在メキシコ日本国大使館

政務班

2008年2月のメキシコの内政・外交の概要

＜概要＞
内政では、連邦下院本会議において、連邦選挙機関新議長を含む３名の新評議員への信任投票が実施され、バルデス元メキシコ市選挙機関評議員が新議長、ナシフ経済研究教育学院教授及びバニョス元ＩＦＥ人事課長がそれぞれ評議員に選出された。また、メキシコ市内で爆破事件が発生、組織犯罪が事件の背後に浮かび上がっている。
外交では、カルデロン大統領が就任後初となる訪米を実施した他、コロン・グアテマラ大統領が訪墨、カルデロン大統領と首脳会談を行った。

＜クロノロジー＞
１日　　ベラクルス州内にあるサトウキビ畑で手榴弾が爆発、サトウキビの刈り取りに従事していた少年が死亡、１名が負傷。爆発はメキシコ石油公社（ＰＥＭＥＸ）のパイプラインから８０ｍしか離れていないところで発生したことから、軍及び警察、捜査に乗り出す。（治安）
１日　　連邦議会春期通常会期開会。（内政）
１日　　メトロポリタン自治大学（ＵＡＭ）独立組合、教職員の賃上げ、新規ポストの創設などを求めスト開始。学生４万５千人、研究者３千人、職員１万人に影響が出る。（治安）
１日　　ベルトローネス連邦上院政策調整委員長（制度的革命党（ＰＲＩ）所属）、エネルギー改革に関し、ＰＲＩのイニシアティブであること及び憲法２７条の改正がない限りは、国民行動党（ＰＡＮ）或いは民主革命党（ＰＲＤ）のどちらとでも組む用意があると述べる。一方ナバレテ連邦上院ＰＲＤ会派長、ＰＥＭＥＸの民営化が実現しないよう働きかける意向を示す。２日、ＰＥＭＥＸ、連邦議会に対し「２００８年投資プログラム及び計画立案」を提出。民間企業の参入を可能にする法改正の可能性を示唆。５日、ロペス・オブラドール元大統領候補（以下ＡＭＬＯ）、テレビ・スポットＣＭを通じ、「石油保護の行動指針」と名づけられたＰＥＭＥＸ民営化反対のために行う一連の活動について明らかに。８日、ＡＭＬＯ、集会でＰＥＭＥＸの民営化反対のため、２４日ＰＥＭＥＸタワー前で抗議活動を呼びかける。一方カルデナス元大統領候補、「未だ提出されていない法案に対し、何の根拠をもって反対しているのか。誰も民営化については提案していない」とし、ＡＭＬＯの姿勢を批判。また、ＰＥＭＥＸは、自社の財政を投資に使用できるようすべきであるとも。１２日、ＰＡＮ及びＰＲＩ所属の連邦議会議員、ＡＭＬＯが示した企業家に対するＰＥＭＥＸ民営化のためのエネルギー改革案の存在を否定。１３日、進歩主義包括戦線（ＦＡＰ）、ＰＥＭＥＸの民営化反対のため、メキシコ市空港や議会を始めとする少なくとも１５０ヶ所で封鎖を実施することを発表。サバレタ連邦下院議長、今期連邦議会開催中にＰＥＭＥＸの民営化や民間企業の参入案は、十分な支持が得られていないため成立しないと発言。他方、カマリージョＰＡＮ連邦上院エネルギー委員会書記は、石油産業改善のため、努力している旨述べる。１４日、カルデロン大統領、エネルギー改革に関し、メキシコが採りうる道は現状維持、社会（開発）部門予算のＰＥＭＥＸへの補填、もしくは民間資本が石油事業に参入している国々の経験導入の検討の３つしかないと述べる。１７日、ナバレテＰＲＤ連邦上院会派長、同党がエネルギー改革の妨害を計画していると述べる。２２日、マルティネスＰＡＮ党首、エネルギー改革に関し「法案も合意もない」とＰＲＩと合意に達した旨の報道を否定。２１日、カルデナス元大統領候補、連邦下院で特別講演を行い、憲法で保障されている天然資源の所有を犯さない範囲で、国内外の企業が石油事業に参入するのは問題ないとの意見示す。２２日、カンクン市で集会を行ったＰＲＩ、ＰＥＭＥＸの民営化に反対する一方、憲法改正を伴わない範囲で財政面などの改革を実施し、財政の健全化、近代化及び競争力の強化を進める目的で法律の検討を行うことで一致。２４日、ＡＭＬＯ、「石油保護のための全国運動（Movimiento Nacional por la Defensa del Petroleo）」の活動の一部として、ＰＥＭＥＸタワー前で抗議活動を展開。エネルギー改革法案が提出されれば、連邦議員による議員スト、市民による連邦及び市町村政府庁舎前でのストを展開し、それでも法案を取り下げなければ空港、石油・金融関連施設の包囲、高速道路の封鎖などを全国で展開するとの概要を明らかに。（内政・治安）
３日　　　バハ・カリフォルニア・スール州及びキンターナ・ロー州で州議会議員選挙及び市町村長選挙実施。バハ・カリフォルニア・スール州では、ＰＲＤ、労働党（ＰＴ）及び結集党の連合「南カリフォルニアの利益のための同盟（Coalicion Por Bien de Sudcalifornia）」が、州議会議員で１６議席中１４議席、また市町村長は５都市全てで勝利。キンターナ・ロー州では、ＰＲＩが、州議会議員では１５議席中１４議席、また市町村長は８都市中６都市で勝利。同州最大の都市であるカンクン市を抱えるベニート・フアレス選挙区では、ＰＲＤ及びＰＲＩの両候補者が勝利宣言をしたが、いずれの候補も全票数え直しを受け入れた。１３日、ベニート・フアレス選挙区の票数え直しの結果、サンチェスＰＲＤ候補の当選が確定。（内政）
３日　　ＰＲＤ、ＩＦＥ新議長にゴンゴラ最高裁判事の名が上がらなかった時のために、複数の評議員の選択肢を挙げていると、ゲラＰＲＤ連邦下院議員が明らかに。５日、ＩＦＥの評議員候補として、新たにＰＲＤはサンティアゴ、ＰＡＮはシャボット或いはナシフ（Benito Nacif）経済研究教育学院（ＣＩＤＥ）教授、ＰＲＩはバニョス（Marco Antonio Banos）元ＩＦＥ人事課長（Director Ejecutivo del Servicio Profesional Electoral）を推薦。７日、ＩＦＥの新議長を含む評議員３名、バルデス（Leonardo Valdes）元メキシコ市選挙機関（ＩＥＤＦ）評議員、ナシフＣＩＤＥ教授及びバニョス元ＩＦＥ人事課長が選出される。８日、ＩＦＥ臨時議会が開催され、新評議員が就任。バルデス新議長は就任の挨拶の中で、ＩＦＥはメキシコにおける民主主義の柱となり続けなければならず、市民に対し、同機関が義務を遂行しているか監視するよう呼びかける。各政党からの発言では、緑の党が公平性を求め、新同盟党は新評議員選出方法を批判、ＰＲＤは投票用紙を燃やさぬよう求め、ＰＡＮは不正疑惑に終止符を打つよう求める。（内政）
５日　　ＮＡＦＴＡ再交渉を巡り、大統領府政府代表と全国農民連合（Confederacion Nacional Campesina）代表の間で対話が行われる。カルデロン大統領、対話の用意があると述べる。また、関係閣僚に対し、①農地のためのプログラム実施規定（Reglas de operacion de los Programas para el Campo）、②国家農地協定（Acuerdo Nacional para el Campo）、③今年より関税が控除されている四品目（トウモロコシ、豆、牛乳、砂糖）と関連した分野に配慮するための特別プログラム、④移民を多く排出する地域のための雇用プログラム、及び⑤メキシコ持続可能な地方開発審議会のための法規（Reglamento para el Consejo Mexicano de Desarrollo Rural Sustentable）の農業分野での５つの懸案事項を解決するため努力をするよう通告。７日、全国農民連合（Confederacion Nacional Campesina, CNC）など農民団体、ＮＡＦＴＡの成功を印象づける趣旨の政府ＣＭの廃止及び新たな交渉役の任命を条件に、政府と交渉の用意があると述べる。１６日、政府、農民側に対し、交渉役はロサノ労働相であると再確認。２０日、農民団体、ロサノ労働相の交渉役を受け入れるも、前段階として、モウリーニョ内相との会合を希望。モウリーニョ内相は右を受け入れ、3月5日に会合を行うことが決定。（内政・外交）
５日　　カルデロン大統領、ブッシュ米大統領と電話会談を行う。ブッシュ大統領、組織犯罪との戦いにおけるメキシコ政府の努力を評価。一方、カルデロン大統領は、組織犯罪と共に戦っていく中で武器密輸との戦いが重要である点を強調。（外交）
５日　　当地「エル・ウニベルサル」紙、２００８年第１四半期の大統領支持率を６６％、１０段階評価を６．９と発表。（内政）
６日　　カルデロン大統領、国家インフラ基金の設立を発表。５年間で２，７００億ペソの予算。これにより、２００８年は１０万件の雇用創出を目指す。（内政・経済）
６日　　アギレラ駐墨キューバ大使、メキシコとの国交正常化に向け、外相の相互訪問を実現させる可能性がある、と述べる。（外交）
７日　　カンペチェ州で開催予定であった全国州知事会議、ウルタード・カンペチェ州知事の実父逝去により延期。２９日、カンペチェ州で開催された全国州知事会議エネルギー小委員会において、石油生産に関わる６州（ベラクルス州、タバスコ州、タマウリパス州、カンペチェ州、チアパス州及びサン・ルイス・ポトシ州）が、採掘に支払われている税金が州の収入となるよう、エネルギー改革のイニシアティブ提出も含め、生産州として協力することで一致。（内政）
８日　　オアハカ州の第２２教職員組合の教職員約７万人、支部執行部の交代及びオアハカ人民会議（ＡＰＰＯ）の指導者、フラビオ・ソサの釈放を求めてデモ行進。１万３，５００の学校が閉鎖されて授業中止。１５日、第２２教職員組合、支部執行部選挙の公示を求め、学校での授業を中断。１２０万人の学生に影響。（内政・治安）
９日　　連邦検察庁、湾岸カルテル、次いでティファナ・カルテル及びシナロア・カルテルが、メキシコ国内で武装化を拡大させている組織、また、タマウリパス州及びミチョアカン州が武器の減少した州であると分析。（治安）
１０日　　連邦上院海事委員会のカルデロン議員、昨年１０月２３日に発生したカンペチェ沖油田の火災に関し、ＰＥＭＥＸは寒冷前線が直撃することを承知しており、事故は防ぐことができたとし、災害に対応する人材の不足を非難。（治安）
１０日　　カルデロン大統領、訪米（～１４日）。エスピノサ外相及びカルステンス大蔵公債相と共にニューヨーク入りし、米国のオピニオン・リーダー、企業家及び投資家と夕食。投資のための税制改革を含む構造改革、治安対策及び法的確実性を協調。１１日、潘基文国連事務総長と会談。潘事務総長、メキシコの植林計画(PROARBOL)が、気候変動の影響を逆戻りさせ、地方部に住むメキシコ国民に機会を与えるものであると認識しているとし、また、国連薬物犯罪事務所（ＵＮＯＤＣ）はメキシコとの協力を更に強化していく旨述べる。同日、ボストン・ハーバード大学にて講演。１２日、シカゴ市内で移民との会合に出席。移民に対し、「政府がどのようなトーンで移民政策に関する戦略を推進すべきか、助言をして欲しい」と求める。また、デイリー・シカゴ市長及びブラゴエビッチ・イリノイ州知事と会談。１３日、サクラメント入り。カリフォルニア州議会で演説し、「移民は今日米国内で論争の的になっているが、カリフォルニア州の経済推進のために、メキシコ人及びメキシコ系米国人の存在は不可欠である」と強調。（外交）
１０日　　チャデルトン駐墨ベネズエラ大使、メキシコの製パン会社「ビンボ」ベネズエラ支社が、反チャベス政権勢力に資金提供をしていると非難。１２日、セルビトヘ・ビンボ製パン名誉会長、米州キリスト教民主主義機構（ＯＤＣＡ）にも、またその会長であるエスピノ前ＰＡＮ党首にも資金提供はしていないと、告発内容を否定。また、エスピノＯＤＣＡ会長、チャデルトン大使に書簡を発出、「プロの外交官とは軽率な判断をしないものである」と不十分な情報のままセルビトヘ名誉会長を批判した大使をけん制。（外交・経済）
１２日　　フェルナンデスＰＲＤ広報局長、スペインでの調査の結果、モウリーニョ内相の両親がスペイン生まれで、本人もスペイン人であり、公職に就く条件である「生まれながらのメキシコ人」には当たらないと明言。２２日、国家移住庁（ＩＮＭ）、モウリーニョ内相は１９９０年からメキシコ政府発行のパスポートを使用して海外から入国した記録があると言明。２４日、ＡＭＬＯ、「石油保護のための全国運動」の集会の中で、モウリーニョ内相がエネルギー省次官時代に、ＰＥＭＥＸとモウリーニョ内相の家族が経営する会社との契約に便宜を図ったとの確信があると発言。２７日、ＡＭＬＯが２４日連邦議員に提出した関係書類、ＰＥＭＥＸとモウリーニョ内相の家族が経営する会社が同意したサービス貸与協定に、モウリーニョ内相自身の署名が見られる。当時モウリーニョ内相はカルデロン・エネルギー相（当時）の顧問調整官を務めており、政治的影響力の不正使用容疑を示すものだと主張。２８日、モウリーニョ内相、スキャンダルを政治的に利用しようとしていると非難、ＦＡＰが刑事訴訟を起こす構えを見せているのに対し、必要書類は全て提出する、と抗戦の構えを見せる。（内政）
１２日　　結集党及び労働党、政党の規模に拠る公的政治資金の配分方法が、少数政党にとって不利になるとして、連邦最高裁判所に対し、連邦選挙法（Cofipe）の一部無効を求める。（内政）
１２日　　モウリーニョ内相、内相に就任後初めて、洪水被害のあったタバスコ州入り。同州での洪水を教訓に危機管理の文化構築に生かしたいと発言。（内政・治安）
１３日　　メキシコで初めて、男性の育児休暇が認められる。（内政）
１３日　　メキシコ市内でシナロア・カルテルの武器密輸集団７名逮捕される。うち１名は元ドゥランゴ州ドゥランゴ市警察官、２名は元軍人。（治安）
１３日　　バハ・カリフォルニア州、チワワ州、ソノラ州でそれぞれ２名が処刑殺人される。バハ・カリフォルニア州ティファナ市では、遺体に麻薬組織からのメッセージが添えられており、麻薬組織対連邦治安当局との対立が増大していることを示唆。（治安）
１３日　　ヒューマン・ライト・ウォッチ（ＨＲＷ）のビバンコ氏、国家人権委員会（ＣＮＤＨ）の人権保護は制限されていると批判。特に、軍のオペレーション参加により、女性への性的暴行や拷問、不法逮捕などの事案が発生しているものの、これに対し軍事裁判にかけず、軍人を保護している点を指摘。（治安）
１４日　　ＡＭＬＯ、３月に実施されるＰＲＤ党首選挙においてエンシーナス（Alejandro Encinas）候補への投票を促す私的書簡を有権者に送付していたことが判明。受取人の住所などの個人情報を含む。同党規約によれば、党選挙管理委員会が定める方法以外での活動をした場合、立候補者が失格となるため、エンシーナス候補の立場が問題に。１５日、オルテガ（Jesus Ortega）、バレンスエラ（Camilo Valenzuela）、ラミレス（Alfonso Ramirez Cuellar）の各ＰＲＤ党首候補、エンシーナス党首候補への投票を促すＡＭＬＯの署名入り書簡がＰＲＤ支持者に届いたことを受け、出所及び送付先についての調査を求める。２０日、ＰＲＤ党首選挙に立候補のオルテガ、エンシーナス、ラミレス、バレンスエラ、ナバロ（Dina Navarro）及びレオン（Miguel Leon）の各候補による第一回公開討論会開催される。各候補共、派閥主義及び党内部の腐敗体質を批判。基本的に全ての候補者が派閥による分断に終わりを告げるという方向性で一致。２４日、ＰＥＭＥＸタワー前で実施された「石油保護のための全国運動」集会で、一部の急進派が集会に参加したナバレテ連邦上院ＰＲＤ会派長に罵声を浴びせた他、暴力行為に及ぶ。また、ゴンサレス連邦下院ＰＲＤ会派長に対しても、ＡＭＬＯの援護にもかかわらず罵声が浴びせられる。２５日、２４日の会派長に対する攻撃に関し、オルテガＰＲＤ党首候補、数ヶ月前から「憎悪と根拠のない疑い、単なる思想の違いから支持者を迫害すると言うような空気が感じられていた」と述べる。ナバレテ連邦上院ＰＲＤ会派長、ＡＭＬＯの責任を追及。また、陰でベルハラノ元メキシコ市内務長官（Director General del Gobierno del D.F.）が、自らが創設した派閥である全国民主左派（Izquierda Democratica Nacional）を通じ、２４日の集会への支援を呼びかけていたとも。ＡＭＬＯはこれを否定。２７日、ＰＲＤ党中央執行部、ＡＭＬＯのエネルギー改革に対する姿勢を支持するか否かを巡り、臨時の全国評議会の開催を満場で一致。２９日、エンシーナス党首候補、ベルハラノ元メキシコ市内務長官との関係を否定。（内政）
１５日　　メキシコ市チャプルテペック通りの公共治安省建物近くで爆発が発生、１名が死亡、３名が負傷した他、周辺に駐車されていた車両３台、建物のガラスが破損。目撃者によれば、死亡した男性の手元で爆発が発生。負傷者女性タニア・バスケス氏、数日前に逮捕されたシナロア・カルテルのメンバーとされる「エル・チランゴ」の隣人であり、今回の鍵を握っているとの報道。１８日、爆発を手にして死亡した男性の身元、４４歳のメサ「エル・ピペン」（Juan Manuel Meza Campos, “El Pipen”）と判明。メキシコ市検察庁、他にも関係者が複数いる可能性を示唆。１９日、メキシコ市検察庁、爆破事件で死亡した「エル・ピペン」の兄弟、ヘスス・アルベルト・メサ（Jesus Alberto Meza Campos）氏、兄弟の遺体を探しにベラクルス州からメキシコ市に来たところをメキシコ市検察庁に証人として身柄拘束をされる。２０日、事件の背後にテピート・カルテル（麻薬売買を主たる活動とする地域型犯罪組織）の存在があると、捜査を強化。２１日、タニア・バスケス容疑者、公共の平安に反する罪で検察庁に起訴される。２３日、メキシコ市検察庁、テピート・カルテルのリーダー格で、１５日の爆破事件に関与した容疑が掛けられているアルダベ「エル・ゴルド」（Hugo Aldabe Larios, “El Gordo”）、ラミレス「エル・ナチ」（Daniel Ramirez Avila, “El Nazi”）及びエルナンデス「エル・オソ」（Gerardo Hernandez Cornejo, “El Oso”）の３名の身柄を拘束。２７日、１５日に発生した爆破事件はシナロア・カルテルが少なくとも１週間から準備し、メキシコ市公共治安庁「ペガサス」のリーダー、フリオ・セサル・サンチェス氏を狙ったものであるとタニア・バスケス容疑者及びカルラ・マリアデ・モンセラット・ゴンサレス容疑者発言。（治安）
１５日　　ゴドイミチョアカン州知事就任。（内政）
１７日　　イダルゴ州において州議会議員選挙が実施され、開票率９９．３４％時点で制度的革命党（ＰＲＩ）が新同盟党との連合「イダルゴのための連合（Unidos por Hidalgo）」で１２議席、ＰＲＩ単独で６議席を獲得し、圧勝した。得票率では民主革命党（ＰＲＤ）が１９．６４％で二番手、国民行動党（ＰＡＮ）が１２．７１％で三番手となった。投票率は３７．６％で、イダルゴ州選挙機関は、投票率の低さ認める。（内政）
１８日　　インスルサ米州機構事務総長、訪墨（～２０日）。治安問題を中心にエスピノサ外相と会談。（外交）
１９日　　キューバのカストロ議長引退を受け、墨外務省、早期の健康回復を希望すると共に、メキシコ政府は、数ヶ月前から開始した、両国間に相互に裨益する関係の再構築のための、二国間の接近に向けたプロセスを引き続き進展させていくことへの意思を繰り返し示す旨のプレスリリース発出。また、メキシコにとっての対キューバ関係の重要性に鑑み、メキシコ政府は民族自決及びキューバ国民の意思を完全に尊重しつつ、キューバ史の新たな段階におけるこの政治的出来事を注意深くフォローする、とも。同日、訪墨中のインスルサ米州機構事務局長、キューバの米州機構再編入を示唆。本２４日、墨外務省、ラウル・カストロ・ルス将軍が人民権力全国会議による新しい国家評議会議長に指名されたことに関するカルデロン大統領からの祝意書簡を発出したとのプレスリリース発出。（外交）
１９日　　連邦下院司法委員及び憲法問題委員会（Comision de Puntos Constitucionales）、連邦上院の修正を承認。今回の変更には憲法第１６条の改正（生命及び身の安全にすぐさま危険が及ぶ可能性がある場合、現行犯の場合、被疑者を物理的に尾行している場合、直ちに所轄の官庁に連絡することを義務として、警察は令状なしに家宅に入ることができる）も含まれる。２１日、内務省法務及び人権の各担当次官、司法改革の内容について連邦下院で新同盟党及び緑の党所属議員に説明を行う。前回選挙で反対票を投じた両党党員を取り込み、可決に必要な賛成票を獲得するため。２６日、司法改革法案、連邦下院本会議の投票にかけられ、賛成４６２、反対６、棄権２で可決。捜査令状なしの家宅捜索の許可で折り合いがつかず、条文の一部削除の修正があったため、再び連邦上院で審議される。（内政・治安）
１９日　　マルグレーテ２世デンマーク女王、訪墨。メキシコ・アステカ鷲勲章を受ける。２２日、マルグレーテ２世女王、カルデロン大統領と共にミチョアカン州を訪問。（外交）
２１日　　コロン・グアテマラ大統領、訪墨（～２３日）。２２日、カルデロン大統領、コロン大統領と会談。両首脳、コロン大統領就任式の際両国政府が１月１４日に合意した目標を達成していくために引き続き努力していくことを確認。また、国境横断についての必要性及び条件を分析するため、両国が共同で母体を構築していくことが指摘される。さらに、墨国家住居委員会(CONAVI)の調整の下、チアパス州とグアテマラの国境地帯における持続可能な住居に関する共同開発パイロット・プロジェクトの実現、並びに大規模植林、水源保存、及び地域における雇用創出を目指す国境地帯開発に関するプログラム促進を提案。（外交）
２２日　　連邦警察当局、メキシコ市内３ヶ所で捜索を実施、麻薬組織シナロア・カルテルの構成員１１人及び武器を押収。（外交）
２２日　　　タマウリパス州レイノサ市、マタモロス市及びヌエボ・ラレド市で軍が地方警察を捜査。２６日、国防省、タマウリパス州からヌエボ・レオン州にかけての組織犯罪掃討作戦に、約２，３００名の軍を投入したと発表。２９日、軍、タマウリパス州及びヌエボ・レオン州における麻薬組織掃討作戦強化及び湾岸カルテルの分派との対決のため、特別大隊１１０名を派遣。（内政・治安）
２５日　　カルデロン大統領、プローディ伊首相と電話会談を行う。プローディ首相、２６～２７日に予定されていた訪墨が不可能になった旨述べる。（外交）
２７日　　カルデロン大統領、グティエレス米商務長官と会談。二国間の重要なテーマである貿易、投資、陸上貨物輸送、知的財産権、及び農業セクターの開発等について意見交換を実施。カルデロン大統領は、現在進行中の、地域における競争力強化のために必要なインフラ計画等により、両国間の貿易・投資を引き続き促進することの重要性を指摘した。また、貿易インフラ及び製品配送の改善に向けた、農地生産者支援協力プログラムの発展が重要であるとも述べる。（外交）
２７日　　バハ・カリフォルニア・スール州ロス・カボス市で北米安全・繁栄パートナーシップ（ＡＳＰＡＮ）大臣級会合始まる（～２８日）。メキシコ側からはモウリーニョ内相及びソホ経済相、米国からはチャートフ国土安全保障長官及びグティエレス商務長官、カナダからはデイ公共安全相及びプレンティス産業相が出席。２９日、ＡＳＰＡＮ大臣級会合、最終日を迎える。話題の中心は地域安全保障。各国大臣は、地域、市民及び商業の保護なしに繁栄はない、という見解で合意。カルデロン政権の組織犯罪との戦い振りについて、チャートフ米国土安全保障長官、「三ヵ国に多大な被害を及ぼしている組織犯罪に対する素晴らしい戦い振りは、模範的である」と政府の活動を評価。また、メキシコに対し、武器の密輸対策を推進するため、武器のシリアルナンバー及び輸入について、更なる情報を求める。（外交・治安）

＜内政＞
１．連邦選挙機関議長及び評議員の交代
（１）７日午後、連邦下院本会議において、連邦下院執行部が提出した連邦選挙機関（ＩＦＥ）新議長を含む３名の新評議員への信任投票が実施された。議長に挙げられたバルデス（Leonardo Valdes）元メキシコ市選挙機関（ＩＥＤＦ）評議員は、賛成３９８票、反対４３票、棄権３票を獲得、評議員に推薦されたナシフ（Benito Nacif）経済研究教育学院（ＣＩＤＥ）教授及びバニョス（Marco Antonio Banos）元ＩＦＥ人事課長（Director Ejecutivo del Servicio Profesional Electoral）は、賛成３８７票、反対５４票、棄権３票でそれぞれ承認された。
バルデス新議長は２０１３年までの６年任期で再選可能であり、一方ナシフ、バニョス両新評議員は、２０１６年１０月３０日までの９年任期を務める。
（２）これに伴い今回解任されたのは、既に辞任をしたウガルデ（Luis Ugalde）元議長、モラレス（Rodrigo Morales）評議員及びラタピ（Alejandra Latapi）評議員であり、本年８月１５日にはアルボ（Andres Albo）評議員（当館注：ウガルデ元議長の辞任に伴い、議長職を務めていた）、ゴンサレス（Maria Teresa Gonzalez）評議員及びロペス（Lourdes Lopez）評議員が解任される予定である。なお、アンドラーデ（Virgilio Andrade）評議員、ゴメス（Marco Gomez）評議員及びサンチェス（Arturo Sanchez）評議員については、任期満了となる２０１０年１０月３０日まで評議員を続投する。
（３）新評議員の就任にあたっては、主要三政党との関係が注目されている。
（イ）バルデス新議長の就任にあたっては、バルデス議長がウンベルト・カスティージョ（Humberto Castillo）を中心とするメキシコ労働党（ＰＲＤの前身）の一部門の出身であり、カスティージョの娘であるラウラ・イツェル・カスティージョ（Laura Itzel Castillo）の夫でもあったことから、ＰＲＤとのつながりがあるとされている一方、ＰＲＤ党内でバルデス議長を推薦したヌニェス（Arturo Nunez）は、現在ＰＲＤ党内選挙の監視員を務めているが、元ＰＲＩ党員であり、ＰＲＩのベルトローネス上院政策調整委員長派であることから、見えないところでベルトローネス委員長とのつながりもある。
（ロ）一方、バニョス評議員は、アラニス長官と共にコンサルタント会社「デモス」を設立している他、ベルトローネス委員長の提案で設立された国家改革実行委員会で協力していたという経緯がある。また、連邦議会交渉・合意形成実行委員会（Comision Ejecutiva de Negociacion y Construccion de Acuerdos）の主要顧問の一人でもある。さらに、社会民主主義代替党外部顧問も務めていた。

２．メキシコ市における爆破事件
（１）１５日、午後２時３０分頃、メキシコ市チャプルテペック通りとモンテレイ通りの角付近の路上において、爆発装置が爆発し、１名が死亡し、４名が負傷及び自動車３台のガラス及び現場近くの建物のガラスが破損した。
（２）同場所において２回爆発が起こった。
（３）死亡した男性（３５才～４０才）は腕が切断され、内臓が破裂しており爆発直前に同装置を操作していた可能性がある。

＜外交＞
１．米墨関係
（１）墨米首脳電話会談
（イ）５日、カルデロン大統領は二国間関係の様々なテーマについて意見交換を行うため、ブッシュ米大統領と電話会談を行った。
（ロ）ブッシュ大統領は組織犯罪との戦いにおけるメキシコ政府の努力を評価し、４日に米国連邦議会へ提出された予算案にメリダ・イニシアティブのための予算が含まれることを確信している旨重ねて述べた。一方、カルデロン大統領は、組織犯罪と共に戦っていく中で武器密輸との戦いが重要である点を強調した。
（ハ）両首脳は、墨米両国の経済状況につき意見交換を行い、ブッシュ大統領は先般承認された景気刺激策が米国の企業及び消費者に裨益し、それによって両国間の経済貿易関係が安定すると確信している旨述べた。一方、カルデロン大統領は、墨連邦議会が承認すれば実現する米国への実務訪問について触れ、またメキシコ政府として、米国在住のメキシコ国民の利益を擁護すると重ねて強調した。
（ニ）両首脳は、ニューオーリンズで４月に行われる北米安全・繁栄パートナーシップ（ＡＳＰＡＮ）首脳会合において会うことへの関心、並びに移民、金融貿易面での連携促進、及び組織犯罪との戦い等、二国間の重要な案件につき引き続き意見交換を行うことを確認した。
（２）カルデロン大統領の訪米
（イ）１０日
・カルデロン大統領、エスピノサ外相及びカルステンス大蔵公債相と共にニューヨーク入りし、米国のオピニオン・リーダー、企業家及び投資家と夕食。投資のための税制改革を含む構造改革、治安対策及び法的確実性を協調。
（ロ）１１日
・潘基文国連事務総長と会談を行う。潘事務総長、メキシコの植林計画(PROARBOL)が、気候変動の影響を逆戻りさせ、地方部に住むメキシコ国民に機会を与えるものであると認識しているとし、また、国連薬物犯罪事務所（ＵＮＯＤＣ）はメキシコとの協力を更に強化していく旨述べる。
・「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙の編集委員との会談では、構造改革の達成による利益について触れた。
・ゲイトナーニューヨーク連邦準備銀行総裁と会談。
・スピッツァーニューヨーク州知事と会談。
・ハーバード大学で、経済、移民現象、米墨関係、ラテンアメリカ情勢について講演を行った。その中で、「米国経済は現在苦境に立たされている。しかし、競争力不足の解決策に（中略）国境を閉鎖するという考えを持っているとすれば、とてもとても重大な間違いを犯している。」「我々が持ちうる唯一、本当の機会は、より生産的かつ競争力を持つよう我々の市場を統合することである。」と述べた。同席には、同行中のサルカン駐米大使、エスピノサ外相、カバソス・コリマ州知事、オリバ・グアナファト州知事、コルタサル大統領府報道官の他、ハーバード大学に勤務するウガルデ元ＩＦＥ議長の姿も。
（ハ）１２日
・シカゴ市内で移民との会合に出席。移民に対し、「政府がどのようなトーンで移民政策に関する戦略を推進すべきか、助言をして欲しい」と求めた。
・デイリー・シカゴ市長と会談、移民労働者の権利尊重を求めた。
・ガルシア・サカテカス州知事と共にブラゴエビッチ・イリノイ州知事と会談。イリノイ州政府が推進する「全ての子供」プログラムにより、移民であるか否かに関係なく子供が平等に医療サービスを受けられる制度に謝意を述べる。ブラゴエビッチ知事、メキシコとの更なる関係強化を訴えた。
・中西部の最重要企業役員と会談。
・メキシコ人コミュニティによるレセプションに参加。
・ジェシー・ジャクソン師と会談。
（ニ）１３日
・カリフォルニア州サクラメント入り。カリフォルニア州議会で演説し、加州・メキシコ間の経済関係の強化、国境警備強化及び環境保全に係る連携を訴えた。
・シュワルツェネッガー加州知事と会談を行い、地球温暖化に対する取り組みとして今後３年間で両国が共同してアクションプランを作成することを内容とする文書に合意した。
・ヌニェス加州議会議長と会談。
・メキシコからの移民者が所有するソノマ市内のワイナリーを訪問。
・ロサンゼルスの移民労働者と面談。

２．カルデロン大統領とコロン・グアテマラ大統領の会談
（１）カルデロン大統領は、訪墨中のコロン・グアテマラ大統領と会談した。会談において、両首脳は両国政府が１月１４日に合意された目標を達成していくために引き続き努力していくことを確認した。また、カルデロン大統領は、二国間関係及び両国間国境が近隣関係と発展の模範となるよう、メキシコ政府としてグアテマラと共に取り組んでいく旨繰り返し述べた。さらに、国境横断についての必要性及び条件を分析するため、両国が共同で母体を構築していくことが指摘された。
（２）一方で、カルデロン大統領はコロン大統領に対し、国家住居委員会(CONAVI)の調整の下、チアパス州とグアテマラの国境地帯における持続可能な住居に関する共同開発パイロット・プロジェクトの実現、並びに大規模植林、水源保存、及び地域における雇用創出を目指す国境地帯開発に関するプログラム促進を提案した。
（３）両首脳は、国境の安全保障に関するハイレベル・グループ(GANSEF)がより重要性を持ち、安全保障に関するより多くのイニシアティブに対応できるよう、同グループの強化の可能性を探るため、双方の担当当局に指示することで意見が一致した。
（４）最後に、両首脳は、双方の国を移動する移民、特に女性と子どもの人権尊重に配慮していくことを約束した。

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