政務班

2008年9月のメキシコの内政・外交の概要

 

<概要>

 内政では、大統領教書の提出が行われたが、今年から提出方法が変更され、モウリーニョ内相が議会に教書を提出した。また、全国各地の刑務所で暴動が多発した。さらに、ミチョアカン州都モレリア市で独立記念日のイベント中手榴弾が投げ込まれ、市民が死傷した。

外交では、カルデロン大統領が第63回国連総会に出席した。

 

<クロノロジー>

1.大統領教書の提出

1日  連邦政府、連邦議会にカルデロン政権としての第2回年次教書を提出。今回より年次教書の提出方法が変更され大統領が直接議会に提出する必要がなくなったため、年次教書の提出役を担ったモウリーニョ内相がドゥアルテ新連邦下院議長、マデロ新連邦上院議長をはじめとする両院執行部が同席する中、連邦議会儀典の間において第2回年次教書を提出した。年次教書をドゥアルテ下院議長に手渡したモウリーニョ内相は、「カルデロン大統領の命令により、これを以て憲法第69条の履行とする」「法を遵守すべく連邦議会による教書の分析を待つ」と述べた。提出式はわずか8分と短いものであった。また、同日、教書の内容をまとめたスポットCMを放映。2日(〜5日)項目別の教書内容演説スポットCMを放映。

3日  大統領教書提出方法の変更に伴い、大統領による教書演説に代わり各大臣による成果演説が行われる。

 

2.全国刑務所での暴動

14日及び17日〜18日  バハ・カルフォルニア州ティファナ市ラ・メサ刑務所で暴動が発生、19名が死亡、59名が負傷。

20日  未明、レイノサ刑務所において囚人グループ間の抗争が発生し、21人が死亡(うち16名は焼死)。原因は、刑務所内のふたつのグループが麻薬の販売や囚人の庇護といった刑務所内の覇権を巡り対立したためと見られている。

21日  エルナンデス・ベガ・レイノサ刑務所長が同事件への関与及び9日発生した囚人17名(うち5名は麻薬組織「ロス・セタス」のメンバー)の脱走事件に関与した容疑で免職処分となり、刑務官20人と共に送検された。

26日  タバスコ州ビジャエルモサ市ウイマンギージョ刑務所で暴動が発生、2名が負傷。

 

3.ミチョアカン州における手榴弾爆破事件
15日  ミチョアカン州都モレリア市において独立記念行事に参加していた群集の中で爆破事件が発生、また、ほぼ同時に同広場から4ブロック離れた路上でも、行事に参加した群集の脇で同様に手榴弾と見られる爆発物1個が爆発し、7名が死亡、101が負傷。16日、カルデロン大統領、ゴドイ・ミチョアカン州知事と大統領府で会談、手榴弾事件の容疑者の特定および逮捕に向け、共同で行動に取りかかることで合意。同日、ゴドイ州知事、所属政党であるPRDに対し、カルデロン大統領の行動に協力するよう求める。PRI、事件の犯人を非難。20日、手榴弾事件で重傷を負っていた13歳の少年が死亡、死者は8名に。

20日  ミチョアカン州を訪問したマルティネスPAN党首、手榴弾爆破事件に関し、ゴドイ・ミチョアカン州知事への支持の姿勢を示す。

26日  ミチョアカン州アパツィンガン市で、モンドラゴン(Julio Cesar Mondragon Mendoza, “El Tierra Caliente”)容疑者、ロサス(Alfredo Rosas Elicea, “El Valiente”)容疑者、カストロ(Juan Carlos Castro Galeana, “El Grande”)の3名が15日のモレリア市手榴弾事件を実行した容疑で逮捕される。容疑者は湾岸カルテルの殺人集団「ロス・セタス」の構成員と見られている。また詳細は不明も、さらに4名の容疑者が逮捕されたと発表。

30日  手榴弾事件の傷跡が残るミチョアカン州モレリア市で、同地出身でメキシコ独立に貢献したホセ・マリア・モレロスの生誕を祝す軍事パレードが開催される。カルデロン大統領、ガルバン国防相、サイネス海軍相も出席。

 

4.カルデロン大統領の国連総会出席

23日(〜25日)  カルデロン大統領、第63回国連総会出席のため訪米。国連総会では、気候変動、食糧価格高騰及び貧困、治安、移民、テロ、安保理非常任理事国への立候補について演説。24日、ラスムセン・デンマーク首相と首脳会談を行い、2009年にコペンハーゲンで開催される気候変動サミットに関する意見交換した他、地球温暖化緩和に関する合意の達成に向けて、「コペンハーゲン友好グループ」を構成する可能性について協議。

25日、トリホス・パナマ大統領と首脳会談を行い、治安問題に関して協力関係を強化する意思を表明。

25日(〜27日)  カルデロン大統領に同行し訪米したエスピノサ外相、豪、アゼルバイジャン、エジプト、ヨルダン、ペルー、ポルトガル及びトルコと二国間外相会談を行った他、マルチの分野では、G5外相会合、「女性指導者ワーキンググループ」、太平洋岸ラテンアメリカフォーラム外相会合、イベロアメリカ諸国外相会合へ出席。また、リオグループの議長国として、GCC諸国、キューバ、ロシア及びEUとリオグループとの各会合に出席。

 

5.その他

<内政>

2日  「レフォルマ」紙、2009年の連邦下院選挙に関するアンケート調査結果を公表。制度的革命党(PRI)は37%、国民行動党(PAN)は36%、民主革命党(PRD)は18%との結果。

2日  上院のPAN会派、カルデロン大統領が提出したエネルギー改革法案の補正案を提出。

4日  モンレアル連邦上院議員(PRD所属)、エネルギー改革に関し必要であれば再び議場を占拠すると宣言。他方、同党所属のゴンサレス連邦下院政策調整委員長、同改革に関し、討論をし、合意を形成する用意があると述べる。

4日、連邦議会両院の新執行部及び政策調整委員会のメンバーが確定。連邦下院政策調整委員長にはPRD会派長を兼任するハビエル・ゴンサレス・ガルサ下院議員が就任、連邦上院政策調整委員長にはベルトローネス委員長が留任。

8日  フェルナンド・マルティ少年誘拐殺害事件に関し、誘拐集団「ラ・フロール」の内部対立による密告により、ウンベルト・オルティス「エル・アパ」容疑者が逮捕される。同容疑者は負傷のため病院に入院中。同容疑者以外にも4名の容疑者が浮上。その内の1人、ロレナ・ゴンサレス「ラ・ロレ」は誘拐の計画を立案したとされている。

10日  連邦政府、「ラ・ロレ」が公共治安省(SSP)誘拐対策特別グループ(Grupo Especial Antisecuestro)に所属していたことを明らかに。

10日  ベグネ社会民主主義党(PSD)党首、党首職を離れる。21日、PSD新党首にディアス(Jose Carlos Diaz Cuervo)氏を選出。

11日  モレロス州教職員組合、「教育の質のための同盟」の取り消しを求めて8月18日からストを実施、授業が停止状態であることが報道される。

12日  メキシコ州ラ・マルケサ近辺で、体を縛られ、銃殺された遺体24体が発見される。13日、ゲレロ州アルセリア市で、24名殺害・死体遺棄事件の容疑者と見られる人物が少なくとも12名逮捕される。

14日、PGR、殺害された24名のうち数名が生活していたと見られる住宅をメキシコ州ウイスキルカン市内で特定。地方から集まっていた24名は大工として働いていたと見られる。

14日、メキシコ軍は、シナロア州クリアカン市内にある、イスマエル・「エル・マジョ」・サンバダのマネー・ロンダリング担当者の一人、ランベルト・ベルドゥゴ・カルデロンの兄弟のものと見られる家宅の捜索を行った結果、麻薬関連金2620万2176米ドル(約26億円)を押収。これはメキシコ史上2番目の多額麻薬関連金となる。シナロア・カルテルの麻薬関連金の押収は、今年に入ってから4度目。

17日  米麻薬取締局(DEA)、イタリア・マフィアを含む国際網に関連していると見られる湾岸カルテルの構成員175名を逮捕。

18日  カルデロン大統領、「国家体制法(Ley General del Sistema Nacional para la Seguridad Publica )」法案を提出。

19日  第24回全国公安評議会が開催される。本評議会は、客月21日に開催された第23回全国公安評議会において、30日後に治安対策の進捗状況を確認することで合意したことを受けて開催されたもの。同評議会において、関係閣僚及び各州知事及びメキシコ市長は、全国各州及びメキシコ市に「誘拐対策特別部隊(Unidades Especializadas de Combate al Secuestro)」を設置で合意。今次会合において、先日辞任したカンパ前全国公安評議会行政官に代わり、ルビード(Monte Alejandro RUBIDO GARCIA)新行政官の任命が承認される。

21日  8月28日にユカタン州で発生した12体の殺人死体が発見された事件に関連すると見られる「ロス・セタス」関係者9名を逮捕。

 

<外交>

18日  エスピノサ外相がロダス・グアテマラ外相と会談。本年開催された第10回二国間委員会会合及び第12回及び第13回港湾及び国境サービスに関するグループ会合での合意内容の進捗状況を評価。

29日(〜10月2日)  フェリペ・スペイン皇太子及びレティシア皇太子妃が訪墨。15日の手榴弾爆破事件の舞台となったミチョアカン州モレリア市を訪問。メキシコが麻薬取引及び組織犯罪との戦いから抜け出すことができると確信しており、その横には常にスペイン国民が味方についていると述べた。30日、両殿下は連邦上院を訪問し、マデロ上院議長の歓迎を受けた。その後、チャプルテペック城におけるカルデロン主催昼食会に出席した後、市内にて、オルティス最高裁判所長官等と会談を行う。

 

 
back 目標
Mofaホーム
一月前Next