在メキシコ日本国大使館

政務班

2008年5月のメキシコの内政・外交の概要

＜概要＞

　内政では、連邦予防警察長官が麻薬組織の関係者と見られる容疑者に殺害され、メリダ・イニシアティブによる対策強化への声が高まった。また民主革命党（ＰＲＤ）選挙では、アコスタ代理党首が選出された他、オルテガ候補の当選が党内で承認された。外交では、米国でメリダ・イニシアティブへの予算が承認されるも、米国議会が条件を付けてきたとして、政界で大きな反発を招いた。

＜クロノロジー＞

１．政府治安組織関係者の殺害

１日　　ベラスコ（Roberto Velasco Bravo）連邦予防警察特別捜査ユニット長（director de la Unidad de Investigaciones Especiales）連邦調査局（ＡＦＩ）組織犯罪対策課長がメキシコ市内で殺害される。

８日　　メキシコ市クアウテモック区ゲレロ地区において、ミジャン（Edgar Millan）連邦予防警察長官が両親宅の庭で待ち伏せていた者たちに発砲され重傷を負い、病院に運ばれたが数時間後に死亡。同長官は、モレロス州やシナロア州でシナロア・カルテルの殺し屋を逮捕する等同カルテルに対するオペレーションを指揮していた。ガルサ駐墨米国大使、組織犯罪との戦いを強化するために米国議会がメリダ・イニシアティブを承認することを要望。

２．ＰＲＤ党首選挙

４日　　ＰＲＤ国家審議会臨時総会が開催され、４月２１日に選出されたカルデナス（Raymundo Cardenas）連邦下院議員及びラミレス（Graco Ramirez）連邦上院議員の執行部代行者の任期切れを迎え、代理党首にアコスタ（Jorge Acosta）を、代理事務局長にガステルム（Martha Dalia Gastelum）氏を選出。

７日　　連邦選挙裁判所は、３月１６日に実施されたＰＲＤ党首選挙について、８３．９％開票で打ち切りとし、エンシーナス候補を当選者とした党保証監視委員会の決定を無効とした。その上で、裁判所はＰＲＤに対し、本決定の通知を受けてから７２時間以内に１００％開票し、開票作業終了後４８時間以内に全国開票証明書を発行するよう命じた。

９日　　全票開票を終了、オルテガ候補が４２．８１％、エンシーナス候補が４１．５７％を獲得し、オルテガ候補の得票数が初めてエンシーナス候補を上回った。結果は同日中に開票証明書に記され、党執行部に提出された。

１１日　　エンシーナス候補が所属する左派連合のメンバーが不在の中執行部会合が開催され、オルテガ候補の当選が承認された。２３日、連邦選挙機関（ＩＦＥ）、アコスタ代理党首およびガステルム代理事務局長をそれぞれ代理党首および代理事務局長として承認。

３．メリダ・イニシアティブの成立

１５日　　米国連邦下院、メキシコ及び中米の麻薬対策に充てられる「メリダ・イニシアティブ」の予算案を可決。ただし、予算は当初予定されていた５億ドルから４億ドルに減額された。

１６日　　米連邦上院分配委員会（Comite de Asignaciones）、カルデロン大統領が司法及び裁判（制度）の改革及び人権侵害及び汚職のない警察及び軍組織を作ることを条件に、メリダ・イニシアティブの予算をメキシコに充てることを承認。

２２日　　米国連邦上院、連邦下院で承認されたメリダ・イニシアティブの予算案を３億５千万ドルに修正の上可決。予算拠出の条件として、司法改革の進展を米国政府が評価すること、また本予算を受ける警察及び軍が、人権侵害及び汚職を犯さないことを挙げた。２３日　　米国連邦議会で通過したメリダ・イニシアティブに関し、ゴンサレス連邦下院ＰＲＤ会派長、米国議会の条件は、メキシコの国家主権を侵害するものであるとして、メキシコ政府はこれを拒否すべきであると述べる。

３０日　　ガルサ駐墨米大使、米国はメキシコの行動や成績に「お墨付き」を課すことを求めているわけではないと述べる。また、レジェス・チワワ州知事、「援助というものは公平で、連帯の責任を負うものであり、治安の分野でメキシコ政府に『お墨付き』を課したり、条件を付けたり、限定をしたり、会計監査を強いるべきではないと考える。」と述べる。

４．その他

＜内政＞

５日　　当地「エル・ウニベルサル」紙が、カルデロン政権２年目第２四半期における世論調査結果を発表。大統領支持率が６６％から６２％に下落した一方、不支持は１８％から２５％に上昇した。また、大統領の職務に対する評価は６．９から６．６に下落した。しかし、大統領の人物としての評価は、７．４から７．３と、前回の数値をほぼ維持した。

１３日　　連邦上院でエネルギー改革に関する公聴会開始。第１回テーマは「メキシコにおけるエネルギー改革を統制すべき原則①」。１５日、第２回討論会「メキシコにおけるエネルギー改革を統制すべき原則②」開催。２０日、第３回討論会「エネルギー改革のイニシアティブにおける憲法的分析①」開催。２２日、第４回討論会「エネルギー改革のイニシアティブにおける憲法的分析②」開催。２７日、第５回討論会「エネルギーの移り変わりと安全」開催。２９日、第６回討論会「国家および地域発展におけるエネルギー分野の重要性」開催。

１９日　　８月に改選される連邦選挙機関（ＩＦＥ）評議員の立候補者受付締め切られる。

＜外交＞

１２日　　バローゾ欧州委員長が当地を訪問し、カルデロン大統領と会談を行う。

１５日（～１７日）　　カルデロン大統領、第５回中南米ＥＵサミットに出席のためペルーを訪問。１５日にはガルシア・ペルー大統領、モラレス・ボリビア大統領と、１６日にはソラナＣＦＳＰ上級代表、サパテロ・スペイン首相、フェルナンデス・アルゼンチン大統領、トゥスク・ポーランド首相と会談を行う。１６日、第５回中南米ＥＵサミットにおいて、カルデロン大統領は、気候変動対策に充てられる基金「緑の基金（Fondo Verde）」の設立を提唱。１７日にはバチェレ・チリ大統領、バルケネンデ・オランダ首相と会談を行った。同日、カルデロン大統領、第４回墨ＥＵ首脳会合に出席。

１８日（～１９日）　　メルケル首相が訪墨し、大統領官邸での晩餐会に出席した。１９日、首脳会談が行われ、食糧難、気候変動を含む環境問題について話し合われた。

２８日　　気候変動に関する中南米・カリブ会合に出席のためホンジュラスを訪問中のカルデロン大統領、気候変動対策の基金「緑の基金」を発表。また、２１～２２日にグアテマラの国家電化協会（ＩＮＤＥ）とメキシコの連邦電力庁（ＣＦＥ）の間で交わされた電力売買契約を公式に発表。

２８日　　ホンジュラスにおいて、気候変動に関する中米・カリブ首脳会合が開催される。カルデロン大統領は、メキシコの気候変動対策「気候変動に対する世界基金（通称「緑の基金」）を紹介。

２９日　　カルデロン大統領、エスピノサ外相、モウリーニョ内相、サルカン駐米墨大使及びガルサ駐墨米大使と共に米墨国境州知事会議のメンバーと会談する。

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