０１２年国家開発計画(Plan Nacional de Desarrollo 2007-2012)を発表した。同計画は、メキシコ憲法等に基づいて各政権が作成する文書であるが、カルデロン政権の特徴として、より長期的な国家目標を定めた「ビジョン２０３０」を踏まえていること、また文書内で国家統合の前提として持続的人間開発を取り上げ、それに従って５つの柱（①法治国家と安全、②競争力のある経済、雇用創出、③機会均等、④環境持続性、及び⑤効果的な民主主義及び責任ある外交政策）を立てている。

＜外交＞
１．松島外務大臣政務官のメキシコ訪問
（１）４日、メキシコを訪問中の松島外務大臣政務官は、連邦上院競争力委員会及びアジア太平洋外交委員会所属の国会議員と朝食会を行い、日墨ＥＰＡ締結による両国間の貿易・投資への効果、及びメキシコにおける治安改善等のビジネス環境整備等について意見交換を行った。
（２）また同日、日墨ＥＰＡ・ビジネス環境の整備に関する委員会第３回会合が開催され、日本側は松島政務官、メキシコ側はレイセギ経済省次官が共同議長を務めた。
（３）さらに同日、松島政務官はエスピノサ外相及びレイセギ経済省次官と個別に会談を行った。このうち、エスピノサ外相との会談で、松島政務官は、日墨間でハイレベルの交流に活性化の機運があるとして、エスピノサ外相の訪日への期待を表明するとともに、日墨ＥＰＡ発効後、両国の貿易・投資が大幅に増加し、成功を収めていると述べた。また、国連等の多国間協力の枠組みにおけるメキシコ側の協力を求めると共に、北朝鮮の拉致問題の解決に向けて、国連人権理事会の初代議長を務めるメキシコの協力を求めた。

２．エスピノサ外相の米加訪問

２２～２３日、エスピノサ外相は米国及びカナダを訪問し、ライス米国務長官及びマッケイ加外相と会談した。２２日に行われたライス国務長官との会談では、移民問題、国境地域の治安等につき意見交換を行った。また、２３日に行われたマッケイ加外相との会談では、８月にオタワでの開催が予定されているＡＳＰＡＮ（北米安全・繁栄パートナーシップ）首脳会議の事前調整が主に行われた。

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