政務班

2008年6月のメキシコの内政・外交の概要

 

<概要>

 内政では、メキシコ市内のクラブで抜き打ち検査を実施した際、警察が塞いだ入口付近に集中した若者12名が窒息死し、問題化した。外交では、メリダ・イニシアティブへの条件付けを巡り、米墨両国内から反発が出て、最終的には概ね条件が付されない状態で署名された。また、タバスコ州ビジャエルモッサ市で開催された第10回トゥストラ対話と協調メカニズム首脳会合では、「プエブラ・パナマ計画(PPP)」をより効果的に運営させるため、新たに「メソアメリカ統合発展計画(メソアメリカ計画)」と名称が変更された。

 

<クロノロジー>

1.メリダ・イニシアティブをめぐる動き

2日  メリダ・イニシアティブの予算承認に米国議会が条件を付けたことに関し、モウリーニョ墨内相、メキシコは、米国の一方的な援助を申し入れたのではなく、二国間協力改善のための提案をしたと発言。

3日  ウォルタース米国家麻薬管理政策局(ONDCP)長官、米上院が提示したメリダ・イニシアティブへの条件はメキシコの麻薬対策の機会を妨害するものであるとして、米国議会に条件の取り下げを求める。同日、第38回米州機構総会に出席のためコロンビアを訪問中のエスピノサ外相、ネグロポンテ米国務副長官と会談し、メキシコは米国に対し、二国間協力の枠組みの中で仲間としてメリダ・イニシアティブの推進を提案したのであり、メリダ・イニシアティブは平等の下に実施されるべきであるとの見解を示す。同日、ガルシア公共治安相、「メキシコが実行しているいかなる努力も、メリダ・イニシアティブに依存していない。」と述べ、メキシコの麻薬掃討作戦はメリダ・イニシアティブ承認の是非に関係ないことを主張。

4日  連邦議会常設委員会は、全政党の投票による満場一致で、米国議会議員に対し、条件付けの再考を求めると共に、援助と引き換えのいかなる条件も拒否するという連邦政府の姿勢に同意する、との決議を採択。

6日  チャートフ米国土安全保障長官、米連邦上院のメリダ・イニシアティブに対する条件付けは、麻薬対策で勇気ある対策を採っているカルデロン政権の支援を失うことになりかねないと警告。

7日(〜8日)  ヌエボ・レオン州モンテレイ市で第47回米墨議員会合開催。メキシコ側代表のサバレタ連邦下院議長、メリダ・イニシアティブの代替案として、麻薬問題に立ち向かうための二国間イニシアティブを提案。

8日  米国議員団、麻薬組織との戦いへの協力の一部として、メリダ・イニシアティブへの条件について再検討することを約束し終了。

13日  カルデロン大統領は、米国のメリダ・イニシアティブについて、メキシコは米国の助けも慈悲も求めていないと述べる。

19日  米国下院、メリダ・イニシアティブの修正案を承認。

30日  ブッシュ米大統領、「メリダ・イニシアティブ」を含むイラク・アフガニスタン向けの補正予算案に署名。うちメキシコへは4億ドルが充てられる。メキシコ政府が批判していた予算承認に当たっての条件付けは概ね除去されたが、メキシコの法律に従って同国の司法システムが改善されているかどうかを米国務省が米国議会に対して報告する義務についてはそのまま残された。

 

2.クラブ圧死事件

20日  メキシコ市グスタボ・A・マデロ区にあるクラブ「ニュース・ディバイン」で抜き打ち検査が実施された際、検察が中に残った若者が逃走しないよう入口を封鎖したことから、外に出ようと出口付近に人が集中し、12名が窒息死。

24日  クラブ圧死事件に関し、新たな証拠ビデオはメキシコ市グスタボ・A・マデロ区警察のサヤス(Guillermo Zayas)氏の指揮下にあった警察官が出口を塞ぎ、外に出ようとした若者が入口付近に殺到した様子を映し出した。

25日  クラブ圧死事件を受け、チギル・メキシコ市グスタボ・A・マデロ区長は休職を申請し、エブラール市長はこれを受理した。記者会見の席上チギル区長は、当局が事件の真相解明を進める間休職するとしたものの、疑惑が晴れれば復職する意向であると述べた。非難の対象となっているオルテガ(Joel Ortega)メキシコ市治安長官は、直接事件に関与していなかったとして、更迭はされなかった。メキシコ州議会は、ニュース・ディバイン事件の真相解明のための特別調査委員会の設置を承認した。

 

3.その他

<内政>

3日  第7回エネルギー改革公聴会「石油埋蔵の探査、採掘、返却」開催。同日、カラムPRI事務局長は、エネルギー改革の枠組みで精製、輸送、貯蔵部門で民間企業の参入を含めた場合、PRIは賛成票を投じないと述べた。また、PRIは独自の法案を7月前半に提出する予定であると言及した。5日、第8回公聴会「国境をまたぐ油田:交渉と探査、採掘」開催。10日、第9回公聴会「石油の自給自足:石油の精製」開催。12日、第10回公聴会「石油化学産業を推進するための政策と手段」開催。17日、第11回公聴会「炭化水素(石油と天然ガス)の輸送と貯蔵、流通」開催。24日、第12回公聴会「メキシコにおける石油収入の展望」開催。26日、第13回公聴会「メキシコ石油公社(PEMEX)の財務体制」開催。

4日  民主革命党(PRD)、エネルギー改革に関する住民投票を全国400市で実施すると発表。FAPは政策調整委員会に対し、全国住民投票を実施するようIFEに求める正式な提案を提出。

4日  連邦情報公開庁(IFAI)、メキシコ石油公社(PEMEX)に対し、モウリーニョ内相の家族が経営する「イバンカール」との契約書をくまなく探すよう命じる。6日  PRD議員、モウリーニョ内相を政治的圧力の行使の容疑で告発。

9日  クリール連邦上院国民行動党(PAN)会派長(兼連邦上院議長)がマルティネスPAN党首により更迭された形で、会派長職を辞職。後任には、マデロ連邦上院議員が就任。また、アナヤPAN事務局長(連邦上院議員)が事務局長職を辞し、後任には、カルバハル連邦下院議員が就任。

11日  連邦選挙裁判所、3月に再選されたベグネ社会民主主義党党首及び同時に選出されたパスコエ副党首の選出を無効とし、72時間以内に執行部改選のための募集をかけることを命じた。また、社会民主主義代替党から変更された党名「社会民主主義党」についても、無効とする判決を下す。

17日  大統領府は、新人事を発表。これまでルイス・マテオス大統領府長官が兼任してきた特別プロジェクト調整官職には、デ・ラ・ガルサ(Bernardo de la Garza Herrera)元大統領候補が就任、ボルンダ国際・競争力局長の後任にはラファエル・フェルナンデス(Rafael Fernandez de Castro)氏が就任。

18日  連邦選挙機関(IFE)、AMLOが使用している「正統な大統領」をPRD及び労働党が使用すること、またメディアで同フレーズを使用することは連邦選挙法に反するとして、同フレーズの使用を禁止すると共に、PRD及びPTに対し89万4,030ペソの罰金を命じる。

19日  臨時国会召集。連邦上院は、大統領教書の提出方法を、従来の大統領が9月1日に議会に持参する方式から、書面にて送るだけで、大統領が自ら提出する必要はない、と憲法改正する案を可決。20日、連邦下院、前日連邦上院で可決された大統領教書提出方法変更に関する憲法改正案の審議を行い、可決、成立。また、大統領が最大7日まで議会の許可を得ず国外に出ることができるようにする憲法第88条の改正案を可決。しかし、上院で可決された閣僚の優先的イニシアティブの付与に伴う憲法改正案は否決され、憲法問題委員会に差し戻された。

19日  カルデロン大統領、「若者のための国家計画(Programa Nacional de Juventud 2008-2012)」を発表。

20日  連邦下院、ゲレロ(Francisco Guerrero)氏、エリソンド(Maria Macarita Elizondo Gasperin)氏、フィゲロア(Alfredo Figueroa Fernandez)氏を新連邦選挙機関(IFE)評議員として任命することを承認。8月15日正式に就任する。

 

<外交>

11日(〜14日)  カルデロン大統領、訪西。カルロス一世国王に出迎えられたカルデロン大統領は、その後スペイン下院議会で演説。14日、サラゴサで開催の水の万博で、メキシコ・パビリオン開館式に出席。その後バルセロナ市長、カタルーニャ自治政府代表と会談。

23日  バスケス・ウルグアイ大統領が訪墨、カルデロン大統領と会談を行い、メキシコのメルコスール及びウナスールへの加盟を要請。これに対しカルデロン大統領、呼びかけに感謝すると共に、公式な返答は避けつつも、メルコスールのみならず、各加盟国との関係を強化することに関心を抱いていると述べた。

27日  カルデロン大統領は第10回トゥストラ対話と協調メカニズム首脳会合に出席のため訪墨中のウリベ大統領と首脳会談を行う。

28日  タバスコ州ビジャエルモッサ市で、第10回トゥストラ対話と協調メカニズム首脳会合が開催される。同会合にはカルデロン大統領、サカ・エルサルバドル大統領、アリアス・コスタリカ大統領、コロン・グアテマラ大統領、セラヤ・ホンジュラス大統領、オルテガ・ニカラグア大統領、トリホス・パナマ大統領、ウリベ・コロンビア大統領及びバーロウ・ベリーズ首相が出席。28日に採択された「ビジャエルモッサ宣言」では、「プエブラ・パナマ計画(PPP)」をより効果的に運営させるため、新たに「メソアメリカ統合発展計画(Proyecto de Integracion y Desarrollo de Mesoamerica、略してメソアメリカ計画)」と名称が変更される。

 

 

 

 
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