在メキシコ日本国大使館

政務班

2009年2月のメキシコの内政・外交の概要

内政では、党内選挙活動期間が開始され、スポットＣＭ放映を巡り、連邦選挙機関（ＩＦＥ）とテレビ局が対立した。また、テジェス通信運輸相の私的会話が流され、スキャンダルとなった。さらに、最高裁がサン・サルバドル・アテンコ事件に関し最終的見解を打ち出した。

　外交では、習近平(Xi Jinping)中国国家副主席が訪墨し、カルデロン大統領が中国との関係強化を強調する発言をしている。

＜クロノロジー＞

１．党内選挙活動期間スポットＣＭ放映を巡る動き

３日　　連邦選挙機関（ＩＦＥ）、党内選挙活動期間開始最初の週末のスポットＣＭ放映に関し、サッカー中継を中断しスポット放映を行ったとして、２大テレビネットワークのテレビサ社およびＴＶアステカ社に説明求める。

１０日　　党内選挙活動期間２回目の週末に、今度はサッカー中継を中断せず、規定のスポットを放映しなかったとして、ＩＦＥ、２大ネットワークの出頭を求める。

１３日　　ＩＦＥ、１月３１日および２月１日の２日間に放映されたサッカーの中継を中断して選挙スポットＣＭを放映した件に関し、テレビサ社（４００万ペソ）およびＴＶアステカ社（７００万ペソ）への罰金の適用を賛成４、反対５で却下。ＴＶアステカ社は、衛星放送のスカイ社での同中継放送時にスカイ社独自のＣＭを放映し、選挙スポットＣＭを放映しなかったとして、２００万ペソの罰金を科せられる。

１９日　　ＩＦＥ、２月７日および８日の２日間にサッカー中継を中断せず、スポットＣＭを放映しなかったことは連邦選挙法違反であるとして、２大ネットワークにそれぞれ約２００万ペソの罰金を課す案を提案。

２０日　　ＩＦＥ、２月７日および８日のスポットＣＭ放映に関する連邦選挙法違反について、ＴＶアステカ社に約４００万ペソ、テレビサ社に２５０万ペソの罰金を課す。

２．テジェス通信運輸相を巡るスキャンダル

１２日　　カルメン・アリステギがパーソナリティを務めるＭＶＳラジオで、テジェス通信運輸相が２００６年に同僚と交わした会話の録音が放送される。ディアナ・パンド（Diana Pando）氏の携帯電話の留守番録音に誤って残されたもので、テジェス通信運輸相が、サリナス元大統領が大統領時に機密費（partida secreta）の半分を盗み、政権終了時に国を壊滅させたと発言していた。これに対し、同日テジェス通信運輸相は短い記者会見を開き、録音は本物であるとしながらも、内容は根拠のないものであると弁明。また、さらに別の録音も公開。Cofetelと通信運輸省の対立を解決するため、無断でカルデロン大統領の名を語った書面を作成するよう指示しているもの。

１３日　　通信運輸省、テジェス大臣が同僚と交わした会話が放送された件について、「盗聴および違法な録音の流布」であるとし、ＰＧＲに告訴することを明らかに。

１９日　　テジェス通信運輸相、新たな私的録音を公開するとの脅迫があったことを明かす。

２４日　　テジェス通信運輸相、公開された指摘会話の録音中に、不適切な表現があったとして謝罪するも、あくまでも同運輸相は恐喝の被害者であると訴える。

３．サン・サルバドル・アテンコ事件を巡る最高裁の判断

３日　　２００６年５月３、４日にサン・サルバドル・アテンコで発生した新空港建設建設反対派と連邦・州警察との対立事件に関し、最高裁のグディーニョ判事、法的責任を問うことはできないが、個人の家宅、所有物、自由な通行、司法へのアクセス等憲法で保障された個人の権利を侵害したとして、ペニャ・メキシコ州知事、メディナ＝モラ連邦検察庁長官、ユネスＩＳＳＳＴＥ総裁、ベニテス（Humberto Benitez）メキシコ州内務庁長官、ロブレド（Wilfrido Robledo）の名を言及。

９日　　最高裁でサン・サルバドル・アテンコ事件に関する議論が行われる。判事の中でも関係者の法的責任を問うに十分な証拠があるとする判事と、これに反対する判事との間で意見が分かれる。

１０日　　同事件に関し、最高裁、権利侵害があったことを認めるも、具体的な権利侵害および関係する公務員の有罪・無罪に関しては、見解を持ち越し。

１２日　　最高裁、サン・サルバドル・アテンコ事件に関する議論を終える。賛成８、反対３で、連邦政府および各州知事、州議会に対し、人権侵害の発生を防止するため、警察当局の使用を規定するよう勧告する最終報告書を送ることで決着。また、オペレーションに直接関わった警察およびその指示を出した直属の司令官に対する責任については言及したものの、焦点となったペニャ・メキシコ州知事およびメディナ＝モラ連邦検察庁（ＰＧＲ）長官への責任に関しては言及がなかった。

４．その他

１日　　新設されたばかりのキンターナ・ロー州トゥルム市で臨時選挙が実施される。ＰＲＩが勝利。

３日　　カンクン市で、退役軍人でカンクン市の治安顧問を任されるとされていたテージョ（Mauro Enrique Tello Quinones）元国防省陸軍中将遺体で発見。ロマン（Gertulio Cesar Roman Zuniga）中尉（teniente）、ラミレス（Juan Ramirez Sanchez）氏も同時に殺害され発見。カンクン市のあるベニート・フアレス行政区では、「ロス・セタス」の進出が目立っており、同組織によるものであると推測される。９日　　陸軍、キンターナ・ロー州カンクン市でのオペレーションを実施。ＳＩＥＤＯ、３日のテージョ元陸軍中将殺人関連の容疑でベラスコ（Francisco Velasco Delgado、通称「バイキング（El Vikingo）」）ベニート・フアレス市（カンクン市のある行政区）警察長官の身柄を拘束。同日午後の記者会見で、サンチェス（Gregorio “Greg” Sanchez）市長、ヒメネス（Gumersindo Jimenez Cuervo）カンクン市予防警察長官を警察長官代行に任命。

３日　　主要政党、各地で連邦議会春期通常会期開始を前に連邦議員会議を開催、国民行動党（ＰＡＮ）議員、経済および治安に関する議案が今会期の中心とすべき事項であるという点で一致。他方、民主革命党（ＰＲＤ）議員は、経済対策を中心とする議案を挙げる。

４日　　連邦議会春期通常会期開始。

４日　サルカン駐米墨大使、米国の景気刺激策に含まれる「バイ・アメリカン」条項はＮＡＦＴＡやその他の国際条約に違反すると非難。この条項を承認すれば、ＷＴＯおよびＮＡＦＴＡの義務を侵害するとして国際的批判を受けることになろうと言明。

９日　　カルデロン大統領、経済危機対策のために、新たな法案の提出を発表。メキシコ社会保険庁（ＩＭＳＳ）法改革およびInfonavit（低所得者層向け住宅供給プログラム）法改革の２つで、①失業者が個人の口座からより多くの金額を引き出せるようにする、②失業後６ヶ月間は社会保険の登録を維持する、③若い労働者が住宅ローンを組めるようにすることを目指す。

９日　　企業家のカルロス・スリム氏、連邦下院議会で開催された「経済危機を前にしたメキシコ－成長のために何をすべきか」において、現在の経済危機は１９３０年代の経済危機以来の深刻なものであり、政府はＧＤＰ低下に備えるべきであると指摘。カルデロン大統領が経済危機の深刻化は悲観主義であると指摘した直後であり、賛否両論がわき起こる。１０日、ロサノ労働相、スリム氏の発言を批判。

１０日　　新同盟党のカワジ党首、国民のためになる優秀な候補を選挙に送りたいにもかかわらず、ＰＡＮは党内で争ってばかりいるとして、ヌエボ・レオン州で予定されていた連合の解消を発表、単独での候補擁立を示す。

１０日　　オルテガＰＲＤ党首、「Asi, si gana la gente（これなら市民が裨益）」という党の新たなスローガンを発表。

１０日　　習近平(Xi Jinping)中国国家副主席が訪墨、カルデロン大統領と会談。カルデロン大統領は、メキシコ政府が中国との関係に重きを置いていることを強調。

１１日　　バラルＰＲＤメキシコ市代表、休職を申請。クアウテモック区からメキシコ市議会選挙に出馬し、会派長を狙う見込み。

１１日　　カルデロン大統領、企業の解雇を抑制するため、合法的に操業停止を発表した企業に給与支払いのための補助金２０億ペソを投じると発表。補助金を受け取る企業は、政府による補填を受ける代わりに人材の解雇をしてはならない。これにより、労働者、企業と政府が協力して失業対策を行う、とカルデロン大統領。

１５日　　ＰＡＮおよびＰＲＩ、ＩＦＥに党の選挙基本方針を提出。ＰＡＮは連邦上院議員議席を現行の１２８議席から９６議席に、連邦下院議員議席を５００議席から４００議席にそれぞれ減らすこと、権限のバランスを図るため、連邦政府に各議会通常会期（年２回）につき２つの優先的イニシアティブを提出できる権限を与えること等５つの柱を中心とする方針を打ち出す。

１６～１７日、マーティン・アイルランド外相が訪墨、１６日にエスピノサ外相と会談。

１７日　　行政裁判所、２００８年６月に署名され、１０月１３日に公布された中国産品の関税撤廃を違法であるとの判決を下す。外国との協定に違法判決が下されるのは初めて。これにより、連邦政府は再び関税を徴収しなければならない。

１８日　　連邦議会主催のフォーラム、「経済危機を前にしたメキシコ－成長のために何をすべきか」が終了。国内経済危機に迅速に対応するために今期連邦議会会期中に議論し成立を目指す１０のポイントを挙げたリストを作成したほか、次期第６１回連邦議会での議題として、９つの課題を提示した。また、公共事業・サービス、買い上げ、リースおよび公共サービスに関わる法律公共事業への入札や政府調達への手続きの簡素化を図ることを盛り込むも、連邦下院議員と上院議員との間での合意や連邦政府の確固たる公約が掲げられることがなく、不満が残った。

２０日　　チワワ州でレジェス・チワワ州知事が武装集団に襲撃され、知事は無事だったが護衛官１名が殺害される。

２３日　　マルティネスＰＡＮ党首、党のＨＰで、ＰＲＩは政権を握っていた時代に麻薬犯罪および組織犯罪対策に失敗したと指摘、このツケをＰＡＮ政権が払っていると発言。

２４日　　ＩＦＥ、審議会評議員への１００％給料アップを承認。これにより、給料は現行の１７万２３７９ペソ（約１０４万円）から、基本給、ボーナス、追給、追加謝金および特別謝金を合わせ、月々３３万ペソ（約２０８万円）を受給することになる。憲法により規定されている連邦最高裁判事と同等の給料まで引き上げるもの。２５日、経済危機の中１００％の給料アップは非常識であるとの市民、政治家、教会からの批判を受け、ＩＦＥ審議会評議員は１００％アップを変更、引き上げを見送り。

２５日　　治安関係省庁の長およびレジェス・チワワ州知事、チワワ州内の治安状況分析および州政府の治安対策を確認するため、同州で会議を行う。

２５日　　米国連邦下院、本年度予算内で執行するメリダ・イニシアティブの予算案を３億ドルで可決。原案の４億５千万ドルから減額。上院での可決が待たれる。

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