政務班

2008年7月のメキシコの内政・外交の概要

 

<概要>

 内政では、エネルギー改革を巡る討論が終了し、各党が独自の案を提出への動きを見せた。また、客月発生したクラブ圧死事件を受け、メキシコ市検察長官、公共治安長官、チギル・メキシコ市グスタボ・A・マデロ区長が相次ぎ辞任し、新市公共治安長官および市検察長官が任命された。外交では、カルデロン大統領が北海道洞爺湖サミットに出席、その後訪中した。

 

<クロノロジー>

1.カルデロン大統領の北海道洞爺湖サミット出席と訪中

8日(〜9日)  カルデロン大統領、北海道洞爺湖サミット出席のため、訪日。シン・インド首相、ルーラ・ブラジル大統領、ムベキ南ア大統領と首脳会談を行う。その後G5首脳会談を行う。

9日  G8との拡大会合に出席。G5諸国は、「特に危惧すべきこと」として、生活費へのインフレの影響を指摘し、世界的経済の安定性を保ち、特に開発の進んでいない国々を支援するために、食糧及び石油価格の更なる高騰がもたらす問題を軽減するべく、国際的財政機関に適切な手段を提供することを提案。カルデロン大統領は、自らの提案する「緑の基金」創設については保留したが、今回の世銀が発表した60億ドルの環境基金創設は、具体的な行動が必要であるというメキシコの考え方と軌を一にするものであるとして歓迎した。さらに、カルデロン大統領は、G8諸国が合意した取り決め(2050年までに排出ガスを50%削減)を支援していく意向を示した。また、G8最後のセッションで、各国は、食料・原料高、加速するインフラ、マクロ経済の不均等などの危機を前に、ドーハ・ラウンドの中身のある終結を急ぐことに合意した。その後、李明博韓国大統領、ゴードン・ブラウン英首相、ユドヨノ・インドネシア大統領、および福田総理と首脳会談を行う。

同日  カルデロン大統領、訪中。

10日  上海では、投資・ビジネス機会セミナーに出席。その後北京入りしたカルデロン大統領は、温家宝国家主席と会談。

11日、呉邦国全人代常務委員会常務委員長と会談。

 

2.エネルギー改革を巡る動き

15日  アコスタPRD暫定党首は、カルデロン大統領が提出したエネルギー改革法案とは別の新たなるエネルギー改革法案の構築を目指してPAN、PRI及びPRDの党首で会合を開催するとの呼びかけに、マルティネス党首、パレデス党首応じる。同日、ラバスティーダ連邦上院エネルギー委員会委員長、主要3政党の合意に関係なく、22日のエネルギー改革に関する討論会終了後、PRIの法案を提出する予定であると明らかに。

18日  PRIの党首、連邦議会会派長及び州知事は会合を行い、PRI独自のエネルギー改革法案について調整を行った。その中で、PRIは採掘及び精製の両部門を除く部門には民間資本の参入を認める、との見解で独自のエネルギー改革法案を提出することを発表した。

21日  進歩主義包括戦線(FAP)、PANとPRIがエネルギー改革で「民営化」を許すよう組めば、同法案が通過しないよう議会を占拠すると威嚇。

23日  PRI、常設委員会に独自のエネルギー改革法案を提出。PEMEXの権限分散化を図るよう子会社の設立を謳うとともに、限られた範囲での民間資本参入を認めるもの。ケッセル・エネルギー相、政府案とPRI案には、相違より類似の方が多く存在すると指摘、政府案の充実を受け入れると述べる。

24日  エネルギー改革に関し主要3政党の党首が会合し、土壇場での合意はしないこと、議場占拠などの行為に注意すること、各党が提出するエネルギー改革法案をそれぞれ議論することで意見が一致。

27日  メキシコ市および全国9州でPRDによるエネルギー改革に関する住民投票実施され、全体で約120万人が投票。メキシコ市では87万人が投票に参加し、民間資本参入の是非を問う質問に対しては84.7%、エネルギー改革そのものに対する是非を問う質問には82.9%が反対票を投じた。

29日  PRD、独自のエネルギー改革法案提出を巡って、内部分裂。アコスタ代理党首は、進歩主義包括戦線(FAP)との合同案、或いはPRD単独の案を提出するとしており、他方ロペス・オブラドール元大統領候補は、専門家等の論述形式とし、住民投票が終了してから提出をすることとしている。

 

3.クラブ圧死事件のその後

8日  フェリックス(Rodolfo Felix)メキシコ市検察長官、クラブ「ニュース・ディバイン」圧死事件を受け、引責辞任。

9日  クラブ圧死事件で辞任を求められていたオルテガ・メキシコ市公共治安長官が辞任。また、メキシコ市検察長官も辞職を申し出た。

14日  エブラール・メキシコ市長、圧死事件後初めて、遺族及び被害者に対し謝罪。また、新しい市公共治安長官にモンドラゴン(Manuel Mondragon)氏を、また市検察長官にマンセラ(Miguel Mancera)氏の任命をカルデロン大統領に求める。

16日  カルデロン大統領、両氏の指名を承認。

17日  チギル・メキシコ市グスタボ・A・マデロ区長が辞職。

 

4.その他

〈内政〉

3日  ベルトローネス連邦上院政策調整委員長は、CISEN(国家安全調査局)が連邦議会議員に対する諜報活動を行っていたと非難、バルデスCISEN長官の辞任を求める。7日、エスピノ前PAN党首は、諜報員が欧州で尾行をしていたとCISENを非難した。11日、モンレアル連邦上院議員は、CISENがスパイ行為をしたと述べ、調査を求めた。15日  ペニャ・ニエト・メキシコ州知事も、「他の人びと」と同様、スパイ行為を感じたと語った。16日  ナバレテ連邦上院PRD会派長は、連邦議員へのスパイ行為は議院の結束に有利に働くと述べた。

14日  バルデスCISEN長官が「ファイナンシャル・タイムズ」紙の取材に対し、選挙活動に麻薬マネーが投じられていると発言した件で、ラリオス連邦下院会派長、誰が関係しているかは分からないが、麻薬マネーが使用されてきた可能性を認める。ゴンサレス連邦下院PRD会派長、選挙活動には選挙活動以外の資金が流入していることは間違いない、と発言。

10日  国家人権委員会が、ミチョアカン州、ソノラ州、シナロア州及びタマウリパス州における軍のオペレーションの際に訪問、殺人及び職権乱用等に関し国防省に進言した8つの勧告を、11日国防省が受け入れ、このような人権侵害行為に関わった疑いのある軍人に刑事処罰を下した。

11日  社会民主主義代替党の党首の再選挙が実施され、ベグネ前党首が45票を獲得し、メルカド元大統領候補の22票を上回り、勝利した。また、党名も、社会民主主義代替党から、改めて社会民主主義党(Partido Socialdemocrata, PSD)に変更された。

15日  連邦警察、シナロア州でのオペレーションのために1,200名を追加投入。

17日  海軍省、コカイン5.8トンを積載した小型潜水艦をオアハカ州沖で拿捕。

19日  PRD保障監視委員会、3月に実施された党首選挙に関し、不正があまりにも多いとして選挙結果を無効とし、国家審議会に対して30日以内に再度選挙を実施するよう求める。オルテガ党首候補、保障監視委員会の判断は支持できないとして、連邦選挙裁判所に訴える構えを見せた。

27日  バスケス教育相とゴルディージョ全国教職員組合委員長、「教育の質の改善のための同盟」による教員公募ポストを発表、募集を開始。

31日  連邦検察庁(PGR)、麻薬密造・密輸の容疑で、米国内で逮捕されている中国系メキシコ人イエ・コン被告の事件を巡り、連邦検疫リスク予防委員会(Cofepris)や税関の職員が不正を犯していたことや、麻薬組織の首領の所在を特定できない等の能力不足から、組織改造を実施する。その取りかかりとして、ラミレス(Noe Ramirez Mandujano)組織犯罪捜査専門(SIEDO)担当次官が辞任。

 

〈外交〉

1日  エスピノサ外相、アルゼンチンで開催されたメルコスール会合に招待国として出席。

2日  コロンビア国軍によるイングリッド・ベタンクール元大統領候補及び米国人3名を含むFARC人質15名の救出に関し、カルデロン大統領はウリベ・コロンビア大統領に架電し、ベタンクール元大統領候補及び米国人3名を含む人質を解放に導いた今次作戦の成功を祝した。コロンビア政府の民主主義及び社会共生を強化する、合法性と秩序を確立させる戦略の実行に謝意を述べた。外務省も同趣旨のプレスリリースを発出。

16日  国際刑事裁判所は、米国に対し、米国テキサス州に収監されているメキシコ人死刑囚5名について、メキシコが申し立てた控訴が完結しないうちは死刑の執行を停止するよう命じた。

18日  チャートフ米国土安全保障長官、モウリーニョ内相、エスピノサ外相、ガルバン国防相、サイネス海軍相らと会談。席上チャートフ長官は、メキシコではシナロア・カルテルをはじめとする麻薬組織による暴力が増大しているが、コロンビアのようにテロリスト化はしていないと述べた。また、オアハカ州沖で拿捕された麻薬密輸潜水艦については、米国政府が位置情報及び逮捕の補助をしたと述べた。

 

 

 

 
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