在メキシコ日本国大使館

政務班

2008年4月のメキシコの内政・外交の概要

＜概要＞

　内政では、政府からエネルギー改革法案が提出され、同法案の内容に関する討論を５月から７月の間に実施することが決定した。また、民主革命党（ＰＲＤ）の党首選挙は新党首が選出されないままコタ党首の任期切れを迎え、代理党首２名が擁立された。

　外交では、コレア・エクアドル大統領、パティル印大統領が訪墨した他、３月に発生したコロンビア政府によるエクアドル領土内でのＦＡＲＣ拠点に対する爆撃について、第３回世界経済フォーラム・ラテンアメリカ・カリブ会議出席のため訪墨したウリベ・コロンビア大統領が犠牲者をテロ組織の一部だと発言したことを巡り、カルデロン大統領との間で緊張が高まった。

＜クロノロジー＞

１．エネルギー改革を巡る動き

１日　　ゴンサレス連邦下院ＰＲＤ会派長は、エネルギー省が発表したメキシコ石油公社（ＰＥＭＥＸ）の分析結果について、政治家、専門家、学識者を交え、全国レベルで討論されるべきであると述べた。ガンボア連邦下院ＰＲＩ会派長は、法案をカルデロン大統領が提出するのであれば、それ相応の政治的コストを背負うことになるとコメント。

３日　　制度的革命党（ＰＲＩ）は国家政治審議会を直前に、州知事、連邦議会議員及び党員はＰＥＭＥＸの民営化に反対する姿勢を改めて示した。

５日　　ＰＲＩはベラクルス市で国家政治審議会を開催した。同席上パレデス党首は、石油分野の問題に向かい合い、解決策を提示するのは、政府の責任であると述べた。また、ＰＲＩがエネルギー改革を可決する条件として、①ＰＥＭＥＸの自治調整機関の設立、②運営委員会の改編、③ＰＥＭＥＸに運営及び財政面での自治権を与える等の条件が示された。

６日　　ロペス・オブラドール元大統領候補（以下ＡＭＬＯ）の呼びかけに応じ、ＰＥＭＥＸ民営化に反対の活動を実施しようとしている女性１万人が革命記念塔前に集結した。８日　　行政府が連邦上院にエネルギー改革法案を提出した。法案は、ケッセル・エネルギー大臣が議会に持参した。ＰＲＩ及びＰＲＤ議員は、エネルギー改革法案の一括採決（fast track）をしない方向で一致した。

同日　　ＰＲＤはエネルギー改革に対する姿勢を巡って党内の合意に達せず。

１０日　　進歩主義包括戦線（ＦＡＰ）がエネルギー改革を巡る討論の実施を要求し、連邦上下院議場を占拠した。

１３日　　ＡＭＬＯが憲法広場で集会を開催し、議場占拠により、今期通常会期中のエネルギー改革法案の可決を阻止することができたと成果を訴えた。

１４日　　連邦上院政策調整委員会は、議場占拠の解除を巡り、会合を実施した。国民行動党（ＰＡＮ）、ＰＲＩ、緑の党は、エネルギー改革に関する討論を５０日の期間で開催することを提案した。ＦＡＰはこれを拒否し、１２０日間を提案した。

１５日　　連邦上下院は、ＦＡＰに占拠されている議場の代わりに議会内の小議会場を使用して本会議を開催した。上院政策調整委員会はＦＡＰの提案を拒否、５０日間で討論会を開催するよう同院エネルギー委員会に指示した。

１６日　　ＰＲＩがＦＡＰの提案を受け入れなかったとして、ＦＡＰはＰＲＩを仲介役として認めない意思を示した。

１７日　　クリール上院議長、エネルギー改革の討論期間について、５０日と１２０日の中間をとる第３の案をもってエネルギー委員会に日程を立てるよう指示した。ＰＲＩ及びＰＲＤはこれを支持した。

１８日　　カンペチェ州、チアパス州、グアナファト州、イダルゴ州、オアハカ州、タバスコ州、タマウリパス州及びベラクルス州の州知事は、石油の探査・採掘・精製に関し州の企業と民間企業の共同体を合法的に許可する改革案を推進することで一致した。

２２日　　上院でエネルギー改革の討論期間について合意に至った。

２５日　　議会占拠が解除された。エネルギー改革の討論は、５月１３日から７月２２日までの間開催されることで決定した。

２５日　　下院のＦＡＰ議員は下院議員のひな壇を覆っていた「閉会」の幕を取り除き、上院もひな壇から退場し、上下両院議会の占拠が解除された。ＦＡＰ議員は、今後（平和的）抗議活動の第２段階に入ると宣言し、９月の連邦議会秋期通常会期までにエネルギー改革を成立させようとすれば、再び議会を占拠するとプレッシャーをかけた。

２．ＰＲＤ党首選挙

３日　　ＰＲＤ選挙監督委員会（ＣＴＥ）のヌニェス委員長は、コタ党首、ゴドイ・ミチョアカン州知事、エブラール・メキシコ市長及び２人の党首候補と共に会合を開いた。会合後、ヌニェス委員長は、選挙プロセスを終了させるため、不正の疑いのある票も含め、すべての票を開票する意向を再確認した。結果はその後、保障監視委員会（ＣＮＧV）に送られ審議される。

５日　　ＣＴＥメンバーの一人、サンチェス（Graziella Sanchez）氏が辞任。

７日　　ＰＲＤ党首選挙の開票作業は、全体の７０％の票を占める９州の開票をせずに終了した。エンシーナス候補及びオルテガ候補、選挙監視委員会のやり方はさらに混乱を招くとして批判、オルテガ候補は残り全ての票が開票されない限り、連邦選挙裁判所への提訴を辞さない構え。

１３日　　ＣＮＧVの命令により、ＣＴＥは開票作業を継続すべく各州事務所に通知した。１４日　　ＣＮＧVの命令にも関わらず、ＣＴＥは開票作業を開始せず。ヌニェス（Arturo Nunez）ＣＴＥ委員長、コタ党首が選挙後のプロセスに混乱をもたらし、連邦選挙裁判所への告訴を妨害しようとしているとして非難した。

１５日　　ＣＴＥのヌニェス委員長及びカンシノ（Edmundo Cancino）氏が、党首選挙のプロセスを終えるために必要である党内の合法的手段が十分でなく、選挙結果を出すことができないとして、辞任。また、保証監視委員会について、かえってさらなる混乱を招いたと非難した。

２１日　　党国家審議会が開催されたが、コタ党首の後任者選出で合意に至らず。その後オルテガ候補が両派閥から執行部代行者を一名ずつ選出するとの提案を行い、エンシーナス候補の所属する左派連合からはカルデナス（Raymundo Cardenas）連邦下院議員、オルテガ候補が所属する新左派からはラミレス（Graco Ramirez）連邦上院議員が執行部代行者に指名された。少なくとも次回国家審議会が開催される５月４日まで、党首及び幹事長不在の状態が続くこととなった。

３．コロンビア政府によるエクアドル領内のＦＡＲＣ拠点爆撃を巡る動き

１０日　　ＦＡＲＣの爆撃による唯一のメキシコ人生存者ルシア・モレット氏が退院。記者会見の席上「自分はコロンビア政府によるテロ攻撃の犠牲者である」とコロンビア政府を非難した。

１０日（～１２日）　　コレア・エクアドル大統領が訪墨し、カルデロン大統領と会談した。会談上、メキシコはエクアドル領土の侵害を非難するとともに、ラテンアメリカ地域内での対話及び協調の重要性を改めて表明した。また、エクアドルは、５月１日より、（観光目的で９０日以内の滞在をする）メキシコ人に対する査証免除を一方的に実施する他、カルデロン大統領とは、米国を除いたラテンアメリカ国家機構の創設の必要性で同意した。

１５日　　カルデロン大統領は、キンターナ・ロー州カンクン市で開催の第３回世界経済フォーラム・ラテンアメリカ・カリブ会議出席のため当国を訪問中のウリベ・コロンビア大統領と会談を行った。両首脳は３月１日にエクアドル領土内で発生した事件の詳細、及びコロンビア、エクアドル政府間で続く対立の情勢について話し合った。

１６日　　当地２大テレビ局の一つ、テレビサ社が、ウリベ大統領に対するインタビューを放映した。その中で、ウリベ大統領は、エクアドル領土内でのＦＡＲＣへの攻撃について後悔をしていないと述べた。また、爆撃により死傷した５名のメキシコ人について、テロリストへの加担者、即ちテロリスト、犯罪者、麻薬組織関係者である旨発言。さらに、ルシア・モレット氏については、ＦＡＲＣ拠点で何をしていたかを明確にするため、裁判にかけるべきであるとも述べた。これを受け、カルデロン大統領はウリベ大統領に対し、「慎重であるということは、いかなる形であれ、死傷した学生の立場や活動について（一方的にテロリストであると）みなしたり、決めてかかったりしないことである」と述べた。

同日　　ラテンアメリカ人権協会（Asociacion Latinoamericana para los Derechos Humanos）は、オルテガ・ニカラグア大統領がモレット氏の身柄の保護を申し出たことを明らかにした。

同日　　モレット氏がエクアドルからニカラグア入り。

１７日　　エスピノサ外相は、一連のウリベ大統領発言を巡るメキシコとコロンビア対立の可能性について、双方の意見の対立が外交関係に影響を及ぼす可能性を否定した。また、事件の捜査結果を待つようコロンビア政府に求めた。さらに、モレット氏の身柄について、「一市民として彼女が帰国を望めば、それを妨げるものはない」と発言した。

２１日　　オルテガ・ニカラグア大統領は、モレット氏を歓迎し、モレット氏が希望すれば、ニカラグア市民権や国籍を付与する姿勢を示した。

４．第４回北米安全・繁栄パートナーシップ（ＡＳＰＡＮ）開催

２１日（～２２日）　　カルデロン大統領は、第４回ＡＳＰＡＮ出席のため米国を訪問した。米墨首脳会談に先立ち、両首脳は在ニューオーリンズ墨総領事館の開所式に出席した。その後の首脳会談でカルデロン大統領は、ＮＡＦＴＡは両国で雇用の拡大、購買力の向上、質の高い製品の提供に貢献したと強調し、ＮＡＦＴＡを見直すべきではないと主張した。また、メリダ・イニシアティブ推進の必要性で一致した。その後カルデロン大統領はハーパー加首相と首脳会談を実施した。両首脳は、両国期間労働力流動性を高めるために、既に農業部門で実施されている期間労働者の対象業種を、建設、観光及び金融サービス部門に拡大すべく、試験運用を開始することで一致した。

２２日　　米加墨の首脳は会談を行った。米墨両首脳は、ＮＡＦＴＡ再交渉は地域の経済に相当な損害を与えうるから再交渉はしないという見解で一致した。

５．その他

１日　　連邦議会は、国家改革の一部である議会権限、大統領教書提出方法の変更、及び最高裁への権限の縮小を議論。現在憲法７６条で規定されている上院の専属的機能である「連邦検察庁長官、閣僚、大使、領事、軍高官及び最高裁判事任命の批准」の専属機能解除、大統領教書の書面による提出の日を現行の９月以外に３月或いは４月に移行する、そして公職に就く者が刑事事件に関わる場合、現在の最高裁による判断から連邦検察庁に判断を委ねる等が含まれる。

３日　　メキシコ市で禁煙法公布。同法は７日に施行。

３日　　公共治安省は、連邦警察組織の再編を完了させた。この改編により、連邦捜査機関（ＡＦＩ）と連邦予防警察が一つの組織に統合され、６つの部署に分割される。

３日　　チャベス・ベネズエラ大統領は、セメント輸出が国内の住宅建設に影響を与えているとして、国内セメント産業の国営化を発表した。ベネズエラで最もシェア率の高いメキシコ・セメント社（ＣＥＭＥＸ）が最も影響を受けることになる。

３日　　ヒル（Ruben Gil）プエブラ州イスカル・デ・マタモロス市長は、麻薬所持の疑いで米麻薬取締局（ＤＥＡ）の出頭命令を受け、ニューヨークの裁判所に出頭した。

４日　　カルステンス大蔵公債大臣及びオルティス墨中銀総裁は、ベネズエラ政府に対し、同国で操業するＣＥＭＥＸの権利を尊重するよう申し入れた。またＣＥＭＥＸは、ベネズエラ政府に公式な説明を求めた。

５日　　ＰＡＮが国家審議会を開催し、２００９年の選挙に向けた戦略を打ち出した。ＰＡＮは同党員でなくても、候補者が希望すればＰＡＮ推薦のお墨付きを出し、ＰＡＮ候補として立候補できるという改革を満場一致で採択した。

８日　　エスピノサ外相、ワシントンにおいてライス米国務長官及びベルニエ加外相と会談を行う。今月２１～２２日に開催される北米首脳サミットの準備会合であり、北米安全・繁栄パートナーシップ（ＡＳＰＡＮ）の継続、参加国間の国際経済競争力の強化等を視野に入れる。

１３日　　国家改革を担当してきた交渉・合意形成執行委員会（Comision Ejecutiva de Negociaciom y Construccion de Acuerdos）が正式に消滅した。

１４日　　米国国務省は、米国人旅行者に対し、メキシコ北部国境地域における治安悪化のスポット情報を発出した。このスポット情報の有効期限は今年１０月１５日まで。

１５日　　キンターナ・ロー州カンクン市で第３回世界経済フォーラム・ラテンアメリカ・カリブ会議が開催された。同会議には、ウリベ・コロンビア大統領、コロン・グアテマラ大統領、サカ・エルサルバドル大統領、セラヤ・ホンジュラス大統領及びアリアス・コスタリカ大統領他が出席した。

１７日　　パティル・インド大統領が訪墨し、カルデロン大統領と会談した。両国首脳は、２００７年に構築した提携を強化する目的で、①統合行動計画が定める二国間委員会の作業を強化し、協力関係による二国間関係の将来計画を見出す、②空輸、及び風力・太陽光発電という新エネルギー分野に関する協定に署名、③貿易量の増加、④インフラ、中小企業、自動車産業、医薬品産業、科学技術、農業、食料品加工等の分野でのより一層の相互作用につき、合意した。

１９日　　オアハカ人民会議（ＡＰＰＯ）のリーダー、フラビオ・ソサ収監者が１年５ヶ月の刑期を終え、釈放された。

２３日　　ＰＡＮは、大統領教書提出方法改正のため臨時国会の開催を提案した。

２６日　　ＰＡＮが臨時全国党大会を開催した。大会の中で、ＰＡＮ支持者が州知事選挙及び連邦上院議員選挙にＰＡＮの党候補として立候補できることを承認した。しかし、連邦下院議員、州議会議員及び市町村長選挙についてはこれを認めない。

２８日　　カルデロン大統領は、連邦政府の社会プログラム「Vivir Mejor」を発表。同プログラムは、社会開発省、教育省、厚生省、環境天然資源省による①能力の開発、②フォーマル・セクターの雇用へのアクセス、及び③社会保護ネットワークの３つを柱とする１７の計画に対し、１，３００億ペソを拠出する。

２８日　　人民革命軍（ＥＰＲ）は、プレスリリースの中で、政府との交渉をする余地があり、その間はゲリラ活動を実施しないという意思を示した。モウリーニョ内相は、プレスリリースの信憑性の裏付けが取れるまでは、交渉の可能性はないと述べた。

２９日　　カルデロン大統領は、ＥＰＲに対し、ゲリラ活動を実施しない限りは直接交渉をする用意があると述べた。交渉役には、ＥＰＲが指名したイバラ（Rosario Ibarra de Piedra）連邦上院議員（労働党所属）、社会人類学者で、先住民問題でＥＺＬＮの顧問をしたことのあるロペス（Giloberto Lopez y Rivas）氏、作家のモンテマヨール（Carlos Montemayor）氏、ジャーナリストのグラナドス（Miguel A. Granados Chapa）氏、及びルイス（Samuel Ruiz Garcia）元チアパス州サン・クリストバル・デ・ラス・カサス司教の５名を容認した。

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