政務班

2008年3月のメキシコの内政・外交の概要

 

<概要>

 内政では、エネルギー改革法案提出を巡る各党の動きが激しくなった他、モウリーニョ内相の政治的圧力の不正な行使疑惑に関する特別調査委員会が連邦下院で設置された。さらに民主革命党(PRD)の党首選挙が実施されるも、結果は出ていない。

 外交では、コロンビア軍がエクアドル領土内のコロンビア人民革命軍(FARC)拠点への爆撃を実施したことに関し、外交関係の緊張が高まっただけでなく、同爆撃によりメキシコ人学生4名が死亡、1名が負傷していたことが明らかになった。

 

<クロノロジー>

1.コロンビア軍のエクアドル領内爆撃(外交・治安)

2日  コロンビア軍による国境地帯での爆撃によるエクアドル及びベネズエラの国交断絶を受け、カルデロン大統領は、コレア・エクアドル大統領及びウリベ・コロンビア大統領と電話会談し、両国に平和的解決を求める。

5日  オソリオ駐墨コロンビア大使は、メキシコ政府はコロンビアがメキシコ国内でFARCの調査を行うことを許可したと述べる。他方エスピノサ外相はこれを否定。

7日  墨外務省、FARCへの爆撃の際、負傷したルシア・モレット氏以外に少なくとも4名の死亡者が含まれていることを明らかにする。

同日  モウリーニョ内相は、メキシコ国内にFARCの分子が存在している証拠はないと述べるも、詳細は調査が終了するまで公開しないと述べる。

10日  米州機構(OAS)使節団は、エクアドル軍病院に入院中のモレット氏と面会。モレット氏、インスルサOAS事務局長に対し、滞在は学術目的であったと訴える。

12日  インスルサOAS事務局長は、爆撃で死亡したメキシコ人学生の家族が国際社会に対しコロンビア政府非難を訴えている点につき、「もし彼らが証拠を持っているのであれば、OAS理事会及び議会、OAS事務局或いは人権侵害が認められた場合は国際人権委員会へ訴える方法がある」と、告訴の道を提示。

16日  カルデロン大統領、コレア・エクアドル大統領と電話会談を行う。会談において、コレア大統領はリオ・グループ首脳会合における合意へのメキシコの貢献について謝意を述べる。一方、カルデロン大統領は、会合の成果に満足している旨述べ、また、当該地域において情勢が改善するよう引き続き取り組むべきであり、その中でメキシコも協力していく旨発言。

17日  エスピノサ外相は、OAS外相級会議に出席、FARC拠点爆撃によるエクアドルとコロンビアの関係について議論を行う。

26日、イグアラン・コロンビア国家検察長官は、エクアドルに対し、モレット氏への尋問を申し入れる。

 

2.エネルギー改革(内政・経済)

3日  ブエノ国民行動党(PAN)連邦上院議員は、ケッセル・エネルギー相がエネルギー改革の交渉役を担うと述べる。

4日  パレデスPRI党首は、党設立79年記念の席上、メキシコ石油公社(PEMEX)民営化に反対の姿勢を示す。また、PEMEX労組及び産油州の州知事が議論に参加することを支持。

16日  全国州知事会議は、産油州の利益及び特定部門における民間企業との契約を可能にすることなどを盛り込んだ独自のエネルギー改革法案提出に向け準備を進める。

18日  石油国有化70周年に合わせ、ロペス・オブラドール元大統領候補(以下:AMLO)は、憲法広場でPEMEX民営化反対の集会を開催。同日、連邦下院PRI議員、ケッセル・エネルギー大臣に対し、エネルギー改革法案の責任を負い、いち早く議会に法案を提出するよう求める。

25日  クリール連邦上院議長は、与党PANが既にエネルギー改革法案を準備済みであると述べる。同日、AMLO、憲法広場でPEMEX民営化に反対する集会を開催。市民抗議活動に参加する計女性1万人及び男性1万8千人から組織される抗議団結成を宣言。

26日  PRIがエネルギー改革法案を提出する動きを見せているのに対し、ラリオス連邦下院PAN会派長は、連邦政府及び与党がまもなく法案を提出する予定であり、現在最終調整をしているところであると述べる。

同日  PRI所属のベルトローネス連邦上院政策調整委員長、エネルギー改革法案が仮に今期国会通常会期中に連邦上院を通過したとしても、下院で議論するには時間が不十分であり、議論は9月からの秋期通常会期まで持ち越される可能性があるとの見解示す。

31日  カルデロン政権、メキシコ石油公社(PEMEX)の現状分析報告書提出、各党首、上院・下院のエネルギー委員会員等に対して送付される。

 

3.モウリーニョ内相の疑惑(内政)

4日  連邦上院の民主革命党(PRD)、労働党(PT)及び結集党は、PEMEXとモウリーニョ内相の家族が経営するガソリンスタンド経営会社と契約を結ぶよう同内相がPEMEXに政治的圧力を不正に行使していた疑いを解明するため、特別調査委員会を設置する方向で一致。他方下院でもPRD、PT及び結集党が同様の提案をする。PANは、エブラール・メキシコ市長がエンシーナスPRD党首候補の選挙キャンペーンに不正に資金を流用していたとされる件に関して同様の調査委員会を設置するのであれば、モウリーニョ内相の調査委員会設置を支持すると述べる。

6日  モウリーニョ内相は、契約書にサインをしたことを認めるも、これは合法的であると述べる。連邦下院のPRI議員、法的根拠がないとして、モウリーニョ内相を擁護する姿勢示す。

9日  AMLOは、これまでに示した証拠の他にも、政治的圧力の不正行使を裏付ける証拠があると述べる。

10日  AMLOは、モウリーニョ内相が連邦下院エネルギー委員会委員長時代の2002年及び2003年に署名した契約書2通を新たに証拠として示す。連邦下院PRI議員及びPRD議員、調査委員会設置に向けて再交渉を行う。

11日、モウリーニョ内相は、連邦検察庁に対し、自らが署名したPEMEXとの契約書7通を提出。

13日  連邦下院本会議は、モウリーニョ内相とPEMEXの契約書に関する調査委員会の設置を承認。法案を提出したPRDと進歩主義包括戦線(FAP)を組む労働党及び結集党は調査委員会の調査範囲がPEMEXに限定されたことから(PRDはPEMEXのみならず連邦電力公社(CFE)との関係の調査を要求していた)署名せず。他方、連邦上院は条件が揃っていないことから、調査委員会の設置を凍結。

 

4.PRDの党首選挙を巡る混乱(内政)

16日  PRD党首選挙が実施される。

17日  PRD党首選挙開票速報によると、左派連合所属のエンシーナス候補が43.90%を得票し、40.74%を獲得している新左派のオルテガ候補を上回る。エンシーナス候補、党員に団結を呼びかける一方、オルテガ候補、19日に公式結果が発表されるまで待つよう申し出る。

18日  両候補の陣営が双方を不正行為で非難、70.9%開票時点で作業が一時中断。この時点での得票率は、エンシーナス候補が42.62%、オルテガ候補が42.33%。不正行為が著しかった州の票については、開票作業がメキシコ市にある党本部で実施されることに。

22日  PRDの創設者であるカルデナス元メキシコ市長は、党首選挙の無効と、代理党首選出を進言。エンシーナス候補、カルデナス元市長の発言を拒否。

24日  ヌニェスPRD党選挙監督委員会(Comision Tecnica Electoral)は、党執行部に対し、開票作業の続行に向け支援を要請。

同日  オルテガ候補は、エンシーナス候補側と交渉をする用意があるとするも、開票作業終了まで待つ構えを見せる。また、全票開票することを支持。

24日  エンシーナス候補及びオルテガ候補は、コタ党首、ゴドイ保証監視委員会(Comision de Garantia y Vigilancia)委員長、及びヌニェス選挙監督委員会委員長と会合、不正行為の見られる州の開票作業再開について議論を行う。出席者は、開票作業を再開することで一致。

27日  オアハカ州、プエブラ州、タバスコ州、チアパス州、メキシコ州及びタマウリパス州の開票作業を再開。

 

5.その他

6日  連邦上院本会議で司法改革法案に対する投票が実施され、賛成71票、反対25票で可決。憲法改正を伴うため、各州議会に送られる。(内政、治安)

11日  グリムソン・アイスランド大統領が訪墨、カルデロン大統領と会談し、人権及び気候変動問題について協調していくことで一致。(外交)

13日  エスピノサ外相は、キューバ訪問(〜14日)。ペレス・キューバ外相と会談し、メキシコとキューバの関係は完全に改善された、と両国関係が新たな段階に入ったことを示す。(外交)

13日  メキシコ市を縦断する交通システム、メトロ・バスの路線延長工事が完了、除幕式開催される。マイクロ・バスを排除し、サン・アンヘル地区−クエルナバカ高速入口間の交通の効率化を図る。(内政)

13日  ローラ・ブッシュ米大統領夫人が訪墨、サバラ・カルデロン大統領夫人と会談、乳がんと戦うための「米州同盟」の創始で一致。(外交)

15日  チアパス州タパチュラ市で開催された第1回国境安全活動連絡総会(Reunion Plenaria de Enlaces Operativos de Seguridad Fronteriza)において、墨公共治安省とグアテマラ国家警察は、国境地帯における組織犯罪との戦いのためのメカニズムを構築することで一致。(外交)

17日  カルデロン大統領は、ハーパー・カナダ首相と電話会談を行う。会談の主目的は、4月21〜22日にニューオーリンズで開催予定の北米三カ国首脳会議に向けた意見交換及び戦略の調整。(外交)

18日  タバスコ州において石油国有化70周年の式典が開催され、カルデロン大統領、ケッセル・エネルギー大臣及びレジェス・エローレス・PEMEX総裁等が出席。(内政)

23日  アンケート調査会社マリア・デ・ラス・エラスが実施した調査によると、今日が連邦下院の中間選挙投票日だとしたらどの政党に投票するかという問いに対し、39%がPRI、37%がPANと回答。PRDは17%に留まる。(内政)

23日  ベラクルス州で湾岸カルテルの殺人集団「ロス・セタス」の初期メンバーの一人であるエルナンデス(Raul Hernandez Barron)容疑者が逮捕される。(治安)

24日  カルデロン大統領は、イダルゴ州で開催されたイベントの中で、国家水計画(Plan Nacional Hidrico)2007−2012を発表。同計画は、飲料水の消費を抑え、農業部門への水の利用を高める、また下水処理のための国家基金の創設を謳う。(内政)

24日(〜26日)  エスピノサ外相、米墨国境地帯を訪問、国境壁を視察。米国国境警察や国境税関長等と会談。(外交)

27日  メディナ=モラ連邦検察庁長官、2月15日に発生したメキシコ市検察庁への攻撃未遂事件の背景には、シナロア・カルテルが関与していると確言。(治安)

30日  社会民主主義代替党が国家政治審議会(Consejo Politico Nacional)を開催、ベグネ党首を党首に再選。また党名を社会民主主義党(Partido Socialdemocrata)に変更。メルカド元大統領候補は、同審議会は不正が見られるだけでなく、PRIのベルトローネス連邦下院政策調整委員長が社会民主主義党の党首交代に干渉していたとして非難。(内政)

 

<内政>

1.司法改革法案の議会通過

(1)6日、連邦上院本会議で司法改革法案に対する投票が実施され、賛成71票、反対25票で可決された。同法案は昨年12月に連邦下院で可決され、連邦上院に一旦送られたが、上院で修正が入り、下院に差し戻されていた。その後2月21日下院司法委員会及び憲法問題委員会で修正箇所が承認され、同月26日には本会議での審議にかけられたが、捜査令状なしの家宅捜索の是非を巡り最後まで合意に至らず、改革法案の該当箇所を削除した上で、賛成462、反対6、棄権2で可決された。下院による修正が加えられたため、同法案は再度上院に送られ、3月6日可決された。

 本改革案は憲法改正を伴うため、各州議会での審議にかけられ、メキシコ市を除く全国31州のうち16州以上で可決されれば成立となる。

(2)主な改正事項

(イ)修正条項

(i)告訴及び口頭弁論主義

 法定刑が2年以下の場合、口頭弁論は3ヶ月以上続かない。ただし予防拘禁の場合はこの限りではない。監督判事(juez de control)が汚職等防止のため検察庁の監視をする。判決は裁判官がそれを宣告できる状態である時にのみ有効。自白は証拠として採用されない。あらゆる人権侵害が認められれば証拠は無効。被害者は証拠を提出し、検察庁の決定に抗議することができる。裁判に至る前に和解の交渉をできる。

(ii)予防拘禁

 予防拘禁は、他の予防的措置が、容疑者が法廷への出頭、捜査の進展、被害者、証人及び集団の保護を保証するに十分でない、或いは容疑者が他の裁判の審議中、或いは詐欺容疑で刑が確定している場合に限定される。組織犯罪の場合、詐欺行為、暴行、誘拐、武器や爆発物などの凶器を使用した暴行、また国家反逆罪、個人の発展の自由の侵害、保健に反する罪など重大な犯罪の場合、全てのケースにおいて適用される。

(iii)電話の盗聴

 通話の録音は一定の条件の下、証拠として使用できる。連邦司法当局は、法が許可する連邦当局、或いは当該連邦省庁の要請によってのみ、私的通信を盗聴することができる。

(iv)組織犯罪の定義

 組織犯罪を憲法上「犯罪を恒常的或いは繰り返し実行するために2人以上で構成された集団」と規定。これに該当する場合は、捜査上必要な場合、個人及び憲法で規定された個人の権利を保護する場合、容疑者が逃亡するという根拠のある可能性が存在する場合は、連邦検察当局が監督判事に申請することにより個人の身柄を拘束することができる。

(v)連邦検察、メキシコ市検察、各州及び市町村検察に所属する検察官、鑑定人(perito)、警察機関関係者は法に規定されるこれらの機関の要件を満たさない場合、その職を離職させられることがある。またそれぞれの職の責任を犯したことにより解任されることがある。

(ロ)修正されなかった条項

(i)組織犯罪の場合、連邦検察当局は連邦検察庁の許可により、財政、信託、証券取引、選挙、或いは機密情報、内部情報等、犯罪と関係すると考えられる場合に直接関係書類を照会することができる。

(ii)警察は、差し迫った脅威、生命、身体上の危険がある場合、また現行犯で容疑者を物理上追跡している場合、司法当局による捜査令状なしに家宅捜索をすることができる。

 

2.石油国有化70周年記念式典

 18日、タバスコ州において石油国有化70周年の式典が開催され、カルデロン大統領、ケッセル・エネルギー大臣及びレジェス・エローレス・PEMEX総裁等が出席した。

(1)カルデロン大統領スピーチ概要

(イ)現在の生産レベルだと確認埋蔵量は後9年強しか持たない。石油と天然ガスの復元率は50%を少し超えるのみであり、埋蔵量は減少し続けている。

(ロ)現在メキシコで使用されているガソリンの内4割は輸入されており、国内で販売されるより高い価格で購入されている。このことは、メキシコの外国への依存を示し、我々の主権及びエネルギーの安全を保証するものではない。

(ハ)PEMEXが発展の柱であり、かつ国民の最も早急な要望に応じるための重要な鍵であり続けるために、我々はPEMEXを変える必要がある。

(i)PEMEXがより多くの決定権、契約権を有し運営できるように変える必要がある。

(ii)PEMEXが今まで以上に全てのメキシコ国民の企業となるように変える必要がある。

(iii)専門企業の技術及び運営面でのサポートを得ることによって、技術的な遅れを克服し、資金力、運営力を増すことができる。今後5年でPEMEXが世界で5本の指に入る石油企業に返り咲けることを目指している。資源の国家の所有、エネルギーの主権、国家の主権に影響を及ぼすことのない手段を見つけよう。

(iv)数年のみではなく、今後十何年にわたり石油、ガスの生産を保証できる企業を目指す。メキシコ湾のように今はPEMEXのみではアクセス不可能な場所において、多くの資源を探査し、採掘できることを目指す。

(v)石油製品、石油化学品及び天然ガスの輸入への依存を無くす。

(2)ケッセル・エネルギー大臣スピーチ概要

(イ)メキシコの主要油田であるカンタレルの生産は減少しており、より複雑な油田から採掘する必要がある。そのためには、さらなる経験及び新たな技術が必要である。新しい困難な環境を前に、我々は変化が必要であり、運営能力を高めるために新たな設備が必要である。

(ロ)エネルギー分野における国家の主権及び所有を保持しなければならず、石油による収益はメキシコ人のものであり、そうあり続ける。石油は常にメキシコ国民のものであったし、今後も国民のものである。

(ハ)エネルギーの安全を保証するために、カンタレル油田等の復元率を上げる必要がある。同時に、深海の油田の探査、採掘を行う必要もある。深海を開発するためには、今日我々が持っていない経験、技術、知識、能力が必要となる。

(ニ)我々は合意に達することができ、PEMEXの課題に対する最高の改善策を見つけるだろう。

(3)レジェス・エローレス・PEMEX総裁スピーチ概要

(イ)PEMEXは1979年から精製所を1つも建設していない。精製・石油化学の分野では低い貯蔵能力により、効率的な運営が難しくなってきており、パイプラインの拡大はとてもゆっくりと進められてきた。維持設備の遅れは蓄積されており、これらを変えるためには少なくとも3年を要し、300億ペソかかると見積もられている。深海への参入は、メキシコの将来の石油、天然ガスの供給を保証するための課題の1つである。

(ロ)PEMEXの近代化を遂げるために、早急に解決すべき以下の課題に直面している。

(i)石油・天然ガスの分野における国家の主権を害することなく、PEMEXに対し基本的な経営における柔軟性を与えるような枠組みを進める。

(ii)運営に関するより多くの自治を与え、透明性を高め収支を明確にすると伴に、PEMEXの役員会の改善を進める。

(iii)汚職に対する取り組みの効率を向上できる新たな管理及び検査体制を作る。

(iv)エネルギーへの国家主権を害することなく、種々の事業を進める際に、他の企業との連携が可能となるように努力する。法制度により、国内外の企業と協力するための余地もなく、PEMEXのみで大きな事業(探査、生産、精製、貯蔵、物流等)を担わざるを得ないことは非合理的である。この法的枠組みは特に精製、深海の分野で大きな妨げとなっている。

(v)政府の財政均衡を脅かさない範囲で、PEMEXがより多くの予算を確保できるように、国際慣習に沿い、予測可能で、安定した形での税負担及び予算案を作成できるようにする。

(vi)PEMEXの資本の株を市場で売買することなく、協力の権利を譲渡することにより、株式市場によるPEMEXの業績を監視できるようにする。

 

3.PEMEX現状分析報告書

 31日、カルデロン政権よりPEMEXの現状分析報告書が提出された。

(1)報告書概要

(イ)PEMEXがメキシコの開発において重要な役割を果たし続けるために、また直面する新たな課題を乗り越えるために、変化を遂げる必要がある。PEMEXは以下の行動をとらなければならない。

(i)主要な油田の枯渇を効率的に管理する

(ii)この枯渇に対しては、より困難な油田からの石油・天然ガスの採掘で補う

(iii)中期的に生産プラントを維持する

(iv)石油化学製品に占める輸入品の割合を減らす

(v)生産力・作業能力の向上を図る

(vi)作業能力・機能を損なうことなく会計システム、透明性を改善する

(vii)安全基準及び環境保護の向上を図る

(viii)中長期的に生産レベルを維持するために確認埋蔵量を増やす

(ix)収支の不均衡を是正する

(ロ)PEMEXの現状

(i)全ての国の石油公社は技術向上のために外国企業との連携を行っている。

(ii)この3年で生産は日量あたり30万バレル減った。これは、精製所を1機製造する額に相当する。

(iii)2021年までに主要な油田における生産量は日量180万バレルにまで減少する見込みである。

(iv)現在と同様の生産量を今後数年も確保するためには深海の開発を行う必要がある。

(v)精製能力を上げる新たなプロジェクトを行わなければ、2015年までには輸入は需要の約半分の日量47万6千バレルに達し、2028年までに160万バレル以上に達するだろう。

(vi)現在PEMEXの負債は5,280億ペソに達する。ここ5年で負債は年率14%で増加している。

(vii)会計の課題は構造的不均衡を是正すること、より健全な方法で多くの投資を行うことである。

 

<外交>

1.カルデロン大統領とコレア・エクアドル大統領及びウリベ・コロンビア大統領との談話会談

2日、カルデロン大統領はコレア・エクアドル大統領及びウリベ・コロンビア大統領とそれぞれ、両国間の機微な状況に関し対話を行うため、電話会談を行った。

(1)カルデロン大統領は、両首脳から、両国国境近辺で昨1日に発生した事件に関する印象を聴取し、両首脳に対し、メキシコ政府として、両国からの要請があれば、一刻も早く両国関係が正常になるよう、両国間の対話に資するいかなる行動も支援する意思がある旨示した。

(2)メキシコ政府は、本件に関係する各国に対し、適切な地域レベルのメカニズム及び機関の枠組において対話を強化するよう、強く要請する。

(3)在コロンビア及び在エクアドルのメキシコ大使館及びその他の近隣地域公館を通じ、メキシコ政府は本件を綿密にフォローしている。

 

2.コロンビア政府軍によるエクアドル領内のFARC構成員への攻撃

(1)3日、エクアドル外務・通商・統合省がコロンビア政府との外交関係断絶を発表した。

(2)これに対し、メキシコ政府はコロンビア政府及びエクアドル政府に対し、両国間で生じた立場の違いを、国際法上規定される平和的手段を用い、適切な地域メカニズムを活用して解決するよう、要請する。

(3)また、メキシコ政府は、エクアドルとコロンビアが一刻も早く外交関係を再開し、両国間共存の基礎とするため、支持を行う立場を改めて示す。

 

3.エスピノサ外相のキューバ訪問

 13〜14日、エスピノサ外相は、キューバを訪問した。

(1)外務省プレスリリース

(イ)エスピノサ外相は、今次墨キューバ政務情報協議第3回会合実施は、両国関係が新たな段階に入り、両国関係が国際法及び相互尊重に基づくものになることを示唆する旨述べた。

(ロ)ペレス・ロケ・キューバ外相に対し、エスピノサ外相は、開かれた、互いを尊重する今次対話により、将来両国間に存在するいかなる意見の不一致も克服できるだろうと述べた。また、本政治対話メカニズムが10年ぶりに再開されたことへの祝意を述べた。

(ハ)ペレス外相との対談の結果について、エスピノサ外相は、「我々は、カルデロン政権誕生の初日から長期に亘って行ってきた交渉、抗議の結果合意が実現したことを、心から祝した」と述べた。エスピノサ外相は、政治的自発性、協力及び互いを尊重する対話に基づき、「両国は引き続き、地域における福祉及びラテンアメリカ・カリブ地域の一体性強化に貢献し続けることができるだろう」と述べた。

(ニ)一方、ペレス外相は発言の中で、両国関係は完全に正常化され、これにより協力、歴史的友好関係の更新、及び長年両国間にあった相互支援が新たな段階に入る旨確認できたと強調した。ペレス外相は、エスピノサ外相のキューバ訪問によって、両国間の理解、友好及び協力が新たな段階に入ったと述べた。また、両国が協力と相互尊重の雰囲気の下で、恒久的に対話を持続させることを決意した旨付け加えた。更に、両国は人権分野における違いを乗り越えたと述べた。最後に、ペレス外相は、両国外相間で、凍結されたままになっている移民、投資、貿易、科学、技術、人的資源開発他、数十にも亘る二国間メカニズムを再活性化させることで合意した旨述べた。

(2)報道振り

(イ)エスピノサ外相の訪玖により、墨キューバ間の4年に亘る外交的な冷却期間に終止符が打たれた。

(ロ)キューバは、メキシコの2009−2010年任期の国連安保理非常任理事国選挙立候補を支持することを表明した。また、エスピノサ外相は、近々組織犯罪との戦いに関する二国間グループが結成される旨述べた。

(ハ)今次訪問に際し、エスピノ米州キリスト教民主党員機構(ODCA)代表(注:前国民行動党(PAN)党首)は外務省に対し、キューバの反体制派と会談するよう要求したが、外務省はこれを拒絶した。本件、及び人権に関するやりとりについて問われ、エスピノサ外相は「人権問題は相手に押し付けるのではなく、両国が協力してバイ・マルチの機会に対話を強化していくことが重要だ」と述べるにとどまった。

(ニ)また、国営貿易銀行(BANCOMEXT)のラボリン総裁は、今次訪問に合わせて行われたキューバ中銀との交渉の結果、キューバの輸出促進のため、2500万ドルの援助を行うことで合意した旨明らかにした。

 

4.墨エクアドル電話首脳会談

(1)カルデロン大統領は16日、コレア・エクアドル大統領と電話会談を行った。

(2)会談において、コレア大統領はリオ・グループ首脳会合における合意へのメキシコの貢献について謝意を述べる機会がなかったが、メキシコの貢献は皆が知っていた事を指摘した上で、カルデロン大統領に対し謝意を述べた。

(3)一方、カルデロン大統領は、会合の成果に満足している旨述べた。また、当該地域において情勢が改善するよう引き続き取り組むべきであり、その中でメキシコも協力していく旨述べた。

 

5.墨加電話首脳会談

(1)本17日カルデロン大統領はハーパー・カナダ首相と電話会談を行った。会談の主目的は、4月21〜22日にニューオーリンズで開催予定の北米三カ国首脳会議に向けた意見交換及び戦略の調整であった。ブッシュ米国大統領も交えて開催される本会合では、昨年8月にカナダで開催された前回会合の際に首脳間で合意された優先事項の進展具合、及び北米安全・繁栄パートナーシップ(ASPAN)のテーマについて見直しが行われることになる。

(2)両国首脳は、北米を世界で最もダイナミックで競争力があり、安全な地域の一つにするため、北米地域が最も理解度指数の高い地域となるよう、安全と繁栄の戦略を最大限補完する枠組みを見つけることの重要性について意見が一致した。また、現在の地域協力を方向付ける優先事項、特に国境における手続きの簡易化、競争力(特に自動車関連)、緊急事態対応のための協力、及び環境保護について話し合った。

(3)両国首脳は、北米地域における協力、貿易及び投資の結果としての利益を最大限普及させることを目的とする北米競争力理事会と戦略を共有できることへの強い関心を示した。両国首脳はまた、4〜5日に開かれた墨加同盟(Alianza Mexico-Canada)(注:墨加両国の官民関係者による一連の会合の総称)の会合にも含まれた、両国間の労働力の移動に関する議論が卓越した進展を見せていることに触れた。両国首脳は、近い将来、秩序があり、合法、安全で、かつ労働者の人権、労働権が完全に尊重される労働力移動の枠組みが具体化され、また墨加同盟の他の分野でも結果が出ることへの関心を示した。

(4)両国首脳は、また自然災害時における両国間及び米国との協力強化につき話し合った。本件は、北米地域に於いては、墨米及びその他地域における、自然災害の影響を受けた社会へ支援するための補完計画を考えれば、最近重要性を増してきている。

(5)最後に両国首脳は、両国間の訪問者の重要な増大も考慮しつつ、二国間関係における領事問題の扱いの進展につき話し合い、注目を集めるために早期警告グループ(Grupo de Alerta Temprana)(注:カナダ在住のメキシコ人、及びメキシコ在住のカナダ人が事件性のある事象に巻き込まれた際、両国間で必要な情報が交換できるよう、連邦の領事・警備関係当局者から構成されるグループ)を通じて行う透明性の高いいくつかの取組みにつき評価した。

 

 
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