政務班

2009年4月のメキシコの内政・外交の概要

 

メキシコ国内では新型インフルエンザが発生、国内では社会活動が大幅に制限され、メキシコへの定期運航便の一時停止等の感染防止対策を取る国も出た。また、連邦議会が今期最後の通常会期を終了し、治安に関する法案が相次いで成立した。さらに、バスケス教育相が連邦下院議員選挙に立候補のため大臣職を辞任した他、麻薬組織「フアレス・カルテル」および「ラ・ファミリア・ミチョアカーナ」の幹部が相次いで逮捕された。

外交では、米国治安関係閣僚が相次いで訪墨し、その後オバマ米大統領が初めて当地を訪問した。

 

<クロノロジー>

1.新型インフルエンザの発生

23日  コルドバ厚生相、インフルエンザ患者の急激な増加を受け、メキシコ市およびメキシコ州にある小学校から大学まで、公立・私立に関係なくすべての教育機関を休校にすると発表。

25日  連邦政府、今次インフルエンザに関し、厚生省および厚生大臣に感染疑い患者の隔離・行動制限、感染疑いのある旅行者に対する検疫実施、必要な情報を発信できるよう、電話、電信、郵便、ラジオ・テレビ放送を自由かつ優先的に利用の対策を採ることができる等の権限を付与する政令を官報に掲載、本25日より施行。また、大規模イベント、宗教関係の集会、バー、ディスコ等での集会を完全に禁止とし、メキシコ市、メキシコ州、サン・ルイス・ポトシ州で、託児所も含め、幼稚園から大学まですべての学校を閉鎖し、5月6日より再開することとすると発表。各企業に対しても、最大限の予防措置を講じるよう呼びかける。

26日  連邦政府、一連の措置の一環として、5月6日まで、刑事裁判を除く全てのメキシコ市高等裁判所、メキシコ市和解仲裁委員会(Junta Local de Conciliacion y Arbitraje)の活動を停止するとともに、市立動物園も閉館とすると発表。

26日  アグアスカリエンテス州知事、インフルエンザの影響により、181回目を迎えたサン・マルコス祭の中止を発表。

26日  WHOが、インフルエンザの警戒レベルをフェーズ4に引き上げ。

27日  厚生省、全国のすべてのレベルの学校で、28日〜5月5日まで休校措置をとることを発表。

28日  メキシコ市政府財務庁は、レストラン閉鎖に伴い、レストラン従業員に対し、1日あたり50ペソ(約500円)の補償をするとともに、メキシコ市在住でメキシコ市立病院、メキシコ社会保険庁(IMSS)系列病院、国家公務員共済庁(ISSSTE)系列病院および国家呼吸器疾患機関(INER)病院に入院している罹患者の家族に対し、3〜6000ペソ(約3〜6万円)の補助金を支給すると発表。

28日  カルデロン大統領はコルドバ厚生大臣とともに、クマテ元厚生大臣、デ・ラ・フエンテ元厚生大臣およびソベロン元厚生大臣と会合を行い、国内の現状についての情報交換、豚インフルエンザに対する連邦政府の短・中・長期政策についての分析を行う。

28日  キューバおよびアルゼンチン、インフルエンザにより定期運航便を一時停止。米国マイアミ発のクルーズ船もメキシコ行きクルーズの運行を一時見合わせ。

29日  WHO、インフルエンザに対する警戒レベルをフェーズ5に引き上げ。

30日  コルドバ厚生相、7月5日の連邦下院議員選挙の選挙キャンペーン期間延期を否定。ゴメス=モント内相も、現在までに延期をしなければならない要因は見つからないと述べる。

同日  連邦政府機関、5月1〜5日の間、行政サービスの停止を発表。ただし、公共交通機関、港湾、空港、高速道路、軍、メキシコ石油公社(PEMEX)、厚生省、金融市場、墨中銀等は通常通り活動し、食料品、医療品等国民に必要な部分以外の生産部門の操業を5月1〜5日の間停止することを推奨すると発表。

 

2.オバマ米大統領および米国高官の訪墨

1日(〜3日)  ナポリターノ米国土安全保障長官、ホルダー米司法長官とともにモレロス州クエルナバカ市で開催の武器密輸に関するフォーラムに出席のため来墨。

2日  クエルナバカ市で、「米墨武器密輸に関する二国間会議」開催。この席上、メディナ=モラ連邦検察庁(PGR)長官、米墨国境での武器密輸を食い止めるための最新技術導入のため、14億ドルを投資すると発表。また、両国が武器密輸との戦いのためのワーキング・グループを創設することで合意したことを明らかに。

3日  ナポリターノ米国土安全保障長官、エスピノサ外相と会談。合法的な移民の簡素化、移民の人権保護、(不法)移民の帰還措置および不法に国境を超える危険性についての国民への指導を中心とする政策について分析する「移民に関するハイレベル・グループ」の創設で合意。また、今週米国土安全保障省、在米メキシコ総領事、墨国家移民庁により署名された「秩序ある人権を尊重した」移民者の本国帰還に関する30の合意に祝意を述べる。

同日、カルデロン大統領、ナポリターノ米国土安全保障長官、ホルダー米司法長官と会談。治安、武器の密輸および移民について話し合う。

16日(〜17日)  オバマ米大統領が訪墨。オバマ大統領はカルデロン大統領とともに大統領府における歓迎式典に出席し、引き続き首脳会談、随行者を含めた会談、共同記者会見を実施。また同日、オバマ大統領は国立人類学博物館において、カルデロン大統領主催の晩餐会に出席した。カルデロン大統領とは、麻薬組織との戦い、移民、気候変動、クリーン・エネルギーや再生可能エネルギー、CO2排出権に関する二国間市場の統合、気候変動対策のための「緑の基金」、NAFTAの改善および米・キューバ関係等について話し合った。

 

3.選挙

13日  マルティネスPAN党首、バスケス前教育相を党選挙キャンペーンの正式なリーダーとして紹介。バスケス前教育相と並んで会派長の座を狙うナバ大統領秘書官およびラミレス元内相は出席せず。

14日  PAN中央執行部、連邦下院選挙比例区候補者のリストを全会一致で承認。比例第1区は、第1位にクルティエ元大統領候補の息子マヌエル・クルティエ(Manuel Clouthier Carrillo)氏、第2位にデル・リオ(Maria Dolores del Rio Sanchez)元ソノラ州エルモシージョ市長、第2区第1位にはサラサール前労働相、第3位にウサビアガ(Javier Usabiaga)元農牧相、第4位にガリド現ケレタロ州知事の妻、マリセラ・トーレス氏、第7位にレイノソ現アグアスカリエンテス州知事の姉妹マリア・デ・ルルデス・レイノソ氏、第3区第1位にヒルIFE代表、第4区第1位にバスケス前教育相が挙げられた。エスピノ前党首は候補者に挙がらず。

15日  連邦上院、選挙キャンペーン期間中のスポットCM放映違反に対する罰金のずれを是正する「ラジオ・テレビに関する連邦法(LFRT)」の改正を可決。これにより、連邦選挙法(Cofipe)との罰金上限の差を是正。

19日  PRD、連邦下院議員選挙候補者の決起集会を開催。オルテガ党首およびエンシーナス連邦下院議員候補が融和を訴えるも、ロペス・オブラドール元大統領候補派およびレネ・ベハラノ派が罵声を浴びせる。

22日  オルテガPRD党首、組織犯罪と関係のある候補者を除去するため連邦下院議員選挙候補者リストをPGRに提出。

28日  オルテガ民主革命党(PRD)党首は、2009年7月5日に実施される連邦下院議員選挙、6州の州知事選挙を含む11州地方選挙の選挙キャンペーン期間の開始を5月3日に控え、キャンペーン期間の変更を模索するため連邦選挙機関(IFE)、各党代表、厚生大臣および内務大臣と会合を持つべきであると提案。これに対しバルデスIFE議長、IFEは日程の変更を決定できる権限を持たず、これは厳に立法府の仕事であると言及。

 

4.人事

1日  地方紙「エル・ディアリオ・デ・ユカタン(El Diario de Yucatan)」、ヒメネス(Miguel Angel Jimenez)宝くじ公社(Loteria Nacional para la Asistencia Publica)総裁が、メガメディア(Megamedia)グループに公社の資金300万ペソを支払い、カンペチェ州のPAN候補の宣伝をしていたと指摘。8日、公金を使用して選挙活動をしていた疑いのあるヒメネス宝くじ公社総裁が、公共行政省に対し、捜査期間中の休職を求めたことを明らかに。また、ヒメネス総裁、休職中である連邦下院議員に戻るつもりはないとも。

4日  バスケス教育相、辞任。PAN党員として連邦下院議員選挙に比例区から出馬し、執行部を目指す。カルデロン大統領も、様々な改革を進めるには連邦議会の理解が重要であるとして、バスケス教育相の活動を支持する姿勢を示す。マルティネスPAN党首、バスケス前教育相の議員選出馬およびマルタ・ソサ・コリマ州知事候補により、PANは最も多い女性候補を擁立することになると述べる。6日、カルデロン大統領、新教育相に、アロンソ・ルハンビオ(Alonso Lujambio Irazabal)連邦情報公開庁(IFAI)長官を任命。

7日  ルビード全国公安評議会行政官、連邦政府治安分野報道官および国家公安評議会顧問に任命される。

 

5.議会の動き

15日  連邦下院、フォックス政権時の2002年および2003年の公的資金の使途に関し、汚職、不正使用、不正操作があったとの野党側の批判、PRI時代の資金の使途不透明性と麻薬組織とPRD党員との関連を訴えた与党PAN議員の発言で議論が白熱。投票は与党の選挙キャンペーンに対する反発から与党対全野党の構図となり、いずれも否決され、委員会に差し戻される。過去大統領の公的資金の使途に関し、連邦議会で否決されたのは初めて。ただし、法的処分の対象とはならない。

28日  連邦上院、大統領の給料を上回る給料を受け取ることができなくする法改正を可決。半数以上の州での承認を得るため、各州議会に送られる。

30日  連邦議会春期通常会期終了。連邦下院は最後の通常会期であったため、停滞していた法案が相次いで可決、成立。連邦下院は28日に連邦上院で可決した麻薬小売者対策のための一連の法改正を可決。同法では、個人が即時に使用するために所持できる麻薬量を規定、それ以上の量の所持については、麻薬違法所持として罰することができる。大麻5g、アヘン2g、モルヒネあるいはヘロイン50mg、コカイン500mg、LSD0.015mg、MDAクリスタル40mgあるいは200mg未満の錠剤、メタンフェタミン40mgあるいは錠剤200mg。また、同日に連邦上院が修正の後連邦下院に送った連邦警察法等治安に関する法案も可決、いずれも成立。また連邦上院は、連邦検察庁(PGR)基本法を可決、成立。審議終了後、連邦上院に常設委員会が設置された。

 

6.治安

1日  フアレス・カルテルの創始者兼元リーダーで1997年に死亡したアマド・カリージョ・フエンテス(Amado Carrillo Fuentes)の息子で、同カルテルの現リーダーであるビセンテ・カリージョ・フエンテス(Vicente Carrillo Fuentes)の甥であるビセンテ・カリージョ・レイバ(Vicente Carrillo Leyva)容疑者が火器および弾薬の不法所持、コカイン密輸およびマネー・ロンダリングの容疑により、メキシコ市ミゲル・イダルゴ区で逮捕される。

18日  ゴンサレス・マルティネス・ドゥランゴ州大司教、シナロア・カルテルのリーダー、ホアキン・「エル・チャポ」・グスマンが同州グアナセビ(Guanacevi)市付近に住んでおり、これは住民全員が知っていることで、知らないのは当局だけであると発言。

18日  ミチョアカン州モレリア市で、麻薬組織「ラ・ファミリア・ミチョアカーナ」の構成員とされる44名が逮捕される。そのうちの一人は、同州ラサロ・カルデナス市を中心としたミチョアカン州及びゲレロ州の都市を取り仕切る同組織ナンバー2のラファエル・セデーニョ(Rafael Cedeno Hernandez)。

30日  米「タイムズ」誌、世界で最も影響力のある100人の「指導者と革命家」の部門に、シナロア・カルテルのリーダー、ホアキン・「エル・チャポ」・グスマンが選出される。「第二のパブロ・エスコバル(1980〜90年代前半のコロンビア麻薬王)である」との評価。

 

7.その他

14日  メキシコ石油公社(PEMEX)、新規石油精製施設建設地をイダルゴ州トゥーラ市に決定。候補地10州のうち、条件、地理的戦略性等を踏まえたもの。30年ぶりの新規精製施設建設となる。イダルゴ州は建設予定地を確保していないため、PEMEXはイダルゴ州政府に対し100日以内に建設地を決定するよう指示。

17日(〜19日)  トリニダード・トバゴにおいて、第5回米州首脳会合が開催される。また、17日にはハーパー加首相、18日にはフネス・エルサルバドル次期大統領、コロン・グアテマラ大統領、19日にはバチェレ・チリ大統領とそれぞれ会談。

 

 

 
back 目標
Mofaホーム
一月前Next