在メキシコ日本国大使館

政務班

2009年1月のメキシコの内政・外交の概要

内政では、経済危機の影響で、ディーゼル価格の引き下げを求める漁民が各州でデモを実施、エビ漁業を中心に活動が一時停止した。また、党内選挙を前に、各党で候補選出を巡る動きが見られた。

　外交では、メキシコ大使会議が開催された他、カルデロン大統領がオバマ次期大統領と会談、またカルデロン大統領はダボス会議に出席した。

＜クロノロジー＞

１．ディーゼル価格の引き下げを求める動き

１日　　ディーゼル価格の引き下げを求め、オアハカ州、ソノラ州およびシナロア州の漁業関係者がスト開始。

１１日　　各党の連邦議員、カルデロン大統領に対し、ディーゼル価格の引き下げを求めデモを行っている漁業関係者の対応をするよう求めることで合意。ストはバハ・カリフォルニア州、ナジャリット州、タマウリパス州、チアパス州およびユカタン州に拡大。

１３日　　カルデナス農牧相、漁業関係者代表と協議を行う。カルデナス農牧相がディーゼルへの補助金増額を提案するも、漁業関係者はこれを拒否。改めて協議が行われることに。

１４日　　上院エネルギー委員会に出席したペレス＝ハコメ大蔵公債省歳出担当次官、ディーゼルの価格は国外の方が高い状態であり、値下げをするつもりはない、と述べる。連邦議会常設委員会、連邦政府に対し、ディーゼル、ガソリンおよび電気料金を検討するよう勧告する上院ＰＲＩ議員提案の見解を示す。

２１日　　連邦議会常設委員会、カルデロン大統領に対し、自動車部品製造業および漁業分野に供給するディーゼル価格の引き下げおよび農業およびスポーツフィッシングを行う者に対しては、価格凍結を勧告。

２６日　　全国１１州でディーゼル価格や電気料金等エネルギー価格の値上げ反対デモ活動が活発化。チワワ州では、農牧省州事務所占拠やフアレス市での国際橋の封鎖が予定されている。全国農民連合（Confederacion Nacional Campesina、ＣＮＣ）支持者はメキシコ州、カンペチェ州、ゲレロ州、タバスコ州、チアパス州、キンターナ・ロー州、モレロス州、ベラクルス州、プエブラ州、トラスカラ州でもデモ実施。

２７日　　カルデロン大統領、ディーゼル価格の週当たり上昇率を７５％カットすると発表。全国各地で高まるディーゼル価格高騰への不満を受けたもの。生産者、カルデロン大統領の対策は不十分であるとし、抗議行動を続ける意向示す。

３０日　　農業団体および労組、ディーゼル価格の凍結、解雇の波を止めることを求めレフォルマ通りでデモを実施。

２．２００９年選挙を巡る動き

７日　　労働党のエスコバル（Heron Escobar）氏、連邦選挙裁判所がＰＲＤ抜きで進歩主義包括戦線（ＦＡＰ）の名称使用を許可しない場合、労働党と結集党は「貧困層をはじめとするすべての人のための同盟（Coalicion por el Bien de Todos Primero los Pobres）」を使用するつもりであると述べる。

１２日　　国民行動党（ＰＡＮ）中央執行部、２００９年のヌエボ・レオン州の地方選挙に新同盟党との連合を模索することを妨げないとの決断を下す。

１４日　　民主革命党（ＰＲＤ）、連邦下院議員選挙の立候補者募集を開始。希望者は党内選挙期間中に政党、執行部、他の希望者を非難すること、また党員および党の所有物に対して危害を加えることを禁じ、これに反した場合は希望者登録を抹消すると発表。

同日　　ＰＡＮ、連邦下院議員選挙小選挙区の立候補者３００名のうち６５％に相当する１９５名を党本部が指名することで党中央執行部が一致。

１６日　　ＰＡＮ、連邦下院議員候補の募集を開始。ＰＡＮ党員および非ＰＡＮ党員で被選挙権がある者が対象。立候補者は、略歴をはじめ、選挙過程を侵害するメディアへの投稿、前科や違法行為との関わりがないという宣誓書への署名を義務づける。

同日　　制度的革命党（ＰＲＩ）、連邦下院議員候補の募集を開始。候補者は、選挙資金の出所から使途に至るまで、明確にすることを義務づけられ、選挙プロセスの透明化を図り、２９４名の候補者を選出する。

２０日　　ＰＡＮ、市民との関係強化および票稼ぎのため、選挙活動に著名な元スポーツ選手を招くことを検討していることを明らかに。

２０日　　連邦選挙機関（ＩＦＥ）、連邦選挙裁判所の判決を承認し、労働党および結集党の連合名を「メキシコを救おう（Salvemos Mexico）」とするも、今次判断を巡り、連邦裁判所との間に亀裂。

２０日　　ラミレス元内相、ハリスコ州１０区から連邦下院議員選挙に立候補の登録を済ます。

２１日　　ＰＡＮの党中央執行部が党内候補選出を指名することに関し、一部党員から、「お友達グループ」を形成するだけであるとの批判。カルバハル事務局長、党中央執行部はリーダーシップのあるより良い候補を選出しようとしているだけであり、だからこそ、党員以外からも広く候補者を募集していると反論。

２１日　　連邦上院、起訴があった場合のみ、議員の資金等に関する情報を公開するとのＩＦＥの通達を承認。ＩＦＥはそもそも議員全員の銀行口座等資金情報を調査する権限はないため、大蔵公債省金融諜報ユニットに議員、党幹部および立候補者の情報を提供するのみ。

２１日　　オルテガＰＲＤ党首、中間選挙の比例区の候補者に含めるため、市民同盟（Alianza Civica）、ＳＴＵＮＡＭ、ＳＭＥ、ＵＮＴ、ＩＭＳＳ労組、ＩＰＮおよびＵＮＡＭのコミュニティ、女性コミュニティ、性の多様性コミュニティ等とコンタクトをとっていることを明らかに。

２１日　　社会民主主義党（ＰＳＤ）、説教および宗教的出版物を通じてカトリック教会が同性愛や妊娠中絶を推進する政党に投票しないよう呼びかけているのは政治への干渉であるとして、ＩＦＥに対し、処罰を求める嘆願書を提出。

２２日　　ＰＡＮ、連邦下院選挙小選挙区３００議席中、中央執行部が直接指名する１９５議席の割り振りを明かす。直接指名は、ＰＡＮのプレゼンスが低い州および前回選挙で振るわなかった州を中心に行う。

２２日　　ロペス・オブラドール元大統領候補、比例区に推薦する候補者名を明かす。

２３日　　ＰＲＤ、党内選挙の実施ポスト数で合意に達せず、実施ポストは５３（メキシコ市：２７、サカテカス州全州、メキシコ州およびシナロア州の大半）に留め、残りの４４７ポスト（小選挙区２４７＋比例区２００（うち１５は党外部））は直接指名と定める。２３日　　ＰＳＤ、連邦下院選挙への候補者にディアス党首、パスコエ前事務局長、ベグネ前党首、ロブレス元メキシコ市長の名を挙げる。

２５日　　ＰＡＮ２００９年選挙調整官であるナバ前大統領秘書官、メキシコ市第１５区（ベニート・フアレス区）からの出馬を表明。

２８日　　ＰＲＩ、党内候補の全リストを公表。マリン・プエブラ州知事の姉妹、モレイラ・コアウイラ州知事の兄弟や元州知事の２世等、既に連邦議員や地方要職を務めたことがある人物の血縁関係者の立候補が数十人立候補、大半が小選挙区内の単独候補。

２９日　　ＩＦＥ、あらかじめ国会を通過した今年の各政党への交付金額を決定。総額３６億３３０６万７３５１ペソのうち、ＰＡＮが１０億９９５万ペソ、ＰＲＩ：７億６５４万３０００ペソ、ＰＲＤ：６億７１０万５０００ペソ。

２９日　　ＰＲＩおよびＰＲＤ、党内候補者リストをＩＦＥに提出。ＰＲＩ、３００ポスト中１８０ポストは党内対抗馬なし、１１３ポストは対抗馬あり、６ポストは緑の党が候補者を擁立することから、ＰＲＩからの立候補者はなし。他方、ＰＲＤは、各派閥毎の合意に達せず、各派閥とも候補者を擁立した選挙区多数。

３１日　　ＰＡＮが政府実施の社会政策を党の業績として宣伝用の看板に含めていることについて、ＩＦＥは合法との判断を示し、ＰＲＩおよびＰＲＤのＩＦＥ代表も、これを受け入れた。

３１日　　各政党、同日までにＩＦＥに党内候補のリストを提出。ＰＡＮ３７４人、ＰＲＤ３５８人、緑の党３２５人、「メキシコを救おう（結集党－労働党）」１０８３人、ＰＳＤ６４４人。

３．その他

５日　　インターネットを通じて逮捕状や電話の盗聴を許可する「仮想判事（juzgado virtual）」制度が開始、６名の仮想判事が仕事始め。オルティス最高裁長官、仮想判事制度は犯罪の増加によるものではなく、治安改善、犯罪との戦いおよび無処罰の状態を改めるのが目的であると述べる。

７日　　カルデロン大統領、国立宮殿で「家計および貧困のための国家合意」を発表。政府が実施する行動として、①雇用および労働者への支援、②家計支援、③競争力および中小企業支援、④競争力および雇用（創出）のためのインフラ投資、⑤より透明性の高い、効果的かつ多くの機会を生む予算の推進を基本の柱とする２５項目を挙げた。その中には、ガソリン価格の年内凍結、ＬＰガスの１０％値下げおよびその後の年内価格凍結も含まれる。

７日　　昨年１２月にＰＲＤ離党を表明していたモンレアル（Ricardo Monreal）ＰＲＤ上院議員、連邦上院労働党会派長に就任。政党登録に必要な５名の上院議員枠を守り、選挙資金を獲得することが目的。

７日　　米国政府、メリダ・イニシアティブの追加資金９９００万ドルを支出。墨国防省および海軍省に対し、非侵攻の航空機や設備等を提供する。機材は今年の第２四半期に納入の予定。リコ墨外務省北米次官が年末に記者会見で述べていた１億１６５０万ドルを下回る額となった。昨年１２月３日に支出された第一次資金と合わせ、メリダ・イニシアティブ資金の総額は１億９７００万ドルに。

８日（～９日）　　第２０回メキシコ大使・総領事会議が開催される。９日、カルデロン大統領、大使・総領事を前に、メキシコは「構造的立て直し」の過程にあり、単に市民の大量殺戮を行っている、あるいは混沌とした状態にあるとの外国の印象は間違っており、国家は立法府、社会と協力して、麻薬組織の浸透により失った生活スペースを取り返そうとしているとして、メキシコの治安対策へのイメージと国家の関心事項について各大使・総領事がアピールし、守るよう指示。

１２日　　オルティス墨中銀総裁が、国際決済銀行（ＢＩＳ）の次期理事長に選出される。

１２日　　カルデロン大統領、ワシントンのメキシコ文化研究所においてオバマ次期大統領と会談。気候変動、経済、移民、組織犯罪との戦いを中心に意見交換を行う。オバマ大統領は両国関係のより一層の強化を図ると述べる。治安に関しては、メキシコの麻薬対策への努力を認め、米国としても協力するとの姿勢を示す。ＮＡＦＴＡの再協議についての米国からの提案は行われず。

１４日　　チワワ州フアレス市に新たに２０００名の軍人が到着。共同掃討作戦（Operacion Conjunta）を展開する。

１６日　　カルデロン大統領、「組織犯罪対策首脳会合（Jornada Presidencial contra la Delincuencia Organizada）」に出席のため、パナマ入り。メキシコの他、トリホス・パナマ大統領、ウリベ・コロンビア大統領およびコロン・グアテマラ大統領が出席。

１９日　　カルデロン大統領、新しい宝くじ公社（Lotenal）の社長にミゲル・アンヘル・ヒメネス（Miguel Angle Jimenez Godinez）新同盟党所属連邦下院議員（休職中）を任命。ヤニェス前社長は大蔵公債省へ。新同盟党党員が同職に就任するのはこれで３人連続。

２１日　　欧州議会、メキシコとの関係を「戦略的パートナー」に格上げし、政治・経済・協力の分野で関係強化することを承認。

２２日（～２３日）マデロ連邦上院議長を団長とする連邦上院議員団、キューバを訪問、ペレス・ロケ外相および国家評議会議員と会談し、改善に向かう墨キューバ関係の強化を図る目的。外務省、キューバとの関係は正常化しつつあるとし、カルデロン大統領のキューバ訪問は暫定的に４月頃であると公表。

２６日　　カルデロン大統領、チャプルテペック城において開催される「経済危機に立ち向かうメキシコ：成長のために必要なこと（Mexico ante la Crisis: ?Que hacer para crecer?）」出席のため訪墨中のフェリペ・ゴンサレス元スペイン首相、ラゴス前チリ大統領、サンギネッティ元ウルグアイ大統領およびプローディ前伊首相と会談。

２５日　　ロペス・オブラドール元大統領候補、メキシコ市憲法広場で大規模集会を開催。政府は経済対策を行う意欲も能力もないと批判した上で、企業単一税（ＩＥＴＵ）廃止、ディーゼル、ガソリンおよび電気料金の引き下げ、カード利率の引き下げを求め政府に圧力をかける一連の運動「国民経済保護運動（Movimiento en Defensa de la Economia Popular）」を行うと発表。

２７日（～２９日）　　「経済危機に立ち向かうメキシコ：成長のために必要なこと」フォーラム開催される。

２５日　　ＰＧＲ、ティファナ・カルテルの遺体処理担当として、３００人以上の遺体を溶解し、週６００ドルを報酬として受け取っていた容疑で逮捕されたサンティアゴ・メサ（Santiago Meza Lopez）容疑者（通称「エル・ポソレロ（El Pozolero）」）がメキシコ市に移送される。

２８日　　カルデロン大統領、ダボス会議出席のためスイス入り。開幕を前に、セディージョ元大統領と会談。セディージョ元大統領、現在の経済危機は「常軌を逸しており、脆弱」であると指摘。１９９５年、同大統領は金融危機立て直しのために「難しく、極端な」決断をしなければならなかったと述べる。

２９日　「犯罪対策のための国家団結」のモレラ（Maria Elena Morera）代表、公安の分野で当局の活動に進展が見られないことから、同職を辞し、学術界に戻る意向を示す。

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