<概要>
内政では、麻薬組織の幹部が相次ぎ逮捕された一方、地方政府幹部が殺害される事件も相次ぎ発生。また、客月に引き続き、全国各地で刑務所暴動が相次いだ。エネルギー改革法案、2009年度予算案が成立したほか、地方選ではPRIが勝利した。
外交では、メキシコが2009−2010年国連安保理非常任理事国に選出された。また、キューバのペレス・ロケ外相が訪墨、不法キューバ移民を本国送還することを可能にする覚書に署名した。
<クロノロジー>
1.麻薬組織幹部の逮捕
20日 メキシコ市リンダ・ビスタ地区で、シナロア・カルテルのリーダーの一人、ヘスス・レイナルド・「エル・レイ」・サンバダを含む16名が逮捕される。2月に発生したチャプルテペック通りでの爆破事件の首謀者との見方が強い。
26日 ティファナ・カルテルを構成するアレジャノ・フェリックス兄弟の一人、エドゥアルド・アレジャノ・フェリックス(通称:エル・ドクトール)がティファナ市における銃撃戦の後に逮捕。
2.地方政府幹部の殺害
4日 メキシコ州イスタパン・デ・ラ・サル市のベルガラ(Salvador Vergara Cruz)市長が殺害される。一ヶ月ほど前から商店が麻薬組織「ラ・ファミリア」による脅迫を受けていた他、同市に隣接する地域で、この地域出身でない者がケシ栽培をしていると市長自身が述べていた。
23日 ディミトリアディス(Andres Dimitriadis Juarez)モレロス州公共治安庁組織犯罪担当次官がメキシコ市−クエルナバカ間の高速沿いで2台の自動車に進路を妨害された上襲撃され、2名のボディーガードと共に殺害される。ベルトラン・レイバ兄弟のカルテルあるいはフアレス・カルテルが関与している疑い。
3.刑務所での暴動
7、8日 ヌエボレオン州モンテレイ市トポ・チコ刑務所で暴動が発生、負傷者3名が負傷。12日、サカテカス州サカテカス市シエネギージャス刑務所で暴動が発生、負傷者2名が負傷。13日、シナロア州クリアカン市クリアカン刑務所で暴動が発生、2名が死亡、7名が負傷。
12日、13日 サカテカス州のシエネギージャス(Cieneguillas)で暴動が発生。警察300名を投入して8時間後に鎮圧。受刑者の中に危険性の高い「ロス・セタス」の関係者が含まれていることから、同受刑者を別の刑務所に移すよう要求したもの。
13日 シナロア州クリアカン市の州刑務所で銃撃戦。刑務所内の受刑者のグループ同士が共有スペースで銃撃、受刑者2名が死亡、7名が負傷。どのようにして受刑者が銃器を入手したのか捜査中。
20日 未明、タマウリパス州レイノサ市のレイノサ刑務所において暴動が発生し、囚人21名が死亡(うち16名は焼死)した。同暴動の原因は、刑務所内のふたつのグループが麻薬の販売や囚人の庇護といった刑務所内の覇権を巡り対立したためと見られている。
4.地方選挙結果
5日 ゲレロ州で州議会選挙及び市長選挙が実施され、制度的革命党(PRI)が州議会議員選挙の選挙区で13議席(単独11議席、緑の党との統一候補2議席)を獲得し、民主革命党(PRD)と同数の議席となった。市長選挙では、81市中45市でPRIが勝利を収めた(うち単独40市、緑の党との統一候補5市)。ミジャンPANゲレロ州事務所代表は、ペニャ・メキシコ州知事がタスコ市を中心として資金や運動員を投入するなど干渉をしたと非難をした。
19日 コアウイラ州議会議員選挙が実施され、PRIが単独で18議席、コアウイラ民主統一党(UDC)との連合で2議席(実質PRI:1議席、UDC:1議席)を獲得し、完全勝利。
5.2009年度予算の成立
8日 行政府、2009年度歳入予算案を提出。
15日 連邦下院で2009年度修正歳入予算案が可決。
21日 連邦上院で2009年度修正予算案が可決、成立。09年の経済予測値はGDP成長率1.8%、石油輸出価格70ドル/バレル、為替11.7ペソ/ドル。歳入総額3兆454億7900万ペソ。
6.その他
<内政>
8日 カルデロン大統領は、世界的金融危機によるメキシコへの影響を軽減するための歳出主導型の緊急経済対策「経済成長及び雇用促進のためのプログラム」を発表、その中で、石油精製施設の新設などメキシコ石油公社(PEMEX)のインフラ投資を促進する諸計画を提案。
16日 組織犯罪捜査専門次官室(SIEDO)、客月12日にメキシコ州ウイスキルカン市ラ・マルケサで発生した24名の大量処刑殺人死体放置事件に関し、容疑者の2名を逮捕。うち1名はウイスキルカン市警察の現役警察官。
19日 カルデロン大統領、治安関係機関の協力強化のため、ホルヘ・テージョ・ペオン(Jorge Tello Peon)氏を連邦政府治安分野顧問に任命。組織犯罪および麻薬関連の犯罪に関し、連邦検察庁(PGR)、公共治安省(SSP)、国家安全調査局(CISEN)の調整を担う。
21日 カルデロン大統領、警察組織改編のために連邦警察法、PGR基本法を連邦下院に提出。
23日 米国政府よりメキシコ政府に送付された外交文書により、コロラド・ゴンサレスSIEDO技術調整官は、1997年から2008年8月13日までの間、麻薬組織シナロア・カルテルと癒着しており、警察及び軍が実施する同組織の取締り作戦に関する機密情報を流していた容疑が判明。ベルトラン・レイバ兄弟の麻薬グループとの関連も指摘され、米国側は同日、コカイン生産配給の容疑でコロラド調整官に対する裁判手続きを開始し、犯罪人引渡しのためメキシコ政府に逮捕を要請した。メキシコ側はその要請を受け、が、犯罪組織に機密情報を漏洩した容疑でコロラド調整官を逮捕した。現在、コロラド調整官はハリスコ州プエンテ・グランデ刑務所に収容されている。
28日 連邦下院、進歩主義包括戦線(FAP)の一部議員が議場占拠するも、同じ本会議場内で7つのエネルギー改革法案を可決、成立させる。議場占拠に対し、連邦上院PAN、PRI、PRD各会派長が批判。
28日 第3回犯罪対策フォーラムに出席したカルデロン大統領、SIEDOを皮切りに、汚職による麻薬組織への情報漏洩を防止するため、幹部から「浄化(limpieza)」を開始し、これは他の機関、下部に至るまで実施すると発言。
29日 米国政府、在墨米国大使館における麻薬組織への情報漏洩疑惑を受け、米麻薬取締局(DEA)とPGRの協力による合同捜査を実施すると発表。スパイ行為に関しては、大使館警備部およびFBIの責任についても追求する。捜査は米国国務省および司法省が担当し、最終的な結論が出るまで詳細は明らかにされない見込み。
31日 ガライPFP長官がベルトラン・レイバ兄弟の麻薬グループに絡む収賄及びコロンビア人麻薬取引関係者宅において金品を盗んだ容疑で逮捕。
<外交>
1日 9月29日から訪墨中のフェリペ・スペイン皇太子及びレティシア皇太子妃は、第一回イベロアメリカ文化会議の開会式に出席。
7日(〜10日) エスピノサ外相がロシア及びクロアチア共和国を公式訪問。ロシアではラヴロフ露外相と会談。クロアチアでは、メシッチ・クロアチア大統領の表敬訪問、ヤンドロコビッチ外相との会談、サナデル首相およびズボビッチ・クロアチア議会外交委員会委員長と会談を行った。
14日 メキシコはコモロ連合との外交関係を樹立。この外交関係樹立によって、メキシコは、アフリカ大陸を構成する54ヶ国のうち、53ヶ国と外交関係を有することになる。
15日 サカ・エルサルバドル大統領が訪墨。カルデロン大統領と会談し、教育および住居に関する合意文書に署名。
16日 ウォルタース米国家麻薬管理政策局(ONDCP)長官、訪墨。メディナ=モラPGR長官と会談。ウォルタース長官は、現在も割り当てに関し米国議会で審議中のメリダ・イニシアティブの早期資金割り当てを決定し、メキシコに送るよう推進すると述べる。
17日 メキシコ、2009−2010年国連安保理非常任理事国に選出される。
19日(〜21日) キューバのペレス・ロケ外相が訪墨。モウリーニョ内相と共に、メキシコに不法入国するキューバ国民を入国の方法にかかわらず(陸路及び海路の双方が対象)本国送還することを可能にする「合法で秩序ある安全な移民流入を保障するためのメキシコ・キューバ間覚書」に署名。また、カルデロン大統領およびエスピノサ外相と会談。
22日 ルッド豪首相の特使としてウールコット大使が訪墨し、エスピノサ墨外務大臣と会談を行った。
22〜23日、ライス米国務長官がハリスコ州プエルト・バジャルタ市を訪問し、エスピノサ外相と会談し、NAFTA、移民問題、メリダ・イニシアティブ党について話し合った。
31日(〜11月4日)ルーゴ・パラグアイ大統領訪墨。カルデロン大統領と会談。
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