政務班

2007年9月のメキシコの内政・外交の概要

 

 

<概要>
 内政では、カルデロン大統領が、連邦議会で、与野党間で大統領教書の提出方法及び同教書演説の実施方法につき対立がある中、就任後初となる大統領教書を提出した。また、選挙改革案、税制改革案が議会で可決、また2008年度予算案も提出された。加えて、マルティネス公共行政大臣が国民行動党(PAN)党首選挙出馬のために大臣を辞任した。
 外交では、カルデロン大統領がオーストラリアのシドニーで開催のAPEC首脳会合に出席し、日墨首脳会談を始め、アジア首脳を中心に会談を行った他、その前後でニュージーランド及びインドを訪問した。また、エスピノサ外相がニューヨークで開催された国連総会に出席した。

 

<クロノロジー>
1日  連邦議会秋期通常会期始まる。連邦上院及び下院の新執行部、政策調整委員会のメンバー、一部を除き決定される。下院議長にはサバレタ民主革命党(PRD)議員、上院議長にはクリール国民行動党(PAN)議員、下院政策調整委員長にはラリオスPAN議員、上院政策調整委員長にはベルトローネス制度的革命党(PRI)議員(前上院議長)がそれぞれ就任。(内政)
1日  カルデロン大統領、連邦議会に第1回年次教書提出。2日、国立宮殿において、教書演説を実施。国立宮殿前の憲法広場では、PRDによる「正統な政府」の集会が開催され、カルデロン大統領の教書演説の式典出席者に罵声が浴びせられたが、大きな混乱は起こらず。(内政)
2日、ベラクルス州にて州議会選挙及び市町村長選挙が実施され、いずれも、PRIを中心とする連合が圧倒的勝利。今次選挙の過程では、PRIのエレラ・ベラクルス州知事による選挙への介入が取り沙汰されており、党支持者同士の脅迫や抗争が発生していた。エスピノPAN党首やベラクルス州のPAN執行部がすべての責任はエレラ州知事にあると反発、さらに党支持者や候補者による他政党支持者及び候補者への暴力行為がエスカレート、投票日当日だけでも死者1名、けが人15名を出す緊張状態の中実施された。また当日はハリケーン・ディーンの被害により投票が滞る事態も発生した。(内政)
3日  連邦上院各党会派長、選挙改革の連邦選挙機関(IFE)評議員解任では一致するものの、人数については合意せず。6日、PAN、PRI、PRDの上院議員、テレビ局が有料選挙スポット広告の禁止を含む選挙改革を止めるため圧力をかけていると告発。10日、連邦上院の関係委員会、有料スポット広告の禁止承認の意図を示す。10日、全国放送産業会議所(CIRT)、有料スポット広告禁止の変更を求め、連邦議会での議論を要請。12日、連邦上院本会議に送られた選挙改革案が賛成111,反対11で可決。マスコミ側の意向を汲まない形での可決となる。14日、同改革案、連邦下院本会議で審議され、一点の修正もなく、賛成408,反対33で可決。14日、国家人権委員会、選挙改革の有料スポット広告が表現の自由を奪うものであるとするCIRTの訴えを退ける。27日、選挙改革案の州議会審議で、南バハ・カリフォルニア州が16番目に同法案を承認。これで憲法改革に必要な16州以上の承認を満たす。上院執行部は、16州での承認は取れたが、「各州の選挙プロセスにも影響する改革である」として、28〜30の州で判断が下されるまで待つことで一致。(内政)
4日  ハリケーン・ヘンリエッテ、バハ・カリフォルニアに上陸、ロス・カボス市とラ・パス市では約5千人が避難、ロス・カボス市の90%が停電に見舞われる。4名が海上で行方不明に。5日、ヘンリエッテ、ソノラ州に再上陸、男性2名が死亡、約600世帯が避難。5日、ハリケーン・フェリックス、チアパス州に上陸、同州で8千人が避難。(治安)
6日  カルデロン大統領、ニュージーランド訪問。ゴフ貿易大臣、ニュージーランド主要企業関係者と懇談。また、サティアナンド・ニュージーランド総督及びクラーク首相とも会談。7日、APECのためオーストラリア入りしたカルデロン大統領は、ハワード豪大統領と会談、農業分野での技術協力、技術移転、バイオテクノロジーやナノテクノロジーの専門家の交流等を活性化させる計画を推進することで合意。また、バチェレ・チリ大統領とも会談し、長期の同盟関係を実現する媒体として、民主主義、社会経済発展を強化する戦略的提携協定(Acuerdo de Asociacion Estrategica)を具体化することで一致。さらに、リー・シェンロン・シンガポール首相と会談、二国間の政治経済関係強化について話し合う。8日、カルデロン大統領、APEC会合に出席。気候変動問題について話し合う。9日、カルデロン大統領、バダウィ・マレーシア首相と会談。バイオ燃料に関連する研究等の協力強化が重要であると述べる。その後、バチェレ・チリ大統領、ガルシア・ペルー大統領、ハーパー・カナダ首相と会食。また、安倍総理大臣と会談、二国間関係強化、気候変動、安保理改革について話し合う。9日、カルデロン大統領、インドを訪問。10日、カルデロン大統領、パティル印大統領と会談、またムカジー外相、シン印首相ともそれぞれ会談。更に、ガンディ国会議長とも会談。(外交)
6日  エスピノPAN党首、カルデロン大統領の選挙改革の交渉とガソリン増税の進め方について、交渉を進めながら、周囲には最後になって知らせると批判。12日、ガソリン税の段階値上げ、連邦下院大蔵委員会で承認される。13日、税制改革法案、ガソリン税の5.5%増税、IETUの16.5%(初年度)で連邦下院を通過。14日、連邦上院で可決、成立。24日、制度的革命党(PRI)、税制改革法案の一部であるガソリン値上げについて、発効を2008年1月まで延期するべきであるとの意向を示す。26日、カルデロン大統領、ガソリン税施行の年内中断及び年内のLPガス、無鉛ガソリン(Magna)ディーゼル、家庭用電力の増額の凍結を発表。(内政)
8日  2008年度予算案が議会に提出される。税制改革について合意に至らず、歳出予算案は税制改革を反映しないが、政治経済総合ガイドライン(Criterios Generales de Politica Economica)では税制改革ありとなしの2つのシナリオを盛り込む。23日、カルデロン政権が提出した2008年予算案の中に、元大統領5人への年金、警備、秘書、運転手への手当の支出の項目を盛り込んでいないことが明らかに。資金の出所や金額などは不明。(内政・経済)
9日  コアウイラ州・モンクロバ−サン・ペドロ間の国道で、22トンの爆発物を搭載したトラックが、他の車両と衝突、約30分後に積まれていた爆発物が爆発。怪我人は150名、死者は事故現場に接近していた記者3人を含む37名。また、トラックの運転手は事故後直ちに逃亡。(治安)
9日  エスピノPAN党首がピノチェト政権の独裁を支援していた政党との同盟を模索していることに関し、PAN議員及びチリ与党幹部がエスピノ党首を批判。(内政・外交)
10日  ベラクルス州にあるメキシコ石油公社(PEMEX)の4つのガス輸送管で火災及びガス漏れが発生。11日、人民革命軍(EPR)が、5月25日にオアハカで拘束、行方不明になった2名の同志の生還を要求する行動である旨の犯行声明を出す。(治安)
12日  大統領府、独立200年革命100年記念祭実行委員長に、ラファエル・トバル・イ・デ・テレサ(Rafael Tovar y de Teresa)元国家文化芸術審議会議長を任命。(内政・文化)
13日  教育省、教育改革の第一歩として、小中学校への追加補助金を出す、学校への直接投資基金を発表。6州で試験的に実施予定。(内政)
14日  米麻薬取締局(DEA)、米国内でのコカイン及びメタンフェタミンの末端価格が前年比でそれぞれ24%及び37%上昇しているのは、メキシコ国内での麻薬対策が効果を上げていることによると発表。18日、DEA、メキシコの麻薬カルテルがアフリカを経由地として使用していることを明らかに。20日、米政府会計局(US Government Accountability Office)、メキシコ当局がメキシコで生産されるコカインの13%が米国との国境を越えているのを確認、ヘロインの5%以下、マリファナの30%に相当する量しか押収していないとの年次報告書を発表。(外交・治安)
24日  連邦検疫リスク予防委員会(Cofepris)、容疑者不定のまま、連邦検察庁(PGR)に41に及ぶ塩酸擬エフェドリン輸入許可書偽造容疑で起訴。24日、ルイス・ロベルト・パトロン・アレギ国税局次長(当時のマンサニージョ港税関職員)、麻薬密輸容疑にて米国で起訴中の中国系メキシコ人チェンリー・イエ・コン容疑者の架空会社に、書類の提出を求めずに塩酸偽エフェドリンの輸入を許可していたことが明らかに。イエ容疑者と連邦検疫リスク予防委員会(Cofepris)の連絡役であったオルテンシア・アリアガ・メンドーサ容疑者がメキシコ市内で逮捕される。(内政・治安)
15日  メキシコ市憲法広場で独立式典「エル・グリト(独立の叫び)」が行われ、カルデロン大統領が国立宮殿から同式典を主催。同日午後には、同じ憲法広場で「エル・グリト」を予定していたPRD及びメキシコ市側と大統領府で交渉が行われ、PRDは一時間強繰り上げて「自由の叫び」と名付けられた独自の独立の叫びを上げ、メキシコ市は市庁舎でイベントを実施、混乱なく終了。ロペス・オブラドールPRD元大統領候補は出席せず。(内政)
17日  メキシコ市政府、メキシコ市民への失業保険導入を発表。エブラール市長就任後に正規雇用を解雇された場合、最低6ヶ月間、月額1,500ペソが支給される他、職業訓練や求人広告にアクセスできる。(内政)
18日  メキシコ市及びメキシコ州での道路交通法改正に伴う減点制始まる。(内政)
18日  フォックス前大統領がグアナファト州に建設した「ビセンテ・フォックス研究所・図書館・博物館(以下フォックス・センター)」に、公文書を持ち出していたことに関し、連邦情報公開庁(IFAI)が犯罪にもなりうる経営上の違反の疑いがあると異議を唱える。大統領府はフォックス・センターの公文書の存在を否定。19日、連邦上下院議員、フォックス前大統領の資産について調査するよう公共行政省に求める。24日、モンレアル連邦上院議員、連邦検察庁に対しフォックス前大統領を公金横領や職権乱用など10の刑事犯罪で告訴。24日、フォックス前大統領一族への不法な資金の流れを巡り、連邦下院政策調整委員会は、調査委員会を立ち上げることで合意。公共行政省も参加する見込み。メンバーの人数、名称及び目的については保留。26日、PAN、調査委員会の設置について、「フォックス前大統領にメディア的打撃を与えようとしているだけである」と、委員会設置に反対の意向を示す。26日、フォックス前大統領の公金横領スキャンダルに関し、国民行動党(PAN)所属のムニョス連邦上院議員が「1銭たりとも公金を私的に使用していない」と前大統領を擁護した。これまでエリソンド観光大臣、ソホ経済大臣、ラミレス内務大臣、ソチル・ガルベス前国家先住民委員長など、前大統領の政権関係者がフォックス前大統領擁護の姿勢を示す。サンティアゴ・クリール連邦上院議長も同様の立場をとったものの、フォックス前大統領の妻、マルタ・サアグンについては一言も触れず。(内政)
20日  国家人権委員会、麻薬掃討作戦における軍の窃盗、性的暴行など人権侵害を明らかに。21日、国家人権委員会、国防省に対し、人権侵害に該当する事件の資料を渡す。(内政・治安)
20日  ローマ入りしているフォックス前大統領、フェルナンド・カシーニ・イタリア・キリスト教民主党の代表で国際中道派民主連盟(Internacional Democrata de Centro)の現議長と共に、共同議長に就任。21日、国際中道派民主連盟のメンバーと共にベネディクト16世に謁見。(内政・外交)
23日  司法改革の審議を前に、専門家から「警察が捜査令状なしに家宅捜索を行えることや、逮捕状なしに逮捕できることが盛り込まれているのは、司法制度を拡大する代わりに、当局の権限を拡大させるものである」と懸念の声。他方、上院緑の党及び結集党の各会派長は、主要三政党だけで司法改革の交渉をしており、少数政党が蚊帳の外にされていると反発。24日、当局に捜査、逮捕及び盗聴の面で当局にさらなる権限を与えることを盛り込んだ、政府提出の司法改革案について、連邦上院議員がこのままでは可決しないと述べる。(内政)
24日  PRDを除く議会参加政党間で、議員の再選を可能にする議院改革を進めることで合意。昨日国家改革推進委員会に提出された、メキシコ国立自治大学法学研究所作成の「国家政府体制」の中で明らかに。(内政)
24日  結集党、2009年の連邦下院選挙は、進歩主義包括戦線(FAP、民主革命党(PRD)、結集党、労働党の連合)ではなく、単独で戦うことを発表。(内政)
24日  エスピノサ外相、第62回国連総会に出席。スタニョ・コスタリカ外相と会談した他、ガルシア・ペルー外相とも会談し、両国間の貿易投資関係強化等について意見交換。その後リオ・グループ外相会合に出席し、またバルセナ国連事務局次長(財政担当、現在メキシコ人としては最高位の国連職員)とも会談した。ライス米国務長官、バーナー・カナダ外相とのワーキングディナーにも出席。25日、カルデロン大統領が第62回国連総会への出席を取りやめ、25日午後に予定されていた演説は延期に。25日、エスピノサ外相は、ソラナEU理事会事務総長兼CFSP上級代表及びデルビシュUNDP総裁と会談を行う。また、プラスニック・オーストリア外相と会談、その後、エチオピアと、共通関心分野での協議メカニズム設立のための覚書に署名、アウトリーチ5諸国外相との会談にも出席。26日、エスピノサ外相、ペレス・キューバ外相と会談、両国関係改善へ向けた双方の関心を確認。また、アラウッホ・コロンビア外相との会談では、二国間の重要課題について評価を行い、組織犯罪との戦いにおける両国の努力に関する意見交換を行う。その後、アンデス共同体加盟各国との政務協力協議メカニズム第1回会合に出席。さらに、モラティノス・スペイン外相、及びフォックスレイ・チリ外相と会談を行い、ケニア及びルワンダとは共通関心分野における協議メカニズム設立のための覚書に署名。27日、エスピノサ外相、アウトリーチ5カ国(楊中国外相、ムカジー印外相、ドラミニ=ズマ南ア外相、及びバルガス伯外務副大臣)で会談を行う。(外交)
25日  ユカタン州で小型飛行機が墜落、約3.2トンのコカインが発見される。連邦検察庁、容疑者2名を拘束。(治安)
26日  米国国家安全保障省が推進する、レーダーを使用した不法移民対策の仮想国境壁の試験がアリゾナ州−メキシコ国境で実施され、人と牛、自動車と灌木など、レーダーの誤認があると報じられる。(外交)
26日  来年のPAN及びPRDの党首選挙に向け、PANのプリエゴ党執行部員、PRDの一派閥である新左派のオルテガ幹部がそれぞれ名乗りを上げる。31日、PAN上院議員、カルデロン大統領が党首選挙に関与しないことを求める。31日、ガルシア・サカテカス州知事が、エンシーナスPRD党首候補の支持を表明。(内政)
27日  マルティネス公共行政大臣、来年3月の国民行動党(PAN)党首選挙出馬のため、大臣を辞職。先に行われたPAN全国審議会評議員選挙でトップ当選し、PANカルデロン派有力候補の一人であったセサル・ナバ大統領秘書官、マルティネス大臣の出馬を支持。(内政)
28日  麻薬組織「シナロア・カルテル」の中心格、サンドラ・アビラ・ベルトラン(Sandra Avila Beltran、通称「太平洋の女王」)、コロンビアからのコカイン密輸容疑で逮捕される。また、アビラ容疑者の恋人ディエゴ・エスピノサ(Diego Espinosa、通称「エル・ティグレ」)も逮捕される。(治安)

 

<内政>
1.カルデロン大統領第1回年次教書提出及び教書演説
(1)年次教書提出(1日)
(イ)当日まで与野党の調整が難航し、連邦下院本会議場での教書提出が可能なのか、儀典の間等連邦下院内の別の場所での提出になるのか、不透明な状況が続いていたが、1日午後、教書を本会議場で受け取ることで合意が成立した
(ロ)カルデロン大統領は、サバレタ新下院議長を含め、民主革命党(PRD)所属議員の殆どが退場した連邦下院本会議場に入場すると、与党国民行動党(PAN)所属のカスターニョ新下院副議長に教書を提出し、「メキシコ憲法第69条に従い、連邦議会秋期定例会期の冒頭に年次教書を提出する」と紋切り型の宣言を行った後、即座に退場した。
(2)教書演説(2日)
カルデロン大統領は午前11時から国立宮殿にて約75分間、要旨以下の通りの教書演説を行った。
(イ)「法治国家と安全」については、組織犯罪、特に麻薬組織との戦いでの成果を強調。
(ロ)「競争力のある経済及び雇用の創出」では、具体的数値で生産、投資、雇用の増加を紹介。
(ハ)「機会の平等」については、貧困層が減少している事実や貧困層への対策、教育や医療サービスの裾野拡大を行っていることを指摘。
(ニ)「持続可能な開発」では、森林再生計画や気候変動に関する国家戦略の提示、代替エネルギーの活用開始等につき言及。
(ホ)「効果的な民主主義」については、法改正による国民の権利拡大、実現したISSSTE改革や今後行われる予定の選挙改革、司法改革等に触れると共に、現行の選挙プロセスを尊重する旨強調。
(ヘ)「責任ある外交」では、メキシコは勝者であるべきこと、世界におけるメキシコの存在、及びメキシコにおける世界の存在を増す必要がある旨指摘した上で、北米諸国及びラ米諸国との関係が強化されていることを示唆。また、米国政府によるメキシコ不法移民の扱いを強く非難。

2.2008年度予算案提出
8日、2008年度予算案が議会に提出される。税制改革について合意に至らず、歳出予算案は税制改革を反映しないが、政治経済総合ガイドライン(Criterios Generales de Politica Economica)では税制改革ありとなしの2つのシナリオを盛り込む。
それによると、財政改革が承認されない場合、2008年のGDP成長率は3.5%、インフレ上昇率は3%の見込み。財政改革案が承認された場合、GDP成長率は3.7%。
計画支出は2007年度より3.4%増、目立った支出は治安、司法部門、社会開発部門、経済開発部門にそれぞれ前年度比各8.1%、2.7%、2.6%増となっている。なお、財政改革案が承認された場合、歳出額は約1,150億ペソ増となり、教育、保険、貧困地域への対応等、主に社会開発向けの公共投資に充てられる。

3.税制改革案の成立
14日、以下の内容を盛り込んだ税制改革案が両議会で可決、成立した。
(1)概要
(イ)企業単一税(IETU)
(i)課税ベース:企業の収入(売上高など)
(ii)課税ベース控除項目:機械・設備取得費、土地・建物取得費、棚卸資産、リース料    等
(iii)税率:08年度16.5%、09年度17.0%、10年度以降17.5%
(iv)税額控除:従業員給与(課税所得額)及び社会保険料事業主負担分の17.5%を税額控除、98〜07年に実行された設備投資額の17.5%(08年度は16.5%、09年度は17.0%)を毎年5%ずつ10年間税額控除
(v)法人所得税(ISR)額と比較し、どちらか高い方を納税
資産税(IMPAC)は廃止
(ロ)インフォーマルセクター対策税
現在、徴税権が及ばないインフォーマル経済に対する最初の税金。毎月、2.5万ペソを越える現金の銀行口座への現金による入金(小切手入金や銀行送金は対象外)に対して2%の税金がかかる。この税金は、個人所得税と税額控除される。

4.選挙改革案の議会通過
(1)概要
(イ)12日、連邦上院本会議で選挙改革案の審議が行われ、賛成111,反対11で可決された。本案には選挙活動期間や選挙前活動期間の短縮、政党及び第三者による特定の政党や候補者への支持や誹謗中傷の禁止と有料スポット(宣伝活動)のためのテレビ・ラジオとの契約の禁止、ウガルデ連邦選挙機関(IFE)評議会委員長も含む、評議会委員の交代が含まれており、ウガルデ議長を始めとするIFEからの反発、有料スポットの廃止による収入減額を避けたいマス・メディアの反発はあったものの、選挙改革法と並行して議論されていた税制改革法の成立を最優先する国民行動党(PAN)が、税制改革と抱き合わせで選挙改革を主張する制度的革命党(PRI)の提案に歩み寄り、最終的にうまく折り合いをつける形で決着した改革案は上院を通過した。
(ロ)本改革案は、連邦上院での可決後、連邦下院に送られ、下院本会議で審議された。下院ではPAN、PRI、民主革命党(PRD)の三者間で、修正も時間稼ぎもしないという合意が事前になされており、今回の改革によりスポットの割り当て時間が減少する緑の党、結集党、新同盟党といった少数政党の反対はあったものの、一点の修正もなく、賛成408,反対33で可決された。
(ハ)本改革案は憲法の一部改正、追加及び削除を含んでいるため、連邦両院で可決の後は、各州及び連邦区議会で審議され、全国31州のうち16以上の議会で可決すれば本改革案は成立となる。ウンベルト・モレイラ・コアウイラ州知事が改革案の拒否を公言している他、ペニャ・メキシコ州知事が全国放送産業会議所(CIRT)と本改革案の通過を妨げようとしているものの、サバレタ連邦下院議長は25州での可決を見込んでいる。19日、全国で最初にオアハカ州で本改革案が可決された。他の州でも審議が進行中である。

5.マルティネス公共行政大臣の辞任
(1)27日、マルティネス公共行政大臣が辞表を提出した。これは、カルデロン政権初の閣僚の辞任であり、2008年3月に予定されている与党国民行動党(PAN)党首選挙に出馬するためのものである。
(2)28日、大統領官邸において、マルティネス公共行政大臣の辞任挨拶及びカルデロン大統領による新大臣の任命式が行われ、マルティネス前公共行政大臣は、前日カルデロン大統領に提出した辞表を読み上げ、明年3月に実施される国民行動党(PAN)党首選挙に出馬する意向を改めて述べた。

 

<外交>
1.カルデロン大統領のAPEC出席及びアジア・大洋州歴訪
(1)豪州APECにおける日墨首脳会談
(イ)シドニーで開催された第15回APEC首脳会合に出席した際、カルデロン大統領は日本の安倍総理と会談を行った。両首脳は、両国間の良好な関係を生かして、二国間、地域、及び多国間分野において、日墨間の絆を強化することの重要性を認めた。両国首脳は、政治対話に継続性を与え、日墨戦略関係を確固たるものにするため、双方にとって都合の良い時期に、お互いの国を訪問するよう招待した。
(ロ)また、日本の提案である「Cool Earth 50」について意見交換を行い、環境保護の分野において日本の諸プログラムが提供する技術進歩及び財政支援を活用するため、共同での取組みを検討していくことで合意した。カルデロン大統領は、全ての先進国及び途上国が環境改善に貢献するためのメキシコの環境戦略について話した。
(ハ)経済分野については、両国は2005年4月1日に発効し、両国の貿易・投資関係に重要な促進を与えた日墨EPAの枠組みを完全に利用することで合意した。日本はメキシコへの第3位の投資国であり、アジア太平洋地域では最大の投資国にあたる。
(ニ)カルデロン大統領は安倍総理に対し、「国家インフラ計画2007−2012」が、特に鉄道、港湾、空港、並びに上下水設備の諸分野で日本の投資家にもたらす機会について言及した。
(ホ)国際的な課題について、日墨首脳は国連改革プロセス進展のために努力していくことが必要であることにつき意見が一致した。また、気候変動及び人間の安全保障分野において今後も協力していくことについての関心を示した。

(2)カルデロン大統領のインド訪問
カルデロン大統領は9−12日、インドを訪問した。パティル大統領との会談後の共同宣言概要以下の通り。
(イ)インドとメキシコは歴史が長く、活発な民主主義と他民族、他宗教、多言語という多様性を備えている。両国は友好の伝統と、政治、産業、経済、科学技術、環境、開発の分野での強化及び相互補完性を再確認した。このような共通点を基礎に、両国が社会経済発展と利益を得る優遇提携(Asociacion Privilegiada)を設立することを決意した。
(ロ)両国首脳は、継続的なハイレベルでの政治的対話を実施することで一致した。また、カルデロン大統領はパティル大統領の墨公式訪問を招待した。パティル大統領はこれを快諾。また、より一層の政府間交流、特に外交上の交流活性化を推進することを確認した。
(ハ)2008年の前半に、両国関係強化及び民間機の開発、関税上の協力など同意に達していない事項について話し合う、二国間委員会を開催することを確認した。
(ニ)両国首脳は、二国間の経済・産業部門での交流が深まってきていることについて触れ、21世紀に強固な地盤を獲得するために、この傾向を強化していくことが重要であると述べた。そのためには、インフラ部門、中小企業、製薬部門、エネルギー部門、自動車部門、IT通信産業部門、農業部門、食品加工部門などの分野での投資協力を刺激していく必要があるという点を再確認した。
(ホ)両国は、2006年に中小企業間協力のための行動計画が完了したことに満足感を示した。今後、雇用創出の鍵となる部門での両国の強さと能力を有効に利用するため、計画の早期実行及び合同委員会の早期開催を呼びかけた。
(ヘ)両国は、既に成果を上げている科学技術部門での協力を更に強化していくことが重要であると言及した。また、バイオテクノロジーやIT分野を含む共同研究・開発を開始できるよう、できるだけ早期の合同委員会開催を求めた。
(ト)農業部門、食品加工部門でも、特に研究及び農業教育の分野でのより一層の協力関係を呼びかけた。
(チ)文化面でも、両国の文化の豊かさを確認すると共に、2008〜2010年に文化教育プログラムを推進することで一致した。また、インド政府はニューデリー国立博物館で開催中のミシュテカ−サポテカに関する特別展示への協力に感謝した。またメキシコ側は、2009年にメキシコで同様の展示会の開催を招待した。
(リ)また、発展途上国が国際場裡で決定権を持つ機関に更に参加する必要があり、安全保障理事会の改革なくして国連改革はないとし、両国は、インドが2011〜2012年、メキシコが2009〜2010年任期で立候補する安保理非常任理事国選挙での相互支持を再確認した。
(ヌ)さらに、発展途上国も発展のために貧困の解消を後回しにしてはならないとした。両国は気候変動問題についても触れ、これらのテーマを国連気候変動枠組協定及び京都議定書の枠組みの中で緊密な協力と関係者が建設的な対話を行うことで一致した。

2.エスピノサ外相の第62回国連総会出席と各国外相等との会談
(1)24日
(イ)第62回国連総会に出席するため、エルビラ環境大臣と共にニューヨークを訪問したエスピノサ外相は、スタニョ・コスタリカ外相と会談した。会談では、国連改革、プエブラ・パナマ計画(PPP)促進等について話し合われ、また2008年前半に二国間委員会を実施する事で合意した。
(ロ)エスピノサ外相は、ガルシア・ペルー外相とも会談し、両国間の貿易投資関係強化等について意見交換を行った。また、2008年にラテンアメリカの「太平洋の弧」イニシアティブに関する会合を開催するために緊密に協力していくことで合意した。
(ハ)また、エスピノサ外相は、国連会合のマージンで毎年開催されているリオ・グループ外相会合にも出席した。同会合では、議長を務めたモラレス・ドミニカ共和国外相より、最新のハイチ情勢に関する報告があり、また明年3月にサント・ドミンゴにて次回リオ・グループ首脳会合が開催されることが紹介された。
(ニ)さらにエスピノサ外相は、国連事務局次長(財政担当)であり、メキシコ人として国連で最高の地位にあるバルセナ氏とも会談した。両者は、国連の女性の地位向上に関する機関の改革について強調した。また、エスピノサ外相は、10月24日にメキシコシティで開催予定の国連設立周年行事へバルセナ氏を招待した。
(ホ)エスピノサ外相は、ライス米国務長官、バーナー・カナダ外相とのワーキングディナーにも出席した。
(2)25日
(イ)エスピノサ外相は、ソラナEU理事会事務総長兼CFSP上級代表、及びデルビシュUNDP総裁と会談を行った。
(ロ)また、プラスニック・オーストリア外相とも会談を行い、その際、プラスニック外相からエスピノサ外相(注:前在オーストリア大使)に対し、叙勲が行われた。
(ハ)エスピノサ外相は、エチオピアと、共通関心分野での協議メカニズム設立のための覚書に署名した。またエスピノサ外相は、アウトリーチ5諸国外相との会談にも出席した。
(3)26日
(イ)エスピノサ外相は、ペレス・キューバ外相と会談し、両国関係改善へ向けた双方の関心を確認した。また、両国間の貿易投資関係、人権分野での協力、墨国営貿易銀行へのキューバ政府の債務、並びに移民及び人身取引分野における協力等について話し合われた。特に移民及び人身取引問題に関して、近い将来一体的な協力スキームを立ち上げる事の重要性で意見が一致した。さらに、外相レベルでの相互訪問につき、意見交換を行った。
(ロ)エスピノサ外相は、アラウッホ・コロンビア外相と会談した。両外相は、二国間の重要課題について評価を行い、組織犯罪との戦いにおける両国の努力に関する意見交換を行った。また、アラウッホ外相は、11月にグアダラハラで開催される図書展に出席するため、メキシコを訪問することを表明した。
(ハ)エスピノサ外相は、アンデス共同体加盟各国との政務協力協議メカニズム第1回会合に出席した。参加各国は、メキシコ・EU包括協定締結に関し、特に政務協力分野におけるメキシコの知見を共有することで合意した。
(ニ)エスピノサ外相はこの他、モラティノス・スペイン外相、及びフォックスレイ・チリ外相と会談を行った。また、ケニア及びルワンダと共通関心分野における協議メカニズム設立のための覚書に署名した。
(4)27日 
(イ)エスピノサ外相は、アウトリーチ5カ国(楊中国外相、ムカジー印外相、ドラミニ=ズマ南ア外相、及びバルガス伯外務副大臣)で会談を行い、G8サミットや国際会議における参加の今後と、ハイリゲンダムサミットに対する協力連携体制について意見を交換した。また、エスピノサ外相は、本年8月にメキシコ・モレリア州で実施された外務次官級会議において、五カ国間での協力連携のインセンティブの必要性について話し合われたことに触れ、そのためメキシコを向こう一年間、アウトリーチ5の調整役及びG8との交渉役に指名することで合意した旨述べた。

 
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